好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~

ことのはじめ

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第28話 痛みの影には

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 ユリウスからアイリの容態を聞いたレイノは頷き答える。
「厄災痕の共鳴ですか。通常の共鳴ならそこまで気にする必要もありませんが、意識を失うほどとは。わかりました、すぐに診にいきましょう」
「本当ですか?! ありがとうございます!」
 思わず素が出てしまい、ユリウスは口を押さえる。だが、レイノはそこまで気にしていないようだった。
「ユリウス様、そんなに窮屈な態度を取らなくても私は構いませんよ」
「え……」
「肩肘を張らなくても、あなたはあなたのままでもいいと私は思いますが」
 レイノは穏やかに言うと、てきぱきと診療道具を鞄にまとめ始める。ユリウスは自分の外での振る舞いをたしなめられたような気もして、少し気恥ずかしくなった。
「ユリウス様、レイノ殿に往診の許可はもらえましたかな。こちらも話は通しておきました」
「オルヴォ、先生も大丈夫だって。早く行こう!」
「な、ユリウス様」
 屋敷と同じ態度に戻っていることにオルヴォが驚く中、準備をととのえたレイノを連れていく。
「レイノ先生、おでかけ?」
「アイリお姉ちゃんのところ?」
 子供たちがぱたぱたと駆け寄って聞く中、レイノはゆっくりと頷いた。
「アイリがちょっと具合を悪くしたみたいだから、診てあげにいくんだ。ちょっとお出かけしてくるから、シスターの言うことを聞いていい子にしているんだよ」
「はーい!」
「お屋敷に行くんでしょ、ごうかなおみやげもってきてね!」
 子供たちが手を振って見送る中馬車に乗り込む。馬車を急がせる中、ユリウスはレイノに聞く。
「アイリ、子供たちと仲良くしてたんですか?」
「遊び相手はマリアがしていたんですけどね、昼寝の時間はいつもアイリが子守歌を歌ってやっていたんです。アイリの歌はよく眠れる、と子供たちから評判でしてね」
「そうなんだ……でも、わかるかも。アイリの歌、とっても綺麗だから」
 いつか聞かされた子守歌を思い出し、ユリウスは胸に手を当てる。またあの歌が聞きたい。そうユリウスは強く願う。
 忙しなく過ぎていく景色と馬車の揺れの中、ただ無事でいてほしいとユリウスは祈った。


「マリア、もう大丈夫なの? あなたも厄災痕の痛みがあるでしょう?」
「これくらい平気平気。それより、水の替えが必要ね。持ってきてくれるかな」
 クララに心配されながらも、先に回復したマリアは桶の水を替えてもらうようお願いする。自分はアイリの様子を見ているから、と促せばクララは心配しつつも桶の水を替えに行った。
「アイリ、今ユリウス様がレイノ先生連れてきてくれるから。それまでもう少し頑張って」
 タオルで額の汗を拭ってやりながら、マリアは自身の背中にある厄災痕の痛みに耐える。大分痛みは引いたものの、疼痛がじくじくと這うように背中を苛んでいる。
 厄災痕は魔素干渉の痕だが、共鳴すると光るだけでなく、共鳴した相手の感情も魔素に乗って届いてしまう。結果人体が拒否反応を起こし、痛みとしてあらわれるのだ。
 マリアの厄災痕は比較的軽度なこともあり症状は軽く済んでいるが、アイリのように重度の場合は共鳴時の作用が強くなってしまう。
「痛いときは痛い、って言っていいんだよ……、っ」
 心配そうにアイリを看病していたマリアだったが、突然背中を刺されたような痛みを覚える。
「この感じ……!」
 マリアはこの感覚に覚えがあった。
 はっとして、部屋の入り口を見やる。
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