水と言霊と

みぃうめ

文字の大きさ
328 / 346

第328話    亜門の謝罪?

しおりを挟む



 朝目覚めていつものように扉の外にいるハンスとラルフに朝の挨拶をしていると、護衛の部屋からニルスが出てきた。

「ニルスもおはよう。しっかり休めた?」
「おはようございます。しっかり休ませていただきました。遅くなりまして申し訳ございません。」
「遅くないよ!2人は朝ご飯食べたの?」
「これからラルフと川端様と3人でいただく予定です。」

 ニルスにこそっと

「あっくんのことよろしくね。」

 と言う。

「お力になれますよう精一杯努めさせていただきます。」

 ニルスもこそっと伝えてくれた。
 顔を見合わせ微笑み合う。
 ニルスならあっくんの欲しがる情報にちゃんと答えられるだろう。

「じゃあ私はハンスと外に行くね!」
「いつもの所でしょうか?」
「そう!いつもの!」
「行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます!」

 向かうは勿論子供達の所!
 今日は何して遊ぼうかな?
 外に向かいながら考えていると、スベンさんのことが頭を過った。

「あっ!ハンス!」
「はい、何でしょうか?」
「スベンさんの所に行かないといけなかった!すっかり忘れてた!」
「朝食後、向かいますか?」
「え゛っ……子供達と遊ぶ気満々だったから……ねぇ、ハンスは何でスベンさんが私に会いたがってるかわかる?」
「推測でよろしければお話ししますが。」
「お願い。」
「スベンは外にある居住地から滅多に離れません。魔物の大量発生の際、紫愛様の氷の魔法を自身の目で確認したのではないでしょうか?あのような規模の魔法を生きて目にすることなど考えてもいなかったはずですから、恐らく紫愛様への感謝を伝えると共に、心配で居ても立っても居られないのではないかと。」
「心配??何の??」

 私は元気ですけど?

「私共の魔法は規模に伴いそれ相応の魔力が必要不可欠です。スベンは平民ですから魔法を使うことは不可能ですが、その知識は持ち合わせています。紫愛様の無事なお姿を直接自身の目で確認をいたしたいのかと。」
「そういうことかぁー……なら会いに行くしかないね!心配しなくても魔力消費なんて感じてないって伝えれば安心してくれるよね?」
「安心させるために真実を偽るということでしょうか?」
「へ?偽るって何を?」
「魔力消費を感じていないと伝えても信じないと思いますよ。ですから偽る必要などありません。」

 それって、ハンスも私が嘘をつくと思ってるってことだよね?

「あはは…」

 苦笑いが溢れる。

「まさか、本当に感じていらっしゃらない?」
「あー……うーん……そういうことになる、かな?」

 歩みを止め、目を見開きながら振り返るハンス。

「あの規模の魔法を発動して!?本当に少しも感じなかったと仰る!?」
「あはは……ハイ。ほとんど感じませんでした。」
「なんという……では!川端様は!?何か仰っていましたか!?」
「あっくんも同じ。ほぼ感じないって言ってた。あっくんは探知のために魔力を出してるでしょ?あれの方がまだ消費を感じるって言ってたよ。」
「私共と使い方が違うのでしょうか……そもそも魔力の質に違いが??にわかには信じ難いです。」

 考え方が違う。
 知識量が違う。
 そう言いたいけど、そういうことは秘密にする約束だ。
 後にそれが私達を害することに繋がってしまうかもしれないから。
 でも、本当に教えないままで良いんだろうかと疑問に思ってしまう。
 それは私が辺境で戦う人達を目にしてしまったからだ。
 命を賭して国を守っている人達にとって有益な情報ではないのか…

 けれど説明したところで理解されなければ意味はない。
 菌のことは理解されなくても危険性が高すぎるから強引に推し進めた。
 でもここには顕微鏡なんてないんだからその存在は確認しようがない。
 ずっと懐疑的なまま、地球人に言われたから仕方なく……そう思っている人が大半だろう。
 結果が出てくるのに何年もかかるかもしれない。
 結果が出てこれば信じてもらえるのかな?

 あれ?難しくても、そういうものだと思わせる擦り込みをしていけば結果は魔法でも出せるのかな?

 うーーーん…
 無知な状態から結果を出すのは菌より遥かに時間がかかるのは明らか。
 何年も何十年も結果が出なかったら無駄な時間に感じてやめてしまうだろうな。
 それに私は水の因子しかないし、そもそも説明できる知識が足りていない。何より、自分達の考えていることだって推測でしかなく明確な答えには至っていない。

 仮に教えるとしたら、1番簡単に考えられるのは水かなと思う。でも水の因子持ちの人だけが色々な魔法ができるようになっても火と土と風が停滞したままでは明確な差に繋がってしまう。
 そうなってしまえばどの因子でも平等だと成り立っているこの国の魔法の均衡が崩れる。
 強くなった1つの因子だけが優遇され続け、他の因子持ちの人は淘汰される未来もあり得る…

 駄目だ!言うべきじゃない!
 其々の因子が足並み揃えて等しく発展していくなんて不可能だ!
 カオリンは多分ここまで考えてるんだろうなぁ。


 ごちゃごちゃ考えていたら知らないうちに外に出ていた。
 いつものように子供達と朝食を食べ、ハンスには今日はスベンさんの元には行かないと伝えた。

 子供達と竹馬で遊びながら、縄跳びがあるといいなと思い付いた。
 でもなぁ……土が舞うんだよなぁ…
 それに竹で作れる物の方がありがたいだろう。何せ材料費タダなんだから!

「紫愛様!!」

 竹で作れる玩具を再び考えようとしたらハンスが駆け寄ってきた。

「どしたの?」
「川端様が此方にいらっしゃいます!」
「えっ!?何で!?」
「不明です!」

 どうして急に!?子供達が怖がっちゃうよ!
「早く子供達を何処かに「しーちゃん!」

 遅かった…

 子供達はあっくんを目にした瞬間フリーズ。
 これ以上子供達に近付けないように慌ててあっくんの方へと走る。

「何でここに来たの?」

 折角楽しく遊んでたのに!

「しーちゃんと話したくて……あれ、しーちゃんが作ったの?」

 あっくんは子供達へと視線を向けている。

「竹馬のこと?そうだよ。」
「他にも何か作ってるの?」
「竹トンボ作ったけど危ないから遊ぶなって言われて竹馬作ったの。」
「軽いから竹で玩具を作ってるの?」
「竹の利用法がないってハンスから聞いたから竹で何かできないかなって思って。」
「……しーちゃん、俺も玩具作っていい?」

 なんと意外な申し出。

「あっくんて子供嫌いじゃないの?」
「嫌いじゃないよ。ただ、周りに子供がいる環境じゃなかったから接し方はよくわからない。」

 そうだったんだ!
 それなら挽回のチャンスがあっても良いかもしれない!

「折角来たなら子供達に謝って?」
「俺が!?でも……怖がらせるでしょ?」
「子供達は賢いよ!ちゃんと怖がらせたことを謝れば許してくれるよ。」
「俺から近付けないよ。ここに来たのもハンスにしーちゃん呼んでもらうだけのつもりだったし。」

 煮え切らない態度に苛立つ。

「あっくんさぁ、子供達に悪いことしたって思ってる?思ってない?」
「そりゃあ思ってる。」
「じゃあ謝りたい?謝りたくない?」
「……謝れるなら…」
「じゃあ近付ければ謝るんだね?」
「うん。」
「ちょっと待ってて!」

 そう言って子供達の元へ踵を返す。


 子供達はフリーズからは解けているものの、狼狽えて一塊になっている。

「みんな!あのお兄ちゃんがね、みんなに謝りたいって言ってるんだけど聞いてあげてくれない?身体が大きいの気にしてるからみんなに近付いて来られないの。」

 子供達は顔を見合わせ、どうするどうすると騒つくばかり。
 そんな中、外に出たら危ないと私を叱ってくれた男の子が声を上げてくれた。

「あの人、大きいのきにしてるの?」
「気にしてる!だから自分から近付いて怖がらせたくないって。」

 すると他の子が口を開く。

「でも父ちゃんたちがあのおにーちゃんとしゃべるなっていってたし…」

 どうやら両親に叱られるのを気にしているらしい。

「みんなが聞きたいって思うならお父さんとお母さんに聞いてもいいか私が確認するから安心して。前にお兄ちゃんが怒ってたのもね、みんなが外で暮らしてるのを知って心配だったからなの。私が外に出た時も私を怒ってくれたよね?危ないだろ?って。それと同じだったんだよ?」
「お姉ちゃんはあのお兄ちゃんとともだちなの?」
「うん!」
「ふーん……じゃああやまらせてあげようぜ!」

 なんと!流れを変える発言をしてくれた!

「えぇ~~!?父ちゃん母ちゃんにおこられるよ!」
「ばっかだなぁ!おれたち毎日お姉ちゃんにあそんでもらってるんだぞ?おもちゃも作ってきてくれてる!お姉ちゃんのおねがい1こくらいきいたっていーだろ?あやまるのきくだけのなにがそんなにだめなんだよ!そーゆーの心がせまいってゆーんだぜ?それにうちの父さんはけんかしたらあやまるのはきほん中のきほんって言ってた!母さんにいつもあやまってるからな!」

 ドヤ顔で父の姿を語る男の子。

 この子は本当に口が達者だな。
 でもそれはお父さんの立場がなくなるからあんまり言わない方が良いと思うけど…

「待って。嫌だったら嫌って言って「ニッキー!何を余計なこと言ってんだ!家でのことはやたらと口にすんなっていつも言ってんだろーが!!」

 ほぉら、男の子のお父さんと思われる男性が怒鳴りながら近付いてきたよ…














しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

生贄公爵と蛇の王

荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
 妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。 「お願いします、私と結婚してください!」 「はあ?」  幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。  そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。  しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...