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第29話 刺客
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入り口にはメイドが一人立っていた。クララではない。
「誰? っ、あなたは」
「代わりに水を汲んできたというのにずいぶんな物言いですこと」
立っていたのはヒルダだった。手には短剣を持ち、マリアとアイリににじり寄っていく。
「あんた、一体なんなの? アイリにあんなひどいことをして……!」
マリアはアイリを庇うように前に出ると、構える。ヒルダは短剣を構えて不敵に笑った。
「私は言いつけの通りにしてるだけ。アイリ・フィルップラが邪魔という方のためににね」
「アイリが邪魔、って……」
「あまり話してもしかたないわ。あなたもろとも亡き者にしてあげる」
そしてヒルダはマリアに飛びかかった。胸に突き立てるように振り下ろされた短剣をマリアはすんでの所で躱す。ヒルダはそのまま短剣を払ってマリアを斬りつけようとするが、マリアは地面にへばりつくようにしゃがんで避ける。
そしてそのままヒルダに足払いをし、体勢を崩したところでたたみかけるように短剣をはたき落とす。
「くっ!」
ヒルダが苦々しい顔をして空いた手でマリアを殴ろうとするが、マリアはそれをあっさりといなしヒルダを組み伏せてしまった。
「このっ、離せっ」
わめくヒルダをしっかりと取り押さえていると、水を替えに行っていたクララが戻ってきて、悲鳴を上げる。
「クララさん、誰か呼んできて!」
マリアは力を緩めずに言い、クララは急いで衛兵を呼んでくる。程なくしてやってきた衛兵にヒルダは身柄を渡され、連れていかれることとなった。
「マリア、お手柄じゃない。でも怪我とかしてない? 大丈夫?」
クララに心配されたが、マリアは軽く首を振って平気だと伝える。
「このくらい、町の買い出しでスリをやっつけたときみたいなものだって」
「物騒ね……」
ドタバタとうるさくしていたからだろうか、アイリが呻く。それに合わせるようにレイノを連れたユリウスが急ぎ足で部屋に入ってきた。
「アイリ、マリア! 暴漢に襲われたって……!」
「ご心配いりませんわユリウス様。マリアが撃退してくれました」
「マリア殿、なんと無茶な……!」
クララが説明すればユリウスもオルヴォも驚いていたが、二人に怪我がないことを確認すると安心したように息をついた。
「取り込み中失礼。アイリの容態を診たいのだが」
医者鞄を持ったレイノがその後ろで声を上げ、早速アイリの治療に当たった。
「ねえレイノ先生。変なことしないからアイリのこと、見ててもいい?」
ユリウスが心配そうに聞くと、レイノは鞄から魔素のこもった石、魔石を取り出しながら言った。
「そうですね、他意はないようですし、構いません」
レイノは魔石をアイリの厄災痕にかざしそっと目を閉じる。そのまま神経を集中させ、魔素と反応した感情を魔石に集積させていった。
ユリウスはまっすぐにその光景を眺めていた。赤く光る厄災痕が、徐々に色を失いただの痣に戻っていく。水晶のような魔石は逆に白く濁り、まるで悪いものを吸い取っているかのような光景だった。
レイノが再び目を開ければ、アイリの様子はすっかり落ち着いていた。
「ひとまずはこれで大丈夫でしょう」
胸元の衣服を整えてやりながらレイノが言えば、ユリウスはこらえるような面持ちで頭を下げる。
「先生、ありがとうございますっ……」
その姿を見て、マリアは表情を緩めると外で待っているオルヴォを呼んでこようと部屋を出ていった。
「あなたが呼びに来てくださったからですよ。私もアイリが無事で何よりです」
「本当に、本当にありがとうございます。お礼、俺はすぐに思い浮かばないけど、なんでも言ってください」
レイノは困ったように柔らかく笑った。
「誰? っ、あなたは」
「代わりに水を汲んできたというのにずいぶんな物言いですこと」
立っていたのはヒルダだった。手には短剣を持ち、マリアとアイリににじり寄っていく。
「あんた、一体なんなの? アイリにあんなひどいことをして……!」
マリアはアイリを庇うように前に出ると、構える。ヒルダは短剣を構えて不敵に笑った。
「私は言いつけの通りにしてるだけ。アイリ・フィルップラが邪魔という方のためににね」
「アイリが邪魔、って……」
「あまり話してもしかたないわ。あなたもろとも亡き者にしてあげる」
そしてヒルダはマリアに飛びかかった。胸に突き立てるように振り下ろされた短剣をマリアはすんでの所で躱す。ヒルダはそのまま短剣を払ってマリアを斬りつけようとするが、マリアは地面にへばりつくようにしゃがんで避ける。
そしてそのままヒルダに足払いをし、体勢を崩したところでたたみかけるように短剣をはたき落とす。
「くっ!」
ヒルダが苦々しい顔をして空いた手でマリアを殴ろうとするが、マリアはそれをあっさりといなしヒルダを組み伏せてしまった。
「このっ、離せっ」
わめくヒルダをしっかりと取り押さえていると、水を替えに行っていたクララが戻ってきて、悲鳴を上げる。
「クララさん、誰か呼んできて!」
マリアは力を緩めずに言い、クララは急いで衛兵を呼んでくる。程なくしてやってきた衛兵にヒルダは身柄を渡され、連れていかれることとなった。
「マリア、お手柄じゃない。でも怪我とかしてない? 大丈夫?」
クララに心配されたが、マリアは軽く首を振って平気だと伝える。
「このくらい、町の買い出しでスリをやっつけたときみたいなものだって」
「物騒ね……」
ドタバタとうるさくしていたからだろうか、アイリが呻く。それに合わせるようにレイノを連れたユリウスが急ぎ足で部屋に入ってきた。
「アイリ、マリア! 暴漢に襲われたって……!」
「ご心配いりませんわユリウス様。マリアが撃退してくれました」
「マリア殿、なんと無茶な……!」
クララが説明すればユリウスもオルヴォも驚いていたが、二人に怪我がないことを確認すると安心したように息をついた。
「取り込み中失礼。アイリの容態を診たいのだが」
医者鞄を持ったレイノがその後ろで声を上げ、早速アイリの治療に当たった。
「ねえレイノ先生。変なことしないからアイリのこと、見ててもいい?」
ユリウスが心配そうに聞くと、レイノは鞄から魔素のこもった石、魔石を取り出しながら言った。
「そうですね、他意はないようですし、構いません」
レイノは魔石をアイリの厄災痕にかざしそっと目を閉じる。そのまま神経を集中させ、魔素と反応した感情を魔石に集積させていった。
ユリウスはまっすぐにその光景を眺めていた。赤く光る厄災痕が、徐々に色を失いただの痣に戻っていく。水晶のような魔石は逆に白く濁り、まるで悪いものを吸い取っているかのような光景だった。
レイノが再び目を開ければ、アイリの様子はすっかり落ち着いていた。
「ひとまずはこれで大丈夫でしょう」
胸元の衣服を整えてやりながらレイノが言えば、ユリウスはこらえるような面持ちで頭を下げる。
「先生、ありがとうございますっ……」
その姿を見て、マリアは表情を緩めると外で待っているオルヴォを呼んでこようと部屋を出ていった。
「あなたが呼びに来てくださったからですよ。私もアイリが無事で何よりです」
「本当に、本当にありがとうございます。お礼、俺はすぐに思い浮かばないけど、なんでも言ってください」
レイノは困ったように柔らかく笑った。
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