無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

文字の大きさ
105 / 169

出国~手から光線~

しおりを挟む
 アーデンハイツへの出発まではまだ時間があるので、俺はルカーナさんの元へと足を運んだ。
 以前からあの国行くことは伝えてあったので、とりあえずここ最近起きたことを掻い摘んで説明していく。
 この前助けてもらった時もあまりちゃんとした事情説明を出来てなかったからな。

「お前もつくづく面倒くさいことに首を突っ込んでいくんだな」
「まあ性分なんで」

 俺の返答に呆れたようにルカーナさんがため息を吐いた。

「本音をいうと俺も付いて行ってやりたいところだが、俺は俺でヤクトから頼まれごとをされていてな」
「ヤクトさんからですか?」

 あの、人の良さそうな笑顔が脳裏をよぎる。
 ヤクトさんがルカーナさんに対して頼むことか……差し当たって……。

「この国のカルマ教団についてですか?」
「相変わらず察しがいいな。実のところマグリドの教団はヤクトたちに潰されたが、残党どもが隠れて何かこそこそしてるらしい」
「ゴキブリみたいな奴らですね」

 となるとリンデフランデでももしかしたら何かこそこそやってる可能性もあるな。
 まああの教団連中が、各国の支部を潰されたところで活動を自粛するとは思えないけどね。
 ああいうのは大元をきちんと徹底的に潰さないと本当にゴキブリのごとく何度でも湧いてくるからな。
 この話を聞けただけでもルカーナさんのところに来てよかったな……後でリンデフランデのギルマスのクエスさんにも通信機で連絡しておかないと。

「しかし、アーデンハイツか……」
「どうかしたんですか?」
「……少し待っていろ、あまり気は進まないが知り合いへの紹介状を書いておいてやる」
「ルカーナさんの知り合いですか?」

 俺への返事もそこそこに、ルカーナさんは部屋の奥へと引っ込んでいった。
 失礼な言い方だが、この人ヤクトさんしか友達いないと思ってた。
 この国に来てルカーナさんと出会って以来、俺たち以外と会ってる様子をまったく見られなかったからなぁ……。
 そんなことをぼんやりと考えていると、なにやら封筒のようなものを持ったルカーナさんが奥の部屋から出てきた。

「アーデンハイツに俺の知り合いでもある「メイシャ=ハラード」という女がいる。アーデンハイツのギルドに行って、その手紙を受付に渡し俺の名前を出せば恐らく向こうから出てくるだろう」
「メイシャさんですか……ルカーナさんとはどのような関係で?」
「簡単に言ってしまえば、ライバルだな……単純な戦闘力なら俺と互角だ」

 レリスでさえ赤子の手を捻るかのようにあしらうこのルカーナさんと互角……それって恐ろしく強い人じゃないの!?
 怖え……この世にはまだまだ恐ろしい人がゴロゴロしてるんだな……。

「特にテレアとは必ず会わせておけ」
「テレアにですか?それはなぜに?」
「会えばわかる……それじゃあ俺は用事で出かけなければならんのでこれで失礼するぞ」

 もうちょっとそのメイシャさんという人の情報を聞いておきたかったが、用事があるというのでは仕方がないな。

「……ちゃんと見送りをしてやれなくてすまんな」
「いえいえ気持ちだけで十分ですよ!それじゃあ行ってきます!」
「道中気をつけろよ?……あとお前らの家のことは任せておけ」

 シエルとコランズもいるのにさらにルカーナさんまでとなると、いよいよもってうちの拠点は難攻不落の要塞に見えてくる。
 そんなわけで俺はルカーナさんと別れ、拠点へと戻っていくのであった。



「それじゃあ行ってくるよ」
「はい!留守は私とコランズ君に任せておいてくださいね!」

 いよいよアーデンハイツへ出発する時間になった。
 馬車もレンタルしたし準備も万全のはずだが、どうして出発直前になると何か忘れてるんじゃないかって気分になるんだろうな?

「コランズも悪いな、給仕係になったばかりなのにいきなり長期間留守にしちゃって」
「―――構いませんよ?こうして寝床があって働ける場所があるだけでも運がいいですから」

 相変わらずロボットのような抑揚のない声でコランズが俺に答えた。
 コランズに関しては、これはもうこういう性分なのだと思うことにした。

「皆さんも道中気を付けて行ってきてくださいね?」
「ありがとうございますシエルさん!」
「ちゃんとお土産買ってくるからね!」
「……私たちが留守中にサボらないように」
「後のことはよろしくお願いいたしますわね」

 俺たちが留守にするのはおおよそ二週間ほどだが、向こうでは何が起こるかわからないからな……下手したら一か月留守にする可能性だってある。
 つくづく馬車くらいしか移動手段がないのがネックだよなぁ……早いことスチカが大型の飛行機を作ることを祈るばかりである。

「宗一さんも何かあったら遠慮なく念話飛ばしてきてくださいね」
「わかってるよ、こっちの状況は定期的に報告するからさ」
「―――みなさん、どうかお気を付けて」
「コランズもありがとうな?そんじゃアーデンハイツへ向けて出発しますか!」

 俺の声を合図に全員が馬車に乗り込み、シエルとコランズに見送られながら住み慣れた拠点を後にした。
 三分ほど馬車を走らせた辺りで、俺はふと疑問に思ったことを口にする。

「そういえばエルサイムって入国審査にやたらめったら時間掛かったけど、もしかして出国審査もあるのかな?」
「……」

 俺の疑問に対しエナがさっと目を逸らしたのを見て、それだけで察することが出来てしまった。
 まじかよ……もしかしてまた長い時間待たされるのんじゃないだろうな……?
 俺の予想が当たっていたかどうかは……まあ出国出来た頃にはもうそれだけで辟易してしまっている俺たちの様子を見てもらえれば一発でわかるよな?



 エルサイムを出国しておおよそ三時間ほど経った頃、通信機から着信を知らせるメロディーが流れた。
 通信機を開きディスプレイを見ると、そこにはお別れ前に通信機番号を交換しておいたスチカの名前が表示されていた。

「おーっすスチカ」
『よっシュウ!もうエルサイムは出たんか?』
「三時間ほど前になー。そっちはもうアーデンハイツに着いたのか?」
『何事もなく昨日の夜には到着しとったわ。ティアが早くお前らに会いたいってうるさくてなぁ』

 そうかそうか……無事に帰れたようでなによりだ。
 ティアも相変わらずなようで……。

『おっちゃんにもちゃんと今回の件話しといたで?ちゃんと約束は守るっておっちゃんから伝えてくれって言われたからこうして電話したわけや』
「そっか……それなら安心だな」

 折角アーデンハイツまで行ったのに門前払いされる心配もなくなったので、少し安心できた。
 ……この際だからちょっとばかりお願いしておこうかな?

「スチカ、今時間あるか?色々と話しておきたいことがあるんだけど」
『お?なんや真面目なトーンやな?色々とめんどくさいことが起こってるんか?』

 アーデンハイツについたらスチカと合流することになるだろうし、今のうちに情報の共有をしておいて、あわよくば俺たちが到着する間に色々と情報を集めてもらっておきたい。
 向こうに着いてから色々と調べていたのでは遅いだろうしな。

「まずは……」

 そうして、俺はスチカに俺たちの抱えてる事情を掻い摘んで説明していく。
 
『なんやほんまに面倒くさいことに巻き込まれてるんやな?』
「同じセリフを今日別の人からも言われたよ」
『それにしてもエレニカ財閥と貴族のグウレシア家か……たしかにここ最近ちょいあの周辺は慌ただしいな』
「やっぱりそうなのか?」
『しかしあと一週間の間に結婚式って……めっちゃ怪しいな』
「その辺は噂になったりしてないのか?」
『うちも昨日帰って来てから今まで寝てたからなぁ……ちょっとわからんわ』

 いつまで寝てんだよ……もう夕方近いぞ?
 とはいえ昨日はずっと飛行機を操縦してて気も張っていただろうし疲れてたんだろうな。

『とりあえず任せとき!うちも出来る限り調べるし、おっちゃんにも頼んで色々と探りを入れてもらうわ!』

 いやはや、国に動いてもらえるのは本当に助かるなぁ……。
 あんまりこういう打算的なことは考えたくないが、スチカやティアと仲良くなっておいて良かった。

『後は他になんかないか?』
「んー……とりあえずはそんなところかな?」
『わかった!そんじゃ詳しいことわかったらまたこっちから連絡いれるわ!』
「ありがとな、スチカ」
『うちとシュウの仲や!水臭いこと言いっこなしやで?そんじゃまたな!』

 スチカとの通話を終えた俺は、小さくため息を吐く。
 俺が通話を終わらせたタイミングを見計らって、エナが話しかけてきた。

「スチカちゃんですか?」
「ああ、無事にアーデンハイツに着いたってさ」
「そうですか……それならよかったです」
「やっぱり以前からエレニカ財閥とグウレシア家周辺はちょっと怪しかったらしいよ」
「まあこういうあからさまに不穏な噂って、あっという間に広まりますしね」

 なぜかそういう噂に限ってな?

「しかし……神獣の件に加えてエレニカ財閥の問題ですか……どちらも一筋縄ではいかなさそうですよね」
「いっそのこと二つの案件が繋がってればいいんだけどな」
「それだと二つ合わさって余計に大事になっちゃうんじゃないかな?」

 俺たちの話を聞いていたテレアが、そんなことを言いながら会話に参加して来た。
 テレアの言う通り二つに分散されているのも面倒くさいが、明らかに手に負えなさそうな事件になられるものまた問題だよなぁ。
 でもこれは俺の勘なんだけど、アーデンハイツで待ち構えているこの二つの案件は、裏でつながっているんじゃないかって気がしてならない。
 明確な理由なんてないからうまく説明はできないが、なんとなくそんな気がするのだ。

「そういえば……テレアってメイシャ=ハラードって人知ってる?」
「えっと……聞いたことないかも」
「その人がどうかしたんですか?」
「いやね?ルカーナさんがアーデンハイツに着いたらその人を訪ねろって言うんだよ?しかもテレアとは必ず会わせるようにって念を押された」

 とはいえテレアの様子を見るに、どうやら全く知らない人のようだ。
 なぜルカーナさんはそのメイシャって人とテレアを会わせようとしてるんだろうか?

「レリスはメイシャ=ハラードって人知ってる?」

 フリルと共に馬車を引きながら談笑していたレリスにも聞いてみる。

「メイシャ=ハラードですか……聞いたことがあるような……ないような……」
「……私は知ってる」

 驚いたことに以外な人物から目撃証言が聞けそうだった。

「そうなのか!?どこで知り合ったんだ?」
「……厳密に言うと知り合いじゃない。昔アーデンハイツで一座が公演をするときにどうしても治安の悪い場所しか取れなくて、心配になったおじじが腕利きの冒険者を雇った時に来たのが、その人だった」
「どんな人だった?」
「……気が強くて、絡んできたごろつきを素手で一瞬のうちにボコボコにするくらいは強かった」

 素手か……どことなくテレアを彷彿とさせるな。

「……あとなんか手から光線を出してた」
「「「「光線っ!?」」」」

 思いもしなかった単語を聞き、フリルを除いた全員が声を揃えて叫んだ。
 手から光線を出すって……どんな野菜人だよ!

「なんか一気に謎が深まったんですが!?」
「何でルカーナおじさんはそんな人とテレアを会わせようとしてるの!?」
「……もしかしたらテレアも手から光線を出せるようになるかも」
「どうしてフリルちゃんは、そんなにわくわくしているのですの?」

 詳しい人物像が聞けるかと思ったら、さらに謎が深まってしまった。
 そんな話をしつつも、俺たちの馬車の旅は順調に進んでいくのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

処理中です...