無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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王女~蝶よ花よと~

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 スチカと一緒に来たのがアーデンハイツの王女様か……聞き間違いだといいんだけどなぁ。

「えっと……なんで王女様がわざわざこんなところにまで?」
「特に理由なんかないのじゃ!」
「はあ!?」

 その返答に思わず叫んでしまった。

「わらわは面白そうだったから、スチカに頼んで同行させてもらっただけじゃ!」

 あまりの考えなしの行動に、頭が痛くなってくる。
 一国の王女様がそんな適当な判断下していいのか?
 いや見た目通りの年齢ならそんなこと考えもしないかも……なんにせよ行動が軽すぎる。
 思わず俺は恨みがましい目でスチカを見てしまう。

「まあうちもどうかと思ったんやけどな?頼まれたら嫌とは言えんし、なにより王女としての特権を振りかざされるとなぁ……」

 どうやら俺と同じく生粋のお人好しらしく、王女の我儘に押しまけてしまったのだろう。
 ていうかさっきから気になってたんだけど、スチカはアーデンハイツの王族と妙に親しい間柄のようだ。
 ルカーナさんの話ではアーデンハイツの機械関連の発展に大きく関わっているようだし、国のお抱えになっていてもおかしくはないよな。
 まあそれはともかくとしてだ、このちびっこの素性が分かった今、俺が言うべき言葉は一つしかない。

「今すぐ国へ帰ってくれ……一国の王女様がこんなところにいることがばれたらどうなるかわかったもんじゃないから」
「なんじゃと!?折角遠路はるばるわざわざ来てやったというのに、その態度はなんじゃ!?」
「いや、シュウの言うことももっともやで?だからうちは最初に断ったんやからな?」
「にゃにおー!?スチカまでそんなことを言うのか!?お主とわらわは親友であろう!?」

 王女様が立ち上がり地団太を踏み始める。
 それを横目で見ていたフリルがふとため息を吐いた。

「……そんなことで怒るなんて子供そのもの」
「お主!今何と言った!?」

 地団太を踏んでいた王女様がフリルに向き直り指を指しながら激高した。

「わらわはアーデンハイツの第一王女じゃぞ!無礼にもほどがあろう!」
「……ここは私たちの家であってアーデンハイツじゃないし、そもそも無礼にあたるのはそっちのほう」

 うわーなんでフリルってば火に油注いでるの!?
 もしかして何か機嫌悪いの!?
 フリルに煽られた王女様は、怒り心頭とばかりに顔を真っ赤にしている。

「わらわがいつ無礼を働いたと申すのじゃ!?納得いくように説明してみるのじゃ!」
「……予告もなしにいきなりやって来て、お菓子を食い漁って、尚且つシューイチの気苦労を全く考えてないところ」
「うぐっ……」
「あー一理あるわー」
「スチカ!お主はどちらの味方なんじゃ!」

 なんかフリルの機嫌が悪いと思ってたら、俺に迷惑を掛けているという事実に対して怒っていたのか……なんだかシエルの時のことを彷彿とさせるな。
 こう考えると、フリルが怒る時って俺が関係してることが多い気がする。

「まあうちらもそんなに長居するつもりはなかったし、なるべくことを大事にしたくないのは同じやしな!シュウにも会えたし美味い菓子も食わせてもらったし、そろそろお暇するわ」

 そう言ってスチカが立ち上げる。

「待てスチカよ!わらわはこの生意気で無礼千万なこやつに相応の罰を与えてやらねば気が晴れぬ!」
「いや、言い返せへんかった時点でティアの負けやで?」
「負けてはおらん!負けてはおらんのだー!!」

 こともあろうに寝転がりながら手足をばたばたとさせ始めた。子供かよ……いや子供か。
 どうしたもんかと思っていると、じたばたする王女様の元にマカロンを持ったフリルが近づいていき、しゃがみこみマカロンを王女様に差し出した。

「なんじゃ?もしかして今までの無礼を詫びて、これをわらわにくれるというのか!?」
「……あげる」
「お主いい奴ではないか!無礼と言ったことを取り消してやっても……」

 言いながらマカロンに手を伸ばした王女様の手が空を切った。
 なぜならその手をかわすように、フリルがマカロンごと手を挙げたからだ。

「……はい、あげたー」
「なっ!?」

 そして次の瞬間、フリルはマカロンを自分の口へと運んでいきまるで見せびらかすように食べ始めた。
 いくらなんでも煽りスキル高すぎるだろ!

「もう許せん……断じてゆるわけにはいかん!決闘じゃ!!お主に決闘を申し込むぞ!!」
「少し落ち着かんかいティア!悪いのはなんの連絡も無しに来たうちらやで?」

 いやさすがにさっきのフリルはやりすぎだと思うけどね。
 
「だーかーらー!お主はどっちの味方なんじゃ!!」
「あえて言うならシュウの味方やな?うちとてシュウに迷惑を掛けるのは本意やないからな」

 突然飛行機でやってきて自分のことを覚えているか!?と問いただしてきて勝手に落ち込んで憂鬱を振りまいてた人の台詞じゃないよなぁ……。
 まあそこはスチカも冷静さを欠いていたと好意的に解釈することにしよう。今は幾分か理性的な判断が出来るようだし。

「わらわは帰らんぞ!あの小生意気な娘を「ぎゃふん」と言わせなければ末代までの恥じゃ!!」
「……ぎゃふん」
「ほら「ぎゃふん」いうたで?帰ろか?」
「認めん!今のは認められんのじゃ!!」

 どんどんヒートアップしていく王女様。
 このままだと近所迷惑で訴えられる可能性があるからそろそろ落ち着いてほしいんだけど、なぜかフリルが留まるところを知らない。

「フリル、その辺にしとけ」
「……うい」

 釈然としない表情をしながらも一応は頷いてくれた。
 しかしどうしたと言うんだフリルは?いくら俺が迷惑をこうむってるからと言ってここまで煽ることもないだろうに。
 それに煽るのは王女様ばかりで、スチカに対してはノータッチだ。
 昔この王女様になにかされたとか……?いやでもお互い初対面だと思うしそれはないだろう。

「スチカ!通信機を貸すのじゃ!」
「ええけど、誰に連絡するんや?」
「そんなものお父様に決まっておる!」

 スチカから通信機を強奪した王女様は、通信機を操作し誰かと会話し始めた。

「もしもし、お父様?……いまスチカと一緒じゃ!わらわがお願いして飛行機の試運転に便乗させてもらったのじゃ!」
 
 王女様の声がでかすぎて、残念ながら王らしき人の声は聞こえてこない。
 ていうかこのパターンは……「今すぐこの王女様を止めろ」と冷静な心の中の俺が警笛を鳴らしてくるが、俺が一歩踏み出そうとした瞬間今にも噛みつかんばかりの猛獣のような顔で睨んできたので、思わずたじろいでしまった。
 まだ子供くせになんて威圧感を放ってくるんだよ……こええよ。

「それじゃあスチカに変わるのじゃ!ほれスチカ、お父様じゃ!」
「はいはい……もしもし変わったで?……うんまあうちが見てるから二・三日なら大丈夫やけど、本当にええんか?」

 なーんか話が嫌な方向にまとまりそうな気配がビンビン伝わってくる。

「一応相手側にも話を通した方がええと思うで?……そんじゃ変わるからしっかり筋通したってな?ほれ、シュウ」
「もしかして……アーデンハイツの王様?」
「もしかしなくてもそうや」

 嘘やろお前……こんな気軽に話せる人じゃないだろ……どうすりゃいいんだよ。
 そんなことを思いながらも、俺はスチカから通信機を受け取り耳に当てる。

「えっと……お電話変わりました……葉山宗一と申します」
「おお!君がスチカの言っていたシューイチ君か!いやはや、娘が押し掛けてしまったそうで申し訳ない!」

 なんかすっげーフランクな感じするけど、本当に王様かこれ?
 リンデフランデの王様はそりゃあもう威厳溢れるおひげの立派なおじいさんだったから、そのギャップに混乱しそうになる。

「娘は私と妻の間にできた初めての娘でな……蝶よ花よと育てているうちに随分と我儘な娘に育ってしまった」
「はあ」
「恐らく三日も経てば今の怒りも忘れて帰りたいと言ってくるだろうから、それまでそちらで預かってくれないか?」
「一国の王女様をそんなたやすくどこの馬の骨ともわからない輩の元に預けていいんですか?」

 俺が言うのもなんだけどもうちょっと危機感を持った方がいい思うぞ?

「君の噂はわが国にも届いておる!……それと恐らくだが、君たちは朱雀を鎮めたのだろう?」

 王様のその言葉に、まるで心臓が鷲掴みにされたかのような衝撃を受けた。
 ちょっと待ってくれ……なんでそれを知ってるんだ……?

「これはちょっとした取引だ……もしも娘の面倒を見てくれればそのことについて詳しい話を君たちにしてあげようと思うんだけど……どうかな?」

 正直俺たちは今、残りの神獣に関して手がかりが全く見つからずに、お手上げ状態だった。
 その状況を打破するためにアーデンハイツに行くことを計画していたんだが……。

「決めかねるかね?ならもう一つ君が頼みを聞いてくれる気なる情報をあげよう……神獣の事情を把握しているのは君たちだけではないぞ?私の持っている情報は必ず君たちにとって有益となるはずだ」
「俺たちを罠に掛けたりは?」
「する意味がない。厳密に言えば私と君たちは同じ目的で動く協力者と言ってもいい関係だ」

 正直な話、今日いきなり知り合ったスチカやこの王様のことをいきなり信じるのは危ない気がする。
 だけど王様はともかくとして、俺のことを少なからず知っているスチカのことは信じてもいい気がするのだ。
 できればエナにだけでも相談したいところだが、多分今ここで答えを出さないと多分次はないと思う。

「わかりました、娘さんはこちらで3日ほど預かりますので」
「そうかそうか!君のその判断の思い切りの良さは評価に値するぞ!今回の件が無事に終わったらぜひともアーデンハイツに来てくれ!」
「そうさせてもらいますよ……それじゃスチカに変わった方がいいですか?」
「いやこのまま切ってくれて構わない!それじゃあ娘をよろしく頼む」

 その言葉を最後に王様との通話は終わった。
 疲れを吐き出すように、俺は盛大にため息を吐いた。

「シューイチさん?どうなったんですか?」
「えっと……なんて言っていいのか……とりあえず俺も考えをまとめたいからあとでみんなに話すけど……多分悪い話じゃないと思う」
「わかりました……」

 俺の表情から何かを察したのか、エナが真剣な表情で頷いた。
 
「おい!父上は何と言っておったのじゃ!わらわはここにいてもよいのじゃな?」
「三日!三日だけだからな!三日経ったらどんなに泣き叫ぼうともスチカに縛ってもらってでも帰ってもらうからな!」
「わかった!この三日間であの生意気な小娘をぎゃふんと言わせてやるのじゃ!お主名は何という!」
「……テレア=シルクス」
「よし!テレアよ……三日後お主は泣いて謝りながらわらわの偉大さを噛み締め地面にひれ伏すことになるじゃろう!覚えておくが良い!!」
「違うよ!フリルお姉ちゃんはテレアじゃないよぉ!」
「なぬ?」

 なんかもうこの時点でこの王女様がフリルに勝つ姿を想像できないのがなんとも……。
 ていうかテレアの名前を使うなよ。

「なんかすまんなシュウ?うちもここまでの迷惑を掛けるつもりはなかったんや……」
「もういいよ、ここまでこればもう毒を食らわば皿までってな」
「なんならうちはどこかで宿とってそこで待機してても……」
「そんな水臭いこと言わないでくださいな!積もる話もありますし、王女様がいらっしゃる間はこの家に泊っていけばよいではないですか?」
「そうだね、部屋も余ってるし……いいかな?お兄ちゃん?」

 テレアに頼まれると首を横に触れないのが俺の辛いところだ。
 まあ全然問題ないんだけどね。

「そうだな……たしか急な来客用に適応に家具を配置しておいた部屋があるからそこをとりあえず使ってもらおうか?シエルー?」
「……はっ!?寝てませんよ!?」

 よだれを袖で拭いながら、俺に呼ばれたシエルがガバっと起き上がった。

「急いで来客用の部屋の掃除済ませておいてくれないかな?」
「わっかりましたー!では少々お待ちを!」

 そう言ってシエルがダッシュで応接間から出ていった。
 ……あれ絶対話聞いてなかったな。

 ともあれ、三日間の間アーデンハイツの王女様を預かる日々が始まってしまった。
 面倒くさいのは神獣のことだけでいいんだけどなぁ……。
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