無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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粛清~堕落しきったこの国を~

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 ギルドからもらった謎の古代文字の書かれた文献の写し……神獣が封印されていた遺跡から見つかったのだから神獣関連のことが書かれているとは踏んでいたけど、まさか封印方法が記されているとは。

「どうやって封印するんだ?」
「えっと、わかりやすいように噛み砕きますから少し待って下さい……」

 そう言ってエナが文献の写しと再び睨めっこを始める。
 隣にいるテレアもそれを固唾を飲んで見守っている。
 シエルはというと、テレアの頭を撫でられないせいでつまらなそうにしていた。そろそろ俺の中のお前さんの評価が最低値に辿り着きそうだけどええんか?
 しかし皮肉にもエナがその古代文字を持ち込んだ小国と関連があるという証明になってしまったな。
 少しばかり複雑な気持ちになっていると、エナが顔を上げて口を開いた。

「簡潔に言うと、1000年前に堕落しきったリンデフランデの国に粛清するために破壊神へと姿を変えた神獣は、歌魔法「封印の唄」によって封印された……とのことです」

 封印の唄とか、またベタな歌だな。
 しかしこれで仮に神獣の封印が解かれても、フリルがその封印の唄を歌えばまた封印できるってことか。

「それで、その封印の唄ってのはどんな歌なんだ?」
「そこまでは書いてありませんね……」

 思った以上に使えない文献だった。
 なんでそういう肝心な部分を省略しちゃうのかな!?一番知りたいのはそこなんだけど!
 とはいえちゃんと封印できるってことが分かっただけでも収穫か。

「しかし堕落しきったリンデフランデの国を粛清ですか……昔のリンデフランデは守護神が破壊神へと変貌してしまうほどの堕落ぶりだったんでしょうか」
「今でこそカジノなんてあるんだから、ある意味では堕落してると言えなくもないよね」

 この国に来てから立て続けに色々と起こっているせいで、カジノの存在をすっかり忘れていた。
 カジノなんて人間の欲望とかそういうのが渦巻いてそうだからな……仮に俺が神獣で1000年の眠りから覚めてそんな堕落の象徴みたいなものを見たら、問答無用で消し去りに行くかもな。
 思わず堕落の象徴なんて言ってしまったが、俺のいた世界で考えればカジノのもたらす経済効果ってバカにできない額だから、国にとっては結構有益な存在ではあるらしいけどね。

「ちょっといいですかねー?」

 今まで黙っていたシエルが手を挙げて発言権を求めてきた。

「なんだねシエル君?」
「その神獣は破壊神の状態で封印されたってことなら、もし復活したらカジノとか関係なしに国を滅ぼそうとすると思いますよー」

 なんか呑気な口調でこの国の未来に暗い影を落とすような発言をかましてきた。

「だからもし封印を施すなら元の守護神の状態に戻ってもらってから封印しないとダメかもですねー」
「守護神に戻すって……どうやって?」
「さあ?」

 お前そういうとこやぞ?

「1000年前に成し遂げられなかったこの国の粛清を完遂できれば守護神に戻ってくれると思いますよ?大体神と名の付く存在は己が使命に愚直なところがありますからね」

 神様見習いがそんなこと言っていいのかよ?……というツッコミをしそうになったが、すんでのところでそれを飲み込んだ。

「でも国がなくなっちゃった後に守護神に戻っちゃっても意味がないんじゃないかな……?」
「はい、なのでそうなる前に守護神に戻ってもらう必要がありますね」

 封印の唄とやらがどんな歌かわからない以上は、そっちの可能性に賭けるしかないよなぁ……。
 なんか三歩進んで十歩くらい下がった感じだな。
 とここで閃いたことがあるので、ダメもとでシエルに念話で聞いてみることにする。

『なあ?シエルがその神獣に直接交渉して機嫌を直してもらうことってできるの?』
『うーん、私がこの世界を管理してる神ならできなくはないと思いますけど、多分神様見習いの私の言葉なんてガン無視されると思いますね』

 そういう手段があれば保険として残しておこうと思ったが、どうやら無理っぽいな。
 もとよりそんなに期待してたわけじゃないけど。

『しかし宗一さんは次から次へと変なことに首を突っ込んでますよねぇ。見守らなきゃいけない私としては見ていて退屈しないんですけど、もう少し自重してほしいです』
『俺だってそうしたいんだけどね』
『まあ大っぴらに手を貸すことは無理ですが、私でもできそうな援助があるかどうか少し検討しておきます』
『ありがとな、シエル』

 シエルも色々と制約とかあるだろうし、援助については期待しすぎないでおこう。

「本当はその遺跡に行って調べることができればそれが一番いいんですが、シューイチさんの話だともう入れないんですよね?」
「あからさまに入り口が落盤して塞がってるんだとさ。まったくどこのどいつの仕業なんだか」

 ロイのあのアルカイックスマイルが脳裏をよぎる。
 しかし奴の思惑通りなんだろうけど、こちらは完全に後手に回ってしまってるよな。

「あいつが自信満々に神獣を復活させるって言った以上は、復活させる手段をあいつが持っていると仮定したほうがよさそうだな」
「問題はそれをいつ仕掛けてくるか……ですよね」

 それについては、一応このタイミングで仕掛けてくるであろうというアタリはつけてある。
 そのことを含めて、一度ルーデンスさんのところに行かないとだな。 

「この図書館でできることはもうなさそうだし、報告ついでに一座に行こう」
「……フリルお姉ちゃん大丈夫かな……」

 テレアのその一言が、俺たちの間に重苦しい空気を纏わせる。
 カルマ教団の一座への襲撃の心配は無くなったけど、それでフリルが元気になれるか……というとそこはハッキリ言って微妙だ。
 朝の襲撃事件が相当堪えたみたいだし、とりあえずは一座はもう安全だということだけでも伝えてあげたい。

「それじゃあ私は例のごとく帰りますね」

 そう言ってシエルが立ち上がる。
 なんだかんだで今日は俺の記憶の封印も解除してもらったし、色々と貴重な情報を提供してもらえたので正直助かった。

「あっあのシエルお姉ちゃん!この間はテレアのこと助けてくれてありがとう!」

 立ち上がったシエルを見上げながら、テレアがいきなりお礼を言い出した。
 この間……ああ、遺跡での戦いのときか。
 そういえばずっと直接会ってお礼を言いたいって言ってもんな。

「いいんですよ~!こちらこそ宗一さんのこと色々と助けてもらってるようでありがとうございます~!今後とも宗一さんのことよろしくお願いしますね?」
「うっうん……!」

 お前は俺のオカンか。
 物凄くデレデレした顔をしつつテレアの頭を撫でるシエルを見ながら「神様ってなんだろう?」と俺は思ってしまった。
 そんなことを思っていたら、シエルが「それじゃあ失礼しまーす♪」とか言いつつ、スキップしながら上機嫌で図書館から出ていった。
 ……今度からなにかシエルに頼み事があった場合は、テレアを経由すれば簡単に聞いてもらえるんじゃないかな?

「……シエルお姉ちゃん「帰る」って言ってたけど、どこに帰るのかな?」

 テレアの素朴な疑問に答えられない俺とエナは、目を逸らすことでそれをごまかしたのだった。


 シエルと別れた俺たちは、再び一座の仮設宿舎へと赴く。
 何度も通ってるおかげで完全に道のりを覚えてしまった。
 出迎えてくれたラフタさんに連れられて、ルーデンスさん元へ来た俺たちは、一座がもう安全であることを伝えた。

「そうかそうか……お前さん方には世話になりっぱなしじゃのう」
「とはいえ国が騎士団と憲兵団を教団に向かわせて抑えるまでは、油断できませんけどね」

 そのわずかな時間で奴らが何かを仕掛けてこないとも限らないからな。
 俺たちの会話の様子を見ていたテレアが言いにくそうにしつつも、意を決したように口を開いた。

「あの……フリルお姉ちゃんは?」
「ちょっと前までは元気を無くしておったが、今は幾分か元気になっておるよ」

 テレアは本当にさっきからフリルの心配をしているな。
 優しい子だから、どうしても気になってしまうんだろう。

「今はテントにいるはずだから、良ければ会いに行ってあげてくれんか?」
「そうだな……俺たちはまだ話すことがあるし、行ってきたらどうだテレア?」
「うっうん!」

 俺とルーデンスさんの提案を受けて、テレアが顔をほころばせて大きくうなずいた。

「心配なので私も一緒に行ってきますね?」
「ああ、俺も後から行くよ」

 テレアに続いて部屋から出ていったエナを見送った後、俺はルーデンスに向き直り本題に入り始める。
 ルーデンスさんの傍らにはラフタさんもいる。丁度いい機会だし揃って聞いてもらおう。

「ここからが本題なんですけど、連中……というかロイが神獣の復活を仕掛けてくるタイミングが大体予想できました」
「ほう?」
「本当か?何時なんだよ!?」

 俺の言葉に、ルーデンスさんとラフタさんが身を乗り出してきた。

「多分、次の一座の公演を狙ってくると思います」

 正確には公演の最後にフリルが歌う瞬間だ。
 俺がロイだったら絶対にそのタイミングを狙う。
 恐らく教団支部はこの後国の騎士団に抑えられるだろうから、もう教団の人間を使ってフリルを捕まえることはできなくなるだろうし、一人で一座や俺たちを相手取ってフリルを狙うことはリスクが高いだろうから、自分からは行かずにフリルから出てくる瞬間を絶対に逃さないだろう。

「歌魔法で神獣を封印できるということは逆もまたしかりってことで……ロイは公演の最後のフリルの歌に便乗して神獣を復活を目論んでると思うんですよ」
「シューイチの話だと、あいつ神獣を復活させるって言ったんだよな?」
「はい、なので確実に神獣を復活させる方法をロイが知ってると思って間違いないです」

 しかしそうなってくると、シエルが帰るのを引き留めてここに連れてきて、フリルの記憶の封印を解いてもらうべきだったかも。
 後悔先に立たずとはまさにこのことだが、今更どうこう言っても仕方ない。

「ふむ……念には念を入れて次の公演のフリルの歌はやめておいた方がいいかもしれんのう」
「もったいないけど、公演自体を取り止めるよりはよっぽどましかもな」

 言いながら二人がため息を吐く。
 フリルの歌を楽しみに一座の公演を見に来てくれるお客さんには申し訳ないが、俺もそれが一番いい方法だと思う。

「ちなみにですけど、次の公演って何時なんですか?」
「明日じゃよ」
「明日だな」

 こりゃまたタイムリーなことで。
 まあ予定として決まっていただろうしそこは仕方ないか。

「あの、出来ればでいいんですけど、明日は一座が公演をしてる間は俺たちでフリルを守ろうと思うんですけど」
「そうだな……公演中は一座全員出払うし、フリルを出さないとなるとどうしても一人なっちゃうよな……」

 俺たちがついていれば、恐らくロイも迂闊にはフリルに手を出しては来れないはずだ。
 それをラフタさんもわかってくれたようで―――

「わかった!シューイチたちなら安心だし、明日は私たちが公演中の間だけでもフリルのこと守ってやってくれよ!」

 俺の提案に元気よく賛成してくれたのだった。
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