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封印~地図から消えた国~
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「はぁ……やっぱりシューイチさんってお人よしですね」
ほらやっぱり言われた!
宿屋の入り口で俺を出待ちしていたフリルを伴い、エナとテレアの部屋に訪れた俺たちを、エナがため息と共に出迎えてくれた。
「あっフリルお姉ちゃん!おはよう!」
「おはようテレア、エナっち」
「エナっち……」
エナが何だか納得いかない表情で勝手につけられたあだ名を復唱した。
「俺にも何かあだ名つけてくれよ?」
「……シューイチはシューイチですが?」
「そうですか」
ちょっとだけ残念だった。
部屋に通されて、フリルはテレアの座っているベッドに腰かけ、俺は空いている椅子に適当に腰を下ろした。
「それで……私たちにどんな話があるんですか?」
「フリルとルーデンス一座を助けることにしたから」
「非常に簡潔でわかりやすいですね……はぁ」
再度エナがため息を吐く。
エナはカルマ教団と事を構えるのには反対だったからな……最悪エナが手伝ってくれなくても、俺一人でもやるつもりだ。
「実は、昨日テレアちゃんからもフリルちゃんを助けたいと言われてましてね?シューイチさんと再度相談して、同じ意見なら……という話をしたんですが」
「相談する必要すらなかったな?」
「そのようですね」
やっぱりテレアはフリルのことを助けたいと思っていたのか。
昨日の帰り道でもフリルの心配してたからな……やっぱり優しい子だ。
「テレアは難しいことはよくわからないけど、折角フリルお姉ちゃんと仲良くなれたのに、そのフリルお姉ちゃんが危ない目に遭うかもしれないなら、何とかしてあげたいって思って……」
「……ええ子や」
一生懸命に自分の意思を主張するテレアを隣に座るフリルがなんだか優しい目で見つめた後、頭を撫で始めた。
「くっくすぐったいよぅ、フリルお姉ちゃん」
「……テレアの頭、撫でやすい形してて最高」
わかる!やっぱり撫で心地最高だよな?
お前はわかる女だと思っていたぞフリル。
「二人がそこまで言う以上、私も覚悟を決めました!どの道リドアードの一件ですでに私たちは間接的にといえカルマ教団に関わってしまってますしね、どうせ遅かれ早かれこうなっていたと思います」
一番懸念していたエナが、協力の意志を示してくれた。
「大変だと思いますが、私たち三人でフリルちゃんとルーデンス一座をカルマ教団から守りましょう!」
「うん!テレアも頑張るよ!」
「……ありがとな、二人とも」
「……ありがとう」
そんなわけで気持ちを新たにした俺たち四人は、今後の傾向と対策を話し合うべく今持つ情報の整理をすることとなった。
「まずカルマ教団がなぜフリルちゃんを狙っているか……ですが」
「どう考えてもフリルの歌魔法が目当てだろうな」
正直言ってこれ以外のほかの理由が見当たらない。
俺とエナがフリルに顔を向けると、当の本人はなんだか要領の得ない表情をしていた。
「……歌魔法って何?」
「「まさか使い手本人が知らないとは……」」
思わず俺とエナの声がハモった。
そうだよなぁ……育ての親のルーデンスさんでさえフリルの歌魔法に気が付いてないんだから、当の本人が自覚してるはずがないんだよなぁ。
「えっとね、テレアもよくわからないんだけど、フリルお姉ちゃんの歌には魔力が込められてるんだって」
「……私にそんな秘められた力が……!」
なんだかフリルが中二病患者がするようなカッコいいポーズを取り始めた。
そうか、この世界はファンタジーなんだからこういうカッコいいポーズとっても違和感ないよな!今度俺も真似しよう!
「歌魔法はとても難しい魔法で、100年に一度くらいの割合でしか使い手が現れてないんですよ」
「昨日も聞いたけどさ、歌魔法ってそんなに凄い魔法なのか?」
俺の言葉にエナが顎に手を当てて唸りながら唇を尖らせる。
ほどなくして口を開き歌魔法についての説明を始めた。
「そうですね……例えばテレアちゃんが使う身体強化があるじゃないですか?基本的なプロセスは同じなんですが、歌魔法と身体強化魔法の違いは魔力を乗せる対象に形が『ある』か『ない』かなんですよ?その違いだけで魔法の難易度は激変するんです」
「形があるかないかだけで?」
俺の言葉にエナが頷いた。
「実のところ身体強化の魔法ってそれほど難しいものじゃないんですよ。だって対象に形があって尚且つ自分なんですからイメージもしやすいですし。でも歌魔法の対象は形のない歌なんです。本来形のないものに魔力を込めるのって、そういうことができる才能でも持ってないと不可能なんですよ」
言われてみると、たしかに形のない歌に魔力を込めることの難しさが少しずつ分かってきた。
「まあ魔物なんかはもともとそういう能力を持っているものもいて、例えばキラーウルフは特殊な遠吠えをいくつか使うんですが、その遠吠えも歌魔法と同じ原理が働いているという研究結果も出てます」
「魔物なんかは自然にそういうことをしてるわけか」
さすが自然を生きる魔物たちは違うな。
「今までフリルちゃんはそれを意識しないでやっていたみたいですが、今後ちゃんとした魔力を扱う練習をすれば、歌に様々効果をもつ魔力を込めることができるようになるはずですよ」
そう言ってエナがフリルに笑いかけるが、当のフリルは少し複雑な表情をしていた。
「どうしたの、フリルお姉ちゃん?」
「……今まで単純に私の歌でみんなが感動してくれてると思ってたから」
あぁ……自分の実力じゃなくて歌魔法のおかげだったとか思っちゃってるわけか。
そりゃフリルからしたら複雑な心境にもなるよな。
「テレア、フリルお姉ちゃんの歌好きだよ?」
「……そう?」
「うん!また聴きたいな!」
そう言ってテレアがフリルに満面の笑顔を向けた。
こういう時、テレアの嘘のない純粋さ100%の笑顔は強いよな……基本的にあまり表情の変わらないフリルが思わず微笑んじゃうくらいだし。
「そうだぞフリル?何を隠そう俺は昨日フリルの歌を聞いて涙流したからな?」
「……えっ」
「ちょっと待って!なんでそこで引くの!?」
そこは感動して「ありがとう……」とか言って照れる場面じゃないの!?ホワイ!?
「しかし歌魔法が珍しいのはたしかなんですが、カルマ教団がそれを欲する理由がちょっと見当つかないんですよね」
喧々囂々する俺たちを横目に、エナが再び長考を始める。
カルマ教団的には歌魔法を必要とする計画でもあるのかもしれないな。
とここでふと思ったことがあるので折角の機会だしエナに聞くことにする。
「エナ、カルマ教団が評判悪いのは知ってるけど、今まで主になにをしたんだ?」
これはエナのタブーに接触するかもしれない質問だが、今後のことを考えると知っておかないといけないと思い、意を決して聞いてみることにした。
俺の言葉を受けて、エナが複雑な表情をする。
「そうですねぇ……あの教団は自分たちの目的を達成するためなら何でもやりますね」
「何でも……か」
「はい、何でもです。それこそ国でさえ滅茶滅茶にしていきますよ?現に私の住んでいた国は、カルマ教団のせいで地図から消えましたしね」
その言葉にエナを除いた俺たち全員が絶句する。
「いや……その……そんな晩飯はカレーでしたみたいな感覚でそんな……」
「だって事実ですからね」
そりゃエナがカルマ教団にはいい顔しないわけだ。
何がどうなったのかは知らないが、自分の住んでいた国を滅ぼされてるんだからな。
「ていうかそんなことしでかしてるならどの国からも邪教認定されて村八分だろ!?なんで未だにのうのうと各国に勢力伸ばしてんの!?」
「その国が滅びた原因がカルマ教団のせいだということが、世界に認知されてないからですよ。小国でしたし、色々な事情で世界的に知名度も低い国でしたから、あの国がなくなっていることを知ってる人なんて数えるほどしかいないと思います」
なんか淡々と語ってるけど、あなたの住んでた国の話ですよね?
「あっ、でも安心してください!あの教団自身に物理的に国を亡ぼす力はありませんから!」
「え?でも国を滅ぼしたんだよね?」
当然の疑問をテレアがぶつける。
可哀そうに、涙目になってるじゃないか。
「それはなんというか……あの教団の行動の結果というか……まあ国の中枢に言葉巧みに取り入って、気が付いたら国が教団の傀儡になってるってパターンが、あの教団が最も得意とするとこなんですよ」
「何それ怖い、ピロリ菌かよ」
一応補足するとピロリ菌は怖い菌だが、そういう菌ではないのであしからず。
「もしかしてこのリンデフランデもすでにカルマ教団の傀儡になってるのか?」
「教団がこの国に支部を設立したのはここ最近の話ですし、そこまでのことにはなってないと思いますが……すでに準備くらいは始めてるかもしれませんね」
ほんと聞けば聞くほど厄介この上ない連中だな。
「しかしわかんないよなぁ……カルマ教団は伝説上に存在する邪神を神として崇めてるような宗教団体だろ?宗教なんだから当然教徒だっているだろうけど、よく邪神なんかを崇める気になるよな」
「正常な思考回路をしていれば今のシューイチさんのように思うのが普通なんですよ。でも本当に追い詰められた人間は、例えそれが悪い神様であっても救いを求めるために崇めてしまうものなんです」
まさに人間のサガってやつか。
俺たちはそうならないように気を付けないとな。
「あの教団の最終目標は邪神カルマの復活です。その足掛かりになるものならどんな些細なことでも周りに迷惑をまき散らしながら取り込みにいきますよ」
「どんな些細なことでも……ねぇ」
邪神復活の為か……復活……ふっかつ?
その復活というワードに引っかかりを覚えた。
いや復活というワードではなく、その前提となるもの……前提……。
「封印」
突然呟いた俺に全員の視線が一手に集まる。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、この国にも封印されてるものがあったなと」
「……神獣の話?」
「そうそれ!神獣!」
思わずフリルを指さしてしまった。反省。
「神獣がどうかしたんですか?」
「この国には神獣の伝説があるだろ?この国を守護してるって話だけど、過去にはこの国を滅ぼしかけてる……その時この国はその神獣をどうやって止めたのかな?って考えたんだけど、普通に考えたら封印したんじゃないかと思ってさ」
もしかしたら粗方破壊しつくして飽きたのかもしれないが、普通に考えて何かしらの死力をつくして封印したって考えるのがこの世界では定石な気がする。
「それが今どういう関係……あっ」
どうやらエナが俺の言わんとすることを理解してくれたようだ。
「ちょっと飛躍した考えかもしれないけど、カルマ教団がフリルを使ってまでやろうとしてることは、歌魔法を使って神獣の封印を解くことなんじゃないかな?」
ほらやっぱり言われた!
宿屋の入り口で俺を出待ちしていたフリルを伴い、エナとテレアの部屋に訪れた俺たちを、エナがため息と共に出迎えてくれた。
「あっフリルお姉ちゃん!おはよう!」
「おはようテレア、エナっち」
「エナっち……」
エナが何だか納得いかない表情で勝手につけられたあだ名を復唱した。
「俺にも何かあだ名つけてくれよ?」
「……シューイチはシューイチですが?」
「そうですか」
ちょっとだけ残念だった。
部屋に通されて、フリルはテレアの座っているベッドに腰かけ、俺は空いている椅子に適当に腰を下ろした。
「それで……私たちにどんな話があるんですか?」
「フリルとルーデンス一座を助けることにしたから」
「非常に簡潔でわかりやすいですね……はぁ」
再度エナがため息を吐く。
エナはカルマ教団と事を構えるのには反対だったからな……最悪エナが手伝ってくれなくても、俺一人でもやるつもりだ。
「実は、昨日テレアちゃんからもフリルちゃんを助けたいと言われてましてね?シューイチさんと再度相談して、同じ意見なら……という話をしたんですが」
「相談する必要すらなかったな?」
「そのようですね」
やっぱりテレアはフリルのことを助けたいと思っていたのか。
昨日の帰り道でもフリルの心配してたからな……やっぱり優しい子だ。
「テレアは難しいことはよくわからないけど、折角フリルお姉ちゃんと仲良くなれたのに、そのフリルお姉ちゃんが危ない目に遭うかもしれないなら、何とかしてあげたいって思って……」
「……ええ子や」
一生懸命に自分の意思を主張するテレアを隣に座るフリルがなんだか優しい目で見つめた後、頭を撫で始めた。
「くっくすぐったいよぅ、フリルお姉ちゃん」
「……テレアの頭、撫でやすい形してて最高」
わかる!やっぱり撫で心地最高だよな?
お前はわかる女だと思っていたぞフリル。
「二人がそこまで言う以上、私も覚悟を決めました!どの道リドアードの一件ですでに私たちは間接的にといえカルマ教団に関わってしまってますしね、どうせ遅かれ早かれこうなっていたと思います」
一番懸念していたエナが、協力の意志を示してくれた。
「大変だと思いますが、私たち三人でフリルちゃんとルーデンス一座をカルマ教団から守りましょう!」
「うん!テレアも頑張るよ!」
「……ありがとな、二人とも」
「……ありがとう」
そんなわけで気持ちを新たにした俺たち四人は、今後の傾向と対策を話し合うべく今持つ情報の整理をすることとなった。
「まずカルマ教団がなぜフリルちゃんを狙っているか……ですが」
「どう考えてもフリルの歌魔法が目当てだろうな」
正直言ってこれ以外のほかの理由が見当たらない。
俺とエナがフリルに顔を向けると、当の本人はなんだか要領の得ない表情をしていた。
「……歌魔法って何?」
「「まさか使い手本人が知らないとは……」」
思わず俺とエナの声がハモった。
そうだよなぁ……育ての親のルーデンスさんでさえフリルの歌魔法に気が付いてないんだから、当の本人が自覚してるはずがないんだよなぁ。
「えっとね、テレアもよくわからないんだけど、フリルお姉ちゃんの歌には魔力が込められてるんだって」
「……私にそんな秘められた力が……!」
なんだかフリルが中二病患者がするようなカッコいいポーズを取り始めた。
そうか、この世界はファンタジーなんだからこういうカッコいいポーズとっても違和感ないよな!今度俺も真似しよう!
「歌魔法はとても難しい魔法で、100年に一度くらいの割合でしか使い手が現れてないんですよ」
「昨日も聞いたけどさ、歌魔法ってそんなに凄い魔法なのか?」
俺の言葉にエナが顎に手を当てて唸りながら唇を尖らせる。
ほどなくして口を開き歌魔法についての説明を始めた。
「そうですね……例えばテレアちゃんが使う身体強化があるじゃないですか?基本的なプロセスは同じなんですが、歌魔法と身体強化魔法の違いは魔力を乗せる対象に形が『ある』か『ない』かなんですよ?その違いだけで魔法の難易度は激変するんです」
「形があるかないかだけで?」
俺の言葉にエナが頷いた。
「実のところ身体強化の魔法ってそれほど難しいものじゃないんですよ。だって対象に形があって尚且つ自分なんですからイメージもしやすいですし。でも歌魔法の対象は形のない歌なんです。本来形のないものに魔力を込めるのって、そういうことができる才能でも持ってないと不可能なんですよ」
言われてみると、たしかに形のない歌に魔力を込めることの難しさが少しずつ分かってきた。
「まあ魔物なんかはもともとそういう能力を持っているものもいて、例えばキラーウルフは特殊な遠吠えをいくつか使うんですが、その遠吠えも歌魔法と同じ原理が働いているという研究結果も出てます」
「魔物なんかは自然にそういうことをしてるわけか」
さすが自然を生きる魔物たちは違うな。
「今までフリルちゃんはそれを意識しないでやっていたみたいですが、今後ちゃんとした魔力を扱う練習をすれば、歌に様々効果をもつ魔力を込めることができるようになるはずですよ」
そう言ってエナがフリルに笑いかけるが、当のフリルは少し複雑な表情をしていた。
「どうしたの、フリルお姉ちゃん?」
「……今まで単純に私の歌でみんなが感動してくれてると思ってたから」
あぁ……自分の実力じゃなくて歌魔法のおかげだったとか思っちゃってるわけか。
そりゃフリルからしたら複雑な心境にもなるよな。
「テレア、フリルお姉ちゃんの歌好きだよ?」
「……そう?」
「うん!また聴きたいな!」
そう言ってテレアがフリルに満面の笑顔を向けた。
こういう時、テレアの嘘のない純粋さ100%の笑顔は強いよな……基本的にあまり表情の変わらないフリルが思わず微笑んじゃうくらいだし。
「そうだぞフリル?何を隠そう俺は昨日フリルの歌を聞いて涙流したからな?」
「……えっ」
「ちょっと待って!なんでそこで引くの!?」
そこは感動して「ありがとう……」とか言って照れる場面じゃないの!?ホワイ!?
「しかし歌魔法が珍しいのはたしかなんですが、カルマ教団がそれを欲する理由がちょっと見当つかないんですよね」
喧々囂々する俺たちを横目に、エナが再び長考を始める。
カルマ教団的には歌魔法を必要とする計画でもあるのかもしれないな。
とここでふと思ったことがあるので折角の機会だしエナに聞くことにする。
「エナ、カルマ教団が評判悪いのは知ってるけど、今まで主になにをしたんだ?」
これはエナのタブーに接触するかもしれない質問だが、今後のことを考えると知っておかないといけないと思い、意を決して聞いてみることにした。
俺の言葉を受けて、エナが複雑な表情をする。
「そうですねぇ……あの教団は自分たちの目的を達成するためなら何でもやりますね」
「何でも……か」
「はい、何でもです。それこそ国でさえ滅茶滅茶にしていきますよ?現に私の住んでいた国は、カルマ教団のせいで地図から消えましたしね」
その言葉にエナを除いた俺たち全員が絶句する。
「いや……その……そんな晩飯はカレーでしたみたいな感覚でそんな……」
「だって事実ですからね」
そりゃエナがカルマ教団にはいい顔しないわけだ。
何がどうなったのかは知らないが、自分の住んでいた国を滅ぼされてるんだからな。
「ていうかそんなことしでかしてるならどの国からも邪教認定されて村八分だろ!?なんで未だにのうのうと各国に勢力伸ばしてんの!?」
「その国が滅びた原因がカルマ教団のせいだということが、世界に認知されてないからですよ。小国でしたし、色々な事情で世界的に知名度も低い国でしたから、あの国がなくなっていることを知ってる人なんて数えるほどしかいないと思います」
なんか淡々と語ってるけど、あなたの住んでた国の話ですよね?
「あっ、でも安心してください!あの教団自身に物理的に国を亡ぼす力はありませんから!」
「え?でも国を滅ぼしたんだよね?」
当然の疑問をテレアがぶつける。
可哀そうに、涙目になってるじゃないか。
「それはなんというか……あの教団の行動の結果というか……まあ国の中枢に言葉巧みに取り入って、気が付いたら国が教団の傀儡になってるってパターンが、あの教団が最も得意とするとこなんですよ」
「何それ怖い、ピロリ菌かよ」
一応補足するとピロリ菌は怖い菌だが、そういう菌ではないのであしからず。
「もしかしてこのリンデフランデもすでにカルマ教団の傀儡になってるのか?」
「教団がこの国に支部を設立したのはここ最近の話ですし、そこまでのことにはなってないと思いますが……すでに準備くらいは始めてるかもしれませんね」
ほんと聞けば聞くほど厄介この上ない連中だな。
「しかしわかんないよなぁ……カルマ教団は伝説上に存在する邪神を神として崇めてるような宗教団体だろ?宗教なんだから当然教徒だっているだろうけど、よく邪神なんかを崇める気になるよな」
「正常な思考回路をしていれば今のシューイチさんのように思うのが普通なんですよ。でも本当に追い詰められた人間は、例えそれが悪い神様であっても救いを求めるために崇めてしまうものなんです」
まさに人間のサガってやつか。
俺たちはそうならないように気を付けないとな。
「あの教団の最終目標は邪神カルマの復活です。その足掛かりになるものならどんな些細なことでも周りに迷惑をまき散らしながら取り込みにいきますよ」
「どんな些細なことでも……ねぇ」
邪神復活の為か……復活……ふっかつ?
その復活というワードに引っかかりを覚えた。
いや復活というワードではなく、その前提となるもの……前提……。
「封印」
突然呟いた俺に全員の視線が一手に集まる。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、この国にも封印されてるものがあったなと」
「……神獣の話?」
「そうそれ!神獣!」
思わずフリルを指さしてしまった。反省。
「神獣がどうかしたんですか?」
「この国には神獣の伝説があるだろ?この国を守護してるって話だけど、過去にはこの国を滅ぼしかけてる……その時この国はその神獣をどうやって止めたのかな?って考えたんだけど、普通に考えたら封印したんじゃないかと思ってさ」
もしかしたら粗方破壊しつくして飽きたのかもしれないが、普通に考えて何かしらの死力をつくして封印したって考えるのがこの世界では定石な気がする。
「それが今どういう関係……あっ」
どうやらエナが俺の言わんとすることを理解してくれたようだ。
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