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本気~頑張っている君に~
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「オオオォォオォォオ!!!!!」
先ほどまでのコランズの面影を微塵も感じさせないその咆哮は、まるでこの世の全てを憎むかのような怨念が込められているじゃないかと思えてしまう。
だがその咆哮を真正面から受けてもテレアの突進は止まることがない。
「クル……ナ!」
迫りくるテレアをまるで振り払うようにコランズが腕を乱暴に振るうと、そこから衝撃波が発生しテレアに向けて真っすぐに飛んでいく。
腕を振るだけで衝撃波が発生するとかどんだけなんだよ……。
だがテレアはその軌道が見えているかの如くひらりひらりとそれらをかわしながら、ついにコランズの目の前へと到達した。
「ハ……ナレ……ロ!!」
コランズの魔力が活性化し、両手のそれぞれの指先に魔力で生成された長い爪が現れた。
俺の使う魔力剣の爪バージョンみたいな奴だろうか?だとしたらアレは相当な威力があるぞ。
魔力爪で引き裂こうとコランズが右腕を振り下ろすが、対するテレアは大きく踏み込みコランズの腕自体を左手で掴んで止めた。
ならばと左手の爪で引き裂こうとするコランズだったが、その攻撃よりも早くテレアの掌底がコランズの胸に直撃して大きく後方に吹き飛ばした。
よろめいたコランズの隙を見逃さず、さらにテレアが懐に潜り込み肘打ちをコランズのみぞおちに突き刺した。
これは確実に入ったな……!
「……ナンダ……ソレハ?」
だがその攻撃を受けたコランズは不敵に笑うと、みぞおちに突き刺さったテレアの左腕を掴みそのままテレアごと強引に振り上げた。
「テレア!!」
だがテレアは宙に振り上げられながらも、残る右手でコランズの手首を掴み、そのまま身体を捻った。
「グッガ……!?」
その痛みでコランズが掴んでいた手を離してしまい、テレアが宙に投げ出されるも身体を捻りコランズの真後ろに華麗に着地した。
テレアの動きが一段とキレてるな……これが本気になったテレアなんだろうか?
あまり自分からは積極的に攻めない印象のテレアなんだけど、やはり本気になった時は違うんだな。
だが悲しいかな、コランズには効いてないっぽいんだよな……。
戦闘技術ではテレアの方が上回っているが、身体能力の差は玄武の魔力でドーピングされているコランズの方が圧倒的に高いみたいだ。
コランズの攻撃はその全てが必殺級の威力を持っているみたいだし、何かの拍子にテレアに当たりでもしたらその時点で勝敗が決してしまうかもしれない。
しかし……見たところコランズが玄武の能力である結界を使ってくる様子がないな。
エナたちが戦っているゴルマを様子をチラ見するも同じように玄武の結界を張って攻撃を防いでる様子は見られない。
どうやら玄武の力を分け与えたなんて言っていたものの、玄武の魔力だけで能力まで分け与えられたわけではないようだ。
それでも十分な脅威なんだけど、その事実が分かっただけでも今は良しとしよう。
「何をしている!折角玄武の力を分け与えたのにその程度の小娘に手間取ってどうする!はやく始末しろ!!」
ドレニクが口角泡をまき散らしながら、コランズに向けて叫んだ。
うるさいなぁ、黙って見てろよ。
「ジャマダ……ジャマ……ダ!!!」
コランズから発せられる異様な魔力がさらに増大した。
ドレニクからさらに玄武の魔力を注ぎ込まれたのだろうか?
「イタイ……イタイ……モウ……ヤメテ!」
「コランズ君……!?」
突如、コランズが苦しみだした。もしかして玄武の強大な魔力に身体が耐え切れなくなってきたのか?
「イタイ……イヤダ!!!」
コランズが両手を広げ指先を大きく開くと、魔力の爪がさらに太く大きく伸びていく。
そのまま両手を前に突き出すと、全ての魔力爪が様々な軌道を描きつつテレアに向かって伸びていった。
「なんじゃそりゃ!?」
思わず叫んでしまった。
だがテレアは自分へ向かってくる魔力爪をものともせず、その全てを巧みにかわしながらコランズに接近していくが、躱したはずの爪が方向転換して再びテレアを突き刺そうと伸びていく。
その光景はさながら誘導ミサイルのようだ……本物の誘導ミサイルはここまで正確に標的を狙えないだろうけど。
四方八方から飛んでくる爪をかわすことに集中してしまい、テレアはコランズに中々接近できなくなってしまった。
いくらテレアが本気になったと言えど、弱点までが克服されたわけじゃないんだよな……。
テレアの弱点は遠距離で有効な技を何一つ持っていないことだ。
接近戦なら風の魔法を使ったレリスでも敵わないほどの力を発揮するものの、こうやって距離を離されるとテレアは防戦一方になってしまう。
今はうまく攻撃をよけているが、この状況が延々と続けばさすがのテレアと言えど攻撃が直撃する未来は避けられない……。
なんとか出来ない物か……?
「おいおい、テレアの奴あのままやと危ないんちゃうか?」
「テレアよ!負けるではないぞ!!」
スチカとティアもテレアに声援を送るも、やはり現状を打破しないことにはどうしようもない。
「……え?それは本当か?そんなことしても大丈夫なのかえ?」
テレアに声援を送っていたティアが、まるで誰かと会話するように独り言を呟く。
「どうしたんティア?」
「今だけテレアに力を貸したいと言っておるのじゃ」
「誰が……ってこの状況ならそんなん一人しかおらんな」
突如ティアから青い光が発生して、その光がテレアに向けて真っすぐに飛んでいく。
なっ何なんだ一体!?
「……えっ!?」
さすがのテレアも突然のことにその光を回避することが出来ずに、そのまま直撃してしまった。
「え?ちょっ!?テレア大丈夫か!?」
だがテレアに目立った外傷は見当たらない……一体何が起こったんだ?
「テレアよ!今しがた青龍がお主に一時的に宿ったはずじゃ!」
「ええっ!?」
爪をかわしながら、テレアが困惑の表情を浮かべる。
「青龍だと!?まさかあの小娘はアーデンハイツの王族か!?」
その単語を聞いたドレニクがティアに目を向けた。
もしかして気が付いてなかったのか?まあ変装して髪型も変えてるしな。
「自身の中にいる青龍の存在を魔力で感じるのじゃ!テレアなら容易なはずじゃ!!」
「うっうん!!」
迫りくる無数の爪をかわしながら、テレアが精神を集中させて体内の魔力を活性化させていくと、テレアの身体が青い光につつまれていく。
『やあレディ!頑張っている君を見て感銘を受けてしまってね……一時的だが僕が力を貸してあげたいと思う』
「青龍さん、本当に?」
『生憎転移能力はあのドレニクとやらのせいで使えないが、今の状況を打破できる別の力を君に貸してあげよう。君なら有効に使えるはずだ』
「わっわかった!テレアやってみるね!」
そんな会話を青龍と交わすと、テレアの両手に青い光が集中していく。
そしてなおもテレアを貫こうと10本の魔力爪を操作するコランズに狙いを定めた。
「えい!!」
テレアが勢いよく拳を突き出すと、青い光を放つ光弾が物凄いスピードで飛んでいきコランズに直撃した。
「ウガッ……!?」
青い光弾を受けたコランズが口元に血を滲ませがら大きくよろめいた。
今までテレアがどんな攻撃を食らわしてもびくともしてなかったのに、今の青い光弾による一撃はコランズにダメージを与えることが出来たようだ。
『さあもう一発!』
「うん!!」
再びテレアがコランズに向けて拳を突き出すと、青い光弾がコランズに一直線に飛んでいき、直撃したコランズを大きく吹き飛ばし教会の壁に叩きつけた。
「ガハッ!!」
今度は目に見えるほどのダメージを与えられたみたいだ。コランズの口から血が吐き出された。
『今が好機だ!僕の力を維持し続けたまま君の思う通りに攻撃していくんだ!君なら問題なく扱えるはずだが、あまり長くはもたないだろうから短期決戦で!』
「わかった!」
そのまま青龍の力を全身に纏ったテレアが、まるで弾丸のようにコランズへと飛んでいく。
「クルナッ!!!」
立ち上がったコランズも、迫りくるテレアに向けて一直線に飛んでいく。
そのまま両者が勢いよくぶつかると、二人を中心地とした衝撃波発生し思わず目を閉じてしまった。
「ウガッ……!?」
目を開いて二人に視線を向けると、コランズの爪を紙一重でかわしたテレアの拳がコランズのみぞおちに深く突き刺さっていた。
「ええい!!」
拳を引いたテレアが、アッパーをコランズの顎に突き刺しそのまま宙に突き上げた。
それを追いかけるように跳んだテレアがコランズの足首を掴み、そのまま地面に叩きつける。
物凄い威力だったのか、それを物語るように地面に叩きつけられたコランズの周りに小さなクレーターが出来た。
「オオオオオオォォォオ!!!」
コランズがそのままの状態で宙にいるテレアに手を向け魔力爪を伸ばして突き刺そうと試みるも、またもテレアの手から放たれた青い光弾の直撃を受け、爪のコントロール阻害されて明後日の方向へと飛ばしてしまった。
『ここらが限界だね……さあ彼にとどめを刺すんだ!』
「うんっ!」
青龍の力で宙に浮いたテレアが両手を大きく空に掲げると、テレアを包む青い光が手の先の空間に集まっていき大きな青い玉が出来上がっていく。
なーんかこれに似たような技を有名な漫画でみたことあるなー。
俺がそんなことを考えている間にも青い球はどんどん大きくなっていき、ぱっと見直径二メートルほどの大きさになっていた。
「えええーい!!!」
掛け声とともにテレアが両手を振り下ろすと、その巨大な青く光る球はコランズへ向けて真っすぐに落ちていく。
「ガアアァァァァアァァァァァアア!!!!!」
テレアから放たれたその青い球はコランズだけでなくその周囲すらも巻き込んで激しい光と共にスパークを起こし、やがて大きな爆発を起こした。
周囲に爆風と爆音が響きわたり、それらが収まった時、その中心には意識を失いピクリとも動かなくなったコランズが横たわっていた。一見すると死んでいるように見えるが辛うじて生きているみたいだな。
青龍の力で宙に浮いていたテレアが、ゆっくりと地面に着地してそのまま石畳の上にへたりこんだ。
『実に見事だった!力を貸してあげた甲斐があったよ!』
「はあはあ……ありがとう、青龍さん!」
『さてと……力は使い果たした僕はこのまま消えるとしよう……短い間だったけど君のような素敵な女性に力を貸すことが出来て、僕はこの得ない喜びを感じているよ』
「え?青龍さん消えちゃうの!?」
『心配には及ばないさ!僕は青龍本体から作り出された分け身だからね!僕が消えたところで青龍本体には何の問題もないのさ』
やっぱりあの青龍は分け身だったのか……なんとなくだけどそうなんじゃないかとは思っていた。
神獣特有の、圧倒するような魔力を感じなかったし。
『そういうわけで僕は一足先に失礼するよ?すまないねクルスティア』
「うむ!実に良い働きであった!礼を言う、また会おうぞ!!」
そのまま身体全体を包んでいた青い光がテレアから離れていき、宙に集まっていく。
「逃がしはせんぞ!!」
だがそこへドレニクが現れて、集まった光を逃さないとばかりに手を伸ばす。
「生憎僕は男に触られるのはごめんでね?それじゃあ失礼」
捨て台詞を残し、ドレニクにつかまることなく青龍の分け身は跡形もなく消えてしまった。
その光景を茫然と見送ったドレニクが、憎しみを込めた目でテレアに向き直り睨みつけた。
「この子娘め……良くもやりおったな!!」
そのままテレアに向けてゆっくりと歩いて行くドレニクの前に立ちはだかるのは―――
「貴様、なんのつもりだ?」
「なんのつもりも何も、てめーの相手は俺だからだよ」
当然俺だった。
先ほどまでのコランズの面影を微塵も感じさせないその咆哮は、まるでこの世の全てを憎むかのような怨念が込められているじゃないかと思えてしまう。
だがその咆哮を真正面から受けてもテレアの突進は止まることがない。
「クル……ナ!」
迫りくるテレアをまるで振り払うようにコランズが腕を乱暴に振るうと、そこから衝撃波が発生しテレアに向けて真っすぐに飛んでいく。
腕を振るだけで衝撃波が発生するとかどんだけなんだよ……。
だがテレアはその軌道が見えているかの如くひらりひらりとそれらをかわしながら、ついにコランズの目の前へと到達した。
「ハ……ナレ……ロ!!」
コランズの魔力が活性化し、両手のそれぞれの指先に魔力で生成された長い爪が現れた。
俺の使う魔力剣の爪バージョンみたいな奴だろうか?だとしたらアレは相当な威力があるぞ。
魔力爪で引き裂こうとコランズが右腕を振り下ろすが、対するテレアは大きく踏み込みコランズの腕自体を左手で掴んで止めた。
ならばと左手の爪で引き裂こうとするコランズだったが、その攻撃よりも早くテレアの掌底がコランズの胸に直撃して大きく後方に吹き飛ばした。
よろめいたコランズの隙を見逃さず、さらにテレアが懐に潜り込み肘打ちをコランズのみぞおちに突き刺した。
これは確実に入ったな……!
「……ナンダ……ソレハ?」
だがその攻撃を受けたコランズは不敵に笑うと、みぞおちに突き刺さったテレアの左腕を掴みそのままテレアごと強引に振り上げた。
「テレア!!」
だがテレアは宙に振り上げられながらも、残る右手でコランズの手首を掴み、そのまま身体を捻った。
「グッガ……!?」
その痛みでコランズが掴んでいた手を離してしまい、テレアが宙に投げ出されるも身体を捻りコランズの真後ろに華麗に着地した。
テレアの動きが一段とキレてるな……これが本気になったテレアなんだろうか?
あまり自分からは積極的に攻めない印象のテレアなんだけど、やはり本気になった時は違うんだな。
だが悲しいかな、コランズには効いてないっぽいんだよな……。
戦闘技術ではテレアの方が上回っているが、身体能力の差は玄武の魔力でドーピングされているコランズの方が圧倒的に高いみたいだ。
コランズの攻撃はその全てが必殺級の威力を持っているみたいだし、何かの拍子にテレアに当たりでもしたらその時点で勝敗が決してしまうかもしれない。
しかし……見たところコランズが玄武の能力である結界を使ってくる様子がないな。
エナたちが戦っているゴルマを様子をチラ見するも同じように玄武の結界を張って攻撃を防いでる様子は見られない。
どうやら玄武の力を分け与えたなんて言っていたものの、玄武の魔力だけで能力まで分け与えられたわけではないようだ。
それでも十分な脅威なんだけど、その事実が分かっただけでも今は良しとしよう。
「何をしている!折角玄武の力を分け与えたのにその程度の小娘に手間取ってどうする!はやく始末しろ!!」
ドレニクが口角泡をまき散らしながら、コランズに向けて叫んだ。
うるさいなぁ、黙って見てろよ。
「ジャマダ……ジャマ……ダ!!!」
コランズから発せられる異様な魔力がさらに増大した。
ドレニクからさらに玄武の魔力を注ぎ込まれたのだろうか?
「イタイ……イタイ……モウ……ヤメテ!」
「コランズ君……!?」
突如、コランズが苦しみだした。もしかして玄武の強大な魔力に身体が耐え切れなくなってきたのか?
「イタイ……イヤダ!!!」
コランズが両手を広げ指先を大きく開くと、魔力の爪がさらに太く大きく伸びていく。
そのまま両手を前に突き出すと、全ての魔力爪が様々な軌道を描きつつテレアに向かって伸びていった。
「なんじゃそりゃ!?」
思わず叫んでしまった。
だがテレアは自分へ向かってくる魔力爪をものともせず、その全てを巧みにかわしながらコランズに接近していくが、躱したはずの爪が方向転換して再びテレアを突き刺そうと伸びていく。
その光景はさながら誘導ミサイルのようだ……本物の誘導ミサイルはここまで正確に標的を狙えないだろうけど。
四方八方から飛んでくる爪をかわすことに集中してしまい、テレアはコランズに中々接近できなくなってしまった。
いくらテレアが本気になったと言えど、弱点までが克服されたわけじゃないんだよな……。
テレアの弱点は遠距離で有効な技を何一つ持っていないことだ。
接近戦なら風の魔法を使ったレリスでも敵わないほどの力を発揮するものの、こうやって距離を離されるとテレアは防戦一方になってしまう。
今はうまく攻撃をよけているが、この状況が延々と続けばさすがのテレアと言えど攻撃が直撃する未来は避けられない……。
なんとか出来ない物か……?
「おいおい、テレアの奴あのままやと危ないんちゃうか?」
「テレアよ!負けるではないぞ!!」
スチカとティアもテレアに声援を送るも、やはり現状を打破しないことにはどうしようもない。
「……え?それは本当か?そんなことしても大丈夫なのかえ?」
テレアに声援を送っていたティアが、まるで誰かと会話するように独り言を呟く。
「どうしたんティア?」
「今だけテレアに力を貸したいと言っておるのじゃ」
「誰が……ってこの状況ならそんなん一人しかおらんな」
突如ティアから青い光が発生して、その光がテレアに向けて真っすぐに飛んでいく。
なっ何なんだ一体!?
「……えっ!?」
さすがのテレアも突然のことにその光を回避することが出来ずに、そのまま直撃してしまった。
「え?ちょっ!?テレア大丈夫か!?」
だがテレアに目立った外傷は見当たらない……一体何が起こったんだ?
「テレアよ!今しがた青龍がお主に一時的に宿ったはずじゃ!」
「ええっ!?」
爪をかわしながら、テレアが困惑の表情を浮かべる。
「青龍だと!?まさかあの小娘はアーデンハイツの王族か!?」
その単語を聞いたドレニクがティアに目を向けた。
もしかして気が付いてなかったのか?まあ変装して髪型も変えてるしな。
「自身の中にいる青龍の存在を魔力で感じるのじゃ!テレアなら容易なはずじゃ!!」
「うっうん!!」
迫りくる無数の爪をかわしながら、テレアが精神を集中させて体内の魔力を活性化させていくと、テレアの身体が青い光につつまれていく。
『やあレディ!頑張っている君を見て感銘を受けてしまってね……一時的だが僕が力を貸してあげたいと思う』
「青龍さん、本当に?」
『生憎転移能力はあのドレニクとやらのせいで使えないが、今の状況を打破できる別の力を君に貸してあげよう。君なら有効に使えるはずだ』
「わっわかった!テレアやってみるね!」
そんな会話を青龍と交わすと、テレアの両手に青い光が集中していく。
そしてなおもテレアを貫こうと10本の魔力爪を操作するコランズに狙いを定めた。
「えい!!」
テレアが勢いよく拳を突き出すと、青い光を放つ光弾が物凄いスピードで飛んでいきコランズに直撃した。
「ウガッ……!?」
青い光弾を受けたコランズが口元に血を滲ませがら大きくよろめいた。
今までテレアがどんな攻撃を食らわしてもびくともしてなかったのに、今の青い光弾による一撃はコランズにダメージを与えることが出来たようだ。
『さあもう一発!』
「うん!!」
再びテレアがコランズに向けて拳を突き出すと、青い光弾がコランズに一直線に飛んでいき、直撃したコランズを大きく吹き飛ばし教会の壁に叩きつけた。
「ガハッ!!」
今度は目に見えるほどのダメージを与えられたみたいだ。コランズの口から血が吐き出された。
『今が好機だ!僕の力を維持し続けたまま君の思う通りに攻撃していくんだ!君なら問題なく扱えるはずだが、あまり長くはもたないだろうから短期決戦で!』
「わかった!」
そのまま青龍の力を全身に纏ったテレアが、まるで弾丸のようにコランズへと飛んでいく。
「クルナッ!!!」
立ち上がったコランズも、迫りくるテレアに向けて一直線に飛んでいく。
そのまま両者が勢いよくぶつかると、二人を中心地とした衝撃波発生し思わず目を閉じてしまった。
「ウガッ……!?」
目を開いて二人に視線を向けると、コランズの爪を紙一重でかわしたテレアの拳がコランズのみぞおちに深く突き刺さっていた。
「ええい!!」
拳を引いたテレアが、アッパーをコランズの顎に突き刺しそのまま宙に突き上げた。
それを追いかけるように跳んだテレアがコランズの足首を掴み、そのまま地面に叩きつける。
物凄い威力だったのか、それを物語るように地面に叩きつけられたコランズの周りに小さなクレーターが出来た。
「オオオオオオォォォオ!!!」
コランズがそのままの状態で宙にいるテレアに手を向け魔力爪を伸ばして突き刺そうと試みるも、またもテレアの手から放たれた青い光弾の直撃を受け、爪のコントロール阻害されて明後日の方向へと飛ばしてしまった。
『ここらが限界だね……さあ彼にとどめを刺すんだ!』
「うんっ!」
青龍の力で宙に浮いたテレアが両手を大きく空に掲げると、テレアを包む青い光が手の先の空間に集まっていき大きな青い玉が出来上がっていく。
なーんかこれに似たような技を有名な漫画でみたことあるなー。
俺がそんなことを考えている間にも青い球はどんどん大きくなっていき、ぱっと見直径二メートルほどの大きさになっていた。
「えええーい!!!」
掛け声とともにテレアが両手を振り下ろすと、その巨大な青く光る球はコランズへ向けて真っすぐに落ちていく。
「ガアアァァァァアァァァァァアア!!!!!」
テレアから放たれたその青い球はコランズだけでなくその周囲すらも巻き込んで激しい光と共にスパークを起こし、やがて大きな爆発を起こした。
周囲に爆風と爆音が響きわたり、それらが収まった時、その中心には意識を失いピクリとも動かなくなったコランズが横たわっていた。一見すると死んでいるように見えるが辛うじて生きているみたいだな。
青龍の力で宙に浮いていたテレアが、ゆっくりと地面に着地してそのまま石畳の上にへたりこんだ。
『実に見事だった!力を貸してあげた甲斐があったよ!』
「はあはあ……ありがとう、青龍さん!」
『さてと……力は使い果たした僕はこのまま消えるとしよう……短い間だったけど君のような素敵な女性に力を貸すことが出来て、僕はこの得ない喜びを感じているよ』
「え?青龍さん消えちゃうの!?」
『心配には及ばないさ!僕は青龍本体から作り出された分け身だからね!僕が消えたところで青龍本体には何の問題もないのさ』
やっぱりあの青龍は分け身だったのか……なんとなくだけどそうなんじゃないかとは思っていた。
神獣特有の、圧倒するような魔力を感じなかったし。
『そういうわけで僕は一足先に失礼するよ?すまないねクルスティア』
「うむ!実に良い働きであった!礼を言う、また会おうぞ!!」
そのまま身体全体を包んでいた青い光がテレアから離れていき、宙に集まっていく。
「逃がしはせんぞ!!」
だがそこへドレニクが現れて、集まった光を逃さないとばかりに手を伸ばす。
「生憎僕は男に触られるのはごめんでね?それじゃあ失礼」
捨て台詞を残し、ドレニクにつかまることなく青龍の分け身は跡形もなく消えてしまった。
その光景を茫然と見送ったドレニクが、憎しみを込めた目でテレアに向き直り睨みつけた。
「この子娘め……良くもやりおったな!!」
そのままテレアに向けてゆっくりと歩いて行くドレニクの前に立ちはだかるのは―――
「貴様、なんのつもりだ?」
「なんのつもりも何も、てめーの相手は俺だからだよ」
当然俺だった。
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