78 / 184
第二部 ダンジョン攻略編
第78話 古代の地下施設
しおりを挟む
九年前のあの日、ダンジョン・リジオンの199階層。
洞窟の横穴に逃げ込んだクレイは、しかし魔物の爪で腹部を貫かれており、出血多量のため意識を失ってしまう。
この状態のままでクレイが目覚める可能性はなかった。
助けが来る可能性はないし、治療薬も治癒魔法もない。
だが、死ぬ間際、遠くなる意識の中、クレイは魔法陣の転移先を書き換え、コンパイルを実行していた。―――コンパイル後、自動実行させるように設定して。
スキルによるコンパイルはクレイが眠っていても自動的に実行される。もちろん、コンパイル終了前にクレイが死んでしまえばそれで終わりであるし、そうなる可能性のほうが高いとクレイ自身も思っていたのだが。
そして、そのまま意識を手放したクレイ。
後は死を待つばかりである。それからどれくらい経ったのか、やがてクレイの心臓は停止したのだが…
…その3秒後、コンパイルが終了した。
心臓は停止していたが、かろうじてまだクレイの肉体は生きていた。残り後1秒か、2秒かというタイミングであったが、まだ身体の中には魔力が残っている。それを使って光の魔法陣が発動、クレイの体の下に転移魔法陣が浮かび上がった。
* * * *
『5324年ぶりに、人間の存在を確認』
太古の昔から生き続けていたシステムが、クレイの肉体が転移してきたのを感知した。
『心停止状態を確認。緊急蘇生処置――』
『―生命維持システムに接続、蘇生開始――』
『―蘇生完了―――身体損傷部位の治療開始――』
クレイが転移した先はダンジョンの深層のそまた下にある、ダンジョンを管理している古代の施設であった。
それは、五千年前、人間をバックアップするために古代の超文明によって作られた。
人間が居なくなってもなお、長い時を待ち続けたその施設に、五千年ぶりに人間が訪れたのである。
施設は再び人間に奉仕を開始した。
* * * *
クレイ 「……知らない天井だ……なんてな。一度言ってみたかった」
意識を取り戻したクレイはすぐに状況把握を開始した。
自分がダンジョンの深層の洞窟で死に掛けていたのは憶えている。
死後の世界? いや、どう見ても実体がある、肉体がある。幽霊というわけではなさそうだ。
死後の世界も普通に物質や肉体がある世界であるという可能性もあったが。そもそも、一度転生を経験しているのだ、今回も別の世界に生まれ変わった可能性がないわけではないが……。
だが、現在の自分は赤ん坊ではない、大人の身体である。着ている服も、クレイの着ていたものだ。
つまり、何が起きたのかは分からないが、どうやら自分は助かったのだとクレイは判断した。
次に、自身の身体を確認するクレイ。確か大怪我をしていたはずだ。だが、失くしたはずの手も足も、普通にあった。他に怪我も特にない。助けてくれた誰かが魔法で治療してくれたのかもしれない。
周囲を確認するクレイ。
寝かされているベッドも、部屋も、妙にメカニカルであった。クレイの居た世界とは明らかに違う。どちらかと言えば前世の地球に近かったが、地球でもこんなSFチックな雰囲気ではなかったと思う。強いて言えば、地球の最先端の手術室なら近い雰囲気かもしれない。
『お目覚めですか?』
誰かが入ってきた。
見れば、美しい女性であったが、頭に獣耳があった。
クレイ 「獣人?」
『私は魔導人形のエリーです』
クレイ 「人間ではないのか?」
エリー 「はい、あなたのお世話を担当することになりました。ご質問・ご要望があればおっしゃって下さい。何かお飲みになりますか?」
クレイ 「ああ……いや、その前に、ここはどこだ?」
エリー 「ここはリルディオンの救護室です」
クレイ 「リルディオン…?」
それからそのエリーという女性を質問責めにし、状況を理解したクレイ。
エリーは訊かれた事にはすべて答え、興味があるならと、様々な資料まで見せてくれた。
どうやらここは5千年前にあったハイテク地下施設だったそうだ。遊技場でもあり、訓練施設でもあり、災害時のシェルターとしても機能する地下施設ということらしい。
クレイ 「リルディオンの名がなんとなく残って現在のリジオンになっているのか…?」
どうやら “上” にあるダンジョンは遊技場と訓練施設、そして地下の施設への侵入を阻むトラップとして、このリルディオンによって作り出されているらしい。
洞窟の横穴に逃げ込んだクレイは、しかし魔物の爪で腹部を貫かれており、出血多量のため意識を失ってしまう。
この状態のままでクレイが目覚める可能性はなかった。
助けが来る可能性はないし、治療薬も治癒魔法もない。
だが、死ぬ間際、遠くなる意識の中、クレイは魔法陣の転移先を書き換え、コンパイルを実行していた。―――コンパイル後、自動実行させるように設定して。
スキルによるコンパイルはクレイが眠っていても自動的に実行される。もちろん、コンパイル終了前にクレイが死んでしまえばそれで終わりであるし、そうなる可能性のほうが高いとクレイ自身も思っていたのだが。
そして、そのまま意識を手放したクレイ。
後は死を待つばかりである。それからどれくらい経ったのか、やがてクレイの心臓は停止したのだが…
…その3秒後、コンパイルが終了した。
心臓は停止していたが、かろうじてまだクレイの肉体は生きていた。残り後1秒か、2秒かというタイミングであったが、まだ身体の中には魔力が残っている。それを使って光の魔法陣が発動、クレイの体の下に転移魔法陣が浮かび上がった。
* * * *
『5324年ぶりに、人間の存在を確認』
太古の昔から生き続けていたシステムが、クレイの肉体が転移してきたのを感知した。
『心停止状態を確認。緊急蘇生処置――』
『―生命維持システムに接続、蘇生開始――』
『―蘇生完了―――身体損傷部位の治療開始――』
クレイが転移した先はダンジョンの深層のそまた下にある、ダンジョンを管理している古代の施設であった。
それは、五千年前、人間をバックアップするために古代の超文明によって作られた。
人間が居なくなってもなお、長い時を待ち続けたその施設に、五千年ぶりに人間が訪れたのである。
施設は再び人間に奉仕を開始した。
* * * *
クレイ 「……知らない天井だ……なんてな。一度言ってみたかった」
意識を取り戻したクレイはすぐに状況把握を開始した。
自分がダンジョンの深層の洞窟で死に掛けていたのは憶えている。
死後の世界? いや、どう見ても実体がある、肉体がある。幽霊というわけではなさそうだ。
死後の世界も普通に物質や肉体がある世界であるという可能性もあったが。そもそも、一度転生を経験しているのだ、今回も別の世界に生まれ変わった可能性がないわけではないが……。
だが、現在の自分は赤ん坊ではない、大人の身体である。着ている服も、クレイの着ていたものだ。
つまり、何が起きたのかは分からないが、どうやら自分は助かったのだとクレイは判断した。
次に、自身の身体を確認するクレイ。確か大怪我をしていたはずだ。だが、失くしたはずの手も足も、普通にあった。他に怪我も特にない。助けてくれた誰かが魔法で治療してくれたのかもしれない。
周囲を確認するクレイ。
寝かされているベッドも、部屋も、妙にメカニカルであった。クレイの居た世界とは明らかに違う。どちらかと言えば前世の地球に近かったが、地球でもこんなSFチックな雰囲気ではなかったと思う。強いて言えば、地球の最先端の手術室なら近い雰囲気かもしれない。
『お目覚めですか?』
誰かが入ってきた。
見れば、美しい女性であったが、頭に獣耳があった。
クレイ 「獣人?」
『私は魔導人形のエリーです』
クレイ 「人間ではないのか?」
エリー 「はい、あなたのお世話を担当することになりました。ご質問・ご要望があればおっしゃって下さい。何かお飲みになりますか?」
クレイ 「ああ……いや、その前に、ここはどこだ?」
エリー 「ここはリルディオンの救護室です」
クレイ 「リルディオン…?」
それからそのエリーという女性を質問責めにし、状況を理解したクレイ。
エリーは訊かれた事にはすべて答え、興味があるならと、様々な資料まで見せてくれた。
どうやらここは5千年前にあったハイテク地下施設だったそうだ。遊技場でもあり、訓練施設でもあり、災害時のシェルターとしても機能する地下施設ということらしい。
クレイ 「リルディオンの名がなんとなく残って現在のリジオンになっているのか…?」
どうやら “上” にあるダンジョンは遊技場と訓練施設、そして地下の施設への侵入を阻むトラップとして、このリルディオンによって作り出されているらしい。
12
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる