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第一部 転生編
第71話 ダンジョンの深層は、Aランク冒険者が数秒しか生きていられない死の世界であった
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同じ魔法陣を選んだダードとトニーも一緒であるが。ツイていない三人組であった。
ダードが “階層計” という魔道具を持っていた。現在の階層が何階層目なのかを表示してくれる古代遺物なのだが、その表示はダードにもにわかに信じられないものであった。だが、何度見直しても結果は同じ。表示されていた数値は、199階層であったのだ…。
ダードが、199階層というのはおそらくAランクの冒険者が何秒も生きられないようなレベルの魔物が出る階層だと説明してくれた。
そして、それは事実であると、三人は身をもって知る事になる。
魔物が現れたのである。
現れたソレは、姿形はアラクネと呼ばれる魔物に似ていた。蜘蛛の下半身に人間の上半身が載っている魔物である。
だが、形状は似ているが、材質が違った。その体表は金属質な光沢を帯びていたのだ。頭部には、その魔物の目なのか、カメラのようなレンズがあり、内部が薄っすらと光っていた。そのメカニックな印象に、クレイはロボットみたいだなと思った。やはり、このダンジョンには無機物系の魔物が中心のようである。
だが、一階層目に居たゴーレムとは次元があまりに違った。その魔物は、ダードの言った通り、Aランクの冒険者を秒殺する強さだったのだ。
一階層目のゴーレムは動きが緩慢であったが、この機械アラクネは、Aランクの冒険者が身体強化をフルに掛けた状態よりも遥かに速かったのである。
ダードが『自分が時間を稼ぐからお前たちは逃げろ』といい出した。前衛職は貧乏くじだとあれだけ文句を言っていたのに、最期まで前衛職の仕事をまっとうしようとしたのだ。ダードは漢だった。
だが、そんなダードも、マシンアラクネの発したレーザーで1秒で細切れにされてしまったのだった。
だが、ダードが稼いでくれたその1秒で、クレイは魔導砲を取出して構える時間を得られた。弾丸は、一階層目のボス戦直後だったので、オリハルコンの徹甲弾が装填済みである。残り5発しかなかったオリハルコンの徹甲弾を、クレイは惜しげもなく全弾マシンアラクネに向けて発射する。
弾丸は全弾魔物の胴体に命中。だが……
魔物の体に傷一つ付けることはできていなかった。
ふと見ると、トニーは魔物に攻撃を加えていたクレイを置いて、一人で遁走していた。そして、少し進んだ先に横穴を発見したのであった。穴は小さいので、身体の大きな金属アラクネは入ってこられないだろう。思わず飛び込もうとしたトニーであったが……
…トニーの斥候の技術が、その横道の入口に転移魔法陣の罠が仕掛けてあるのを発見し、踏みとどまり、逡巡した。
そこにクレイが追いついてくる。どうやら魔導砲の砲撃は魔物を破壊する事はできなかったが、クレイが逃げる時間を稼ぐ程度の足止め効果はあったらしい。(もちろんクレイも身体強化の魔道具を発動しているので高速で走ってきたので、時間を稼げたと言っても一瞬の事でしかないのだが。)
クレイ 「トニー! どうした?!」
クレイを振り返るトニー。見ればクレイの背後から魔物が迫ってきていた。先程ダードを細切れにしたレーザーを撃たれたらトニーとクレイも瞬殺されて終わりだろう。そもそも、レーザーがなくともまともに戦って勝てる相手とは思えなかったが。
もう怪物は余裕なのか、ゆっくりじわじわと歩み寄ってきていた。そして、魔物の目が光る。それは先程、ダードを細切れにした時と同じ兆候であった。レーザーが来る!
思わずトニーは、クレイを怪物のほうへと蹴り飛ばし、自分は転移魔法陣の罠に飛び込んだ。そして、トニーは消えていった。
消えたトニーがどこに飛ばされたのかは分からない。この階層よりもっと深い階層に飛ばされるだけかも知れない。だが、このままでは怪物に殺されるのは同じである。極小の可能性に賭け、トニーは転移罠に飛び込んだのであった。しかも、クレイを囮にして、自分だけ…。
魔物の方に突き飛ばされたクレイは、魔物に殴り飛ばされていた。レーザーの発射準備をしていたマシンアラクネだったが、急に間合いを詰められ、発射できなかったようだ。
とっさに身体強化の魔道具を∑モードからΩモードに切り替えて対処しようとしたクレイであったが間に合わず……。クレイは稲妻のような速さで振られたマシンアラクネの腕に弾き飛ばされ、空中を飛んでいくことになってしまった。
ただ偶然か奇跡か、クレイが飛ばされた先は、トニーが先程飛び込んで消えた横穴であったのだ。
だが、入口にあったはずの転移罠は発動せず、クレイは穴の中に転がり込む事になった。転移罠は実は、一度発動すると次にまた使えるようになるまで一瞬だがクールタイムが必要なのだ。その時間はごく僅かなものなのだが、クレイが飛び込んだのはトニーが使用した直後で、タイミングがドンピシャだったのである。
ただ、殴られた衝撃は強烈で、クレイはかなりのダメージを受けており、穴の中に倒れたままクレイは動けない。
しかし、マシンアラクネは穴が小さすぎて入って来られない。
また、穴はそれほど深くはなかったのだが、転移罠があることを理解しているのか、怪物は特に腕などを突っ込んでくる気配もないようだ。
一瞬、助かったのかと思うクレイ。
だが、マシンアラクネの頭部にある“目”の奥が強く光った。
レーザー攻撃の前兆である。
それを見たクレイは痛む身体を鞭打って、必死で穴の奥へと這っていった。
ダードが “階層計” という魔道具を持っていた。現在の階層が何階層目なのかを表示してくれる古代遺物なのだが、その表示はダードにもにわかに信じられないものであった。だが、何度見直しても結果は同じ。表示されていた数値は、199階層であったのだ…。
ダードが、199階層というのはおそらくAランクの冒険者が何秒も生きられないようなレベルの魔物が出る階層だと説明してくれた。
そして、それは事実であると、三人は身をもって知る事になる。
魔物が現れたのである。
現れたソレは、姿形はアラクネと呼ばれる魔物に似ていた。蜘蛛の下半身に人間の上半身が載っている魔物である。
だが、形状は似ているが、材質が違った。その体表は金属質な光沢を帯びていたのだ。頭部には、その魔物の目なのか、カメラのようなレンズがあり、内部が薄っすらと光っていた。そのメカニックな印象に、クレイはロボットみたいだなと思った。やはり、このダンジョンには無機物系の魔物が中心のようである。
だが、一階層目に居たゴーレムとは次元があまりに違った。その魔物は、ダードの言った通り、Aランクの冒険者を秒殺する強さだったのだ。
一階層目のゴーレムは動きが緩慢であったが、この機械アラクネは、Aランクの冒険者が身体強化をフルに掛けた状態よりも遥かに速かったのである。
ダードが『自分が時間を稼ぐからお前たちは逃げろ』といい出した。前衛職は貧乏くじだとあれだけ文句を言っていたのに、最期まで前衛職の仕事をまっとうしようとしたのだ。ダードは漢だった。
だが、そんなダードも、マシンアラクネの発したレーザーで1秒で細切れにされてしまったのだった。
だが、ダードが稼いでくれたその1秒で、クレイは魔導砲を取出して構える時間を得られた。弾丸は、一階層目のボス戦直後だったので、オリハルコンの徹甲弾が装填済みである。残り5発しかなかったオリハルコンの徹甲弾を、クレイは惜しげもなく全弾マシンアラクネに向けて発射する。
弾丸は全弾魔物の胴体に命中。だが……
魔物の体に傷一つ付けることはできていなかった。
ふと見ると、トニーは魔物に攻撃を加えていたクレイを置いて、一人で遁走していた。そして、少し進んだ先に横穴を発見したのであった。穴は小さいので、身体の大きな金属アラクネは入ってこられないだろう。思わず飛び込もうとしたトニーであったが……
…トニーの斥候の技術が、その横道の入口に転移魔法陣の罠が仕掛けてあるのを発見し、踏みとどまり、逡巡した。
そこにクレイが追いついてくる。どうやら魔導砲の砲撃は魔物を破壊する事はできなかったが、クレイが逃げる時間を稼ぐ程度の足止め効果はあったらしい。(もちろんクレイも身体強化の魔道具を発動しているので高速で走ってきたので、時間を稼げたと言っても一瞬の事でしかないのだが。)
クレイ 「トニー! どうした?!」
クレイを振り返るトニー。見ればクレイの背後から魔物が迫ってきていた。先程ダードを細切れにしたレーザーを撃たれたらトニーとクレイも瞬殺されて終わりだろう。そもそも、レーザーがなくともまともに戦って勝てる相手とは思えなかったが。
もう怪物は余裕なのか、ゆっくりじわじわと歩み寄ってきていた。そして、魔物の目が光る。それは先程、ダードを細切れにした時と同じ兆候であった。レーザーが来る!
思わずトニーは、クレイを怪物のほうへと蹴り飛ばし、自分は転移魔法陣の罠に飛び込んだ。そして、トニーは消えていった。
消えたトニーがどこに飛ばされたのかは分からない。この階層よりもっと深い階層に飛ばされるだけかも知れない。だが、このままでは怪物に殺されるのは同じである。極小の可能性に賭け、トニーは転移罠に飛び込んだのであった。しかも、クレイを囮にして、自分だけ…。
魔物の方に突き飛ばされたクレイは、魔物に殴り飛ばされていた。レーザーの発射準備をしていたマシンアラクネだったが、急に間合いを詰められ、発射できなかったようだ。
とっさに身体強化の魔道具を∑モードからΩモードに切り替えて対処しようとしたクレイであったが間に合わず……。クレイは稲妻のような速さで振られたマシンアラクネの腕に弾き飛ばされ、空中を飛んでいくことになってしまった。
ただ偶然か奇跡か、クレイが飛ばされた先は、トニーが先程飛び込んで消えた横穴であったのだ。
だが、入口にあったはずの転移罠は発動せず、クレイは穴の中に転がり込む事になった。転移罠は実は、一度発動すると次にまた使えるようになるまで一瞬だがクールタイムが必要なのだ。その時間はごく僅かなものなのだが、クレイが飛び込んだのはトニーが使用した直後で、タイミングがドンピシャだったのである。
ただ、殴られた衝撃は強烈で、クレイはかなりのダメージを受けており、穴の中に倒れたままクレイは動けない。
しかし、マシンアラクネは穴が小さすぎて入って来られない。
また、穴はそれほど深くはなかったのだが、転移罠があることを理解しているのか、怪物は特に腕などを突っ込んでくる気配もないようだ。
一瞬、助かったのかと思うクレイ。
だが、マシンアラクネの頭部にある“目”の奥が強く光った。
レーザー攻撃の前兆である。
それを見たクレイは痛む身体を鞭打って、必死で穴の奥へと這っていった。
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