蛾のお礼まいり

morituna

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蛾のお礼まいり

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 蛾のお礼まいり

  これは、俺が的屋(てきや)をやっていた頃の話だ。
  山奥の村で祭りがあり、祭りが終わると、携(たずさ)わった人たちで、酒宴(しゅえん)が催(もよお)された。

  苦労話などを聞かされて、俺は夜遅くまで付き合わされた。残り物を重箱(じゅうばこ)に入れてお土産(おみやげ)として貰い(もらい)、俺は真っ暗な山道を岐路(きろ)につくことした。

  宿は、山道を下った先にあるが、暗闇なので、途中で仲間とはぐれてしまった。酔(よ)いもまわり、疲労(くろう)も激(は)しかったので、座り込んで一休みすることにした。

  その時、少し離れた所に、木々の間から小屋の明かりが漏(も)れているのを見つけた。休ませてもらえるといいなあと思い訪(おと)れると、その場所にはふさわしくはない若い女

が出てきた。

  意に反して、朝まで休ませてもらえることになったが、女

が着ている服の色柄(いろがら)を、何処(どこか)かで見た様な気がするなあと思った。

  略満腹(ほぼまんぷく)であったが、女からキノコ汁

や酒を勧(す)められると、男のサガで、そのまま、ご馳走になった。そして、いつしか寝込んでしまった。

  未明に目が覚めると、小屋は消えていて、誘蛾灯(ゆうがとう)

近くの草むらに1人で裸で寝ていた。

  更に、嘔吐(おうと)や下痢(げり)などの食中毒の症状が現れ、見るものが青く見える中毒症状も併発(へいはつ)していた。

  悶え苦しんでいると脱水症状(だっすいしょうじょう)も現れ、これで、俺も終わりかなと思ったが、幸運にも、心配した仲間が探しに来てくれていたので無事生還(ぶじせいかん)することができた。

  救命センターの医者によると、嘔吐物(おうとぶつ)からツキヨタケ

中毒であるとつきとめたそうだ。

  また、体中(からだじゅう)に付いた粉は蛾の鱗粉(りんぷん)だったそうだ。
  
  補足
  夜祭りの最中、屋台の灯に2匹の蛾がもつれあって飛んで来たんだ。
  1匹は、段ボールの切れ端を使って叩き落とし、踏(ふ)みつけて退治したんだった。
  しかし、もう1匹は、逃げられてしまった。
  後になって、女が着ていた服の色柄が、逃げた蛾の羽模様(はねもよう)と同じだったことに気がついた。

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