無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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笑顔~一緒に行こう~

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 カルマ教団の脅威の心配もなくなり、ロイの奴も結果的に目的を成し遂げいなくなったことから、ルーデンスさんの心残りと言ったらフリルと一座のことくらいだと言うのは想像に難しくない。
 しかもこの二つは切っても切れない密接なつながりがある。

「一座の解散はもう決定事項じゃ、次の公演を最後にこのルーデンス旅芸人一座は解散する」
「……はい」
「……と思っていたのじゃがな……少しばかり事情が変わったのじゃ」
「……はい?」

 どういうことだろうか?
 もしかして一座解散を撤回するのか?
 でもこの人が今更それを撤回するとは思えないんだが……。

「ルーデンス旅芸人一座はアタシが引き継ぐことにした」
「……はいぃ?」

 さっきから色んなバリエーションの「はい」しか言ってないな俺?
 ていうか問題はそこじゃない。

「え?じゃあこれからはルーデンス旅芸人一座はラフタ旅芸人一座になるんですか?」
「名前は変えないよ、ルーデンス旅芸人一座という名前はこの一座の誇りだ!それをアタシの勝手で変えるなんてとんでもないことさ」
「つまりラフタがこの一座を引き継ぎ、座長二代目に襲名するということじゃよ」

 正直な話この一座がなくなるのは色んな意味で惜しいと思っていたので、このこと自体は非常に喜ばしいことなんだが……。

「とは言っても座長はもう旅なんて出来ないしアタシだってまだ勉強不足だ。数年はこの国に腰を据えて、座長に色々と学んでからようやく巡業に行けるって感じになると思う」
「ルーデンスさんは名誉顧問に就任するってことですね?」
「そういうことじゃな」

 聞けば聞くほど喜ばしいけど、それだけになぜそこからフリルの話題へと繋がるのかちょっとわからない。
 形は変わるけど一座だって存続するし、しばらくはこの国に腰を据えるってことだし、フリルにっても悪くない結果になると思うんだけど?
 ……ああ、だからフリルは王様に一座の土地代免除を願い出たのか!ってことはフリルはこのこと知ってたんだな!

「……ん?じゃあなんでフリルは王様にルーデンスさんだけじゃなく自分がこの国で暮らしていく上での保障を申し出なかったんだ?」

 先ほども思っていた疑問が自然と口を突いて出来てきた。

「やっぱりそうか……フリル、本当にそれでいいのか?」
「……うい」

 ラフタさんの言葉にフリルが小さく頷いた。
 どういうことなんだ……?俺の知らないところで話が進んでる気がして少しモヤモヤする。

「えっと……つまり?」
「こいつ、一座とこの国から出ていくって言ってんだよ」
「はぁ!?」

 なんでそんな話になってんの!?フリルが出ていく必要なんてないじゃん!?
 ちゃんと本人の口から聞いたわけじゃないけど、この展開はフリルが望んでいたことだと思うんだけど?
 ……とここではっと気が付く。

「フリル、まさか責任感じてるのか?」
「……」

 フリルがふいっと俺から目を逸らす。
 やっぱりそうか……ダックスが襲われた時から思っていたが、フリルは責任感が強くしかも一人で抱え込む傾向がある。
 元々無口な上、感情もあまり表に出さないから、中々周りも気が付かないと思う。
 今回の神獣関連の事件の元を辿ると、どうしてもフリルの存在に行きつく。
 フリルが一座と共にこの国に来たことでロイと教団に目を付けられ、散々嫌がらせをされただけでなくコックルやピースケを暴走させられ、あげくダックスが襲われ怪我をし、洗脳されていたとはいえ自らの歌で神獣を蘇らせて、公演会場を滅茶滅茶にしてしまった。
 こういう言い方はアレだが、フリルが居なければこれらのことは起きなかったのだ。
 
「はぁ……アタシも座長も朝に言ったけど、アンタには何の責任もないんだぞ?これまで通り一座にいればいいじゃないか?」
「……ラフタは当事者じゃないからそんなことが言える……私がこの数日どんな気持ちだったのかなんてわかるわけない」
「なんだと?」
「ちょっと二人とも落ち着いて!」

 一瞬で二人がヒートアップしたので慌てて止める。
 なんなの二人とも瞬間湯沸かし器なの!?

「フリル、気持ちはわかるけど今の言い方はダメだぞ?ちゃんとラフタさんに謝るんだ」
「……ごめんなさい」
「ラフタさんだって売り言葉に買い言葉になりかけでしたよ?ラフタさんだってフリルと付き合いが長いはずなんだから、ここ数日フリルがどんな思いだったかくらいはわかりますよね?」
「あーすまん……ちょっと頭に血が上った」

 そういえば今日ずっとフリルのテンションが低かった気がしたけど、朝にもこの話をしたとラフタさんが言っていたし、まさかその時にもこうして喧嘩に発展したんじゃないだろうな?
 とりあえず話をまとめよう。

「つまり……フリルは自分のせいでみんなに迷惑を掛けたから、もう一座に居られないと思ってるんだな?」
「……うい」
「そしてラフタさんはそれに納得が行かず、フリルが出ていくことなんてないと引き留めてるわけだ?」
「そうだな」

 これはあれだな、お互いにお互いが大事過ぎてそれぞれの気持ちにまで気が回らないんだな。
 多分この二人で話をさせても平行線を辿るだけだと思うから、ここは第三者の意見を聞いてみるべきだ。

「ルーデンスさんはこのことをどう思ってるんですか?」
「そうじゃな……ラフタの気持ちはわかる。結局のところ今回の一件がフリルのせいだというのは結果論でしかない」
「はい、俺もそう思います」
「そして儂は一座の座長であると同時に、フリルの一番の味方でありたいと思っておるんじゃよ……」

 ルーデンスさんのその言葉にフリルが俯く。
 うん、ここに来てなんで俺がこの場に呼ばれたのか理解できて来たぞ。
 はっきりって言ってこの三人で話をしても何も決まらない。
 だから今回の事件に一番関りが深い俺に白羽の矢が立ったわけか。
 ……正直な話、この場を穏便に済ませる魔法のような言葉を俺は知っている。
 そしてルーデンスさんはその言葉を俺が言うのを期待してここに俺を呼んだんだ。
 でもその言葉を言うには色々と俺に覚悟と責任がのしかかる。
 迂闊なことはできない。

「仮にフリルは一座とこの国を出てどこに行くつもりなんだ?行く当てなんかあるのか?」
「……ない」

 THE☆ノープラン!
 責任感の強さから出た突発的な言葉だろうから、そうだとは思ったけどさ!

「お前なぁ……そんなことでルーデンスさんはおろかラフタさんがお前が出ていくのを素直に認めるはずがないだろ……?」
「……だって私がいたらまたこの一座に迷惑が掛かるかもしれない……だからもうここにはいられない」
「お前さんがそう思う気持ちもわかるけどさ、もうちょっと一座やルーデンスさんの気持ちも汲み取ってやってくれないか?どこにも当てがないのに出ていくなんて言われたら俺だって引き留めるぞ?」
「……じゃあどうしたらいいの?」

 そう言ったフリルの目が潤んで、涙がにじみ出てくる。
 この子の普段の態度から忘れそうになるけど、フリルはまだまだ子供だ。
 そんなフリルが、今回の一件を自分のせいだと思い一人で抱え込むには、あまりにも小さいし抱え込めるはずがない。
 ついにフリルは涙を抑えられなくなり、袖で溢れる涙をぬぐい始めた。
 その様子を見て、俺は覚悟を決める。
 古来より「涙は女の武器」と言われるがまさにその通りなんだよな。

「泣くほど思い詰めてたならまずは俺たちを頼れ?俺たちとフリルはもう何も知らない赤の他人同士じゃないだろ?」

 俺の言葉に、あふれ出る涙をそのままにフリルが俺を見上げた。
 そんなフリルの頭に俺は優しく手を置いた。

「俺たちと一緒に来るか?」
「……でもシューイチたちに迷惑を掛けるかもしれない」
「お前さん俺の何を見てきた?言っとくが俺は全裸になったら無敵になれるんだぞ?だからフリルがいくら俺に迷惑を掛けたところで俺には痛くもかゆくもないんだ」
「……変態?」
「もう変態でいいからさ、俺たちと一緒に行こうぜ?」

 腰を落とし、フリルの目線の高さに合わせて頭を優しく撫でていく。
 それでもフリルは中々首を縦に振らない。

「それに俺も今回の事件に首を突っ込んだせいで、一座に迷惑を掛けちゃったからな……だからその責任も取らないといけないし」

 実際のところこれは方便だが、そう思う気持ちもたしかにあるのであながち嘘でもない。

「俺の住んでた世界に「三度目の正直」って言葉がある。だから四度目はないからな?俺たちと一緒に来い」

 その言葉に少し間を置いた後、ようやくフリルが小さく首を縦に振った。

「ということになりました」

 言いながら俺は立ち上がり、ラフタさんとルーデンスさんの二人を見る。

「まあ……そこが落としどころだとは思ってたけどさ……本当にいいのかシューイチ?」
「なにか問題でも?」
「いやアンタがいいならアタシも文句ないよ!あの神獣をぶっ倒せるくらい強い男なら安心してフリルを任せられる!」

 ラフタさんが初めて会った時のように、豪快に笑いながら俺の背中をバシバシと叩いてきた。
 相変わらずすごく痛い。

「座長もそれでいいよな?」
「ああ、実のところお前さんならそう言ってくれると踏んでおった」

 ラフタさんの言葉にルーデンスさんがにこやかに笑いながら頷いた。
 そうだと思いましたー。
 一言くらい文句言っても許されると思うぞこれ。

「なんだか仕組まれたようで納得いかないんですけどね」
「そんなことはない、もしもお前さんが断っておったら、フリルを縛り付けてでも出ていくことが出来ないようにするつもりじゃった」

 まあ恐ろしい。
 ルーデンスさんはともかく、ラフタさんなら本当にそうしそうで怖いんだよな。

「縛られずに済んだみたいだな?俺に感謝しとけよ?」
「……バカ」

 目を真っ赤にしながら、フリルのが俺のみぞおちにポコッというオノマトペが出てきそうなパンチを入れてきた。



「はぁ……やっぱりシューイチさんはお人よしですねー」

 やっぱりまた言われた!
 一座のテントに足を運んだ俺とフリルは、復旧作業を手伝うエナとテレアを呼び止め、ことの経緯を詳しく聞かせた。
 そんなことを言いながらもエナの表情は笑顔だった。

「じゃあこれからはフリルお姉ちゃんも一緒に行くんだね?」
「そうだぞ?フリル、テレアが先輩風吹かせていびってくるかもしれないが頑張って耐えるんだぞ?」
「……大丈夫、いじめには屈しない」
「テレアそんなことしないよぅ!?」
「何で二人してテレアちゃんをいじめてるんですか!?」

 エナに怒られてしまったので、この辺にしておこう。

「……二人ともこれからよろしく」

 そう言ってフリルが頭を下げる。

「はい!よろしくお願いしますねフリルちゃん!」
「うん!テレア、フリルお姉ちゃんと一緒に旅ができて嬉しいよ!」

 心配なんかしてなかったが、二人も快くフリルの加入を受け入れてくれたようだ。
 うんうんと頷いていると、フリルが俺の服の裾を引っ張る。

「……シューイチ、ありがとう」

 そう言ってほほ笑むフリルの笑顔は、色々と問題は残っているものの、そんなものは放り出してもいいんじゃないかと思ってしまうくらい、可愛い笑顔だった。
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