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第2話 怪しい人影
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婚約の儀は公都の中央広場で行われる。街外れの孤児院からアイリたちが広場に着く頃には、広場は人々でごった返していた。アイリはマリアにはぐれないよう手を引かれながら広場の入り口にいる侍従に招待状を見せる。
「一般参列の方ですね、広場外縁が参列場所となります。くれぐれも粗相のないように」
パンフレットを渡された後、事務的に答えられ広場に通される。広場とはいえ外縁はほとんど立ち見する位しかできず、貴族の姿などまず見えない。
「これは本当に屋台だけ回って帰る羽目になりそう……」
マリアがどこか見えるところはないかとアイリを連れて外縁を回る。一般参列の人々は老若男女を問わずおり、ただ身なりはそれなりに立派だった。
アイリもマリアも自分たちの持っている服で一番仕立てのいいものを選んできたのだが、それでもみすぼらしくて見劣りする。場違いのようにも思いながらアイリもきょろきょろと周りを見回していると、晴れ着姿の人々に紛れて薄汚れたローブを纏った女性を見つけた。誰か、貴族の小姓めいた人と話しているようだ。
「……では、手はず通りに」
「わかったわ。痕を見せつけて嘘をつくだけでこんな大金。なにに使おうかしらね……ふふ」
フードをまぶかに被った女性は重そうな袋を受け取ったあと、腕を愛おしそうに撫でる。その仕草に、ちくりとアイリは胸元が痛んだ。
「アイリ、どうかしたの?」
マリアが怪訝そうに振り返り、アイリは痛んだ胸元を少しさすってから首を振った。
「なんでもない。少し疼いただけ」
「そう。ここにもいるのかな、私達と同じ人」
マリアはそれで何が起こったのか悟ると、苦い顔で目を伏せた。
マリアの様子を気にするうちに先ほどのローブを被った女性は人混みに紛れて見えなくなっており、疼きも消えていた。
外縁の隅まで来るとようやく人の切れ間が見える。相変わらず背伸びをしないと見えないが、混雑していた入り口に比べると随分マシな場所だった。
広場の中央を囲むように貴族の参列席が並び、その広場の中央には椅子が一脚置かれている。その椅子に向かって一本の道が延びており、どうやらここを通って椅子に座る人の元へ行くようだ。
「あの椅子に婚約者が座って、そこへ婚約の誓いをするために貴族様が歩いてくる、ってわけね」
マリアが入場の時渡されたパンフレットを読みながら納得する。時計台の時計が開始の時刻に近づくと、貴族の参列席から豪奢なドレスを纏った一人の金髪碧眼の女性が現れ、椅子に腰掛けた。
「あれが今回の婚約者か」
「ルナスプレンディア家のお嬢様だろ? エレオノーラ様だっけか」
小綺麗な男性二人がアイリたちの側で話し出す。他の参列者もエレオノーラの姿に息を呑んだりざわめいたりと反応は様々だ。
「あの、婚約者ってこれから決めるんじゃないんですか?」
アイリが聞くと、離していた男性が呆れ混じりに答えた。
「なんだ、お嬢ちゃんたちは知らないのか。儀式も何も貴族様の婚約なんてみんな事前に決まってるもんだろ。今回はルナサングィネア家とルナスプレンディア家の友好を示すために執り行われる儀式だよ」
「表向きは婚約者を選ぶってなってるが、実際は貴族の取り決めを知らしめるだけの茶番みたいなもんさ」
調子に乗ってもう一人の男性が口を滑らすが、すぐに隣の男にたしなめられる。
「あんまり言うと目立つだろ。ほら、もうすぐ始まるぞ。にしてもエレオノーラ様はお綺麗だな……」
「そりゃエミネントだからな。俺たち人間とは作りからして違うんだからよ」
隣でマリアががっかりする中、アイリは興味深そうにエレオノーラを見つめていた。
時計台が十二時を指す。重厚な鐘の音と共に、儀式が始まった。
「一般参列の方ですね、広場外縁が参列場所となります。くれぐれも粗相のないように」
パンフレットを渡された後、事務的に答えられ広場に通される。広場とはいえ外縁はほとんど立ち見する位しかできず、貴族の姿などまず見えない。
「これは本当に屋台だけ回って帰る羽目になりそう……」
マリアがどこか見えるところはないかとアイリを連れて外縁を回る。一般参列の人々は老若男女を問わずおり、ただ身なりはそれなりに立派だった。
アイリもマリアも自分たちの持っている服で一番仕立てのいいものを選んできたのだが、それでもみすぼらしくて見劣りする。場違いのようにも思いながらアイリもきょろきょろと周りを見回していると、晴れ着姿の人々に紛れて薄汚れたローブを纏った女性を見つけた。誰か、貴族の小姓めいた人と話しているようだ。
「……では、手はず通りに」
「わかったわ。痕を見せつけて嘘をつくだけでこんな大金。なにに使おうかしらね……ふふ」
フードをまぶかに被った女性は重そうな袋を受け取ったあと、腕を愛おしそうに撫でる。その仕草に、ちくりとアイリは胸元が痛んだ。
「アイリ、どうかしたの?」
マリアが怪訝そうに振り返り、アイリは痛んだ胸元を少しさすってから首を振った。
「なんでもない。少し疼いただけ」
「そう。ここにもいるのかな、私達と同じ人」
マリアはそれで何が起こったのか悟ると、苦い顔で目を伏せた。
マリアの様子を気にするうちに先ほどのローブを被った女性は人混みに紛れて見えなくなっており、疼きも消えていた。
外縁の隅まで来るとようやく人の切れ間が見える。相変わらず背伸びをしないと見えないが、混雑していた入り口に比べると随分マシな場所だった。
広場の中央を囲むように貴族の参列席が並び、その広場の中央には椅子が一脚置かれている。その椅子に向かって一本の道が延びており、どうやらここを通って椅子に座る人の元へ行くようだ。
「あの椅子に婚約者が座って、そこへ婚約の誓いをするために貴族様が歩いてくる、ってわけね」
マリアが入場の時渡されたパンフレットを読みながら納得する。時計台の時計が開始の時刻に近づくと、貴族の参列席から豪奢なドレスを纏った一人の金髪碧眼の女性が現れ、椅子に腰掛けた。
「あれが今回の婚約者か」
「ルナスプレンディア家のお嬢様だろ? エレオノーラ様だっけか」
小綺麗な男性二人がアイリたちの側で話し出す。他の参列者もエレオノーラの姿に息を呑んだりざわめいたりと反応は様々だ。
「あの、婚約者ってこれから決めるんじゃないんですか?」
アイリが聞くと、離していた男性が呆れ混じりに答えた。
「なんだ、お嬢ちゃんたちは知らないのか。儀式も何も貴族様の婚約なんてみんな事前に決まってるもんだろ。今回はルナサングィネア家とルナスプレンディア家の友好を示すために執り行われる儀式だよ」
「表向きは婚約者を選ぶってなってるが、実際は貴族の取り決めを知らしめるだけの茶番みたいなもんさ」
調子に乗ってもう一人の男性が口を滑らすが、すぐに隣の男にたしなめられる。
「あんまり言うと目立つだろ。ほら、もうすぐ始まるぞ。にしてもエレオノーラ様はお綺麗だな……」
「そりゃエミネントだからな。俺たち人間とは作りからして違うんだからよ」
隣でマリアががっかりする中、アイリは興味深そうにエレオノーラを見つめていた。
時計台が十二時を指す。重厚な鐘の音と共に、儀式が始まった。
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