ウイルス感染

蒼井龍

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 アルの死から一週間が経過した。
 私は未だにそのショックから抜け出せていなかった。
 当然、仕事は出来ていない。
 この一週間、私は本当に何もせずに、部屋に引きこもって、ただぼーっとしていた。
 その間考えていた事は、やはりアルの事だ。
 私は往生際悪く、ひょっとしたら、まだアルは生きているのではないかという事を何度も思った。
 これは、私にとっての現実逃避だ。
 私は何度も自殺を考えた。
 それくらい、私にとってアルという人物の存在は大きかった。
 だが、それは出来ない。 
 死ぬのが怖いからだ。
 それに、クワもいる。
 アルが命をかけて守ったクワを置いて死ぬのは、アルの努力を無駄にすることになる。
 何より、向こうでアルに怒られるのが嫌だった。
 今まで死後の世界なんて想像もした事ないし、信じてもいなかったが、今現在はその存在を信じていた。
 アルにもう一度会える。
 そう信じていたかった。
 都合のいい事を言っているのは分かっている。
 だが、そうでも思っていないと、私の精神が耐えられない。
 せめてもう一度だけ、もう一度だけアルに会いたい。
 私はずっとそう願った。
 当然、奇跡は起こらない。
 死んだ人間が生き返るわけがない。
 分かってはいても、私の苦しみはどんどん大きくなっていった。
 こんな事を考えるのは不謹慎極まりない上に、アルの行為を冒涜することにもなってしまうが、アルじゃなくて、私が死ねば良かったとも思った。
 私ではなく、アルが生き残ってくれれば、どれほど人を助けられたか…
 私は絶望に囚われていた。
 こんな体になってからは、感染してしまった事で絶望し、この体を呪い、恨んだ事もあった。
 だが、そんなのは全然絶望ではなかった。
 本当の絶望は、自分に何か起こる事じゃない。
 自分の大切にしているものに何かが起こる。
 これが本当の絶望だった。
 私の今まで絶望してきた出来事なんて、アルの死に比べれば、本当にちっぽけな事だったと自覚した。
 自分で勝手に苦しみ、一人で愚痴を言っていたようなものだ。
 私には一体何が残っていて、何が出来るのだろうか?
 答えは勿論分かっている。
 私に残っているのはもう一人の親友。
 出来る事は戦う事だ。
 分かってはいる、頭では分かっているのだ。
 しかし動けない。
 一週間も経つというのに、私の悲しみや苦しみは、全く収まらなかった。
 それどころか、日が経てば経つほど、私の苦しみは大きくなっていった。
 恐らく、私に出来る事は何もない。
 もう一生戦う事は出来ないだろう。
 
「ごめんね…アル…私…もう…ダメだ…」

 そんな時、不意に部屋の扉がノックされた。

「アル…?」
 
 一瞬だけ期待し、それはないと、現実を見る。
 今は誰とも会いたくない。
 私はしばらくそのノックを無視した。
 いわゆる居留守という奴だ。
 しかし、ノックの音は鳴り止まない。
 それでも私は無視をし続けた。
 しばらくして、ようやくノックが止んだ。
 そして、ノックをしてきた人物は、諦めて声をかけてきた。
 その声は、私のよく知る声だった。

「ニンファー、僕だよ。いるんでしょ?開けてよ。君と話しがしたいんだ」

 来たのはクワだった。
 相手がクワなら話を聞かない理由はない。
 アルが親友であると同時に、クワもまた親友なのだ。
 数少ない友人は大切にしなければならない。
 私はすぐに立ち上がり、ドアを開けた。

「やあ、一週間ぶりだね」

「いらっしゃい、もてなす事は出来ないけど、ゆっくりしていって」
 
 私はクワを部屋に上げ、椅子に座らせた。

「それで、今日は何しに来たの?」
 
「さっき言った通りだよ」

 クワはさっき、私と話をしに来たと言った。
 一体何の話なのだろうか?

「ニンファー、顔色悪いよ?大丈夫?」

 言われてみれば、クワが来てから少しだけ体調が悪くなった気がする。
 まあ、気にする程の事でもないだろう。

「ええ、久しぶりに人と会ったから、体が慣れてないだけだと思う。気にしないで。それより話って何?」

 クワは思い出したように言う。

「そうそう、その事なんだけどね、僕は今日、君に謝りに来たんだよ。この一週間、僕も色々忙しくて、君とまともに話せてなかったからね」

「謝る?クワが?何で?」

 正直、クワが私に謝る理由が見当たらない。

「僕のせいでアルが死んでしまった事を謝ろうと思う。本当にごめん…謝っても許されない事だとは分かってるけど、僕の事を許してほしい」

 私は何故か分からないが、ものすごい気持ち悪さを感じた。

「何でクワがその事で謝るの?あれは別にクワのせいじゃないでしょ?」

 クワはゆっくりと首を振った。

「いや、あれは完全に僕のせいだ。僕が撃たれなければ、アルは自分で自分の事を治療出来たはずなんだ。彼女が僕を助けなければ、彼女は死なずに済んだんだ」

 私はただただ戸惑うばかりだ。
 何故今になってクワがそんな事を言うのかが分からない。

「別にクワが気負う必要はどこにもないでしょ?アルは自分の命を犠牲にしてあなたを助けたんだから、そんな事を言うのはアルにも失礼よ」

 クワはしばらく沈黙した。
 やがて、とても言いにくそうに言った。

「だから…そうじゃなくて…」

 私はとうとう苛々して言った。

「何が言いたいの?言いたいことがあるならはっきり言ってよ!」

 クワが覚悟を決めたように言う。

「分かった。ならはっきり言わせてもらうよ」

 私は静かにクワの次の言葉を待つ。

「僕を恨んでいるなら、素直にそう言って欲しい」

 私の苛立ちが急に冷めていった。
 その代わり、さっきから感じていた気持ち悪さがさらに強くなった。

「何で?何で私がクワを恨むの?勝手に勘違いしないでよ…」

 私は平静を装って言う。
 
「君が僕を恨む理由は、僕が君を止めたからだ」

「………」

 私は何も言えなくなってしまった。
 自覚はないが、恐らく図星なのだろう。
 クワはさらに畳み掛けるように言う。

「僕が君がランジアさんを撃つのを止めなければ、アルは死ななかった。だからこれは僕の責任だ」

 私は抵抗を試みる。
 
「ちょっと待ってよ…あの時クワが止めてくれなかったら、私はもっと大勢の殺し屋に狙われて、今頃死んでた。クワには感謝してる」

「そんなはずはない。君は、自分よりも他人を優先する。君は、自分が狙われて殺されようと、人を守る事を優先する。この前の任務でランジアさんを庇ったのがいい証拠だよ」

「仮にそうだったとしても、あなたは私を守るために行動した。恨んでなんかいない」

 私がそう言うと、クワは思いっきり机を叩いた。

「そんなわけがない!いい加減に認めなよ!君は僕を恨んでいる!」

「そんな証拠はどこにも……」

 とうとうクワは私に最後まで喋らせる事をしなかった。

「証拠ならある!だって、あの日!師匠を殺された日!僕は君を恨んだ!君が僕を守るために行動したと分かっていても君を恨んだんだ!状況はあの時とかなり似ている!君が僕を恨まないわけがないんだ!」

「やめて……」

 私の声はクワには届かなかった。

「君が認めるまで僕は何度も言うよ」

「もうやめて……」

「君は僕を恨んでいる」

 私は吐き気を必死に抑えつける。

「もうやめて……それ以上は……」

「アルを殺したのは僕だ」

「もうやめてって言ってるでしょ!」

 ついに私は感情を制御しきれず、クワを怒鳴りつけてしまった。

「何で⁉何でそんな事言うの⁉私を追い詰めるのがそんなに楽しい⁉︎私はあなたを恨んでいるなんて思いたくないの!もう私にはクワしかいないのに!」

 もう、自分で何を言っているのかも分からなくなってしまった。

「そうよ!あなたの言う通り!私はあなたを恨んでいる!あなたが止めさえしなければ!私の戦闘力ならアルを助けられた!」

 クワは私の言葉を黙って聞いている。

「私はあなたを恨んでいるなんて思いたくない!アルが死んで、頼れるのはもうあなただけなのに!」

 そこまで言ったところで、私は自分の感情がどんどん収まっていくのを感じた。
 冷静になったところで、私はクワに謝る。
 
「ごめんなさい……私を助けてくれたのに…こんな事言っちゃって…」

 俯きがちに謝る私を、クワは優しく諭すように言う。

「いや、いいんだ。僕もそうだったから」

 あの時のクワも、今の私と同じ気持ちだったのだろうか?
 なら、あの時にクワが取り乱した理由がよく分かる。
 現に、私も今は冷静とは言えない状態だった。

「ニンファー、あの日、君が僕に何て言ったか覚えてる?」

 私は首を振る。
 あの時は、クワを励ますのに必死で、私が何と言ったのかは記憶していない。

「君は僕にこう聞いた。『もう戦えないの?二度と戦場には戻ってこないの?』ってね。この言葉を君にそのまま返すよ。君はもう戦えないの?」

 私はしばらく真剣に考える。

「分からない……戦いたいとは思っている……でも、体が動かないの……」

「その気持ちはよく分かるよ」

「クワ…私はどうしたらいいの…?」

「君は何のために戦っているの?何の目的があって君はこの過酷な環境に身を置いてるの?」

 私が戦う理由。
 最初は成り行きだった。
 しかし、今は…いや、一週間より前までは、明確な目的があった。
 だが、今となってはそんな私の目的はどうでもよくなり、無くなってしまっていた。

「人が戦うのには理由が必要だ僕がそうであるように」

「私はもう戦えないよ……だって、戦う理由が本当にないんだもの…今まで目標にしていた事は、今の目標ではないから……」

 クワは大袈裟に溜息をついた。

「戦う理由がないなら、まずはその理由を見つけよう。僕は君にこう言われて、君のために戦うことにした」

「………」

「理由がないなら、まずは見つける事だよ。なんなら、思い出すのでもいい。君は今までは、何を理由に戦ってきたの?」
 
 私は昔戦ってきた時に考えていた事を思い出す。

「……人を…守るため…かな?」
 
 私は普段から言っていることを言った。
 クワはゆっくりと首を振った。

「違う。それはあくまで建前だ。君の本心じゃない。もしそれがほんとうなら、君は感染者を殺しても悩まない。だってそうでしょ?感染者を殺すことが、人を守ることに直結する。殺せば殺すほど、君の目的は達成されるんだから、君が悩む理由はない」

 そうだ、思い出した。
 私が人を守るために戦うと言っていたのは、本当に最初の方だけだった。
 では、途中からは何のために戦っていたのか?
 私は必死に考える。
 すると、言葉が自然と出てきた。

「私は、この世界の真実が知りたい!何で私がこんな体になってしまったのかが知りたい!何で私は人を殺さなきゃいけないのかが知りたい!何故世界がこんな風になってしまったのかを知りたい!」

 そう、それが私の目的だった。
 他にも知りたい事は一杯ある。
 何故ウイルスが世界に蔓延したのか、何故私だけがウイルスに感染しながらも、非感染者の味方をできるのかが知りたい。
 私の知りたい事を全て数えるのは、恐らく不可能だろう。
 それくらいに、世界への疑問点は多い。
 私のこの答えに、クワは満足したように頷く。

「それが君の目的なら、僕も協力するよ」

「えっ……いいの?」

 クワはニッコリと笑って答える。

「もちろんだよ。僕は君のために戦うって決めてるんだから…僕の戦う理由は君だ。だから、君の目的は僕の目的でもあるんだ」

 そう言われて、あの日の会話を思い出す。
 確かに、クワはそんな事を言っていた気がしなくもないが………

「あなた、あれ本気だったの?」

 クワはキョトンとして返事をする。

「うん、もちろん」

「はあ……」

 私は大きく溜息をついてしまった。

「えっ…?僕何かおかしいこと言った?」

「別に…何も…」

 正直、あれを間に受けているとは思っていなかったし、本気にするとしてもせいぜい数日くらいだと思っていた。
 いくらなんでも素直過ぎだ。

「まあ、クワが協力してくれるって言うなら、心強いことこの上ないわ。期待してるわ。よろしく」

「こちらこそ。それじゃ、言いたい事も言えたし、聞きたい事も聞けたから、僕はもう帰るね。バイバイ」

「お疲れ様」

 私たちはそう言って別れた。
 クワのおかげでだいぶ気が楽になった。
 アルには少し申し訳ないとも思うが、ようやく私は立ち直る事ができた。
 明日からはずっと仕事をしてなかった分、一生懸命働くとしよう。
 私はそう決意し、次の日からは前線に復帰した。
 任務中にクワと会う事もあった。
 クワは、ランジアの集団を抜け、別の集団に所属したらしい。
 クワが新しく所属した集団は、アルが殺された日に監視をしていた集団だそうだ。
 あの集団にも若干以上の不安はあるが、ランジアの取りまとめる集団よりはマシだと思い、私は何も言わなかった。
 そもそも、他人の決断に口を出す資格など、誰にも存在しない。
 というわけで、しばらくの間は普通の生活を送った。
 前と変わった事があるとすれば、それは、私が感染者を殺しても、それほど悩まなくなった事くらいだろう。
 目的がはっきりした途端、悩む事はなくなった。
 きっといい事だ。
 復帰したての時は、アルの死がフラッシュバックする事もあったが、その回数も少しずつ減っていった。
 アルの事を忘れる気はないし、忘れる事などできないだろうが、アルの事を考えずに仕事できる方が、捗るのもまた事実。
 やはり仕事とプライベートは区別する必要がある。
 私が新しい気持ちで仕事に復帰してから約一ヶ月後、新たな展開が訪れた。
 その日、私は仕事を終えて、武器のメンテナンスをしている途中に、突然の来客があったのだ。
 来たのは予想通りクワだった。
 アル亡き今、私の住所を知っているのはこいつだけだ。
 クワは他の人物に私の住所を教える場合は、ちゃんと私に許可を取ってくる。

「いらっしゃい、相変わらずもてなしてあげれないけど、ゆっくりしていって」

「ありがとう、ニンファー。こちらも相変わらず手土産とかはないけど、すぐに出ていくから安心してくれ」

 そう言ったクワは椅子に座る。
 私も座り、クワの話を待つ。

「単刀直入に言う。次の僕達の仕事を手伝ってほしい」

 まあ、そんなことだろうとは思った。
 クワが私の家に来る時の要件は、極稀にある例外を除けば、殺し屋としての仕事に関わる事だ。
 いつも通りと言えばいつも通りだが、ここから先の方が重要だ。

「内容によるわね…まず聞きたいのは、本当に私の力が必要かどうかって事ね」

「君の力は間違いなく必要だし、君も興味を持つと思う」

 クワは自信を持ってそう言った。
 『私の力が必要』というところは自信を持たなくてもいいのだが……
 それより、『私も興味を持つ』だって?
 一体どういう事だ?

「三日後、僕の所属する集団が大勝負に出る。そのためにハイドさんは……」

 ハイド?誰だそれ?

「ああ、ハイドさんっていうのはその集団のリーダーだよ。ほら、この前、君と喋ってた人」

 なるほど、あの男の人か……
 正直、あまりいい印象はない。
 
「まあ、君からすれば当然だろうね……話を戻してもいい?」

「ええ、話の邪魔して悪かったわね」

「ええと…どこまで話したっけな…そうそう、それで、ハイドさんは人員を集めて三日後に備えている」

「そこまでの話は分かったわ。それで、三日後に何が始まるっていうの?」

「世界の真相を暴く」

 クワのその言葉に、私の心臓の鼓動が早くなる。

「それは…どういう意味?」

「ハイドさんは、この世界を作ってしまった元凶である、ウイルスの研究をしていた研究施設を特定した。そこに行けば、ウイルスの何かしらの情報があるはずで、世界を元に戻すきっかけが見つかるかもしれない」

 なるほど…そういう事か…
 一応理解は出来た。
 問題は、なぜ私が必要とされているかだ。

「その場所が結構遠い場所でね…かなりの大遠征になるんだ。車とかがあればいいんだけど、ああいう高機動力の乗り物は希少で手に入らない。だから、全員で歩いて行く事になるんだけど、その途中でも当然、感染者と遭遇する。だから、出来るだけ戦力がほしいってハイドさんは考えているんだ」

 なるほど、理解した。
 一つだけクワに聞きたいことがある。

「私を引き入れようとしてるのはあなた?それともハイド?」

 クワは苦笑しながら答える。

「ハイドさんだ。僕はあくまでただのメッセンジャーだよ」

 やはりか……
 クワの頼みなら是非もなく引き受けたのだが、ハイドの頼みとなると少し遠慮しておきたくはあるな……

「ついでにハイドさんから伝言を預かってるんだけど……」

「どんな?」

「『お前の無害認定を取り付けた恩と、二人の親友を助けようとした恩を忘れるな』だってさ」

「………」

 何だそれ?ものすごく腹が立つ。
 だから私に手伝えと?ふざけるな。
 私の無害認定を取り付けたのは完全に自分達のためだし、アルとクワの件についても、最初から助ける気などなかったではないか。
 本当なら絶対に引き受けたくない案件だが、クワが関わっている以上は、手伝わざるを得ない。
 クワは絶対に死なせない。
 私はそう決めている。
 それに、世界の真実を知りたいという私の目的とも利害が一致している。
 行かない理由がない。

「本当に来てくれるの?嬉しいよ。ありがとう。実を言えば、君が来てくれる可能性は低いと踏んでたから、正直ホットしている」

「どうしてそう思ったの?」

「まだ君がハイドさんの事を許せていないと思って…」

 確かにハイドのことは許せてない。
 だが、ここで行かなければ、私の目的は永久に達成されないだろう。
 私にだって損得勘定は働く。
 クワが本気で心配したような声で言う。
 
「ハイドさんのことが嫌いでも、仕事中は仲良くしてよ?」


「それくらいは分かってるわよ……それで?三日後の何時にどこに集合すればいいよの?」

 クワはポケットからメモを取り出して言う。

「えっ~と、集合時間は午前五時、場所は、街のはずれにある丘だね」

「分かった。じゃあ、その時間にまた会いましょう」

「うん、言っとくけど、死なないでよ?」

「そっちこそ」

 クワは笑って答える。

「僕は大丈夫だよ、だって、君が守ってくれるんでしょ?」

「それをいうなら、あなただって私のために戦ってくれるんでしょ?」

 そう言って、お互いに笑い合い、クワは帰っていった。
 この先何が起こっても、私とクワなら大丈夫だろう。
 ここにアルがいれば、さらに安心感は増すのだが、こればっかりは仕方ない。
 
「見ててね、アル」

 そう言ってみた。
 すると、何となくだが近くにアルがいるように感じる。
 恐らくはただの思い込みだろうが、案外幽霊になって私達の事を見ているかもしれない。
 アルが私達の事を見守っている。
 そう考えるだけで、私のやる気は桁違いになる。
 アルに恥ずかしい姿は見せられない。
 私はそう決意し、三日後に向けての準備を進めた。




 
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