無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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依頼~厄介な頼み事~

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 さて、レリスがルカーナさんにコテンパンにされてから、大体二週間ほど経過した。
 その間俺たちがしていたことと言えば、主に拠点の改造である。
 まあ改造なんて大げさな言い方をしたが、大体は自分たちに割り振られた部屋を自分好みにしていく作業だ。
 ここに来るまではずっと宿屋生活だったから、こうして拠点を手に入れて自分の部屋を持つと色々と弄りたくなってくるものである。
 エナは本棚を多めに買ってこれでもかと本を詰め込んだちょっとした図書館みたいな部屋で、テレアはファンシーなヌイグルミやグッズなんかで彩られた女の子らしい部屋だし、フリルはあまりこういうことには興味がないのか使い勝手を重視し、余分なものは一切置かないシンプルな部屋になっていて、部屋一つとってもそれぞれの個性が出てて非常に面白い。
 俺?俺はまあ一般的な男子高校生の部屋だよ……うん。
 そして各部屋を自分好みに改造した後は、応接間やリビングなどの共同生活空間に手を入れ始めた。
 ちなみにルカーナさんが手を入れた応接間だが―――

「こういってはなんですけど、ルカーナさんってちょっとセンスが個性的ですよね……」
「ちょっと独特っていうか……」
「……センスが最悪」

 エナとテレアは表現をぼかしたのに、フリルがまったく自重しない。
 なんであの人はこう逐一ディスられるんだろうか?
 まあたしかに俺もこの応接間の家具配置のセンスはどうかと思ったけどさ。
 そんなわけで応接間は真っ先に女性陣三人の手を加えられ、応接間はなんか女性受けしそうな感じに生まれ変わった。
 その次の日に様子を見に来たルカーナさんが生まれ変わった応接間を見て微妙な表情になっていたのを俺は忘れない。
 その後も拠点の様々な部屋に手を加えられて、どんどん拠点は女の子受けしそうな感じに改造を加えられていった。
 男の俺のことも考えてほしかったが、女3男1ではどっちの主張が強いかなんて火を見るよりも明らかだよな?
 せめてもの妥協案として、共同生活スペースのロビーだけは無難な感じで納めてもらった。
 拠点の全てに女の子用のカスタマイズをされてしまっては、俺の心の平穏を保てないからな。

 そんな感じで一週間丸々使って拠点の改造を施した俺たちが次に始めたことは、ギルドでの冒険者として活動だ。
 しばらくは何もしなくてもいいくらいお金はあるが、だからと言ってなにもしないわけにはいかない。
 まさに働かざるもの食うべからずだ。
 最初の三日間は全員で簡単な素材収集依頼や、危険度の低い魔物の討伐依頼を中心に行うことで、ギルドの仕事に慣れていく。
 そして四日目からは二人で一組を作り、チーム別で本格的にギルド依頼をこなしていくことになった。
 勿論ギルド依頼をこなす合間に、それぞれの修練をしていくのを忘れない。
 俺は主にテレアと実践的な訓練をして俺自身の強さの底上げをしていき、フリルはエナに魔法について学び、魔力の最大値を増やすトレーニングをしていく。
 ちなみにエナ曰く「フリルちゃんは魔力の最大値が常人より五倍くらいは高いんですけど、歌魔法は制御が難しいらしくて一曲歌っただけで魔力が枯渇してしまうんですよ……しかも普通の魔法はなぜか相性が悪くて全然使えませんし……」とのことだった。
 折角玄武から授かった神獣の力も、フリルの場合は歌魔法を経由しないと使うことが出来ないのだ。
 だがそういった制約がある分、歌魔法の効果は想像をはるかに超えるものであり、フリルと組んで少し強い魔物を討伐する依頼に挑戦したんだが、フリルの歌魔法のおかげで最悪全裸にならないと倒せなかったかもしれない魔物を難なく倒すことができたのには驚いたもんだ。
 しかしながら一曲歌い切ると魔力が空になってしまうのが最大のネックであり、せめて二曲は歌っても大丈夫なようにフリルも日々エナとともに魔力コントロールのトレーニングに励んでいる。

 以上がエルサイムに来てからの俺たちの二週間の模様である。
 そしてそのまま何事もなく三週目に入るかと思った矢先、俺たちの元に「ある人物」がやってきたことで俺たちの今後のしばらくの方針が決まってしまうこととなったのだ……。


「お兄ちゃん、大分テレアの動きに反応できるようになってきたね!」
「つーても三つのアクションを織り交ぜられると全然対処できないんだよなぁ……どうしたもんだろう」

 テレアとの修練を終えた俺たちは連れ立って拠点の廊下を歩いて行く。

『お久しぶりです宗一さん!今大丈夫ですか?』
『ダメだよ?』
『……なんか宗一さん、最近私に冷たくないですか?泣いちゃいますよ?』
『泣いてもいいけど、俺の視界の入らないところで泣いてね?』

 久しぶりに念話を飛ばしてきたシエルとくだらない会話を繰り広げる。
 突然立ち止まり黙ってしまった俺を見て、テレアが怪訝そうな顔で首を傾げた。

『ちょっとお願いしたいことがあるので、今からそっちに行ってもいいでしょうか?』
『お願いしたいこと?』
『はい、本当はもっと早くにお願いするつもりだったんですけど、みなさんが落ち着いてからのほうがいいと思いまして……』

 みなさんが……ということは俺個人に頼みというわけじゃないみたいだ。
 いつになく真剣なシエルの様子に俺も思わず息をのむ。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
「ん?……あーえっと……」

 いい加減テレアたちにシエルのことをごまかし続けるのも限界があるよなぁ……。

『なあシエル?俺たち全員に頼み事があるんだよな?』
『そうですねぇ』
『それならテレアとフリルにシエルの素性を説明したほうがいいんじゃないの?』

 神様見習いのシエルの持ち込んでくる頼み事だ……絶対面倒な頼み事だろうし、それならもう二人にシエルの素性をばらしておいた方がやりやすいだろう。

『それなら宗一さんの素性も話さないといけないですねぇ』
『え?そこは別によくない?』
『私の正体を説明するのに宗一さんが異世界人であることも一緒に説明すれば説得力も増すと思うんですけど』

 言われてみれば確かに。
 とはいえ前にフリルにさりげなく異世界人であることをカミングアウトしたんだけど、信じてもらえなかったんだよな……大丈夫かな?

『じゃあ一時間ほどしたら伺いますから、みなさんを集めておいてもらえないですかね?』
『はいよー了解』

 さてと……みんなに声を掛けておかないとな。

「テレア、今から一時間後にシエルが来るから、エナとフリルに声を掛けておいてくれないかな?」
「え?どうしていきなりシエルお姉ちゃんが来るの?」
「なんか俺たちに頼みたいことがあるんだってさ……とりあえずそのことと、シエルと……俺のことについてみんなに話すからさ」
「お兄ちゃんのこと……?」

 俺のことと聞いて、テレアの表情が真剣なものになる。
 そこまで真剣にとらえてほしくないんだけどなぁ……。

「そう、俺の秘密本邦初公開!」
「わかった……みんなに話してくるね」

 そう言ってテレアがトテトテと小走りで廊下を走っていった。
 さてはて……鬼と出るか蛇と出るか……。


「はーい、シエルさんですよぉ~」

 宣言通りきっかり一時間後にシエルが俺たちの拠点へとやってきた。
 神獣との戦いの時も思ったけど、このシエル実は時間だけはきっちり守る主義らしく、あの時は本当に三分ぴったしに来たんだよな。

「お久しぶりです、シエルさん」
「こんにちは、シエルお姉ちゃん!」

 この二人はシエルを知っているので大丈夫だが、問題はフリルだった。

「……あの時の!?」

 フリルが立ち上がり姿勢を正す。
 あの時思いっきりフリルに対して『神の使い』とか言ってたもんなぁ……さすがのフリルでも緊張はするんだな。

「フリルちゃんとは会うのは二回目ですが、実質初めましてですね!シエルと申します」
「……フリル=フルリル」
「そんなに緊張しなくていいですよ?私のことは羽の素敵なお姉さんだと思ってくれればいいので~」
「そうだぞフリル?そいつにそんな敬意を払わなくてもいいからな?」

 そう言った俺をフリルが二秒ほど凝視した後、こくりと頷いて席に着いた。

「宗一さんはもう少し私に対して敬意を払ってほしいんですけどねぇ……」
「そう思うなら敬意を払ってもいいと思える振る舞いをしろよ」
「したじゃないですか!この前の神獣の時とか!」
「えっと……シエルさんは私たちに頼みがあって来たんですよね?」

 エナの言葉にはっとなり、咳ばらいをしたのちシエルが来客用のソファに座った。

「えっと私の用事を話す前に、私の素性と宗一さんのことについてテレアちゃんとフリルちゃんにお話ししておきますね?」
「えっ!?シューイチさんのこともですか?」

 俺のことも話すと言ったシエルの言葉を聞いて、エナが思わず立ち上がる。

「いいんだよエナ。シエルのことを話そうとすると俺のこともちゃんと話さないとダメだろうし」
「ですけど……本当にいいんですか?」
「いいからいいから」

 しぶしぶエナがソファに座りなおしたのを確認して、シエルに話を促した。

「それじゃあ話していきますね~……順を追って最初からですね……」

 そうして、俺が異世界人であることから始まり、自身が誤って俺を死なせてしまったことが原因でこの世界に転生してきたことや、シエルの素性などをテレアとフリルに聞かせていく。
 二人の反応を伺うものの、なんだか半信半疑と言った感じだ。
 そりゃあそうだよな、俺が他の世界から転生して来た異世界人とかシエルが神様見習いとかなんて、普通に考えてとても信じられる話じゃない。
 でもこの辺を信じてもらえないと、多分シエルも頼み事とやらをしにくいだろうし、信じてもらうしかない。

「……本当にお兄ちゃんはこの世界の人じゃないの?」
「そうなんだよ、ごめんなテレア?」
「そっそれじゃあ……いつか自分の世界に帰っちゃうのかな……?」

 なんか泣きそうな顔してテレアが聞いてきた。

「帰るもなにも、俺は元の世界ではもう死んじゃってるわけだし帰れないよ」
「じゃあお兄ちゃんはずっとテレア……たちのところにいてくれるの?」
「まあ次に死んじゃうまではこの世界に厄介になるはずだから大丈夫だよ」

 俺の言葉に泣きそうだったテレアの表情に笑顔が宿った。
 もしかして俺が異世界人という事実よりも、いつか自分の世界に帰るんじゃないかってことの方が重要だったんだろうか?テレアらしいといえばらしいな。

「フリルも信じてくれた?」
「……一応」

 なんだろう?なんか機嫌悪い?
 どうしたんだろうと思い、フリルに聞こうと思ったところでシエルが口を開いた。

「それじゃあ、私たちのこともわかってくれたと思いますので、今日ここに来た理由をお話しますね」

 フリルの様子も気になったが、本題はシエルの頼み事とやらなので、とりあえずフリルのことは後にしておくか……。

「どうやって説明しましょうか……とりあえず話はリンデフランデでフリルちゃんが神獣を鎮めるために鎮めの唄を歌ったところまで遡らないといけないんですけど……」
「ああ、なんかシエルがまるで神の使いみたいに出てきたときのことな?」
「まるでじゃなくてあの時は本当にこの世界の神の使いだったんですよ!……仮のですけど」

 仮とは言えこの世界の神の使いだった……?どういうことだろう?

「あの時フリルちゃんに与えた神獣を鎮める力なんですけど、あれ正確には私の力じゃなくて、この世界の神様の力を貸してもらったんですよ」
「それじゃあ、あの時に限って言えば、本当にこの世界の神様の使いだったんですね?」
「そうなんですよ!……それで実はその……神様の力を貸してもらう代わりに……そのですね……」

 途端にシエルが目を逸らし、言いにくそうに「あのその」と繰り返す。
 俺はというとそんなシエルの様子に嫌な予感をバリバリと感じていた。

「えっと……力を借りる代わりに、この世界の残り三匹の神獣を鎮めるという取引をしてしまいまして……」

 最初シエルが何を言ってるのか理解できなかった俺たちがだったが……。

「「「え――――――!!!???」」」

 言葉の意味を理解できた途端、俺とエナとテレアの叫びが綺麗にハモり、拠点内に響き渡ったのだった。
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