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第18話 嬉しいけれど、できそこない
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「アイリ、大丈夫? ほっぺた赤いよ?」
ユリウスが無邪気にアイリの顔を覗き込んでくる。そうやって自分の顔を見られることが無性に恥ずかしくて、アイリは顔を背けてしまった。
「アイリ?」
「え、えっと……その……ユリウス様」
子供のようにあどけない目で見つめられると、逆に羞恥がかき立てられてしまう。アイリは顔を覆ってうずくまってしまった。
「あの……恥ずかしい、です……」
「恥ずかしいの? 俺はすっごく素敵なことだと思うけど」
ちゃんとわかっていないのか純真無垢な好意を向けてくるユリウスに、アイリはどう答えればいいのかわからなくなってしまった。
「でも、アイリのそういう顔見られてよかったかも」
「か、からかわないでください」
「からかってないよ。そうやって恥ずかしくなるの、つまり嬉しいってことなんでしょ、アイリも嬉しいって思ってるんだよ」
「そう……なんでしょうか」
アイリは自分でもよくわからない。こんなにそわそわした気持ちが嬉しいなのだろうか。言われ慣れない言葉を投げかけられて、気持ちがくすぐられるような心地になる。
「それともアイリ、嫌だった?」
ユリウスが不安げに聞いてくるが、アイリはすぐに首を振った。
「いえ、嫌ではなくて、その……どう言えばいいかわからなくて」
この前一緒にダンスしたときと同じような心地だ。だがそれよりも温かくて、逃げ出したくなるようなくすぐったさがある。
「あなたの言葉を聞いていると、胸が弾んでしまうというか……落ち着かなくなるんです」
ぽつぽつとアイリは胸の内を言葉にしていく。
「でも、温かくて、もっと聞いていたいような心地になるんです」
「ほんと?」
ユリウスの表情が明るくなる。そうやってころころと表情が変わる姿が、どうしてかアイリはもっと見ていたくなった。
少し顔の熱っぽさも引いてきたところで、アイリは天井の空を見上げる。
「でも私なんかが、本当にユリウス様に釣り合うんでしょうか」
「なんで?」
ユリウスは無邪気に聞いてくるが、アイリはそれで流せるほど簡単に物事を考えられなかった。
「私は厄災孤児ですし、身分なんて到底釣り合いません。それに、いつも知らないうちに人の気持ちを傷つけてしまって……エレオノーラ様にも今日は悪いことをしてしまいました」
アイリが今日エレオノーラに会って話したことを伝えると、ユリウスは不思議そうに首を傾げた。
「エレオノーラ、俺に会いに来るなら執務室にまっすぐ来ればいいのにね。あ、もしかしてアイリに挨拶したかったんじゃないかな」
「そうなんですか?」
「大人がよく使う方便、ってやつだと思うよ。エレオノーラもアイリと話してみたかったんだと思う」
ユリウスがわかった、といわんばかりに言い当てて見せるものの、アイリは気分が沈む。せっかく訪ねてきてくれたエレオノーラの気分を損ねてしまったとユリウスに告げた。
「いつもこうなんです。あなたが湖を見せてくださったときもがっかりさせてしまったし、エレオノーラ様の気分だって損ねてしまいました。私が話すと、みんな傷つけてしまう。だから、わからなくても何も聞けなくて……」
筋の通った話ならいくらでもわかるのに、人の気持ちになると途端に何もわからなくなってしまう。だから、知りたいのに何も聞けずに、聞く前に終わってしまう。
「魂削げ、という言葉が一番似合っているのかもしれませんね。歪で、醜い魂なんでしょう」
「アイリ……」
エレオノーラに言われた言葉の意味がゆっくりと刺さる。痛みを感じるけれど、きっとそれだけ相手のことも傷つけているのだろう。
アイリが俯いていると、不意に腰にぶつかるようにしてユリウスが抱きついてきた。
ユリウスが無邪気にアイリの顔を覗き込んでくる。そうやって自分の顔を見られることが無性に恥ずかしくて、アイリは顔を背けてしまった。
「アイリ?」
「え、えっと……その……ユリウス様」
子供のようにあどけない目で見つめられると、逆に羞恥がかき立てられてしまう。アイリは顔を覆ってうずくまってしまった。
「あの……恥ずかしい、です……」
「恥ずかしいの? 俺はすっごく素敵なことだと思うけど」
ちゃんとわかっていないのか純真無垢な好意を向けてくるユリウスに、アイリはどう答えればいいのかわからなくなってしまった。
「でも、アイリのそういう顔見られてよかったかも」
「か、からかわないでください」
「からかってないよ。そうやって恥ずかしくなるの、つまり嬉しいってことなんでしょ、アイリも嬉しいって思ってるんだよ」
「そう……なんでしょうか」
アイリは自分でもよくわからない。こんなにそわそわした気持ちが嬉しいなのだろうか。言われ慣れない言葉を投げかけられて、気持ちがくすぐられるような心地になる。
「それともアイリ、嫌だった?」
ユリウスが不安げに聞いてくるが、アイリはすぐに首を振った。
「いえ、嫌ではなくて、その……どう言えばいいかわからなくて」
この前一緒にダンスしたときと同じような心地だ。だがそれよりも温かくて、逃げ出したくなるようなくすぐったさがある。
「あなたの言葉を聞いていると、胸が弾んでしまうというか……落ち着かなくなるんです」
ぽつぽつとアイリは胸の内を言葉にしていく。
「でも、温かくて、もっと聞いていたいような心地になるんです」
「ほんと?」
ユリウスの表情が明るくなる。そうやってころころと表情が変わる姿が、どうしてかアイリはもっと見ていたくなった。
少し顔の熱っぽさも引いてきたところで、アイリは天井の空を見上げる。
「でも私なんかが、本当にユリウス様に釣り合うんでしょうか」
「なんで?」
ユリウスは無邪気に聞いてくるが、アイリはそれで流せるほど簡単に物事を考えられなかった。
「私は厄災孤児ですし、身分なんて到底釣り合いません。それに、いつも知らないうちに人の気持ちを傷つけてしまって……エレオノーラ様にも今日は悪いことをしてしまいました」
アイリが今日エレオノーラに会って話したことを伝えると、ユリウスは不思議そうに首を傾げた。
「エレオノーラ、俺に会いに来るなら執務室にまっすぐ来ればいいのにね。あ、もしかしてアイリに挨拶したかったんじゃないかな」
「そうなんですか?」
「大人がよく使う方便、ってやつだと思うよ。エレオノーラもアイリと話してみたかったんだと思う」
ユリウスがわかった、といわんばかりに言い当てて見せるものの、アイリは気分が沈む。せっかく訪ねてきてくれたエレオノーラの気分を損ねてしまったとユリウスに告げた。
「いつもこうなんです。あなたが湖を見せてくださったときもがっかりさせてしまったし、エレオノーラ様の気分だって損ねてしまいました。私が話すと、みんな傷つけてしまう。だから、わからなくても何も聞けなくて……」
筋の通った話ならいくらでもわかるのに、人の気持ちになると途端に何もわからなくなってしまう。だから、知りたいのに何も聞けずに、聞く前に終わってしまう。
「魂削げ、という言葉が一番似合っているのかもしれませんね。歪で、醜い魂なんでしょう」
「アイリ……」
エレオノーラに言われた言葉の意味がゆっくりと刺さる。痛みを感じるけれど、きっとそれだけ相手のことも傷つけているのだろう。
アイリが俯いていると、不意に腰にぶつかるようにしてユリウスが抱きついてきた。
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