無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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教団~正式な手続きをもってして~

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 俺のその飛躍した考えを言葉にすると、場に一瞬の静寂が訪れる。

「そ……それはいくらなんでも飛躍しすぎじゃないですかね?」
「俺もそう思うんだけどさ、こういうのは最悪の事態を想定しておくことが重要だし、それにあながち飛躍しすぎとも言えないと思うんだよ」

 俺はこの世界の伝説とか事情とかには全く詳しくはないが、日本で培ってきたゲームやアニメのファンタジー知識を応用すれば大体のことは想像できる。
 大体神獣とかそんな神格高そうな輩は封印されているのがベターな展開だからな。

「カルマ教団がフリルを狙っていることは事実だし、恐らくその理由も歌魔法なんだから、連中が歌魔法を使った何かを企んでると考えたら自然とそこに行きついたんだよ」

 どっちみちフリルを狙っているということしかわからないため、その後はすべて予想でしかないが、細かな部分に違いはあるが大体そんなことを考えてるとは思う。

「カルマを復活させて世界の浄化とやらを目指してるなら、その封印を解除する手段を今も探してるだろうし、もしもこの国の神獣の封印を解除して復活させられれば、連中としてはカルマ復活への足掛かりになるとかそんなあたりじゃないかなぁと」
「もしも仮にフリルお姉ちゃんの歌魔法で神獣が復活しちゃったら、この国はどうなっちゃうのかな?」
「普通に滅ぶんじゃないかな?連中がそこまで責任を取るとは思えないし」

 俺の返答を受けて、テレアが涙目になってガクブルしだした。
 ちょっと可哀そうだが何も間違ってないと思う。
 これも想像なんだが、エナの住んでいた国が滅びたってのも何かヤバい奴の封印を解いて蘇らせた結果なんじゃないかって気がする。今はそれを本人に聞くときではないが。

「とは言ったものの、俺この国について何も知らないからなぁ……そこがわかればもうちょっと色々と予想もできるんだけど」
「……リンデフランデの歴史資料館があるから、そこに行けば大体わかるかも」
「そんなものがあるのか?」

 フリルが小さくうなずく。
 そこへ行けばこの国についておおよそ知ることができそうだな。

「それじゃあそこへ行きますか?」

 エナのその言葉に二つ返事で返しそうになったところでふと思いつく。
 たしかにそこへ行けばこの国のことについてはわかりそうだが、もしかしたら神獣についてはぼかされているかもしれない。
 歴資料館については保険ということにして、俺はもっと手っ取り早い方法を思いついてしまった。

「ちょっといい方法を思いついたんで、エナとテレアとフリルはその歴史資料館に行ってきてくれ」
「お兄ちゃんはどうするの?」

 テレアのその問いに、俺はにやりと笑って返す。

「言ったろ?いい方法を思いついたってさ」



 宿屋で今後の話し合いをしたときから大体3時間が過ぎた。
 その3時間で俺は大急ぎで準備をしていき、そしてとある建物の前に来ていた。
 そこは白を基調とし、見るからに「自分たちは潔癖である」と主張しつつも、逆に真っ白すぎて怪しさ全開になっていて、看板に「カルマ教団・リンデフランデ支部」と書かれた場所だった。

「なにもフリルまで来ることはなかったんだぞ?」
「……シューイチだけじゃ心配」
「俺はお前さんの心配をしとるんじゃ!」

 教団に狙われてるのは何を隠そう、このフリルなんだから。
 俺一人で行くと言ったんだが、フリル本人から連れっていってほしいと言われ、危険だとわかってはいたものの渋々フリルと一緒にこの場所に来てしまった。
 とはいえ、俺の考えた作戦上フリルがそばにいた方が説得力が増すこともあり、デメリットばかりではないのがなんとも……。

「しかし……見れば見るほど真っ白すぎて逆に怪しさで溢れかえってる建物だなおい」

 日本でも宗教関係の建物を見たことがあるが、もう少し周りに溶け込もうと……いや結構派手な建物だったし、どの世界でも考えることは一緒のなのかもしれないな。

「……墨をもってきて落書きしたい白さ」
「気持ちはわかるけど怒られるからやめような?」

 その言葉に不貞腐れるフリルを横目に、俺は教団支部の建物へと足を踏み入れていく。
 建物内部も外見と同様、白を基調としていてはっきり言って白すぎて目が痛くなりそうだった。
 フリルを伴い、俺は教団の受付らしき場所へたどり着く。

「カルマ教団・リンデフランデ支部へようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご要件でしょうか?」

 見た感じ真っ白なシスターといった感じの、白のケープを被った受付のお姉さんに挨拶される。
 一瞬だけ「美人さんじゃんやっほほーい!」と思ったものの、こんなろくでもない教団の受付なんてやっているんだから、すべてを疑ってかかる精神で美人に弱い俺の心を強引に抑え込んだ。

「俺たちは冒険者ギルドからやって来た」
「冒険者ギルドから……ですか?ではあなた方は冒険者ですか?」

 俺は懐から一枚の手紙を取り出して、受付に渡す。

「詳しくはこの手紙に書いてあるから、これをここの支部長さんに渡してもらえないかな?できれば今すぐに」

 受付嬢が手紙を受け取り、怪訝な顔をしたものの「少々お待ちください」と言葉を残し、奥へと消えていった。
 さてと、鬼と出るか蛇と出るか。


 しばらく待っていると、部屋の奥から受付のお姉さんが戻ってきた。

「支部長が一度お話を聞きたいとのことですので、どうぞこちらへ……」

 どうやら第一段階はクリアしたみたいだ。
 俺とフリルは受付嬢の後ろに続くようにして教団内部を進んでいく。
 なんかそこかしこからヒーリングミュージックみたいものが聞こえてくるが、この世界にもスピーカーみたいなものがあるのだろうか?
 ふとフリルを見ると、なんだか渋い顔をしていた。

「どうしたんだフリル?」
「……この音楽不快……ノイズみたいのが混じってる」

 ノイズ?
 耳を澄まし流れてくる音楽をよく聞いてみるが俺には特に何もわからない。
 だがここでもしや思い、魔力を活性化させて意識を耳に集中してみる。

「うわっ、なんだこれ?」

 フリルの言うと通り、音楽の中にノイズみたいのが混じっていた。
 しかもずっとノイズが乗ってるわけではなく、断続的な規則性を持っているのがわかる。
 これってもしかして洗脳音楽みたいな感じの奴か?
 さすがにずっとその状態にしてはいけないので、魔力を鎮静化させると途端にそのノイズは聞こえなくなった。
 
「大丈夫かフリル?」
「……意識しなければ平気」
「お二人ともどうかなさいましたか?」

 ひそひそと話す俺たちを怪訝に思ったのか、先を歩く受付嬢が振り返って聞いてきた。

「いえいえ、お気になさらずに」
「……うい」
「そうですか……まもなく支部長の部屋に着きますので」

 その後俺たちはその音楽にはなるべく意識を向けないようにしつつ、引き続き受付嬢の後に続いて行った。
 不思議なことに、流れてくる音楽のなかにノイズが乗っていることを知った瞬間、魔力を活性化させてなくてもそれが耳に聞こえるようになってしまった。
 不快な気分を味わいつつ、ようやく俺たちはその支部長の部屋とやらに辿り着いた。
 受付嬢が扉をノックする。

「冒険者のお二方をお連れしました」
「どうぞ、入ってもらってください」

 中から声が聞こえて、受付嬢が扉を開けて俺たちを部屋の中へと促す。
 そこは無駄に広々とし、相変わらず白を基調としつつも床には赤いじゅうたんが敷かれていて、その絨毯の先にはテーブルに両肘をついて手に顎を乗せてこちらを見ている男がいた。
 あの男がこの教団の支部長とやらだろう。

「ようこそおいでくださいました。カルマ教団・リンデフランデ支部の支部長を務めさせていただいている「ロイ=マフロフ」と申します。以後お見知りおきを」

 その男は昨日のあのキザ男だった。
 まあ大体予想していた展開ではある。

「すまないがこの二人と大事な話がある、君は席を外してくれないかな?」
「はい、では失礼します」

 ロイと名乗ったその男に言われて、受付嬢は一礼した後、部屋を出ていった。
 部屋に一瞬の静寂が訪れる。

「さて……お手紙を拝見させていただましたが……まさかあなたがマグリド王の推奨する冒険者であったとは……」
「ああそうだ、手紙に書いてあった通り、俺はギルドの正式な依頼を受けてここにきた」

 そうなのだ……俺は正式な手続きをもって、この教団へをやって来たのだ。
 あの後俺はフリルを伴いこの国の冒険者ギルドに足を運んだ。
 そこでギルドマスターにお目通しを願い、マグリド王の推薦状を見せてフリルの「ルーデンス一座を助けてほしい」という依頼を正式な物としてもらった後、俺がその依頼を受けたのだ。
 だが勿論、やすやすとそこまで話を持っていけたわけじゃない。
 俺はカルマ教団が裏で関わっている件を含ませつつ、マグリドでのリドアードの引き起こした事件を掻い摘んで説明し、連中がこの国で企んでいるであろうことをギルドマスターに聞かせた。
 勿論疑っていたギルドマスターが、「一度マグリドのギルドと連絡を取らせてくれ」と言って、それから俺たちは30分ほど待たされた。
 戻って来たギルドマスターは、無事に確認が取れたことと、マグリド王の推薦状を持っていることも幸いし俺たちのことを信じてくれた。
 なお決め手になったのは勿論ヤクトさんの鶴の一声だったらしい。
 テレアの件でとても身近な人になってしまったが、実際あの人は引退しているとはいえ、今も冒険者ギルドに籍を置いているらしく、ギルド内ではとんでもない発言力を持っているんだよなぁ……。
 無事に依頼として受理されることになったものの、フリル個人の頼みだけでは弱いと思っていた俺は、ギルドマスターにリンデフランデの王にこのことを伝えてもらって、より確実性の高い内容の依頼にしてもらえないかと相談した。
 そこからさらに30分待たされたが、やはりマグリド王の推薦状の効力は凄まじく、俺の頼みは無事に聞き遂げられて、フリルの「一座を助けてほしい」という依頼は姿を変えて、「不審な動きのあるカルマ教団の内部調査」というリンデフランデ王直々の依頼へとなったのだ。

 傍から見れば職権濫用だと言われるかもしれないが、俺は自分の持っている有効な手札を最大限に利用しただけだからな?

「『その者たちは王直々の依頼を受けた者たちであるが故、手荒なことをしようものなら、このリンデフランデ王の率いる騎士団を持ってこの支部を排除する』……ですか」
「そう言うことだから、俺たちには手を出さない方が無難だぜ?」
「我々は随分と物騒な集団と思われているようで、少し複雑な気分ですね」

 いや実際お前らは物騒な集団だからな?
 ロイはため息を吐き、椅子に座りなおして俺たちを見る。

「さて……本日はどういったご用件でしょうか?」
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