好きと言ってもわからない~精神年齢10歳の次期当主に求婚された件~

ことのはじめ

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第27話 レイノの元へ

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「レイノ先生、って誰?」
 ユリウスが聞くとマリアが答える前にオルヴォが口を開く。
「確か、孤児院を発つ時に見送りに来ていた御仁でしたな」
「はい。私たちの孤児院の院長で、町医者の先生です。孤児院には厄災孤児も多いから、厄災痕の処置も慣れてて」
「じゃあ、そのレイノ先生を連れてくれば、アイリに手当てできるの?」
 マリアが頷くと、ユリウスはすぐに部屋を飛び出そうとした。そこをオルヴォに腕を取られて押しとどめられる。
「離してよ! 早く呼びに行かないと!」
「お気持ちはよくわかります。孤児院までどうやっていくおつもりですかな」
「転移の魔法でいけば早いだろっ」
「場所を正確に把握しない転移は危険と教えたはずですぞ。馬車を用意します故、お待ちを」
 ユリウスはすぐにでも飛び出したかったが、オルヴォになだめられてぐっと我慢した。
 アイリのことをクララとマリアに任せ、ユリウスとオルヴォは慌ただしくフィルップラ孤児院へ向かう。
「すぐレイノ先生連れてくるから、待ってて……!」
 祈るようにアイリの手を握った後、ユリウスは馬車に揺られていった。
 道中ずっとユリウスはアイリの手の平の感触を思い出していた。いつも少し冷えていたアイリの手は、消耗しているせいかひどく冷たかった。この手が氷のようになってしまったらどうしよう。そんな不安が消えない。
 馬車を急がせ、孤児院に着く頃にはすっかり日も高くなる頃だった。孤児院の庭では子供たちが何人も集まって遊んでいる。馬車が止まった途端に飛び出たユリウスは、当然のことながら庭で遊んでいた子供たちに驚かれる。
「わっ! だれか来た!」
「立派なかっこ! きぞくさま?」
「お兄ちゃんだれ? おきゃくさま?」
 口々に言いながら子供たちが珍しそうに集まってくる。いつもなら貴族然とした態度を取るユリウスだが、そんなことなど忘れて素の態度で子供たちに答える。
「俺はアイリの婚約者! レイノ先生を探しに来たんだ」
「こんやくしゃ! 知ってる、アイリお姉ちゃんにプロポーズした人でしょ!」
 そう言われるとユリウスもくすぐったくなったが、今はそれどころではない。
「アイリが大変なんだ。レイノ先生、どこにいるか知ってる?」
「院長先生? 今はお昼休みだから、お部屋にいるはずだよ」
 年長らしい子供が孤児院の一角を指してユリウスに教える。ユリウスはそこで外面を繕っていなかったことにはっとして恭しくお辞儀をした。
「ご教授、感謝する。失礼」
 そのまま後を追って駆けてきたオルヴォを連れてレイノのいる部屋まで向かう。「きぞくさまってよくわかんない」
「さっきは俺たちみたいな感じだったのに、突然大人になっちゃったみたい」
 後ろで子供たちがあまりの態度の変わりようにぽかんとして色々言い合うが、気にしている暇はなかった。
 医務室とプレートのかけられた部屋に辿りつくと、オルヴォがノックする。
「誰かな。入りなさい」
 穏やかな男性の声がして、ユリウスに目配せしてオルヴォがドアを開ける。
「……おや」
 目を瞬かせるレイノにユリウスは簡略ながら礼をした。
「急な来訪ご容赦願いたい。アイリ・フィルップラの婚約者、ユリウス・ルナサングィネアと申します」
「あなたは……急に何のご用でしょうか」
 レイノが不思議そうに見やれば、後ろに控えていたオルヴォが来訪の旨も告げずに孤児院に入ったことに気付く。
「失礼。私はユリウス様のお付きをしておりますオルヴォと申します。シスターに来訪の旨を伝えて参りますので、ユリウス様よりお話をば」
「オルヴォ。そちらは任せた」
 オルヴォは一礼して部屋を辞する。
「それで、ルナサングィネアの次期当主がどんなご用件でしょうか」
 ユリウスはしっかりと頷いて話し出した。
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