異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

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第一部 転生編

第3話 生まれ変わった????

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ある日。目を開けると、知らない天井が見えた。周囲を見渡しても見覚えがあるものは何一つない。

『ここはどこだろう?』

ベッドに寝かされているが、どうもサイズ感がおかしい。ベビーベッドのようである。自分の手を見てみると、それは紅葉のように可愛らしい赤ん坊の手であった。

しかし、肉体的には赤子であるが、その中身は、地球の日本で生きていた会社員サラリーマン、田中ススムのそれであり、三十歳まで生きていた日本での記憶がはっきりとあったのだ。

状況が分からず戸惑う奏。この時点ではまだ、この世界で自分がクレイと名付けられた事も知らなかった。

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奏は大学を卒業後、小さな会社でプログラマーとして働いていた。

大手企業の下請けをしている零細企業であったが、就職活動で狙っていた大手企業にはすべて落ちてしまい、学生時代からアルバイトしていた会社に拾ってもらうしかなかったのだ。

だが、仕事は過酷であった。元請けに無茶なスケジュールを押し付けられ、今後仕事を出さないぞ? と脅されれば断れるわけもなく、年中デスマーチ状態だったのだ。

毎日深夜まで働き続け、休みは半年に一日あればマシなほう。仕事場でパソコンに向かいながら気を失うように眠り、また起きてそのまま仕事を続けるなんて事もざら・・であった。

そんな生活であっという間に月日が流れ、奏が三十歳になった頃、同僚の知り合いの大学生が、朝、冷たくなっていたという話も聞いた。心臓発作だったそうだ。若い人でもそういう例は意外と多いのだそうだ。ましてや過労状態であれば危険性は高いだろう。

ちょうど体調を崩していた奏は、このままでは自分も過労死してしまうかもしれないと真剣に思い始めた。さらに、最近、社長から酷くぞんざいに扱われるようになったと感じていた事もあり、転職エージェントに登録してみたのであった。

転職エージェントの場合、仕事を紹介してもらう前に、まずは面接が必要だとメールが来る。単に求人情報を見るだけのつもりであった奏は面倒だと思い、返事をしなかった。

だが翌日、社長が新しいコピー機を入れたいが場所がないという事で、奏の席を開けるよう要求された。そして奏は、よりによって社内で一番騒音がうるさく座る者がいなかった席に移動を命じられてしまったのだ。社長としては、就職先のない奏を雇ってやったという恩があるから逆らえないだろうという思いがあったようだ。

だが、社内で今一番仕事をしている(押し付けられている)のは奏である。そんな自分に、少しでも環境がよい席を用意してくれるのならともかく、正反対の事をされた事に、奏は一気にやる気をなくしてしまった。社長への恩も、これまで八年間、休むまもなく働いてきた事で十分返したと思った。

そうして面接を受ける決意をした奏だったが、早朝から深夜まで働いていて休みもない状況では、面接に行く時間もない。リモートでの面接で構わないとの事だったが、仕事場で受けるわけにもいかない。結局、面接の予約もなかなか取れず、ズルズルと時間だけが過ぎていった。

そして……

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ある日、奏は、気づいたらベビーベッドの上で、どうやら自身が赤ん坊であることを認識したのである。

体は赤ん坊なのに、はっきりと大人の意識があるのは、前世の記憶があるせいなのであろうか?

赤ん坊の体に大人の意識。何故こんな状態になっているのかは不明である。

自分の奏としての記憶は、転職エージェントに登録したところで終わっていた。それ以降の記憶はまったくない。

幸いな事に、生まれる瞬間から現在に至るまでの間の記憶はない。出産の瞬間に明確な意識があったら、それはそれで辛かったであろう。

奏は最初、かなり混乱した。だが、時間が経つにつれ、徐々に整理はついていった。なにせ、寝ているだけの赤ん坊である、時間はいくらでもあった。

奏は、自身が本当に過労死してしまったのかも知れないと推測した。そして、生まれ変わった。そう考えれば辻褄はあう。

前世で突然死した大学生について教えてくれた同僚は、亡くなった若者は眠っている間に逝けたのだから苦しまなかっただろうと言っていた。奏には死んだ時の記憶が無いが、同じような死に方だったからかもしれない。きっと、職場の机で突っ伏して眠っている間に心臓発作で死んだ。十分ありそうな状況だと奏は妙に納得してしまった。

生まれ変わりについても、奏はすんなりと受け入れられた。もともと、“死後の世界” や “生まれ変わり” というようなものはあるのではないかと奏はずっと思っていたからである。

奏はバリバリの理系であり、極めて合理的な考え方をするタイプであったが、だからこそ、人智を超えたモノに対する理解はあったのだ。

最先端の研究をしている研究者ほど、人智を超えたモノを否定しない。なぜなら、人間にはまだまだ分からない事がたくさん在る事を実感として知っているからである。

研究者というのは、分からない事が多いから研究を続けているのである。さらに言えば、自分の研究分野については詳しいが、異なる分野については素人同然である。

一切の根拠も証拠も科学的検証もなく、自分の専門分野でもない知らない事について、「ある」とか「ない」とか言い切ってしまえるとしたら、それは科学的思考ではなく、ある種の“宗教” である。

真に科学的・論理的思考ができる人間は、知らない事を断定などしないのだ。人間の科学は、未だ全てを解き明かしたわけではないのだから。

もちろん、生まれ変わったというのも、単に奏の推測でしかない。本当に生まれ変わったのかどうかは定かではない。自分にある前世の記憶と意識というのも、実は自分の妄想・勘違いかも知れない。

確実なのは、自身が現在、どうやら生まれたばかりの赤ん坊であると言う事。

さらに確実な情報を増やすべく、奏は情報収集を始めた。


  * * * *


自分の居る場所が日本でない事はすぐに分かった。世話をしてくれる母やお手伝いメイドの面差しはみな彫りが深く、髪は金やら赤やら青やら派手なカラーリングの者ばかりであったからである。

言葉も通じない。何を言っているのかまったく分からない。日本語でないのは間違いないが、ラテン語系統の言語でもないように感じる。

幸いにも? 赤ん坊なので、言葉が話せない事は問題はなかった。この世界の言葉は徐々に覚えていくしかないだろう。

次に奏が気になったのは年号であった。

もし、自身が死んで生まれ変わったのだとしたら、当然自分が死んだ時よりも未来であるはずと奏は考えた。一体どれくらい経ったのだろうか? 死んだ直後? それとも何十年、あるいは何百年も後? もしかしたら自分の時代よりはるかに科学技術が発展したSFな別世界になっているかもしれない。

壁に手書きのカレンダーらしきものはあるが、字が読めないので何が書いてあるのか分からない。

アラビア数字が使われていない事は分かった。

見える範囲には、地球で見た事がある文字は何も存在していなかった……



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