57 / 169
朱雀~堕ちた神様見習い~
しおりを挟む
この世界の神様に力を借りた代わりに、残り三匹の神獣の暴走を鎮める取引をしただぁ?
「今日ほどお前が余計なことしかしないと思った日はないぞ!?」
「だって仕方ないじゃないですか!あの時はあれしか方法がなかったんですから!あのままじゃシューイチさんはともかく、他のみんなは神獣にやられちゃって、最悪リンデフランデが地図から消えていたかもしれないんですよ!?」
「そっそりゃあ、たしかにそうだけど……」
よく考えればシエルだって、この世界に積極的に関われないという制約がある中、打てる手を打ってくれたんだから、怒るのは筋違いだよな……。
「とりあえず怒って悪かったよ……しかし残り三匹の神獣を鎮めろか……」
正直玄武をなんとかするのでさえ多大な苦労があったのに、それをあと三回やらないといけないのか。
……あれ?ちょっと待てよ?
「残りの神獣ってどうなってるの?玄武みたいに封印されてるのか?」
「この世界の神様が言うには、カルマに暴走の種を植え付けられたまま封印されてるそうですね」
「なら無理して封印を解くことなくないか?放っておけばいいじゃん?」
俺の意見にエナとテレアがそろって首を縦にぶんぶんと振った。
だがフリルだけは心ここにあらずと言った雰囲気だったが、突如手を挙げて俺に発言権を求めてきた。
「……シューイチ、亀が話したいことがあるって」
「亀って……玄武?」
「……うい」
フリルが頷くと俺たちが座るソファにの間にある小さな白いテーブルの上に光が集まっていき、ミニサイズの玄武が顕現した。
『ふむ、大分スムーズに我を顕現できるようになってきたなフリルよ。この調子で精進するが良いぞ』
「……別に亀のためにやってるわけじゃない」
『のう?この娘基本的に冷たくないか?』
諦めろ、基本的にフリルは俺たち以外には辛辣なんだ。
『それはともかく……異世界の神の眷属とお見受けする……残りの神獣たちについて話しておきたいことがある』
「あらあら、これはどうもご丁寧に……」
シエルがミニ玄武に向けてペコリと頭を下げる。
羽の生えた少女が、ミニサイズの喋る亀に丁寧に頭を下げるシュールな光景だな……。
『我はこのフリルの鎮めの唄によって救われたが、残りの神獣たちをこのまま放っておくと恐らくまずいことになる』
「その辺はこの世界の神様にも聞いてますよ?暴走状態のまま無理やり封印されたから、そう遠くないうちに封印が破られて神獣が復活するって話ですよね?」
『左様……我は無理やり封印を解かれたが、おそらくそう遠くない日に我の封印は解けていたであろう』
いまちょっと聞き捨てならないことを言ったなこいつら?
「ちょっと待って!え?じゃあ他の神獣は放っておくと封印を自力で解いて暴れ出すってことなの!?」
『邪神に暴走の種を植え付けられておるからなぁ……図らずともそうなるだろうな』
ということはだ?事情を知っている俺たちがわざわざ神獣を探し出して鎮めていかないとダメなのか?
はっきり言ってクッソ面倒くさいぞそれ!?
「ちなみにどのくらいの猶予があるんだ?」
「神様が言うには一年も経てば三匹の封印が一斉に解けるらしいですね」
「一年以内に残りの神獣を探し出して、かつ封印をあえて解いて鎮めないといけないってことなのか?」
さすがに無理ゲーすぎるだろそれ!せめてもうあと半年追加してくれ!
いやむしろ目覚めないでそのまま眠っていてくれ!頼むから!!!
『幸いと言ってよいかはわからぬが、この国に朱雀の反応がある』
その言葉に全員が一斉に反応してミニ玄武を凝視する。
『しかし随分と地下深くにおるようだ……空を自由に飛び回ることが出来る朱雀がなんとも皮肉なことよな……』
「地下深くですか……もしかしてダンジョンの最下層とかにいるんじゃ……?」
「えっ?この国にダンジョンなんてあるの?」
この緊急事態なのに、エナの発したダンジョンという単語が、俺の中二心を刺激する。
「何でちょっと嬉しそうなんですか……とはいえ、ダンジョンは資源みたいな側面もあるのでどの国も一つや二つは管理してると思いますよ?」
もしかして今まで行った国にもあったのかもな……行ってみたかった。
「とりあえず朱雀がこの国にいるなら、近いうちに何とかしに行かないとだよな……ダンジョンって俺たちでも入れるのかな?」
「どうでしょうね……浅い階層までは行けるかもですが、多分最下層まではいかせてもらえないと思います」
「危ないからかな?」
「それもありますが、意外と国が管理してるダンジョンって国の重要機密が眠ってたりするらしいですよ?ある意味ではそういったものを隠すにはうってつけの場所ですからね」
そりゃあ一般人がダンジョンなんかに用なんてないだろうし、腕に覚えがあってもダンジョンの奥深くは危険だろうしね。
しかしそういう事情があるとなると、容易にはダンジョンの最下層にはいかせてもらえないかもな。
「とりあえず朱雀のいる場所はわかったんだ!鎮めに行くことは当然として、まずはダンジョンの最下層まで行くことが出来るかどうかを確認しないとな!」
「やっぱり鎮めに行かないとダメなんですね……折角ここでの生活も落ち着いてきたばかりだったのに……」
「ねえ玄武さん、他の神獣のいる場所はわからないのかな?」
テレアに聞かれた玄武が、目を閉じて何かを探るようなしぐさを見せるが、静かに首を横に振った。
『すまぬな……あまりに距離があると今の我の状態では見つけることができぬ』
「そっか……」
「……もっと頑張って亀」
『いや、お主の魔力がもっと高まってくれれば我ももっと遠くまで探ることが出来るのだが……』
「……人のせいにするの良くない」
『のう?この子どうすればよいのだ?我には手に余る!』
気にするな、フリルは俺にだって手に余るんだから。
とにかく今後の方針みたいなものは決まったな。
しかしエナじゃないけど、ようやくこの拠点の改造も終わってエルサイムでの生活にも慣れてきたところだったんだけどな……。
とはいえ折を見てアーデンハイツには行くつもりだったから……ってアーデンハイツに神獣がいなかったら意味がないんだけどね。
『ではそろそろ我は失礼する……また何か聞きたいことがある時は、フリルを通して我を呼ぶが良い』
そう言い残して、ミニ玄武は光と共に消えていった。
それを見送った俺はため息を吐き、ソファに深く座りなおす。
「早速明日からでも行動を開始しないとな」
「ダンジョンのことはルカーナおじさんに聞いてみるといいんじゃないかな?」
「たしかに、俺たちよりもあの人の方がこの国では顔も効きそうだしな」
間違いなく面倒くさそうな顔されるだろうけど、あの人多分ツンデレだからなんだかんだ言って協力してくれそうだ。
「なら明日ルカーナさんに……」
「あのーちょっといいですかね?」
俺たちが今後の予定を話し合っていると、シエルが恐る恐る声を上げる。
「実は折り入って皆さんにお願いがありまして……」
「どうしたんだよ改まって?……っていうかまだ何か厄介なことでも……?」
「違うんですよ……実はですね……私をしばらくこの家に置いてほしいんですよ」
「……はあ?どういうことだよ?シエルはちゃんと帰る場所があるんだろ?」
いつも要件が済んだら「じゃあ帰りますねー」と言ってどこかへ消えていくというのに。
「これもあの時神様から力を借りた代償というべきなんでしょうか……残りの神獣をすべて鎮めることが出来ないと私天界に帰れないんですよ……」
「そうなんですか?」
「はい……実は玄武を鎮めた後こっちに来なかったのは、もう一度この世界に来たら天界に帰れなくなるからなんですよね……そういう契約をこの世界の神様としてしまったので」
聞くところによると、神獣を鎮める力を借りる為にこの世界の神様と「残りの神獣を鎮める」ことと「それを完遂するまでこの世界に留まり最終的な責任を取らなければいけない」ことの二つを約束させられたらしい。
シエルも大概だとは思うが、この世界の神様とやらも随分と他力本願だよなぁ……。
少しばかりシエルに同情してしまう。
「しかも私は直接手だしすることを禁じられてまして……神の力の大半を封印されちゃったんですよね」
「神の力を封印されたって……例えば?」
「そうですねぇ……以前エナさんを連れてマグリドまで転移したことありましたけど、あれすら今の私にはできません。あれが出来ないと私天界に帰れないので」
「マジか……」
あの転移能力があれば、残りの神獣の場所を突き留めたらシエルの転移で飛んで……とか密かに考えてたんだけどその手は使えないのか。
あくまでもこの世界の神様とやらは俺たちの力で事態の解決を望んでるようだ。
「ぶっちゃけるとシューイチさんと念話が出来るだけの、普通の人間になってしまいました」
「じゃあ、シエルさんは今日ここに来るのに相当の覚悟で来たことになるんですね……」
今日念話を飛ばしてた時にやけに神妙な感じだったのもそれなら頷けるな。
しかしあの神獣を鎮める力を借りるための代償があまりにもでかすぎるだろ……なんだか申し訳なく思ってしまう。
「そういうわけなので、この件が片付くまでこの家に置いてもらえるとありがたいんですけど……」
「そういう理由なら仕方ないんじゃないかな?」
「まあ幸い部屋も余ってますからシエルさん一人くらいなら……」
「……私は反対」
まさかのその言葉に、俺たちは一斉にフリルを凝視した。
思いもしなかった人物からの反対意見に俺たちは唖然としてしまう。
「なっ……なんでですかぁ?」
シエルが泣きそうな顔してフリルに尋ねた。
いつもなんだか眠そうな目をしているフリルが、信じられないほど冷たい目をしながらシエルを見る。
「どうしたんだよフリル?シエルは俺たちを助けるためにこんな事態に陥ったんだから、この家に置いてあげるくらいは……」
「……とにかく私は反対」
そう言ってソファから立ち上がり、フリルは応接間から出て行ってしまった。
場に重苦しい空気がのしかかる。
「どっどうしちゃったのかなフリルお姉ちゃん……?」
「わっわっわっ私なにか悪いことしちゃったんでしょうか!?」
あの常になんか飄々としてるシエルが珍しく涙目でオロオロしている。
「そういえばシエルさんがシューイチさんの事情を話し終えた時からなんだか機嫌が悪そうというか……怒ってる感じでしたね?」
「それは俺も気が付いてたんだけど、とりあえずシエルの頼み事のが先だと思って聞くの後回しにしちゃったんだよね」
「私ここに置いてもらえないと行く当てなくて、路頭に迷うことになるんですけど……」
シエルの顔がどんどん青ざめていく。
いくら俺でもシエルを放りだすわけにはいかないから、この家に住まわせるくらいは全然問題ないんだけど、フリルがあれでは……。
「俺が事情を聞いてくるよ」
「私はどうしたらいいんでしょうか?」
「なんかシエルが来るとこじれそうだから、とりあえず応接間にいてくれ。別に追い出すなんてことはしないからそこは安心してていいぞ?」
そう言い残し、俺はフリルの後を追って応接間を出た。
一体どうしたというんだろうかフリルは?
「今日ほどお前が余計なことしかしないと思った日はないぞ!?」
「だって仕方ないじゃないですか!あの時はあれしか方法がなかったんですから!あのままじゃシューイチさんはともかく、他のみんなは神獣にやられちゃって、最悪リンデフランデが地図から消えていたかもしれないんですよ!?」
「そっそりゃあ、たしかにそうだけど……」
よく考えればシエルだって、この世界に積極的に関われないという制約がある中、打てる手を打ってくれたんだから、怒るのは筋違いだよな……。
「とりあえず怒って悪かったよ……しかし残り三匹の神獣を鎮めろか……」
正直玄武をなんとかするのでさえ多大な苦労があったのに、それをあと三回やらないといけないのか。
……あれ?ちょっと待てよ?
「残りの神獣ってどうなってるの?玄武みたいに封印されてるのか?」
「この世界の神様が言うには、カルマに暴走の種を植え付けられたまま封印されてるそうですね」
「なら無理して封印を解くことなくないか?放っておけばいいじゃん?」
俺の意見にエナとテレアがそろって首を縦にぶんぶんと振った。
だがフリルだけは心ここにあらずと言った雰囲気だったが、突如手を挙げて俺に発言権を求めてきた。
「……シューイチ、亀が話したいことがあるって」
「亀って……玄武?」
「……うい」
フリルが頷くと俺たちが座るソファにの間にある小さな白いテーブルの上に光が集まっていき、ミニサイズの玄武が顕現した。
『ふむ、大分スムーズに我を顕現できるようになってきたなフリルよ。この調子で精進するが良いぞ』
「……別に亀のためにやってるわけじゃない」
『のう?この娘基本的に冷たくないか?』
諦めろ、基本的にフリルは俺たち以外には辛辣なんだ。
『それはともかく……異世界の神の眷属とお見受けする……残りの神獣たちについて話しておきたいことがある』
「あらあら、これはどうもご丁寧に……」
シエルがミニ玄武に向けてペコリと頭を下げる。
羽の生えた少女が、ミニサイズの喋る亀に丁寧に頭を下げるシュールな光景だな……。
『我はこのフリルの鎮めの唄によって救われたが、残りの神獣たちをこのまま放っておくと恐らくまずいことになる』
「その辺はこの世界の神様にも聞いてますよ?暴走状態のまま無理やり封印されたから、そう遠くないうちに封印が破られて神獣が復活するって話ですよね?」
『左様……我は無理やり封印を解かれたが、おそらくそう遠くない日に我の封印は解けていたであろう』
いまちょっと聞き捨てならないことを言ったなこいつら?
「ちょっと待って!え?じゃあ他の神獣は放っておくと封印を自力で解いて暴れ出すってことなの!?」
『邪神に暴走の種を植え付けられておるからなぁ……図らずともそうなるだろうな』
ということはだ?事情を知っている俺たちがわざわざ神獣を探し出して鎮めていかないとダメなのか?
はっきり言ってクッソ面倒くさいぞそれ!?
「ちなみにどのくらいの猶予があるんだ?」
「神様が言うには一年も経てば三匹の封印が一斉に解けるらしいですね」
「一年以内に残りの神獣を探し出して、かつ封印をあえて解いて鎮めないといけないってことなのか?」
さすがに無理ゲーすぎるだろそれ!せめてもうあと半年追加してくれ!
いやむしろ目覚めないでそのまま眠っていてくれ!頼むから!!!
『幸いと言ってよいかはわからぬが、この国に朱雀の反応がある』
その言葉に全員が一斉に反応してミニ玄武を凝視する。
『しかし随分と地下深くにおるようだ……空を自由に飛び回ることが出来る朱雀がなんとも皮肉なことよな……』
「地下深くですか……もしかしてダンジョンの最下層とかにいるんじゃ……?」
「えっ?この国にダンジョンなんてあるの?」
この緊急事態なのに、エナの発したダンジョンという単語が、俺の中二心を刺激する。
「何でちょっと嬉しそうなんですか……とはいえ、ダンジョンは資源みたいな側面もあるのでどの国も一つや二つは管理してると思いますよ?」
もしかして今まで行った国にもあったのかもな……行ってみたかった。
「とりあえず朱雀がこの国にいるなら、近いうちに何とかしに行かないとだよな……ダンジョンって俺たちでも入れるのかな?」
「どうでしょうね……浅い階層までは行けるかもですが、多分最下層まではいかせてもらえないと思います」
「危ないからかな?」
「それもありますが、意外と国が管理してるダンジョンって国の重要機密が眠ってたりするらしいですよ?ある意味ではそういったものを隠すにはうってつけの場所ですからね」
そりゃあ一般人がダンジョンなんかに用なんてないだろうし、腕に覚えがあってもダンジョンの奥深くは危険だろうしね。
しかしそういう事情があるとなると、容易にはダンジョンの最下層にはいかせてもらえないかもな。
「とりあえず朱雀のいる場所はわかったんだ!鎮めに行くことは当然として、まずはダンジョンの最下層まで行くことが出来るかどうかを確認しないとな!」
「やっぱり鎮めに行かないとダメなんですね……折角ここでの生活も落ち着いてきたばかりだったのに……」
「ねえ玄武さん、他の神獣のいる場所はわからないのかな?」
テレアに聞かれた玄武が、目を閉じて何かを探るようなしぐさを見せるが、静かに首を横に振った。
『すまぬな……あまりに距離があると今の我の状態では見つけることができぬ』
「そっか……」
「……もっと頑張って亀」
『いや、お主の魔力がもっと高まってくれれば我ももっと遠くまで探ることが出来るのだが……』
「……人のせいにするの良くない」
『のう?この子どうすればよいのだ?我には手に余る!』
気にするな、フリルは俺にだって手に余るんだから。
とにかく今後の方針みたいなものは決まったな。
しかしエナじゃないけど、ようやくこの拠点の改造も終わってエルサイムでの生活にも慣れてきたところだったんだけどな……。
とはいえ折を見てアーデンハイツには行くつもりだったから……ってアーデンハイツに神獣がいなかったら意味がないんだけどね。
『ではそろそろ我は失礼する……また何か聞きたいことがある時は、フリルを通して我を呼ぶが良い』
そう言い残して、ミニ玄武は光と共に消えていった。
それを見送った俺はため息を吐き、ソファに深く座りなおす。
「早速明日からでも行動を開始しないとな」
「ダンジョンのことはルカーナおじさんに聞いてみるといいんじゃないかな?」
「たしかに、俺たちよりもあの人の方がこの国では顔も効きそうだしな」
間違いなく面倒くさそうな顔されるだろうけど、あの人多分ツンデレだからなんだかんだ言って協力してくれそうだ。
「なら明日ルカーナさんに……」
「あのーちょっといいですかね?」
俺たちが今後の予定を話し合っていると、シエルが恐る恐る声を上げる。
「実は折り入って皆さんにお願いがありまして……」
「どうしたんだよ改まって?……っていうかまだ何か厄介なことでも……?」
「違うんですよ……実はですね……私をしばらくこの家に置いてほしいんですよ」
「……はあ?どういうことだよ?シエルはちゃんと帰る場所があるんだろ?」
いつも要件が済んだら「じゃあ帰りますねー」と言ってどこかへ消えていくというのに。
「これもあの時神様から力を借りた代償というべきなんでしょうか……残りの神獣をすべて鎮めることが出来ないと私天界に帰れないんですよ……」
「そうなんですか?」
「はい……実は玄武を鎮めた後こっちに来なかったのは、もう一度この世界に来たら天界に帰れなくなるからなんですよね……そういう契約をこの世界の神様としてしまったので」
聞くところによると、神獣を鎮める力を借りる為にこの世界の神様と「残りの神獣を鎮める」ことと「それを完遂するまでこの世界に留まり最終的な責任を取らなければいけない」ことの二つを約束させられたらしい。
シエルも大概だとは思うが、この世界の神様とやらも随分と他力本願だよなぁ……。
少しばかりシエルに同情してしまう。
「しかも私は直接手だしすることを禁じられてまして……神の力の大半を封印されちゃったんですよね」
「神の力を封印されたって……例えば?」
「そうですねぇ……以前エナさんを連れてマグリドまで転移したことありましたけど、あれすら今の私にはできません。あれが出来ないと私天界に帰れないので」
「マジか……」
あの転移能力があれば、残りの神獣の場所を突き留めたらシエルの転移で飛んで……とか密かに考えてたんだけどその手は使えないのか。
あくまでもこの世界の神様とやらは俺たちの力で事態の解決を望んでるようだ。
「ぶっちゃけるとシューイチさんと念話が出来るだけの、普通の人間になってしまいました」
「じゃあ、シエルさんは今日ここに来るのに相当の覚悟で来たことになるんですね……」
今日念話を飛ばしてた時にやけに神妙な感じだったのもそれなら頷けるな。
しかしあの神獣を鎮める力を借りるための代償があまりにもでかすぎるだろ……なんだか申し訳なく思ってしまう。
「そういうわけなので、この件が片付くまでこの家に置いてもらえるとありがたいんですけど……」
「そういう理由なら仕方ないんじゃないかな?」
「まあ幸い部屋も余ってますからシエルさん一人くらいなら……」
「……私は反対」
まさかのその言葉に、俺たちは一斉にフリルを凝視した。
思いもしなかった人物からの反対意見に俺たちは唖然としてしまう。
「なっ……なんでですかぁ?」
シエルが泣きそうな顔してフリルに尋ねた。
いつもなんだか眠そうな目をしているフリルが、信じられないほど冷たい目をしながらシエルを見る。
「どうしたんだよフリル?シエルは俺たちを助けるためにこんな事態に陥ったんだから、この家に置いてあげるくらいは……」
「……とにかく私は反対」
そう言ってソファから立ち上がり、フリルは応接間から出て行ってしまった。
場に重苦しい空気がのしかかる。
「どっどうしちゃったのかなフリルお姉ちゃん……?」
「わっわっわっ私なにか悪いことしちゃったんでしょうか!?」
あの常になんか飄々としてるシエルが珍しく涙目でオロオロしている。
「そういえばシエルさんがシューイチさんの事情を話し終えた時からなんだか機嫌が悪そうというか……怒ってる感じでしたね?」
「それは俺も気が付いてたんだけど、とりあえずシエルの頼み事のが先だと思って聞くの後回しにしちゃったんだよね」
「私ここに置いてもらえないと行く当てなくて、路頭に迷うことになるんですけど……」
シエルの顔がどんどん青ざめていく。
いくら俺でもシエルを放りだすわけにはいかないから、この家に住まわせるくらいは全然問題ないんだけど、フリルがあれでは……。
「俺が事情を聞いてくるよ」
「私はどうしたらいいんでしょうか?」
「なんかシエルが来るとこじれそうだから、とりあえず応接間にいてくれ。別に追い出すなんてことはしないからそこは安心してていいぞ?」
そう言い残し、俺はフリルの後を追って応接間を出た。
一体どうしたというんだろうかフリルは?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜
秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。
そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。
クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。
こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。
そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。
そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。
レベルは低いままだったが、あげればいい。
そう思っていたのに……。
一向に上がらない!?
それどころか、見た目はどう見ても女の子?
果たして、この世界で生きていけるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる