56 / 85
序章(プロローグ)
第56話 エイケ第二騎士団がやってきたにゃ
しおりを挟む
■ワズロー
俺の名はワズロー。エイケ侯爵家が擁する第二騎士団の団長である。
今、俺は第二騎士団を率いてワッツローヴの街に向かっている。エイケ侯爵から、ワッツローヴの街で暴れているという獣人の討伐を命じられたからだ。
だが、たかが獣人一人の討伐に駆り出されたのは少々過剰な気がしているのだが…。
第二となっているが、実力なら俺達が一番だ。第一(騎士団)は侯爵の護衛や儀礼への参加目的でお上品な奴らだけが選ばれている。いわゆるお飾りの騎士団だからだ。その実力は…、ないとは言わないが俺達には及ばない。
第二騎士団こそは(品性を問わず)実力のある者だけが集められたエイケ侯爵家の最高戦力なのだ。
その中で私が最強なのは言うまでもないが、団員達もみな私の弟子であり、私ほどではないが腕の立つ者ばかりである。そんな我々に、獣人一人の討伐命令とは…
しかも、第二騎士団だけでなく、魔法師団までつけると言う。いつもは命令には黙って従うのだが、さすがに少し過剰戦力では? と俺は思わず侯爵に言ってしまったほどだ。
だが侯爵は俺の発言に怒る事はなく説明してくれた。
なんと、ツォズ達、第三騎士団がその獣人によって壊滅させられたと言うではないか。その前にはワッツローヴ伯爵の騎士団も、その獣人を討伐しようとして返り討ちにあい壊滅してしまったらしい。
なるほど――――第三騎士団は、第二に入れなかった落ちこぼれ騎士の集まりで、エイケ侯爵家の騎士団野中では雑用係みたいなものだったが、とはいえ騎士は騎士。少なくともワッツローヴ伯爵の騎士団には負けない実力はあったはず――――つまり…相手の獣人もそれなりに腕は立つという事だ。
だが、獣人に調子に乗らせると拙い事になる、それは分かる。街の獣人達に希望を与える事になるからな。ここらで全力で力の差を見せつけておく必要があるわけだ。
まぁどうせ、第三騎士団もワッツローヴの騎士団も、獣人一人と侮って油断して負けたのだろう。
侯爵には、相手を侮らず、油断せず全力で倒すよう念を押されたが、態々言われるまでもない。たとえ相手が小物であろうとも、全力で叩き潰してやろうではないか。
・
・
・
ワッツローヴの街が見えてきた。
件の獣人がどこに居るのか分からないが、まずは街に入り、街の獣人達を制圧し、街の治安を取り戻せという事であった。
その後、獣人達を拷問にでもかけてそのカイトとかいう猫獣人の居場所を聞き出す予定である。
だが、街に近づくと、城壁の上に座っている猫獣人の姿が見えた…。
基本的にこの国では獣人は街から出る事は許されていない。城壁の上に登るなども、もちろん禁止されているはずである。
今ワッツローヴの街には騎士団が居ないらしいので、獣人が好き勝手しているという可能性はあるが……先祖返りのまんま見た目は猫だという話なので、奴が件の獣人である可能性が高いだろう。
まさか、我々が来るのを予想して待ち構えていた? だが、猫人もこちらを見てはいるようだが、近づいても特に動きはなかった。
俺は部下の一部を先に街に入らせ、獣人が逃げないよう壁の内側から包囲するよう命じてから、その獣人に声を掛けた。
「おい、そこの! 城壁の上に座っている獣人!」
猫人「…なんにゃ?」
「お前…そこで何をしている?」
猫人「…何も? 風景を眺めていただけにゃ」
「お前が第三騎士団を壊滅させたという獣人か?」
猫人「…第三騎士団? かどうかは知らんけど、攻撃してきた騎士とは戦ったにゃ…」
「貴族を倒し獣人達を開放する英雄というわけか?」
猫人「そんなつもりはないにゃ。攻撃されたから反撃しただけにゃ」
「んん? つまりお前は、攻撃されなければ戦う気はなかったという事か?」
猫人「そうにゃ」
「ほう…。だが、この国では獣人は虐待の対象だ。攻撃されない、という事はないだろうなぁ…」
猫人「そうにゃ。勝手に絡んでくるにゃ。迷惑だにゃ」
「…ふ。面白い。私はエイケ侯爵の騎士、エイケ第二騎士団団長、マイズ・ワズローである。貴様、名前は?」
猫人「カイトにゃ。街を治めに来たんにゃろ? さっさと街に入って仕事をすればいいにゃ。攻撃してこないなら俺は興味ないにゃ」
「…手を出さなければ無駄に争う必要はないと? だが…残念ながら、もう事態はそれでは済まん状況になっているのだよ」
猫人「?」
「実はな、お前が以前殺したシックスという騎士は私の弟子だ」
猫人「…弟子の仇討ちに来たというわけにゃ?」
「ああ、いや、シックスの事はどでもいいんだがな。負けたのは奴が弱かっただけの事。壊滅したというツォズの第三騎士団も同じだ。別に恨む理由もない」
猫人「じゃぁなんで弟子の名前を出したにゃ」
「いや、そう言えば分かりやすいかと思っただけなんだが…。
私は仇討ちに来たわけでも、街を取り戻しに来たわけでもない」
猫人「じゃぁ何しに来たにゃ?」
「エイケ侯爵から、第三騎士団を壊滅させた獣人の討伐を命じられたのだ。つまり、お前を殺しに来たという事だ。そこから降りてこい、そして俺と戦え! シックスやツォズを倒したというその腕、見てやろう!」
猫人「断るにゃ」
「なんだ臆したか?」
猫人「俺は誰かに命令されると反抗したくなるにゃ」
「命令されるのは嫌い、か。ではお願いしたら聞いてくれるか? 私と戦ってくれないか?」
猫人「同じにゃ。お願いも命令も大差ないにゃ」
「ひねくれた猫だな」
猫人「猫なんてそんなもんにゃ」
騎士A「団長、壁の向こう側へ騎士の配置が完了しました」
騎士B「魔法師団に言って撃ち落とさせましょう」
「魔法師団に頼むまでもないさ…」
俺が撃ち落としてやる……!
俺の名はワズロー。エイケ侯爵家が擁する第二騎士団の団長である。
今、俺は第二騎士団を率いてワッツローヴの街に向かっている。エイケ侯爵から、ワッツローヴの街で暴れているという獣人の討伐を命じられたからだ。
だが、たかが獣人一人の討伐に駆り出されたのは少々過剰な気がしているのだが…。
第二となっているが、実力なら俺達が一番だ。第一(騎士団)は侯爵の護衛や儀礼への参加目的でお上品な奴らだけが選ばれている。いわゆるお飾りの騎士団だからだ。その実力は…、ないとは言わないが俺達には及ばない。
第二騎士団こそは(品性を問わず)実力のある者だけが集められたエイケ侯爵家の最高戦力なのだ。
その中で私が最強なのは言うまでもないが、団員達もみな私の弟子であり、私ほどではないが腕の立つ者ばかりである。そんな我々に、獣人一人の討伐命令とは…
しかも、第二騎士団だけでなく、魔法師団までつけると言う。いつもは命令には黙って従うのだが、さすがに少し過剰戦力では? と俺は思わず侯爵に言ってしまったほどだ。
だが侯爵は俺の発言に怒る事はなく説明してくれた。
なんと、ツォズ達、第三騎士団がその獣人によって壊滅させられたと言うではないか。その前にはワッツローヴ伯爵の騎士団も、その獣人を討伐しようとして返り討ちにあい壊滅してしまったらしい。
なるほど――――第三騎士団は、第二に入れなかった落ちこぼれ騎士の集まりで、エイケ侯爵家の騎士団野中では雑用係みたいなものだったが、とはいえ騎士は騎士。少なくともワッツローヴ伯爵の騎士団には負けない実力はあったはず――――つまり…相手の獣人もそれなりに腕は立つという事だ。
だが、獣人に調子に乗らせると拙い事になる、それは分かる。街の獣人達に希望を与える事になるからな。ここらで全力で力の差を見せつけておく必要があるわけだ。
まぁどうせ、第三騎士団もワッツローヴの騎士団も、獣人一人と侮って油断して負けたのだろう。
侯爵には、相手を侮らず、油断せず全力で倒すよう念を押されたが、態々言われるまでもない。たとえ相手が小物であろうとも、全力で叩き潰してやろうではないか。
・
・
・
ワッツローヴの街が見えてきた。
件の獣人がどこに居るのか分からないが、まずは街に入り、街の獣人達を制圧し、街の治安を取り戻せという事であった。
その後、獣人達を拷問にでもかけてそのカイトとかいう猫獣人の居場所を聞き出す予定である。
だが、街に近づくと、城壁の上に座っている猫獣人の姿が見えた…。
基本的にこの国では獣人は街から出る事は許されていない。城壁の上に登るなども、もちろん禁止されているはずである。
今ワッツローヴの街には騎士団が居ないらしいので、獣人が好き勝手しているという可能性はあるが……先祖返りのまんま見た目は猫だという話なので、奴が件の獣人である可能性が高いだろう。
まさか、我々が来るのを予想して待ち構えていた? だが、猫人もこちらを見てはいるようだが、近づいても特に動きはなかった。
俺は部下の一部を先に街に入らせ、獣人が逃げないよう壁の内側から包囲するよう命じてから、その獣人に声を掛けた。
「おい、そこの! 城壁の上に座っている獣人!」
猫人「…なんにゃ?」
「お前…そこで何をしている?」
猫人「…何も? 風景を眺めていただけにゃ」
「お前が第三騎士団を壊滅させたという獣人か?」
猫人「…第三騎士団? かどうかは知らんけど、攻撃してきた騎士とは戦ったにゃ…」
「貴族を倒し獣人達を開放する英雄というわけか?」
猫人「そんなつもりはないにゃ。攻撃されたから反撃しただけにゃ」
「んん? つまりお前は、攻撃されなければ戦う気はなかったという事か?」
猫人「そうにゃ」
「ほう…。だが、この国では獣人は虐待の対象だ。攻撃されない、という事はないだろうなぁ…」
猫人「そうにゃ。勝手に絡んでくるにゃ。迷惑だにゃ」
「…ふ。面白い。私はエイケ侯爵の騎士、エイケ第二騎士団団長、マイズ・ワズローである。貴様、名前は?」
猫人「カイトにゃ。街を治めに来たんにゃろ? さっさと街に入って仕事をすればいいにゃ。攻撃してこないなら俺は興味ないにゃ」
「…手を出さなければ無駄に争う必要はないと? だが…残念ながら、もう事態はそれでは済まん状況になっているのだよ」
猫人「?」
「実はな、お前が以前殺したシックスという騎士は私の弟子だ」
猫人「…弟子の仇討ちに来たというわけにゃ?」
「ああ、いや、シックスの事はどでもいいんだがな。負けたのは奴が弱かっただけの事。壊滅したというツォズの第三騎士団も同じだ。別に恨む理由もない」
猫人「じゃぁなんで弟子の名前を出したにゃ」
「いや、そう言えば分かりやすいかと思っただけなんだが…。
私は仇討ちに来たわけでも、街を取り戻しに来たわけでもない」
猫人「じゃぁ何しに来たにゃ?」
「エイケ侯爵から、第三騎士団を壊滅させた獣人の討伐を命じられたのだ。つまり、お前を殺しに来たという事だ。そこから降りてこい、そして俺と戦え! シックスやツォズを倒したというその腕、見てやろう!」
猫人「断るにゃ」
「なんだ臆したか?」
猫人「俺は誰かに命令されると反抗したくなるにゃ」
「命令されるのは嫌い、か。ではお願いしたら聞いてくれるか? 私と戦ってくれないか?」
猫人「同じにゃ。お願いも命令も大差ないにゃ」
「ひねくれた猫だな」
猫人「猫なんてそんなもんにゃ」
騎士A「団長、壁の向こう側へ騎士の配置が完了しました」
騎士B「魔法師団に言って撃ち落とさせましょう」
「魔法師団に頼むまでもないさ…」
俺が撃ち落としてやる……!
387
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる