無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

文字の大きさ
48 / 169

神獣~覆っていく歴史~

しおりを挟む
 俺たちがリンデフランデを出国し、初日の夜を迎えた。
 街道の休憩スペースに辿り着いた俺たちはそこにキャンプを張り休むこととなった。
 この初日で色々とフリルについてわかったことがある。
 さすが物心ついたときにはすでに旅芸人一座にいたこともあり、旅の基本的な心得については完全に理解しており、馬も扱えるしキャンプを張る際もてきぱきと効率よく動くし、なによりも現状俺たちの誰よりもキャンプ料理に精通していた。
 俺たちは旅に出てようやくまともなキャンプ料理にありつけることができたわけで……。

「うめぇ!飯が美味いって素敵なことだよな!」
「フリルお姉ちゃん凄いよ!美味しい!」

 泣きながらフリルの簡単なキャンプ料理を貪る俺とテレアに、フリルが若干引き気味になっていた。

「……このくらいはちょっと聞きかじればできるけど?」
「私だってちょっと練習すればこのくらいは……」

 俺たちのリンデフランデまでの道のりの料理事情はそりゃあもう酷い物だったからなぁ。
 誰のせいとは言わないが、主にエナのせいで。
 やっぱりご飯が美味しいって素晴らしいことだよな!

「ご馳走様!食った食った!」
「ごちそうさまでした!美味しかったよフリルお姉ちゃん!」
「……おそまつさま」

 お腹が満たされた俺たちの間にまったりムードが漂い始める。
 エナはなにやら魔法書を開いて読みふけっており、テレアはフリルにキャンプ料理について教わっていた。
 俺はというと特にやることもなくうつらうつらしていたが、ふと思い出したことがあるのでちょっと聞いてみることにする。

「そういえばフリルに聞きたいことがあるんだけど」
「……スリーサイズはNG」
「ちげーよ!この前神獣を歌で鎮めた後、光になった神獣がフリルの中に吸い込まれていっただろ?あれ何だったんだ?」
「え?なんですかそれ?私初耳なんですけど?」

 俺の言葉になぜかエナが反応を示した。
 そういえばエナはあの時謎の力を使った影響で寝てしまっていたんだっけ。

「……なんか私に力を貸したいって言ってた」
「あれ以来何か身体に異変とかないか?」
「……?」

 どうやらなにもないっぽい。
 でも確実になにかあるはずなんだよな……フリル曰く神獣本人が力を貸したいと言ったわけだし。
 そういえば、あの時シエルからもらっていた謎の魔力みたいなのも今は全然感じられない。

「一つ聞きたいんですけど、フリルちゃんって自分の魔力を知覚できてますか?」

 エナの問いかけにフリルは首を左右に振ることで答えた。
 歌魔法を使うときだって無意識にやってるみたいだし、元々魔力を知覚するのだって魔法学校に行って教わらないといけないらしいしそこは仕方ないだろう。

「なあエナ?俺に前にしてくれたようにフリルにも魔力を知覚させてあげることできないかな?」
「できなくはありませんけど……本来あれは門外不出の裏技なのでおいそれとやるわけにはいかないんですけどね……」

 でもこれはなんとなくなんだけど、フリルは魔力知覚できるようになっとくべきだと思うんだよね。

「多分必要なことですし、やっておいて損はないですよね……じゃあフリルちゃん、他の人に見られるわけにはいかないのでちょっとテントまで一緒に来てくれませんか?」
「……貞操の危機?」
「なんでそうなるんですか!……とにかく一緒に来てください」

 なにやら疲れた様子のエナと共にフリルがテントの中へと入っていく。

「エナお姉ちゃんたち、何かするのかな?」
「うーん……なんというべきか……」

 そういえばリリアさん曰く、テレアは誰に教わるわけでもなく自力で魔力の活性化ができるようになってたらしいんだよね。末恐ろしい子だ。
 俺が魔法を使えるようになった経緯をテレアに説明していると、なにやら感動した様子のフリルがテントから出てきて、その後に続くようにエナもテントから出てきた。

「さて……魔力の活性化ができるようになったわけですけど……どうですかフリルちゃん?」
「……ちょっと待って……」

 エナに聞かれたフリルが目を閉じて集中し始める。
 まだ慣れておらず手間取ってるものの、ほどなくしてフリルが魔力の活性化をすることができた。

「……うん……うん……わかった」

 なにやらフリルが誰かと会話しているかのように、うんうんと頷いている。
 誰と話してるんだ?イマジナリーフレンドか?

「……えっと姿を見せるって」
「誰が?」
「……亀が」

 フリルがそう答えた瞬間、俺たちの目の間に小さな光が現れ、徐々に何かを型取り始める。
 ほどなくしてそれはあんまり見たくなかった亀の形に収まった。

「神獣じゃねえか!!」

 俺の叫びと共に、フリルを除いた全員が立ち上がり距離を取り戦闘隊形に移行した。

『待つが良い!我はお主たちに危害を加えるつもりはない!警戒を解くのだ!』

 なにやら慌てた様子でフリルの中から現れたミニ神獣がそう言ったので、俺たちは恐る恐る元の位置に座りなおした。

「いきなり電撃落としてきたりしない?」
『暴走した我と一戦交えたのだ……気持ちは察するが今の我にはそんな力はない!安心するがよい』
「それならいいんだけど……」

 俺たちが戦った神獣は赤黒くそりゃあもう刺々しく恐ろしい外見をしていたが、今俺たちの目の前にいるそれは全身真っ白でありなんだが丸みを帯びたデザインになっている。
 このまま業者に売り込んでマスコットにできるんじゃないかって感じのデフォルメ加減だ。

「えっと……神獣でいいんですよね?」
『そうだ。前々から外に出る機会を伺っておったが、この娘が魔力を扱えるようになったことでようやくこうして外に出ることができるようになったのだ。まずはお主たちには礼を言いたい……暴走していた我を鎮めてくれて感謝する』
「お前倒しても倒しても再生すんのやめろよ!マジ苦労したんだぞ!!」
『それを今言われても……というかお主は何者なのだ!?暴走し力も増していた我をあそこまでたやすく倒せるものなど人間とは思えぬ!』
「まあ……?いまそこはいいじゃん……?」
『良くはないが……まあとにかくお主たちには礼を言う』

 そう言ってミニ神獣がペコリと頭を下げる。

『我の名は玄武という。この世界を守護する四神獣の内が一人である』
「「「え?」」」

 その自己紹介に俺とエナとテレアの三人がそろって声を上げた。

「四神獣……って」
「まさかとは思いますけど、あなたみたいなのが」
「あと三匹いるの……?」
『その通りだ。我玄武を含め、青龍、鳳凰、白虎の四人がおる』

 うわー……前に俺が思った通りじゃん……本当に四匹いるのかよ!

『それにしても見事な唄であった……暴走していた我をあそこまでたやすく鎮められるとはな……だから我はその娘に敬意を示し力を貸すこととしたのだ』

 まあ実際に神様見習いが力貸していただけあって、文字通りあの時のフリルは神がかってたからな。
 ていうかさっきから気になるワードを連発してるよなこいつ?

「あのさ……さっきから暴走してたって言ってるけど、しん……玄武って堕落しきったリンデフランデを粛清するために破壊神になったんじゃないの?」
『なぜそのようにな話になっているのかはわからぬが、我は元々あの国を守護していたわけではないし、我の意志で人間たちに危害を加えることはしない。邪神カルマによって我は暴走させられていたところを、たまたまあの国に封印されていたのだ』

 リンデフランデの歴史観があっさり覆る発言が飛び出してきた。
 
「ちょっと待ってください!邪神カルマは大昔に封印されて以来一度も封印が解かれてないはずなんですけど!?」
『たしかに封印は解けてはおらぬが、あやつは封印のほころびから己の力を流出させ、今この時にもこの世界に悪影響を及ぼしておるぞ?』

 何か聞きたくない事実がどんどん明かされてるんですけど!?
 ていうか封印のほころびから力を流出させてって……なんかせこいやり方してんなその邪神。

「とっ……とにかく!こんな話はこんな誰が聞いてるかもわからない場所でするもんじゃないよな!」
「そっそうですね!この話はまた改めて!!」

 ていうかこんな物騒な話二度としたくない!

「玄武がフリルに力を貸すって……要するにフリルが玄武を召喚することができるようになったのか?」
『この娘の今の力量で我本来の姿で召喚することは無理だが、我の酷使する力の一端を使うことはできるはずだ』
「例えば、あの雷を落としたり……とかかな?」
『あの力は邪神に力を植え付けられ暴走していた時のみの物だ。本来の我は守りにおいてその力を発揮する』

 まあ亀だしね。

「……雷落としてみたかった」
『そんなにがっかりされても困るのだが……もしや我は変な娘の中に入ったのか?』

 そのもしやですがなにか?

「まあ変な子ではあるけど良い子だから大丈夫だよ?」
『この娘が清い心を持っていることは我が一番知っておるが……まあよい』
「……ごめんそろそろ無理」
『むっ?そうか……やはりまだ我を長い間具現化できるほど魔力を操作することは出来ぬか……まあ仕方ない』

 どうやらこの姿でも神獣を具現化させるのは今のフリルには負担が大きいらしい。

『とにかくそういうわけだ……今後、我の力が必要な時は遠慮なく頼るが良い』
「……うい」

 その言葉を最後に、神獣は再び光となってフリルの中へと戻っていた。
 フリルが疲れたため息を吐くと、しばらく俺たちの間を沈黙が包み込む。

「なんだかとんでもない話を聞いてしまったような気がしますね」
「こりゃカルマ教団との縁も長いこと続くんだろうな……」

 俺とエナがそろってため息を吐いた。

「えっと……二人とも元気出して……ね?」
「……疲れた……眠い」

 そんな感じでその日は過ぎていったのだった。



 明けて翌日。
 俺たちの馬車の旅は順調に進んでいく。
 ゆっくりと流れていく景色を眺めつつ、うつらうつらとしていると、馬車を引いていたテレアが馬を止めた。

「どうしたんだテレア?」
「うん……なんかね、この先で誰かが揉めてるみたいなの」

 その言葉に俺たちの間で緊張が走る。
 目を凝らしてテレアが指さした方角を見るものの、俺には何も見えない。
 テレアは普段から自身の魔力を巧みに操作して、視力を一時的に強化したり、感覚をより鋭くしているらしい。
 その能力は戦闘中にいかんなく発揮されており、それがテレアの強さに繋がっているのだ。
 そのテレアがこの先で誰かが揉めてるというのだから間違いないだろう。

「どんな感じかわかるか?」
「えっと……誰か一人を複数の人が囲んでるみたい」

 聞いた感じ穏やかじゃないな……。

「よし、様子を見に行ってみるか!俺とテレアの二人で行ってくるから、エナとフリルはここに残って、いざという時に備えておいてくれ!」
「わかりました!」
「……うい」

 馬車から降りた俺とテレアは気配を殺しながら、その場所へと近づいていく。
 ちょうど大きな木が生えていたのでそこに身を隠し、息を殺しながら俺たちは様子を伺う。

 そこにはマントを全身に羽織った一人の女の子を、盗賊みたいな奴らが四人で囲んでる光景が広がっていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

【完結】小麦姫は熊隊長に毎日プロポーズする[スピラリニ王国3]

宇水涼麻
恋愛
ビアータに毎朝プロポーズされるアルフレードは、プロポーズされることに違和感があり戸惑っている。 しかし、そんなことも三月も続けば、戸惑いはなくとも、疑問は残る。 ビアータは本気でプロポーズしているのか? アルフレードは悩みながらも強くは拒否できないでいた。 そして、夏休みを迎える。 中世ヨーロッパ風学園ラブストーリーです。 『虐げられたご令嬢はお隣さんと幸せになる』と同時代同学園でのお話になります。 でも、ほぼ被りませんので、そちらを読んでいないことは問題ありません。 毎日午前中に更新予定です。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

処理中です...