1 / 4
第一話【夢】
しおりを挟む
仄暗い、山の中。そこに、彼女は居た。
部屋の中心で、体育座りのように丸まりながら、ゆらゆらと揺れている。
その顔は、ふんわりと火照り、花のような笑顔を浮かべている。時折、ふふ、とこぼれる小さな笑い声は、まるで鈴のように可憐だ。
しばらくそうして誰かを待っていたようだが、ふと顔を上げた。うん、とひとつ頷いて薄着のまま、裸足でそのまま外へと走って行ってしまう。詳しい事はわからないが、寒いし痛いし心細いだろうに、先ほどの笑みを絶やさず、ただひたすら駆けて行く。その跳ねる様に走る姿は、鹿さながらだ。
その彼女の足が、急にびくりと止まる。その大きな瞳が、お目当てのものを捉えたようだ。その先にある何かを凝視して、タイミングを見計らい、一気に飛び出す。
彼女が待っていたのは、袈裟に身を包んだ僧侶らしい青年だ。彼女が飛び出てくるなり、ひどく驚いたような表情をしている。そりゃあそうだ。自分だって森の中から突然少女が飛び出してきたら、変な声を出してしまうに違いない。
けれど、不思議なことに、僧の表情からは恐怖の感情も読み取れる。あの、可憐な少女に恐怖を抱いているのだろうか?
愛しい、あなた。かわいらしい、あなた。大好きな、あなた。
わたし、あなたに言われたから。お家で大人しくあなたのこと、待っていたの。わたし、いい子にしてたわ。あなたの言いつけをちゃんと守っていたわ。
なのに、どうして来てくれなかったの?迷子になってしまったの?
そうね、ここら一帯は少し入り組んでいるもの。慣れていても、仕方ないかもしれないわ。だからね!迎えに来たの。ね、もう安心して、いとしいひと。
『ちっ、が、う...!僕は、**じゃあ、ない...!』
どうしてそんな嘘をつくの?
どうして?真面目なあなたが。嘘が大嫌いだ、とこぼしていたあなたが。それも、よりによってわたしに、見え透いた嘘をつくの? どうして、どうしてそんなひどいことを言うの?
ざわざわと木が騒がしく音を立てる暗闇の中、二つの金色の双眸が彼を、いや違う。こちらを、俺を、痛々しいほど真っ直ぐに見据えた。
部屋の中心で、体育座りのように丸まりながら、ゆらゆらと揺れている。
その顔は、ふんわりと火照り、花のような笑顔を浮かべている。時折、ふふ、とこぼれる小さな笑い声は、まるで鈴のように可憐だ。
しばらくそうして誰かを待っていたようだが、ふと顔を上げた。うん、とひとつ頷いて薄着のまま、裸足でそのまま外へと走って行ってしまう。詳しい事はわからないが、寒いし痛いし心細いだろうに、先ほどの笑みを絶やさず、ただひたすら駆けて行く。その跳ねる様に走る姿は、鹿さながらだ。
その彼女の足が、急にびくりと止まる。その大きな瞳が、お目当てのものを捉えたようだ。その先にある何かを凝視して、タイミングを見計らい、一気に飛び出す。
彼女が待っていたのは、袈裟に身を包んだ僧侶らしい青年だ。彼女が飛び出てくるなり、ひどく驚いたような表情をしている。そりゃあそうだ。自分だって森の中から突然少女が飛び出してきたら、変な声を出してしまうに違いない。
けれど、不思議なことに、僧の表情からは恐怖の感情も読み取れる。あの、可憐な少女に恐怖を抱いているのだろうか?
愛しい、あなた。かわいらしい、あなた。大好きな、あなた。
わたし、あなたに言われたから。お家で大人しくあなたのこと、待っていたの。わたし、いい子にしてたわ。あなたの言いつけをちゃんと守っていたわ。
なのに、どうして来てくれなかったの?迷子になってしまったの?
そうね、ここら一帯は少し入り組んでいるもの。慣れていても、仕方ないかもしれないわ。だからね!迎えに来たの。ね、もう安心して、いとしいひと。
『ちっ、が、う...!僕は、**じゃあ、ない...!』
どうしてそんな嘘をつくの?
どうして?真面目なあなたが。嘘が大嫌いだ、とこぼしていたあなたが。それも、よりによってわたしに、見え透いた嘘をつくの? どうして、どうしてそんなひどいことを言うの?
ざわざわと木が騒がしく音を立てる暗闇の中、二つの金色の双眸が彼を、いや違う。こちらを、俺を、痛々しいほど真っ直ぐに見据えた。
0
あなたにおすすめの小説
【新作】1分で読める! SFショートショート
Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。
1分で読める!読切超短編小説
新作短編小説は全てこちらに投稿。
⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
続・冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
の続編です。
アンドリューもそこそこ頑張るけど、続編で苦労するのはその息子かな?
辺境から結局建国することになったので、事務処理ハンパねぇー‼ってのを息子に押しつける俺です。楽隠居を決め込むつもりだったのになぁ。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる