7人目の禁書使い

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第1部 1章

3. 涙川雫

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 午後の授業も終わり、それぞれの生徒が教室を出て行く。翔が帰る用意をしていたところ、優弥が話しかけてきた。

「翔ー、帰りどっか寄ってかねー? 」

「あー、わるい。ちょっと図書館寄ってく」

「お前もよくやるなー。入試では成績トップだってのに。ほんと偉いよな」

「まー結局、魔導書選別がほとんどだったけどな。やっぱりたくさん勉強したほうが、定期テストで良い点とって、シルバーに近づけると思うし」

「すげえなー。おれなんか、遊んでばっかだぜ? 」

「ほんと、少しはお前も勉強しろよな」

 苦笑いしながら翔は優弥に言う。

「やる気が出ないんすよねー、これが」

 優弥はだるそうにこたえる。

「いつになったら出るんだか。んじゃ、おれもー行くわ」

「おうっ。勉強頑張れよ」

「優弥もなっ」

 うへー、という親友の顔を尻目に、翔は教室を後にした。学校から図書館まで、徒歩10分くらいである。

「よし、今日も頑張りますか! 」

そう自分に言い聞かせた翔は、図書館へと歩き出した。

***

 図書館で1時間ほど勉強した後、翔はスーパーで夕飯の買い出しをしていた。買い物を終え、西の空をみると、太陽はすでに沈み始めていた。燃えるような赤が、空一面に広がっている。今日の夕飯どーすっかなー、などと考えながら歩いていると、いつの間にか目的の場所へ着いていた。

 そこは、古い教会だった。壁のあちこちにツタなどの草木が絡まり、緑色のカーテンを作り出している。窓ガラスは割れ、すっかり廃墟と化した姿からも、昔の綺麗だったイメージが思い浮かぶ。翔が教会のドアを開けると、重々しい音が響いた。その音とほぼ同時に、「ニャー」と言う鳴き声があちこちから近づいてきた。

「おーよしよし、お前ら元気にしてたかー? 」

などと言いながら、寄ってきた子猫たちを撫でてやる。翔はさっきスーパーで買ってきた、干し魚を子猫たちにあげる。すると、うれしそうに干し魚にかぶりつき始めた。

( こいつらの引き取り先、早く見つけてやんないとな ) 

と思っていると、ふと、1匹の猫が食べるのをやめ、祭壇の方へかけて行った。まるで来いとでも言ってるかのように、「ニャー、ニャー」と鳴きはじめた。なんだかやけに胸騒ぎがする。

「どーしたー? そっちになんかあんのかー? 」

 と言いながら、その猫のもとへ近づく。するとその猫の視線の先 ーー祭壇の裏に、1人の少女がもたれかかっていた。 

 その少女を見て、一瞬翔はドキっとした。その少女が、あまりにも綺麗で、かわいかったからである。

 海のようなブルーライトのロングストレートはとてもしなやかで、まるで人形のような顔立ち。整った輪郭。もし、少女が人形だったとしても、翔は決して疑わなかっただろう。それほどまでに、少女は整った顔を持っていた。

 また、よく見ると少女の腕の中には、魔導書らしきものが2つあった。どちらも見たことのない魔導書だ。

 どうやら、気を失っているらしい。翔は少女の肩を掴み、少し揺すってみる。

「おい、大丈夫かっ? 」

 翔の声が聞こえたのか、少女の眉がピクッと動いたかと思うと、ゆっくりとその瞼を上げていった。

ゆっくりと開かれた目は、髪よりももっと深い蒼。その瞳を見た瞬間、翔は深い海に吸い込まれるような感覚に陥った。慌てて目をこすると、少女が不思議にこちらをみている。何回見ても、吸い込まれそうな瞳だった。

「あ、気付いた?」

 翔は少女に声をかける。しかし、少女はこちらの問いかけには答えず、違う質問をしてきた。

「あなたは……しょう……? 」

 予想もしなかった質問がきて、翔はしばしの間呆気にとられていた。だが、すぐに少女に聞き返す。

「な、なんでおれの名前を……?」

 すると、少女はにっこりと笑いこう答えた。



「 ーーやっと、会えたね」



 





 

 









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