宇宙エレベーター

宇宙エレベーター 第１話 宇宙エレベーター（模型）内覧会

　幼なじみの千春から、『一般公開前にマスコミ等へ配る内覧者用の招待券を、お父さんから頂いたので、明日１月８日、宇宙エレベーターの模型施設へ行こう』と、お誘いがあった。

　検索サイトで調べてみると、愛知県の鯱（シャチホコ）市に本社がある大手建設会社の小林組が、本物感を見学者が体感できる宇宙エレベーターの模型施設を鯱港の沿岸部に作り上げたと、書いてあった。
　翌日、２人で宇宙エレベーターの模型施設へ出向くと、既に、マスコミ関係者がアース・ポートに集まっていた。
　小林組の小林社長がブリーフィング、「手短な状況説明」を始めるところであった。
　『宇宙エレベーターの模型施設は、地上から先端までの高さが３３０ｍで、順に、アース・ポート、低重力体験フロア、衛星放出用フロアa,b,c 、系内惑星探査フロアa,b が有ります。』
　『アース・ポートは、地球上にあるエレベーター発着点を模した施設です。』
　『低重力体験フロアでは、月や火星の重力を体験できる施設となっています。

　『低軌道衛星の実物大模型を展示した衛星放出用フロアa では、低軌道衛星を高度300kmの低軌道に投入する動画が見れます。静止衛星の実物大模型を展示したフロアb では、静止衛星を高度36,000kmの静止軌道に投入する動画が見れます。
　惑星探査船の操縦席部分を展示した系内惑星探査フロアb,c では、惑星探査船を地球の重力圏から脱出させる動画が見れます。』
　『なお、エレベーターのアナウンスで流れる高度や速度は、臨場感を見学者が体感できる様に、本物の宇宙エレベーターの値を使っています。』
　『宇宙エレベーターの模型施設の低層階は、一般公開迄に大規模商業施設が入居することになっています。高層階には、三つ星ホテルが入ります。中層階は、複数のオフィスが入る予定です。』
　『低層階、中層階、高層階へは、一般公開後に、専用のエレベーターで行くことができます。』
　『では、１組目の方から、宇宙エレベーターへ、ご乗車、お願いします。』

　１組目の俺達は、宇宙エレベーターへ乗った。
　『宇宙エレベーターへようこそ。私は、AI エレベーターガールです。
　昇降機である｢クライマー｣は、低重力体験フロア、衛星放出用フロアa,b,c 、系内惑星探査フロアa を経て、
地上のアース・ポートから９万６,０００キロメートルの高さにある系内惑星探査フロアb まで、カーボンナノチューブ製の　｢テザー｣を平均時速２００キロで、登っていきます。』
　エレ－ベーター立坑の内壁に細工がしてあるみたいで、｢クライマー｣の観測窓からは、高度に応じて景色が変化した。
　本物の宇宙エレベータだと、２０日程度かかるはずであるが、模型のエレベーターは、分速1200m（時速72km）なので、 あっと言う間に３３０ｍを登り、系内惑星探査フロアb へ着いた。
　AI エレベーターガールは、『宇宙エレベーターは、系内惑星探査フロアbに到着いたしました。』と、発声した。
　宇宙エレベーターのドアが開いたので、系内惑星探査フロアbにある、木星探査船の操縦席部分を、千春と一緒に見に行くことにした。

　宇宙エレベーターを出ると、すぐに、系内惑星探査フロアb　の照明が消え、非常灯に切り替わった。これと同時に、自分の持ち物の何かが割れた様な音がした。　
　国民保護サイレン
　https://www.kokuminhogo.go.jp/data/siren.mp3
　が、鳴り、『平安北道（ピョンアンブクド）の東倉里（トンチャンリ）付近から飛翔体が発射された模様です。』
　『屋外にいる場合には、直ちに近くの建物の中、又は地下に避難してください。また、近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守って下さい。』
　『屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動して下さい。』と、アナウンスが流れた。

　直ぐ第２報が入った。
　『飛翔体は、核ミサイルの模様。EEZ内の上空高度４００キロ・メートルで、高高度核爆発（こうこうどかくばくはつ）が起きた模様です。』
　『E1、 E2、E3の　高高度電磁パルス（HEMP)が発生した模様です。』
　『電気器具、電子機器、電話線、送電線、変電設備などの破壊や故障に注意して下さい。』と、アナウンスが流れた。

　俺は、『これは、余興か』と、千春に聞いたが、知らないと返事が返ってきた。
　系内惑星探査フロアbの宇宙エレベーターの表示器が消えているし、マスコミ関係者も上がってこないから、俺は、本当に、高高度核爆発（こうこうどかくばくはつ）

が起きた可能性が高いと判断した。
　運良く？　非常口の非常灯を見つけたので、急いで非常口のドアを開けて、２人で中へ入った。