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第1章 勇者を探して
第18話 海辺の旅
しおりを挟む日が落ちる頃、男が海から戻ってきた。
やっと、満足したようだ。
焚き火の前で夕食の準備をしていると、
串刺しにした魚を焼き始めた。
ただ遊んでいるだけでは、無かった様だ。
焚き火を前に、月明かりに照らされた海を眺める。
【海は良いな。海は何処でも同じなんだな。】
【やっぱり、魚は美味い】
いや、確かに魚は美味いけど、海は良いのところで止めて欲しかった。
翌朝、目を覚ますと男の姿が無い。
まさか、と思い海を見ると男が泳いでいた。
あと、どれだけ、泳ぐのが好きなん。
私達は、ひたすら浜辺を進む。
ルト迄、あとは、浜辺を進めば良い。
男は野宿の都度、海で泳いでるし、マリーナは、浜辺は練習に持って来いだと喜んでいる。
しばらく進むと浜辺に小舟が引き揚げられていた。
どうやら、漁村のようだ。漁師達は網の整備をしている。
夕方になっていたので、この辺りで野宿をする事になった。
男は、いつの間にか、漁師達に混ざって談笑している。
焚き火の準備をして、夕食の準備をしていると、男が戻ってきた。
【なあ、お嬢さん】
「。。。」
【なあ、マリア殿】
「はい、なんでしょう?」
【聖女ってのは、治療とか出来るのか?】
「ああ、治癒魔法は、使えるわよ。」
【おお、そうか。子どもが病気らしいんだ。治してくれないか?】
どうやら、村の子ども達の間で妙な病気が流行っているらしい。
村人に案内されて小屋に入ると、子どもが寝かされている。
子どもの顔に発疹が出ている。
「麻疹のようね。でも、これなら大丈夫。光魔法でなんとかなるわ。」
私は、杖を子どもの頭にかざし、詠唱を始める。
すると子どもの全身が輝き出した。
やがて、光は静かに収まり、子どもの顔の発疹は消え、安らかに寝息を立てている。
ふー良かった。
男は、【お嬢さん、よくやった。すげえ。】と、私の肩をポンポンと叩く。
マリアだっつーの。と思いつつ、この男、子煩悩なんだなと考えていた。
麻疹の子どもは、10人近くいた。この村の10歳未満のほぼ全員だった。
最後の1人の治療を終えた頃には、深夜になっていた。
そういえば、夕食が未だだ。
そんな事を考えていると、男が夕食の準備を始めた。
魚のぶつ切りが、入った鍋を火にかけた。
【俺の故郷の漁師めしという奴だ。美味いぞ。】
【ほら、できたぞ。おかわりもあるぜ。】
魚がいっぱいに注がれたお椀を渡された。
「美味しい。」
【それにしても、魔法はすげえな。病気を治しちまうなんて。】
「普通の治癒魔法は、怪我しか治せません。病気を治せるのは、光魔法だけです。」
「そして、光魔法は、私しか使えない。」
【そうか、だから聖女なんだな。】
【聖女ってのは、大変だな。】
その後は、黙って食事をして、横になり海上にそびえる月をぼんやり眺めながら眠りについた。
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