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23歳・白露 ー愛するひとー
2.ノンカフェイン・ノン目覚まし。-2-
しおりを挟む「不動産、いつ行くか決めたらおしえてよ………ーーーわっ、!」
ーーーグイッ
速生は黙ったまま突然夕人の腕を引っ張り、キッチンをすり抜けて、リビングの真っ白なソファへ。
「………えっ、あのっ…ーーー
は、速生っ…」
ーーードサッ
身体ごとソファへなだれ込み、始まる濃厚なキスシーン。
「っ、ん!
んーー、っんぅ、っ…ふ…っ」
相変わらず突然すぎて少し驚くが、こうなることはわかっていたというように、きちんと瞼を閉じて口づけに応える夕人の顔を、速生は薄ら目を開けて、じっとりと見つめる。
(ーーー結局、こんなことになっちゃうんだよ………)
すぐすぐ至近距離にある整った、目鼻立ち。
長い睫毛が少し震えている。
やっぱり、自分と交わす口づけに、まだまだ慣れないのだろうか、とその健気さがまたなんともいじらしくて。
(ーーーだって、仕方ない。だって夕人が、こんなに可愛すぎるから)
白くてつややかな肌は、何か手入れでもしているのかと思えるほどに綺麗で、透き通り清らかで、それでいて妖艶で。
息苦しさのためか少しずつ赤みを帯びていくその頬が生々しく、まるで美しい人形に命を吹き込んでしまったみたいだ、なんて、初めて訪れたこの、いとしい夕人の部屋の中で、おかしなことばかり考えてしまう。
(なんだか詩的な俺。
痛いやつーー…。
ーーーーやっぱり、夕人のせいだ。)
俺をどんどんと狂わせていく、罪な夕人。
責任取って、応えてもらおうか。
ーーー逃がさないよ?
いとしさをさらに噛み締めて、湧き上がる、興奮と欲情の波。
ーーちゅ、ちゅうっ…
「……ふぁ、っ、ん…っ、んっ…
んぅ、はぁ、っ………」
唇を離して、見つめ合う。
すすっ…と速生の指が、夕人の少し濡れた唇にふれ,そのまま耳の下、顎のラインをなぞる。
(口付けの痕。
こんなにいっぱいーー…つけたままにして。)
「…………………」
唇の横、頬の下、黒いニットで隠れた首元にちらりと覗く、いくつもの赤い内出血。
端から見れば一体どんな酷い目に遭わされたのかと心配になるレベルのその痛々しい痕も、速生にとっては愛を証明する刻印。
それはまるで、神聖な、美しい手枷のようで。
つい、ふれて確かめたくなる。
(ーーー消えなければいいのに、一生。)
「………っ、…………ん、…っ」
触れられるたび、チクッ、と刺すような痛みが肌に走り、夕人はその度に小さく身体を震わせる。
なんだかあの時の、我を忘れ激昂した速生にずっと押さえつけられた感覚が蘇るようで。
ーーーおととい、いや、おとといの前。
あんなことやこんなこと、よくも。調子に乗ってやってくれたな、速生……。
あの時の自分を思い出すと、恥ずかしくて堪らなくて、いますぐに逃げ出したくなる。
ーー今日は、絶対に、されるが儘になんてなってたまるか。
速生、お前の好きなようにはさせないからな……?
何かに乗り移られていたんじゃないか?と思ってしまうほど、ひたすら快感に任せて淫らに喘いでしまったあの自分。
あんなにも痛みを与えられ続けていたというのに、悦んでしまっていた自分を、ひたすら、違う違う違う、と否定する。
ーーー俺は、痛いのなんて嫌いだ、絶対に。
絶対に………、マゾなんかじゃない……はずだ。
頭の中がずっと、忙しい。
「んっ、いっ……!…つ、ぅ…っ、
ちょっと……っそこさわるの、やめろよバカ…っ…
まだ、結構痛いんだからな…」
「へえーー……誰にやられたの?
こんな、ひどいこと」
「!?……おっまえなぁ……、どの口が、そんなこと」
「うそうそ。ごめんね?
……………今日は、優しくするから。めいっぱい。
それとも、ちょっとくらい厳しくされる方が好き?
………なぁ、夕人先生。」
頬に両手を添えてじっと見つめ、夕人のむすっとした赤らんだ顔の….唇の横や、耳の下、顎の痣達を交互に見つめる。
(可愛いなぁーー…もう……)
このどうにか必死な思いで隠してますと言わんばかりに着込んだタートルネックの下の、白くて透明な皮膚をーー…
見たい、撫でたい………早く、くちづけたい、とうずうずしてしまう。
「はぁ……?いや、ていうか…
普通は、その、シャワーとか、まず、そういうのからじゃないのかよ……?
仕事して汗かいてるのに、いきなり来て早々そういうのとか、神経疑う…」
「えっ。なに、そういうのって?
俺、まだ何も言ってないけど……。
あ、さては夕人、一緒にお風呂入りたいの?
もう……スケベ」
「~~~~~~…なっ…ふっざけんな…
どの口が……っ、ーーんんっ?!」
言葉を遮って、また始まるキス。
ーーちゅう、っ
ちゅっ…れろ、っちゅ、っ
「~~~~っ、……ん、っんん…っ」
わざとらしく音を立てて、上唇を舐め回す速生。
本当にいつもいつも、心の準備も何もさせてくれず、腹立たしくて、本当にむかつく。
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