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古代日本文学ゼミナール -第1話-
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私立龍宮大学は、愛知県の鯱市(しゃちほこし)南部の龍宮町
にある。
私立龍宮大学の文芸学部の国文学科には、古代日本文学ゼミナールがある。
このゼミでは、『古事記』、『日本書紀』、『風土記』、『万葉集』などを読んで解読したり、古代日本文学にゆかりのある史跡を巡るゼミ旅行を行っている。
ゼミメンバーは、亀島教授
、1年生の岬(みさき)さん
と俺の他、複数人いる。
岬(みさき)さんは、明るくて可愛い感じであるが、ゼミ以外での付き合いはない。
今回のゼミ旅行は、亀島教授、岬(みさき)さん、俺の3人で、京都の丹後半島に行くことになった。
具体的には、与謝郡伊根町にあり、住職が小野高村の宇良島神社
、宇良島神社の東方にある常世の浜、
浦島太郎像
や乙姫像
がある浦島公園などを廻る。
亀島教授は、行く前に、校内で、翻訳機のテストを行った。
『丹後國風土記』
亀島教授は、翻訳機で、丹後國風土記を スキャンした。
---原文---
「丹後國風土記曰。與謝郡日置里。此里有筒川村。此人夫日下部首等先祖。名云筒川嶼子」「爲人姿容秀美。風流無類。斯所謂水江浦嶼子者也。是舊宰伊預部馬養連所記無相乖。故略陳所由之旨」「長谷朝倉宮御宇天皇御世。嶼子獨乘小船汎出海中爲釣。經三日三夜不得一魚。乃得五色龜。心思奇異。置于船中。即寐。忽爲婦人。其容美麗更不可比」「嶼子問曰。人宅遥遠。海庭人乏。キョ人忽來。女娘微咲。對曰風流之士獨汎蒼海。不勝近談。就風雲來」「嶼子復問曰。風雲何處來。女娘答曰。天上仙家之人也。請君勿疑。乗相談之愛。爰嶼子知神女。鎭懼疑心。女娘語曰。賤妾之意。共天地畢。倶日月極。但君奈何早先許不之意」「嶼子答曰。更無所言。何觸乎。女娘曰。君冝廻棹赴于蓬山。嶼子従往。女娘教令眠目。即不意之間。至海中博大之嶋。其地如玉敷。闕臺?映。樓堂玲瓏。目所不見。耳所不聞」「携手徐行。到一太宅之門。女娘曰。君且立此處。開門入内。即七竪子來。相語曰。是龜比賣之夫也。亦八竪子來。相語曰。是龜比賣之夫也。茲知女娘之名龜比賣。及女娘出來。」
翻訳機は、翻訳したテキスト文を液晶に表示し、翻訳した音声を出力した。
---翻訳文---
『丹後國風土記』は伝える。與謝郡日置里(よさぐんひおきさと)に筒川村があり、その地の住人で、日下部首 (くさかべのおびと)等の先祖にあたり、名を筒川嶼子(つつかわのしまこ)という一人の人夫がいた。
美男子なうえ、高貴で洗練された雅(みやび)な雰囲気を醸し出す類(たぐい)なき人物と賞賛している。
この好青年こそが、いわゆる水江浦嶼子(みづのえうらのしまこ)という者である。
海に出て釣りをするも、三日三晩一尾の魚すら釣り上げることができなかった。と、「五色龜」
を得た。奇異な感じを覚えつつも、船の中に置き、眠りについた。すると、忽ち、龜は美しくも妖艶な「婦人」に変身したのであった。
嶼子(シマコ)は問う。人家は遥か遠く、広い海原に人などいようはずもない。どうして、ここにやって来ることができたのか。女娘は微笑む。素敵な男性が一人大海原にいるのを目にし、お近づきになりたいと思い、風雲に乗りやってきたの。
海から釣り上げた五色の龜は比べようもない美しい女性に変身したが、彼女は仙人の如く風雲に乗ってやって来た、というのである。
嶼子は再び問う。風雲とはどこから来たのか。女娘(めむすめ)は答える。仙人が住む天上界から来たのです。どうか信じてくださいね。
そして、お願いですから私と親しくしてくださいね。彼女が神女であることを知り、疑念は氷解した。女娘は口を開く。私の気持は、二人で天地、日月の永久(とわ)の次元に身を置くことなのです。貴方はどうお考えですか。まずもってお気持が知りたいの。
嶼子は答える。拒否する理由などない。望むところです。女娘が言う。貴方が船を漕いで下さい。蓬山に行きましょう。
嶼子は従った。女娘は嶼子を眠らせた。忽ち、海中の大きな嶋に着いた。その地は美しい宝玉が一面に敷き詰められたよう。
門の外の高殿は暗く見えたが、内にある高殿は光り輝いていた。そんな情景は、これまで見たこともなければ、聞いたこともない世界だった。「蓬山」は、神仙の住む蓬莱山の略。
二人は手を取り合ってゆっくりと進んで行く。すると、一軒の見事な家の門にたどり着いた。女娘が言う。少しの間、ここにいてください。彼女は門を開いて中に入っていった。すると七人の童子が来て、この人が龜比賣(かめひめ)の夫だね、と語り合った。また八人の童子が来て、口々に同じことを言った。こうして女娘の名前が龜比賣であることがわかったのである。そうこうするうちに女娘が戻ってきた。
亀島教授は、解説を加えた。
● 筒川嶼子という名が本名で、水江浦嶼子は、ニックネームであろう。
● 五色龜.....「五色(青・黄・赤・白・黒)の色をした亀。
「五色」は五行思想の五色に照応する。
『丹後国風土記』では、「五色亀」と記述があり、
『日本書紀』では「大亀」と表現されている。
● 龜は美しくも妖艶な「婦人」に変身したのであった........
五色龜 = 龜比賣(かめひめ)= 女娘(めむすめ) = 「婦人」
そして、与謝郡伊根町の宇良島神社
に着くと、筒川嶼子(つつかわのしまこ)が、海中の嶋の高殿から帰る際に、
龜比賣(かめひめ)からもらったとされる玉手箱
を、住職
が見せてくれた。
住職は、『玉手箱に触るのは、駄目ですが、写真や動画は、自由に撮って下さい』
と言った。
俺は、1眼レフカメラのレンズをマクロレンズに取り替え、フラッシュを作動させて、玉手箱の外側および内部を、至近距離で撮影した。
すると、突然、玉手箱の内部から白い煙が立ち上り、俺の顔に掛かった。
白い煙を吸って、俺は、気を失った。
にある。
私立龍宮大学の文芸学部の国文学科には、古代日本文学ゼミナールがある。
このゼミでは、『古事記』、『日本書紀』、『風土記』、『万葉集』などを読んで解読したり、古代日本文学にゆかりのある史跡を巡るゼミ旅行を行っている。
ゼミメンバーは、亀島教授
、1年生の岬(みさき)さん
と俺の他、複数人いる。
岬(みさき)さんは、明るくて可愛い感じであるが、ゼミ以外での付き合いはない。
今回のゼミ旅行は、亀島教授、岬(みさき)さん、俺の3人で、京都の丹後半島に行くことになった。
具体的には、与謝郡伊根町にあり、住職が小野高村の宇良島神社
、宇良島神社の東方にある常世の浜、
浦島太郎像
や乙姫像
がある浦島公園などを廻る。
亀島教授は、行く前に、校内で、翻訳機のテストを行った。
『丹後國風土記』
亀島教授は、翻訳機で、丹後國風土記を スキャンした。
---原文---
「丹後國風土記曰。與謝郡日置里。此里有筒川村。此人夫日下部首等先祖。名云筒川嶼子」「爲人姿容秀美。風流無類。斯所謂水江浦嶼子者也。是舊宰伊預部馬養連所記無相乖。故略陳所由之旨」「長谷朝倉宮御宇天皇御世。嶼子獨乘小船汎出海中爲釣。經三日三夜不得一魚。乃得五色龜。心思奇異。置于船中。即寐。忽爲婦人。其容美麗更不可比」「嶼子問曰。人宅遥遠。海庭人乏。キョ人忽來。女娘微咲。對曰風流之士獨汎蒼海。不勝近談。就風雲來」「嶼子復問曰。風雲何處來。女娘答曰。天上仙家之人也。請君勿疑。乗相談之愛。爰嶼子知神女。鎭懼疑心。女娘語曰。賤妾之意。共天地畢。倶日月極。但君奈何早先許不之意」「嶼子答曰。更無所言。何觸乎。女娘曰。君冝廻棹赴于蓬山。嶼子従往。女娘教令眠目。即不意之間。至海中博大之嶋。其地如玉敷。闕臺?映。樓堂玲瓏。目所不見。耳所不聞」「携手徐行。到一太宅之門。女娘曰。君且立此處。開門入内。即七竪子來。相語曰。是龜比賣之夫也。亦八竪子來。相語曰。是龜比賣之夫也。茲知女娘之名龜比賣。及女娘出來。」
翻訳機は、翻訳したテキスト文を液晶に表示し、翻訳した音声を出力した。
---翻訳文---
『丹後國風土記』は伝える。與謝郡日置里(よさぐんひおきさと)に筒川村があり、その地の住人で、日下部首 (くさかべのおびと)等の先祖にあたり、名を筒川嶼子(つつかわのしまこ)という一人の人夫がいた。
美男子なうえ、高貴で洗練された雅(みやび)な雰囲気を醸し出す類(たぐい)なき人物と賞賛している。
この好青年こそが、いわゆる水江浦嶼子(みづのえうらのしまこ)という者である。
海に出て釣りをするも、三日三晩一尾の魚すら釣り上げることができなかった。と、「五色龜」
を得た。奇異な感じを覚えつつも、船の中に置き、眠りについた。すると、忽ち、龜は美しくも妖艶な「婦人」に変身したのであった。
嶼子(シマコ)は問う。人家は遥か遠く、広い海原に人などいようはずもない。どうして、ここにやって来ることができたのか。女娘は微笑む。素敵な男性が一人大海原にいるのを目にし、お近づきになりたいと思い、風雲に乗りやってきたの。
海から釣り上げた五色の龜は比べようもない美しい女性に変身したが、彼女は仙人の如く風雲に乗ってやって来た、というのである。
嶼子は再び問う。風雲とはどこから来たのか。女娘(めむすめ)は答える。仙人が住む天上界から来たのです。どうか信じてくださいね。
そして、お願いですから私と親しくしてくださいね。彼女が神女であることを知り、疑念は氷解した。女娘は口を開く。私の気持は、二人で天地、日月の永久(とわ)の次元に身を置くことなのです。貴方はどうお考えですか。まずもってお気持が知りたいの。
嶼子は答える。拒否する理由などない。望むところです。女娘が言う。貴方が船を漕いで下さい。蓬山に行きましょう。
嶼子は従った。女娘は嶼子を眠らせた。忽ち、海中の大きな嶋に着いた。その地は美しい宝玉が一面に敷き詰められたよう。
門の外の高殿は暗く見えたが、内にある高殿は光り輝いていた。そんな情景は、これまで見たこともなければ、聞いたこともない世界だった。「蓬山」は、神仙の住む蓬莱山の略。
二人は手を取り合ってゆっくりと進んで行く。すると、一軒の見事な家の門にたどり着いた。女娘が言う。少しの間、ここにいてください。彼女は門を開いて中に入っていった。すると七人の童子が来て、この人が龜比賣(かめひめ)の夫だね、と語り合った。また八人の童子が来て、口々に同じことを言った。こうして女娘の名前が龜比賣であることがわかったのである。そうこうするうちに女娘が戻ってきた。
亀島教授は、解説を加えた。
● 筒川嶼子という名が本名で、水江浦嶼子は、ニックネームであろう。
● 五色龜.....「五色(青・黄・赤・白・黒)の色をした亀。
「五色」は五行思想の五色に照応する。
『丹後国風土記』では、「五色亀」と記述があり、
『日本書紀』では「大亀」と表現されている。
● 龜は美しくも妖艶な「婦人」に変身したのであった........
五色龜 = 龜比賣(かめひめ)= 女娘(めむすめ) = 「婦人」
そして、与謝郡伊根町の宇良島神社
に着くと、筒川嶼子(つつかわのしまこ)が、海中の嶋の高殿から帰る際に、
龜比賣(かめひめ)からもらったとされる玉手箱
を、住職
が見せてくれた。
住職は、『玉手箱に触るのは、駄目ですが、写真や動画は、自由に撮って下さい』
と言った。
俺は、1眼レフカメラのレンズをマクロレンズに取り替え、フラッシュを作動させて、玉手箱の外側および内部を、至近距離で撮影した。
すると、突然、玉手箱の内部から白い煙が立ち上り、俺の顔に掛かった。
白い煙を吸って、俺は、気を失った。
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