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第二部 ダンジョン攻略編
第73話 呼び覚まされる記憶
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『俺がダンジョンの深層から生還して、10年以上が経ったんだなぁ……』
迷宮都市リジオン。
そのリジオンの冒険者ギルドの二階にあるマスター執務室の窓からはダンジョンの入口が見える。(ダンジョンの入口は町中にあるが、さすがに危険なので二重の塀に囲われている。)
その閉ざされた門を眺めながら男はひとりごちる。
『長いような短いような10年だった。まさか俺がギルドマスターになるとはな…』
男は去年、現役を引退してこの街のギルドマスターに就任したアンソニー・ワムクレ。
アンソニーは、現役時代はトニーという愛称で呼ばれていた。
そう、ダンジョンの深層でSSS級モンスターに襲われ、転移罠に飛び込んだあのトニーである。
トニーはダンジョン199層から生還した。それは、恐ろしく幸運であったと言わざるを得ない。
転移の罠によって飛ばされる先はダンジョンの別の階層であり、行き先は毎回ランダムに変わる。
どこに飛ばされるかは運次第であるが、確率としては深層に飛ばされる事が圧倒的に多い。
だが極稀に、1階層や、場合によってはダンジョンの外に飛ばされる事もある。それは、天文学的な確率であり、数百年に一度起きるかという奇跡と言えるのだが…
だが、あの日、トニーに奇跡は起きたのだ。偶然か、神のイタズラか、トニーが飛ばされた先はダンジョンの“外”であったのだ。
トニーはダンジョンの深層から無傷で生還した奇跡の男となったのである。
感慨深く現役時代を振り返るトニー。
同じ階層に飛ばされたダードとクレイは帰らぬ人となったが。
……二人を犠牲にしてトニーは生き延びた?
トニー 「いや、振り返るな…」
首を振るトニー。
死んだのはダードとクレイだけではない。ダンジョンに挑戦した多くの冒険者が人生を全うできずに倒れていくのだ。
トニーもダンジョンの中で、死神が次々周りの冒険者を連れ去っていく中、必死で、死にものぐるいで、泥を舐めながらギリギリで生き延びてきたのだ。そんな経験は、あの日の前も、後も、何度も繰り返される冒険者の現実なのだ。
いざとなったら、どんな手を使っても、他の冒険者を見捨ててでも、何がなんでも生き残るのがトニーの冒険者としての信条である。ここまで生き延びてギルドマスターにまでなれたのは、その信条のお陰だとトニーは思っていた。
トニーにも罪悪感がないわけではない。が…
…結局、生き残った者が正義なのだ。
命を落とした冒険者達には素直に感謝し、割り切ってそれ以上気にしない事にしているトニーであった。
だが、気にしていないはずのトニーが、なぜ急に過去を振り返ったのか。それは、妙なニュースが流れてきたからである。
なんでも、ヴァレットの街の近くにあるダンジョン『ペイトティクバ』が完全攻略されたというのだ。
ヴァレット…。
その街の名は忘れもしない…。
滞在していたのは短い期間だったが、トニーが所属していたパーティ『黄金の風』はその街で解散し、その街で知り合ったクレイと一緒にこのダンジョン都市リジオンにやってきた。そして、ダンジョン深層へ飛ばされるハメになったのだ…。
トニー 「クレイか……妙な武器を使う冒険者だったな」
眼の前で死んだダードとは違い、クレイが殺される瞬間をトニーは見ていない。だが、Aランク冒険者だったベテランのダードが瞬殺された怪物が居る階層である。クレイが生きているはずはないだろう。
帰ってこない者については忘れる事にしているトニーだった。だが、クレイについて妙に記憶に残っている。
忘れられないのは、クレイを見捨てた事について、心のどこかに罪悪感が残っていたからかもしれない。
迷宮都市リジオン。
そのリジオンの冒険者ギルドの二階にあるマスター執務室の窓からはダンジョンの入口が見える。(ダンジョンの入口は町中にあるが、さすがに危険なので二重の塀に囲われている。)
その閉ざされた門を眺めながら男はひとりごちる。
『長いような短いような10年だった。まさか俺がギルドマスターになるとはな…』
男は去年、現役を引退してこの街のギルドマスターに就任したアンソニー・ワムクレ。
アンソニーは、現役時代はトニーという愛称で呼ばれていた。
そう、ダンジョンの深層でSSS級モンスターに襲われ、転移罠に飛び込んだあのトニーである。
トニーはダンジョン199層から生還した。それは、恐ろしく幸運であったと言わざるを得ない。
転移の罠によって飛ばされる先はダンジョンの別の階層であり、行き先は毎回ランダムに変わる。
どこに飛ばされるかは運次第であるが、確率としては深層に飛ばされる事が圧倒的に多い。
だが極稀に、1階層や、場合によってはダンジョンの外に飛ばされる事もある。それは、天文学的な確率であり、数百年に一度起きるかという奇跡と言えるのだが…
だが、あの日、トニーに奇跡は起きたのだ。偶然か、神のイタズラか、トニーが飛ばされた先はダンジョンの“外”であったのだ。
トニーはダンジョンの深層から無傷で生還した奇跡の男となったのである。
感慨深く現役時代を振り返るトニー。
同じ階層に飛ばされたダードとクレイは帰らぬ人となったが。
……二人を犠牲にしてトニーは生き延びた?
トニー 「いや、振り返るな…」
首を振るトニー。
死んだのはダードとクレイだけではない。ダンジョンに挑戦した多くの冒険者が人生を全うできずに倒れていくのだ。
トニーもダンジョンの中で、死神が次々周りの冒険者を連れ去っていく中、必死で、死にものぐるいで、泥を舐めながらギリギリで生き延びてきたのだ。そんな経験は、あの日の前も、後も、何度も繰り返される冒険者の現実なのだ。
いざとなったら、どんな手を使っても、他の冒険者を見捨ててでも、何がなんでも生き残るのがトニーの冒険者としての信条である。ここまで生き延びてギルドマスターにまでなれたのは、その信条のお陰だとトニーは思っていた。
トニーにも罪悪感がないわけではない。が…
…結局、生き残った者が正義なのだ。
命を落とした冒険者達には素直に感謝し、割り切ってそれ以上気にしない事にしているトニーであった。
だが、気にしていないはずのトニーが、なぜ急に過去を振り返ったのか。それは、妙なニュースが流れてきたからである。
なんでも、ヴァレットの街の近くにあるダンジョン『ペイトティクバ』が完全攻略されたというのだ。
ヴァレット…。
その街の名は忘れもしない…。
滞在していたのは短い期間だったが、トニーが所属していたパーティ『黄金の風』はその街で解散し、その街で知り合ったクレイと一緒にこのダンジョン都市リジオンにやってきた。そして、ダンジョン深層へ飛ばされるハメになったのだ…。
トニー 「クレイか……妙な武器を使う冒険者だったな」
眼の前で死んだダードとは違い、クレイが殺される瞬間をトニーは見ていない。だが、Aランク冒険者だったベテランのダードが瞬殺された怪物が居る階層である。クレイが生きているはずはないだろう。
帰ってこない者については忘れる事にしているトニーだった。だが、クレイについて妙に記憶に残っている。
忘れられないのは、クレイを見捨てた事について、心のどこかに罪悪感が残っていたからかもしれない。
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