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001:覚醒、困惑、状況把握
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あなたは目覚めた。
唐突に目覚めて、そしてしばらくの間困惑した。
あなたの目の前には石の壁がある。薄暗い、ぼんやりと光る天井に照らされ、闇の中に浮かび上がる黄色がかった壁が視界いっぱいに続いているのが見える。
あなたには、そんな場所を訪れた記憶はない。あなたは自分が今いるこの場所がどこかを知ろうとして、しかしまた別の困惑に襲われて固まる事になる。
あなたは人である、と自己を認識している。
多少他の家庭より問題のある両親の一人息子として生まれ、時に暴言時に暴力、そして割と頻繁に洒落にならない傷を負いながらどうにか成人するまで生きていた。
あなたは自分がまともな人間ではない事を自覚している。しかし、生物学的には確かに人間だったと記憶していた。
そして、間違いなく死んだと記憶していた。
そんなあなたが見下ろす先には、黒い金属で覆われたあなたの手がある。
何かを纏っているのかと思ったが、意識を向けると金属そのものが動き、手応えのようなものを伝えてきている事に気づく。覆われているというよりも、両手が金属そのものになっているのだろうか、と眉を顰めようとして、眉が動かない事にまた困惑する。
あなたは恐る恐るその金属の手を上げ、己の顔があると思わしき箇所に触れようとする。
何かに触れた、という感覚はなく、何かにぶつかってそれ以上手が動かないという奇妙な感覚に苛まれ、あなたはますます首を傾げる。
違和感の拭えない金属の手をさらに動かし、首、肩、二の腕、胸、腹、足、自分で触れられる箇所全てに触れてみる。
そうしてみてようやく、あなたは自分の全身が金属へ成り果てている事を理解した。
あなたはじっくり、金属の指をにぎにぎと動かして考えたーーーどうしてこんな事になっている?
記憶、それも目覚める前の最も新しい情報を探ろうと、顎と思わしき箇所に手を置き視線を虚空へと向けるーーー何が起こってこうなった?
考えても考えても、あなたの思考にはもやがかかっているようで何も出てこない。
そうしてしばらくの間考え込み、やがてあなたは頷いたーーー思い出せないのなら仕方がない。突っ立ったままでは時間の無駄なのだから何か探してみよう。
あなたは自分の事に無頓着だ。そして割とせっかちだ。
痛みや苦しみや悩みといった負の感情が極端に薄く、というか殆ど感じる事がなく、何かをしていないと気分が良くないという難儀な性分をしている。
困惑こそしたものの、いつまでも悩むのも馬鹿らしいと早々に疑問を捨て、あなたは辺りを見渡して一歩を踏み出してみる。
そしてあなたは転んだ。それはもう盛大に転んだ。
周りに自分以外の生命の気配がないことを心からありがたく思いつつ、両手を地面についてゆっくりと起き上がる。
そこから細心の注意を払い、動きづらい身体を操って何とか再び立ち上がった。何となくだが感覚が掴めてきた。
そのままより一層警戒しながら歩いてみる。歩けた。たったままでいるのも何なので、適当にその辺りを歩いてみる事にした。
歩き出してみて、あなたは改めて自分の身体の違和感を思い知る。
重い、ひたすらに重い。全身に石を貼り付けて動いているかのように重い。確かに全身が金属になっているようだ。
金属の身体でどうやって動いているのか、あなたは歩きながら自分の身体をしげしげと観察してみる。
するとどうやら、金属の部分は身体の表面だけ……というか分厚い鎧を身に纏っているらしく、残る中身は柔らかい粘土のような物で埋め尽くされているようだ。
綿の代わりに砂が入った人形か、水入りの風船のような状態らしい。
それでどうやって見て、感じて、考えているのかと疑問を抱くが、やはり考えてもわからない為にあなたはこの謎も放置する。
自分の知っている常識が通用しないのだから、やはりどうしようもない。
そうして……ここは一体どこなのだろうか、という疑問に戻ってくる。
歩いても歩いても、どこまでも続く石の壁。
どういう原理か勝手に光って道を照らしている天井。
そんな場所に気付いたら人外に成り果てた上で棒立ちになっていた。
まるで理解ができない。あなたは早々に答えを導き出す事を諦めた。
情報が少なすぎるのに答えが出るわけもないかーーあなたは早々に思考を放棄した。あなたは雑だった。
あなたは謎を解き明かすよりも、目の前にある景色や自分の今の肉体のについての方が重要だった。
この先はどうなっているのだろう。この身体は一体どうなっているのだろう――あなたは先にあれこれと考察するよりも前に、体験を求める単純な性質であった。
取り敢えず、行ってみよう。
あなたはうきうきと弾む心を隠す事なく、文字通り跳ねる足取りで長い長い通路を進み、未知の景色に期待を寄せるのだった。
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唐突に目覚めて、そしてしばらくの間困惑した。
あなたの目の前には石の壁がある。薄暗い、ぼんやりと光る天井に照らされ、闇の中に浮かび上がる黄色がかった壁が視界いっぱいに続いているのが見える。
あなたには、そんな場所を訪れた記憶はない。あなたは自分が今いるこの場所がどこかを知ろうとして、しかしまた別の困惑に襲われて固まる事になる。
あなたは人である、と自己を認識している。
多少他の家庭より問題のある両親の一人息子として生まれ、時に暴言時に暴力、そして割と頻繁に洒落にならない傷を負いながらどうにか成人するまで生きていた。
あなたは自分がまともな人間ではない事を自覚している。しかし、生物学的には確かに人間だったと記憶していた。
そして、間違いなく死んだと記憶していた。
そんなあなたが見下ろす先には、黒い金属で覆われたあなたの手がある。
何かを纏っているのかと思ったが、意識を向けると金属そのものが動き、手応えのようなものを伝えてきている事に気づく。覆われているというよりも、両手が金属そのものになっているのだろうか、と眉を顰めようとして、眉が動かない事にまた困惑する。
あなたは恐る恐るその金属の手を上げ、己の顔があると思わしき箇所に触れようとする。
何かに触れた、という感覚はなく、何かにぶつかってそれ以上手が動かないという奇妙な感覚に苛まれ、あなたはますます首を傾げる。
違和感の拭えない金属の手をさらに動かし、首、肩、二の腕、胸、腹、足、自分で触れられる箇所全てに触れてみる。
そうしてみてようやく、あなたは自分の全身が金属へ成り果てている事を理解した。
あなたはじっくり、金属の指をにぎにぎと動かして考えたーーーどうしてこんな事になっている?
記憶、それも目覚める前の最も新しい情報を探ろうと、顎と思わしき箇所に手を置き視線を虚空へと向けるーーー何が起こってこうなった?
考えても考えても、あなたの思考にはもやがかかっているようで何も出てこない。
そうしてしばらくの間考え込み、やがてあなたは頷いたーーー思い出せないのなら仕方がない。突っ立ったままでは時間の無駄なのだから何か探してみよう。
あなたは自分の事に無頓着だ。そして割とせっかちだ。
痛みや苦しみや悩みといった負の感情が極端に薄く、というか殆ど感じる事がなく、何かをしていないと気分が良くないという難儀な性分をしている。
困惑こそしたものの、いつまでも悩むのも馬鹿らしいと早々に疑問を捨て、あなたは辺りを見渡して一歩を踏み出してみる。
そしてあなたは転んだ。それはもう盛大に転んだ。
周りに自分以外の生命の気配がないことを心からありがたく思いつつ、両手を地面についてゆっくりと起き上がる。
そこから細心の注意を払い、動きづらい身体を操って何とか再び立ち上がった。何となくだが感覚が掴めてきた。
そのままより一層警戒しながら歩いてみる。歩けた。たったままでいるのも何なので、適当にその辺りを歩いてみる事にした。
歩き出してみて、あなたは改めて自分の身体の違和感を思い知る。
重い、ひたすらに重い。全身に石を貼り付けて動いているかのように重い。確かに全身が金属になっているようだ。
金属の身体でどうやって動いているのか、あなたは歩きながら自分の身体をしげしげと観察してみる。
するとどうやら、金属の部分は身体の表面だけ……というか分厚い鎧を身に纏っているらしく、残る中身は柔らかい粘土のような物で埋め尽くされているようだ。
綿の代わりに砂が入った人形か、水入りの風船のような状態らしい。
それでどうやって見て、感じて、考えているのかと疑問を抱くが、やはり考えてもわからない為にあなたはこの謎も放置する。
自分の知っている常識が通用しないのだから、やはりどうしようもない。
そうして……ここは一体どこなのだろうか、という疑問に戻ってくる。
歩いても歩いても、どこまでも続く石の壁。
どういう原理か勝手に光って道を照らしている天井。
そんな場所に気付いたら人外に成り果てた上で棒立ちになっていた。
まるで理解ができない。あなたは早々に答えを導き出す事を諦めた。
情報が少なすぎるのに答えが出るわけもないかーーあなたは早々に思考を放棄した。あなたは雑だった。
あなたは謎を解き明かすよりも、目の前にある景色や自分の今の肉体のについての方が重要だった。
この先はどうなっているのだろう。この身体は一体どうなっているのだろう――あなたは先にあれこれと考察するよりも前に、体験を求める単純な性質であった。
取り敢えず、行ってみよう。
あなたはうきうきと弾む心を隠す事なく、文字通り跳ねる足取りで長い長い通路を進み、未知の景色に期待を寄せるのだった。
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