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宵闇の街
ちえさんの想いびと
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ちえさんには想いびとがいた。その人には奥さんと子供がいるという当時としては珍しい不実な恋であった。ちえさんの想いびととちえさんが知り合ったのは、岐阜に古くからある小さなロイヤルという映画館だった。
その映画館は流行りものは流さず、いつも定番の映画の再映ものでお客さんも少なめだが本当に映画が好きなひとが多かった。そのためか顔なじみになるひともいたため、ちえさんとその想いびとも顔なじみだった。ちえさんは、仕事が休みのときは大抵映画館ロイヤルで過ごしていた。想いびとも同じであった。ちえさんが好きな映画というのは、『晩秋』という日本の古い映画だったが想いびとは、『ティファニーで朝食を』という洋画だった。
ちえさんは、どちらかといえば小柄な身体つきをしており、決して男の人が好む体型ではなかったがそれでも、想いびとにしてみれば満足していたみたいだったのでちえさんの魅力というのはそういうところには出ないものだったのかもしれなかった。
ちえさんとしては、不実の恋といえども大切なひとがいて、只一心に思うということに酔っているのかもしれないと段々、自分が違うことを望んでいるのかもとも思っていた。そんな折だった。ちえさんに声をかけてくる若者がいた。
映画館の窓口に座っていたバイトくんであった。
バイトくんは、ちえさんに興味があった。というより、ちえさんと想いびとさんの関係を知っていたからである。なぜかというと、バイトくんは、学生で、いつもは電車で通学していて、想いびとさんとは時々電車で見掛けるなと思っていたがあるとき、想いびとさんが駅の改札口にいると若い女の人が走ってきて、想いびとさんに駆け寄ると
「忘れ物よ。」
と言って書類の封書を渡していた。どうやら、奥さんらしかった。つまり、ちえさんと想いびとさんが不実の恋だということを知っていたのである。
バイトくんは思っていた。『ちえさんにはもっと別の人の方が合うさ。それが自分で合ってもそうじゃなくても。』
そこで、バイトくんのちえさんへのアプローチが始まったのである。
ちえさんはといえば、アプローチなんて受けたことがないものだから信用できないというのが先にたったが、それでもバイトくんがアプローチをやめないものだから遂に根負けした。
ふたりはデートの約束を取り付けた。
デートの場所は、浅草を歩こうということになった。バイトくんは映画寅さんシリーズが好きらしかったのである。そして、浅草寺で待ち合わせをしたときのことである。
待ち合わせ場所にはちえさんの方が先に着いていた。バイトくんを待っている間、暇なのでそばで遊んでいた女の子に話しかけた。
「いくつなの?」
女の子は急に話しかけられてビックリした様子だったがそれでも、物怖じせずに答えた。
「私は6才なの。普通だったら、学校に行ってなきゃならないけど私のうちでは学校には行かなくていいことになっているの。」
ちえさんは、少し驚いたが続けて聞いてみた。
「どうして、学校にいかなくてもいいの?」
「だって、女の子はお嫁にさえいけられればいいのよ。学校に行って勉強するより、家で家事を覚えた方が役に立つって、父ちゃんが言うの。」
ちえさんは、女の子に少し興味が湧いてきてこんな、話をした。
「学校は勉強だけをするところではないのよ。それに、学校に行けばクラスメイトに会えるから、将来のお婿さん候補にも会えるかもよ。」
女の子は、少し考えて答えた。
「お姉さんは、お婿さん候補見つけたの?」
ちえさんは、急に我に返った思いがした。『そうだわ、まったくそうなのよ。』
ちえさんは、女の子に
「私の話は内緒ね。でも、ありがとう。」
そう言った。
その後ちえさんと想いびとさんとバイトくんはといえば、相変わらずではあったが、只一つ代わったところがある。バイトくんがちえさんの想いびとさんになったということである。
その映画館は流行りものは流さず、いつも定番の映画の再映ものでお客さんも少なめだが本当に映画が好きなひとが多かった。そのためか顔なじみになるひともいたため、ちえさんとその想いびとも顔なじみだった。ちえさんは、仕事が休みのときは大抵映画館ロイヤルで過ごしていた。想いびとも同じであった。ちえさんが好きな映画というのは、『晩秋』という日本の古い映画だったが想いびとは、『ティファニーで朝食を』という洋画だった。
ちえさんは、どちらかといえば小柄な身体つきをしており、決して男の人が好む体型ではなかったがそれでも、想いびとにしてみれば満足していたみたいだったのでちえさんの魅力というのはそういうところには出ないものだったのかもしれなかった。
ちえさんとしては、不実の恋といえども大切なひとがいて、只一心に思うということに酔っているのかもしれないと段々、自分が違うことを望んでいるのかもとも思っていた。そんな折だった。ちえさんに声をかけてくる若者がいた。
映画館の窓口に座っていたバイトくんであった。
バイトくんは、ちえさんに興味があった。というより、ちえさんと想いびとさんの関係を知っていたからである。なぜかというと、バイトくんは、学生で、いつもは電車で通学していて、想いびとさんとは時々電車で見掛けるなと思っていたがあるとき、想いびとさんが駅の改札口にいると若い女の人が走ってきて、想いびとさんに駆け寄ると
「忘れ物よ。」
と言って書類の封書を渡していた。どうやら、奥さんらしかった。つまり、ちえさんと想いびとさんが不実の恋だということを知っていたのである。
バイトくんは思っていた。『ちえさんにはもっと別の人の方が合うさ。それが自分で合ってもそうじゃなくても。』
そこで、バイトくんのちえさんへのアプローチが始まったのである。
ちえさんはといえば、アプローチなんて受けたことがないものだから信用できないというのが先にたったが、それでもバイトくんがアプローチをやめないものだから遂に根負けした。
ふたりはデートの約束を取り付けた。
デートの場所は、浅草を歩こうということになった。バイトくんは映画寅さんシリーズが好きらしかったのである。そして、浅草寺で待ち合わせをしたときのことである。
待ち合わせ場所にはちえさんの方が先に着いていた。バイトくんを待っている間、暇なのでそばで遊んでいた女の子に話しかけた。
「いくつなの?」
女の子は急に話しかけられてビックリした様子だったがそれでも、物怖じせずに答えた。
「私は6才なの。普通だったら、学校に行ってなきゃならないけど私のうちでは学校には行かなくていいことになっているの。」
ちえさんは、少し驚いたが続けて聞いてみた。
「どうして、学校にいかなくてもいいの?」
「だって、女の子はお嫁にさえいけられればいいのよ。学校に行って勉強するより、家で家事を覚えた方が役に立つって、父ちゃんが言うの。」
ちえさんは、女の子に少し興味が湧いてきてこんな、話をした。
「学校は勉強だけをするところではないのよ。それに、学校に行けばクラスメイトに会えるから、将来のお婿さん候補にも会えるかもよ。」
女の子は、少し考えて答えた。
「お姉さんは、お婿さん候補見つけたの?」
ちえさんは、急に我に返った思いがした。『そうだわ、まったくそうなのよ。』
ちえさんは、女の子に
「私の話は内緒ね。でも、ありがとう。」
そう言った。
その後ちえさんと想いびとさんとバイトくんはといえば、相変わらずではあったが、只一つ代わったところがある。バイトくんがちえさんの想いびとさんになったということである。
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