無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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朱雀~堕ちた神様見習い~

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 この世界の神様に力を借りた代わりに、残り三匹の神獣の暴走を鎮める取引をしただぁ?

「今日ほどお前が余計なことしかしないと思った日はないぞ!?」
「だって仕方ないじゃないですか!あの時はあれしか方法がなかったんですから!あのままじゃシューイチさんはともかく、他のみんなは神獣にやられちゃって、最悪リンデフランデが地図から消えていたかもしれないんですよ!?」
「そっそりゃあ、たしかにそうだけど……」

 よく考えればシエルだって、この世界に積極的に関われないという制約がある中、打てる手を打ってくれたんだから、怒るのは筋違いだよな……。

「とりあえず怒って悪かったよ……しかし残り三匹の神獣を鎮めろか……」

 正直玄武をなんとかするのでさえ多大な苦労があったのに、それをあと三回やらないといけないのか。
 ……あれ?ちょっと待てよ?

「残りの神獣ってどうなってるの?玄武みたいに封印されてるのか?」
「この世界の神様が言うには、カルマに暴走の種を植え付けられたまま封印されてるそうですね」
「なら無理して封印を解くことなくないか?放っておけばいいじゃん?」

 俺の意見にエナとテレアがそろって首を縦にぶんぶんと振った。
 だがフリルだけは心ここにあらずと言った雰囲気だったが、突如手を挙げて俺に発言権を求めてきた。

「……シューイチ、亀が話したいことがあるって」
「亀って……玄武?」
「……うい」

 フリルが頷くと俺たちが座るソファにの間にある小さな白いテーブルの上に光が集まっていき、ミニサイズの玄武が顕現した。

『ふむ、大分スムーズに我を顕現できるようになってきたなフリルよ。この調子で精進するが良いぞ』
「……別に亀のためにやってるわけじゃない」
『のう?この娘基本的に冷たくないか?』

 諦めろ、基本的にフリルは俺たち以外には辛辣なんだ。

『それはともかく……異世界の神の眷属とお見受けする……残りの神獣たちについて話しておきたいことがある』
「あらあら、これはどうもご丁寧に……」

 シエルがミニ玄武に向けてペコリと頭を下げる。
 羽の生えた少女が、ミニサイズの喋る亀に丁寧に頭を下げるシュールな光景だな……。

『我はこのフリルの鎮めの唄によって救われたが、残りの神獣たちをこのまま放っておくと恐らくまずいことになる』
「その辺はこの世界の神様にも聞いてますよ?暴走状態のまま無理やり封印されたから、そう遠くないうちに封印が破られて神獣が復活するって話ですよね?」
『左様……我は無理やり封印を解かれたが、おそらくそう遠くない日に我の封印は解けていたであろう』

 いまちょっと聞き捨てならないことを言ったなこいつら?

「ちょっと待って!え?じゃあ他の神獣は放っておくと封印を自力で解いて暴れ出すってことなの!?」
『邪神に暴走の種を植え付けられておるからなぁ……図らずともそうなるだろうな』

 ということはだ?事情を知っている俺たちがわざわざ神獣を探し出して鎮めていかないとダメなのか?
 はっきり言ってクッソ面倒くさいぞそれ!?

「ちなみにどのくらいの猶予があるんだ?」
「神様が言うには一年も経てば三匹の封印が一斉に解けるらしいですね」
「一年以内に残りの神獣を探し出して、かつ封印をあえて解いて鎮めないといけないってことなのか?」

 さすがに無理ゲーすぎるだろそれ!せめてもうあと半年追加してくれ!
 いやむしろ目覚めないでそのまま眠っていてくれ!頼むから!!!

『幸いと言ってよいかはわからぬが、この国に朱雀の反応がある』

 その言葉に全員が一斉に反応してミニ玄武を凝視する。

『しかし随分と地下深くにおるようだ……空を自由に飛び回ることが出来る朱雀がなんとも皮肉なことよな……』
「地下深くですか……もしかしてダンジョンの最下層とかにいるんじゃ……?」
「えっ?この国にダンジョンなんてあるの?」
 
 この緊急事態なのに、エナの発したダンジョンという単語が、俺の中二心を刺激する。

「何でちょっと嬉しそうなんですか……とはいえ、ダンジョンは資源みたいな側面もあるのでどの国も一つや二つは管理してると思いますよ?」

 もしかして今まで行った国にもあったのかもな……行ってみたかった。

「とりあえず朱雀がこの国にいるなら、近いうちに何とかしに行かないとだよな……ダンジョンって俺たちでも入れるのかな?」
「どうでしょうね……浅い階層までは行けるかもですが、多分最下層まではいかせてもらえないと思います」
「危ないからかな?」
「それもありますが、意外と国が管理してるダンジョンって国の重要機密が眠ってたりするらしいですよ?ある意味ではそういったものを隠すにはうってつけの場所ですからね」

 そりゃあ一般人がダンジョンなんかに用なんてないだろうし、腕に覚えがあってもダンジョンの奥深くは危険だろうしね。
 しかしそういう事情があるとなると、容易にはダンジョンの最下層にはいかせてもらえないかもな。

「とりあえず朱雀のいる場所はわかったんだ!鎮めに行くことは当然として、まずはダンジョンの最下層まで行くことが出来るかどうかを確認しないとな!」
「やっぱり鎮めに行かないとダメなんですね……折角ここでの生活も落ち着いてきたばかりだったのに……」
「ねえ玄武さん、他の神獣のいる場所はわからないのかな?」

 テレアに聞かれた玄武が、目を閉じて何かを探るようなしぐさを見せるが、静かに首を横に振った。

『すまぬな……あまりに距離があると今の我の状態では見つけることができぬ』
「そっか……」
「……もっと頑張って亀」
『いや、お主の魔力がもっと高まってくれれば我ももっと遠くまで探ることが出来るのだが……』
「……人のせいにするの良くない」
『のう?この子どうすればよいのだ?我には手に余る!』

 気にするな、フリルは俺にだって手に余るんだから。
 とにかく今後の方針みたいなものは決まったな。
 しかしエナじゃないけど、ようやくこの拠点の改造も終わってエルサイムでの生活にも慣れてきたところだったんだけどな……。
 とはいえ折を見てアーデンハイツには行くつもりだったから……ってアーデンハイツに神獣がいなかったら意味がないんだけどね。

『ではそろそろ我は失礼する……また何か聞きたいことがある時は、フリルを通して我を呼ぶが良い』

 そう言い残して、ミニ玄武は光と共に消えていった。
 それを見送った俺はため息を吐き、ソファに深く座りなおす。
 
「早速明日からでも行動を開始しないとな」
「ダンジョンのことはルカーナおじさんに聞いてみるといいんじゃないかな?」
「たしかに、俺たちよりもあの人の方がこの国では顔も効きそうだしな」

 間違いなく面倒くさそうな顔されるだろうけど、あの人多分ツンデレだからなんだかんだ言って協力してくれそうだ。

「なら明日ルカーナさんに……」
「あのーちょっといいですかね?」

 俺たちが今後の予定を話し合っていると、シエルが恐る恐る声を上げる。

「実は折り入って皆さんにお願いがありまして……」
「どうしたんだよ改まって?……っていうかまだ何か厄介なことでも……?」
「違うんですよ……実はですね……私をしばらくこの家に置いてほしいんですよ」
「……はあ?どういうことだよ?シエルはちゃんと帰る場所があるんだろ?」

 いつも要件が済んだら「じゃあ帰りますねー」と言ってどこかへ消えていくというのに。

「これもあの時神様から力を借りた代償というべきなんでしょうか……残りの神獣をすべて鎮めることが出来ないと私天界に帰れないんですよ……」
「そうなんですか?」
「はい……実は玄武を鎮めた後こっちに来なかったのは、もう一度この世界に来たら天界に帰れなくなるからなんですよね……そういう契約をこの世界の神様としてしまったので」

 聞くところによると、神獣を鎮める力を借りる為にこの世界の神様と「残りの神獣を鎮める」ことと「それを完遂するまでこの世界に留まり最終的な責任を取らなければいけない」ことの二つを約束させられたらしい。
 シエルも大概だとは思うが、この世界の神様とやらも随分と他力本願だよなぁ……。
 少しばかりシエルに同情してしまう。

「しかも私は直接手だしすることを禁じられてまして……神の力の大半を封印されちゃったんですよね」
「神の力を封印されたって……例えば?」
「そうですねぇ……以前エナさんを連れてマグリドまで転移したことありましたけど、あれすら今の私にはできません。あれが出来ないと私天界に帰れないので」
「マジか……」

 あの転移能力があれば、残りの神獣の場所を突き留めたらシエルの転移で飛んで……とか密かに考えてたんだけどその手は使えないのか。
 あくまでもこの世界の神様とやらは俺たちの力で事態の解決を望んでるようだ。

「ぶっちゃけるとシューイチさんと念話が出来るだけの、普通の人間になってしまいました」
「じゃあ、シエルさんは今日ここに来るのに相当の覚悟で来たことになるんですね……」

 今日念話を飛ばしてた時にやけに神妙な感じだったのもそれなら頷けるな。
 しかしあの神獣を鎮める力を借りるための代償があまりにもでかすぎるだろ……なんだか申し訳なく思ってしまう。

「そういうわけなので、この件が片付くまでこの家に置いてもらえるとありがたいんですけど……」
「そういう理由なら仕方ないんじゃないかな?」
「まあ幸い部屋も余ってますからシエルさん一人くらいなら……」

「……私は反対」

 まさかのその言葉に、俺たちは一斉にフリルを凝視した。
 思いもしなかった人物からの反対意見に俺たちは唖然としてしまう。

「なっ……なんでですかぁ?」

 シエルが泣きそうな顔してフリルに尋ねた。
 いつもなんだか眠そうな目をしているフリルが、信じられないほど冷たい目をしながらシエルを見る。

「どうしたんだよフリル?シエルは俺たちを助けるためにこんな事態に陥ったんだから、この家に置いてあげるくらいは……」
「……とにかく私は反対」

 そう言ってソファから立ち上がり、フリルは応接間から出て行ってしまった。
 場に重苦しい空気がのしかかる。

「どっどうしちゃったのかなフリルお姉ちゃん……?」
「わっわっわっ私なにか悪いことしちゃったんでしょうか!?」

 あの常になんか飄々としてるシエルが珍しく涙目でオロオロしている。

「そういえばシエルさんがシューイチさんの事情を話し終えた時からなんだか機嫌が悪そうというか……怒ってる感じでしたね?」
「それは俺も気が付いてたんだけど、とりあえずシエルの頼み事のが先だと思って聞くの後回しにしちゃったんだよね」
「私ここに置いてもらえないと行く当てなくて、路頭に迷うことになるんですけど……」

 シエルの顔がどんどん青ざめていく。
 いくら俺でもシエルを放りだすわけにはいかないから、この家に住まわせるくらいは全然問題ないんだけど、フリルがあれでは……。

「俺が事情を聞いてくるよ」
「私はどうしたらいいんでしょうか?」
「なんかシエルが来るとこじれそうだから、とりあえず応接間にいてくれ。別に追い出すなんてことはしないからそこは安心してていいぞ?」

 そう言い残し、俺はフリルの後を追って応接間を出た。
 一体どうしたというんだろうかフリルは?
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