ファスト伝記

ときっかけ」

　道明寺由香（どうみょうじ　ゆか）は運動もスポーツも出来る、ごくありふれた一般的な
女子高生と言っても過言ではないだろう。
　道明寺と言うと、お金持ちのイメージや気品のある人だと思う人も多いと思うが、彼女の家庭は共働きで普通にJ-POPやアニソンも聴くし、コーヒーやエナジードリンクも飲む。服装も落ち着いた紺色の服を着ることが多く、髪型はいつもショートカットである。
そんな彼女が唯一名前負けしない代表格を挙げるとするのであれば、彼女が女子剣道部の部長であり、都内屈指の腕前を持っていることだ。
最初は両親が共働きで、帰りが遅くなることが多く。
「早めに帰ってもやることがないなぁーなんかないかなー」と思いながら歩いていた時、女子剣道部のスカウトを受けたのである。読者の皆様はお気付きであると思うが、彼女は剣道部の経験は皆無に等しく、中学の頃の部活は「料理部」である。
剣道部の先輩方にとっては「道明寺と言う名前をしているんだ、武芸のプロに違いない！」と勘違いしているため、問答無用で部室まで引きずり込まれてしまったのである。
　その結果、面や胴着の付け方もわからない素人だと判明し、ガッカリさせてしまったが彼女にとっても、「どうせ両親の帰りが遅いなら、帰りが遅くなっても問題ないから、ガッツリ練習できるものに挑戦してみたい！」と考え、そのまま入部することとなった。
その結果、意外な才能と先輩方の熱心な指導で腕前がどんどん上がり、遂には全国大会優勝圏内まで噂されるようになった。
巷（学校内）では「心眼系JK（男子命名）」「現代の巴御前（夫いないですが、、、）」と呼ばれていて、ちょっと恥ずかしい。
　
　部室の鍵を開け、みんなが来る前に色々と準備を始める。剣道場の窓を開け換気を行い、休憩時の麦茶の準備、道具の準備。
全て完了して一息入れた時、剣道場の入り口を見慣れぬ人が通ったのをがチラッと見えた。
気になってこっそり見てみると「何あの人、、、、」と思わず声が出てしまった。
　身長は2メートルはあると思われるが、筋肉質な体格が服の上からでもわかる。しかし問題はその格好だ。季節は8月の真夏日であるのに、全身黒スーツに厚手のコートまで羽織っている。サングラスをつけており、手袋もしっかりとつけていて、おまけにつばの広い帽子までかぶっている様は、あまりにも季節外れすぎる。写真をもっており、何やらぶつぶつと呟いている。
先生に言うべきは、どうしようか悩んでいるとこちらに気づき近づいてきた。
　いざ目の前に立たれると、どこか威圧感のあるオーラを感じる。ジィーッと見つめてから「この少年を知らないか？」と写真を差し出される。恐る恐る見てみると、同じクラスの佐藤初君が写っていた。「この人私のクラスメートですけど、、あんたはだれなんですか？」ときくと、何やら考え事をした後「彼のおとうさんの知り合いだ」と言い出したので、ますます怪しい。「それなら、職員室にいかれては如何ですか？」と言うと「職員室ってなんだ？」と返ってきてますます訳がわからない。「とりあえず先生呼んできますね」と言い、振り向くと、こちらに向かって初君が走ってくるのが見えた。
　その瞬間「ようやく見つけた！勇者！」と男の人が叫んだ。あまりにも声量が大きく、まさに動物園にいるライオンの雄叫びを彷彿とさせた。