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第328話 亜門の謝罪?
しおりを挟む朝目覚めていつものように扉の外にいるハンスとラルフに朝の挨拶をしていると、護衛の部屋からニルスが出てきた。
「ニルスもおはよう。しっかり休めた?」
「おはようございます。しっかり休ませていただきました。遅くなりまして申し訳ございません。」
「遅くないよ!2人は朝ご飯食べたの?」
「これからラルフと川端様と3人でいただく予定です。」
ニルスにこそっと
「あっくんのことよろしくね。」
と言う。
「お力になれますよう精一杯努めさせていただきます。」
ニルスもこそっと伝えてくれた。
顔を見合わせ微笑み合う。
ニルスならあっくんの欲しがる情報にちゃんと答えられるだろう。
「じゃあ私はハンスと外に行くね!」
「いつもの所でしょうか?」
「そう!いつもの!」
「行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます!」
向かうは勿論子供達の所!
今日は何して遊ぼうかな?
外に向かいながら考えていると、スベンさんのことが頭を過った。
「あっ!ハンス!」
「はい、何でしょうか?」
「スベンさんの所に行かないといけなかった!すっかり忘れてた!」
「朝食後、向かいますか?」
「え゛っ……子供達と遊ぶ気満々だったから……ねぇ、ハンスは何でスベンさんが私に会いたがってるかわかる?」
「推測でよろしければお話ししますが。」
「お願い。」
「スベンは外にある居住地から滅多に離れません。魔物の大量発生の際、紫愛様の氷の魔法を自身の目で確認したのではないでしょうか?あのような規模の魔法を生きて目にすることなど考えてもいなかったはずですから、恐らく紫愛様への感謝を伝えると共に、心配で居ても立っても居られないのではないかと。」
「心配??何の??」
私は元気ですけど?
「私共の魔法は規模に伴いそれ相応の魔力が必要不可欠です。スベンは平民ですから魔法を使うことは不可能ですが、その知識は持ち合わせています。紫愛様の無事なお姿を直接自身の目で確認をいたしたいのかと。」
「そういうことかぁー……なら会いに行くしかないね!心配しなくても魔力消費なんて感じてないって伝えれば安心してくれるよね?」
「安心させるために真実を偽るということでしょうか?」
「へ?偽るって何を?」
「魔力消費を感じていないと伝えても信じないと思いますよ。ですから偽る必要などありません。」
それって、ハンスも私が嘘をつくと思ってるってことだよね?
「あはは…」
苦笑いが溢れる。
「まさか、本当に感じていらっしゃらない?」
「あー……うーん……そういうことになる、かな?」
歩みを止め、目を見開きながら振り返るハンス。
「あの規模の魔法を発動して!?本当に少しも感じなかったと仰る!?」
「あはは……ハイ。ほとんど感じませんでした。」
「なんという……では!川端様は!?何か仰っていましたか!?」
「あっくんも同じ。ほぼ感じないって言ってた。あっくんは探知のために魔力を出してるでしょ?あれの方がまだ消費を感じるって言ってたよ。」
「私共と使い方が違うのでしょうか……そもそも魔力の質に違いが??俄かには信じ難いです。」
考え方が違う。
知識量が違う。
そう言いたいけど、そういうことは秘密にする約束だ。
後にそれが私達を害することに繋がってしまうかもしれないから。
でも、本当に教えないままで良いんだろうかと疑問に思ってしまう。
それは私が辺境で戦う人達を目にしてしまったからだ。
命を賭して国を守っている人達にとって有益な情報ではないのか…
けれど説明したところで理解されなければ意味はない。
菌のことは理解されなくても危険性が高すぎるから強引に推し進めた。
でもここには顕微鏡なんてないんだからその存在は確認しようがない。
ずっと懐疑的なまま、地球人に言われたから仕方なく……そう思っている人が大半だろう。
結果が出てくるのに何年もかかるかもしれない。
結果が出てこれば信じてもらえるのかな?
あれ?難しくても、そういうものだと思わせる擦り込みをしていけば結果は魔法でも出せるのかな?
うーーーん…
無知な状態から結果を出すのは菌より遥かに時間がかかるのは明らか。
何年も何十年も結果が出なかったら無駄な時間に感じてやめてしまうだろうな。
それに私は水の因子しかないし、そもそも説明できる知識が足りていない。何より、自分達の考えていることだって推測でしかなく明確な答えには至っていない。
仮に教えるとしたら、1番簡単に考えられるのは水かなと思う。でも水の因子持ちの人だけが色々な魔法ができるようになっても火と土と風が停滞したままでは明確な差に繋がってしまう。
そうなってしまえばどの因子でも平等だと成り立っているこの国の魔法の均衡が崩れる。
強くなった1つの因子だけが優遇され続け、他の因子持ちの人は淘汰される未来もあり得る…
駄目だ!言うべきじゃない!
其々の因子が足並み揃えて等しく発展していくなんて不可能だ!
カオリンは多分ここまで考えてるんだろうなぁ。
ごちゃごちゃ考えていたら知らないうちに外に出ていた。
いつものように子供達と朝食を食べ、ハンスには今日はスベンさんの元には行かないと伝えた。
子供達と竹馬で遊びながら、縄跳びがあるといいなと思い付いた。
でもなぁ……土が舞うんだよなぁ…
それに竹で作れる物の方がありがたいだろう。何せ材料費タダなんだから!
「紫愛様!!」
竹で作れる玩具を再び考えようとしたらハンスが駆け寄ってきた。
「どしたの?」
「川端様が此方にいらっしゃいます!」
「えっ!?何で!?」
「不明です!」
どうして急に!?子供達が怖がっちゃうよ!
「早く子供達を何処かに「しーちゃん!」
遅かった…
子供達はあっくんを目にした瞬間フリーズ。
これ以上子供達に近付けないように慌ててあっくんの方へと走る。
「何でここに来たの?」
折角楽しく遊んでたのに!
「しーちゃんと話したくて……あれ、しーちゃんが作ったの?」
あっくんは子供達へと視線を向けている。
「竹馬のこと?そうだよ。」
「他にも何か作ってるの?」
「竹トンボ作ったけど危ないから遊ぶなって言われて竹馬作ったの。」
「軽いから竹で玩具を作ってるの?」
「竹の利用法がないってハンスから聞いたから竹で何かできないかなって思って。」
「……しーちゃん、俺も玩具作っていい?」
なんと意外な申し出。
「あっくんて子供嫌いじゃないの?」
「嫌いじゃないよ。ただ、周りに子供がいる環境じゃなかったから接し方はよくわからない。」
そうだったんだ!
それなら挽回のチャンスがあっても良いかもしれない!
「折角来たなら子供達に謝って?」
「俺が!?でも……怖がらせるでしょ?」
「子供達は賢いよ!ちゃんと怖がらせたことを謝れば許してくれるよ。」
「俺から近付けないよ。ここに来たのもハンスにしーちゃん呼んでもらうだけのつもりだったし。」
煮え切らない態度に苛立つ。
「あっくんさぁ、子供達に悪いことしたって思ってる?思ってない?」
「そりゃあ思ってる。」
「じゃあ謝りたい?謝りたくない?」
「……謝れるなら…」
「じゃあ近付ければ謝るんだね?」
「うん。」
「ちょっと待ってて!」
そう言って子供達の元へ踵を返す。
子供達はフリーズからは解けているものの、狼狽えて一塊になっている。
「みんな!あのお兄ちゃんがね、みんなに謝りたいって言ってるんだけど聞いてあげてくれない?身体が大きいの気にしてるからみんなに近付いて来られないの。」
子供達は顔を見合わせ、どうするどうすると騒つくばかり。
そんな中、外に出たら危ないと私を叱ってくれた男の子が声を上げてくれた。
「あの人、大きいのきにしてるの?」
「気にしてる!だから自分から近付いて怖がらせたくないって。」
すると他の子が口を開く。
「でも父ちゃんたちがあのおにーちゃんとしゃべるなっていってたし…」
どうやら両親に叱られるのを気にしているらしい。
「みんなが聞きたいって思うならお父さんとお母さんに聞いてもいいか私が確認するから安心して。前にお兄ちゃんが怒ってたのもね、みんなが外で暮らしてるのを知って心配だったからなの。私が外に出た時も私を怒ってくれたよね?危ないだろ?って。それと同じだったんだよ?」
「お姉ちゃんはあのお兄ちゃんとともだちなの?」
「うん!」
「ふーん……じゃああやまらせてあげようぜ!」
なんと!流れを変える発言をしてくれた!
「えぇ~~!?父ちゃん母ちゃんにおこられるよ!」
「ばっかだなぁ!おれたち毎日お姉ちゃんにあそんでもらってるんだぞ?おもちゃも作ってきてくれてる!お姉ちゃんのおねがい1こくらいきいたっていーだろ?あやまるのきくだけのなにがそんなにだめなんだよ!そーゆーの心がせまいってゆーんだぜ?それにうちの父さんはけんかしたらあやまるのはきほん中のきほんって言ってた!母さんにいつもあやまってるからな!」
ドヤ顔で父の姿を語る男の子。
この子は本当に口が達者だな。
でもそれはお父さんの立場がなくなるからあんまり言わない方が良いと思うけど…
「待って。嫌だったら嫌って言って「ニッキー!何を余計なこと言ってんだ!家でのことはやたらと口にすんなっていつも言ってんだろーが!!」
ほぉら、男の子のお父さんと思われる男性が怒鳴りながら近付いてきたよ…
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