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【2020/05 邂逅】
《第2週 月曜日 夜半すぎ》回想
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───と、いうようなことを昼休みに長谷くんにちょっと話したのを回想していた。
昼休み、学食で長谷くんは大きなフランスパンが浸かり、チーズとパセリがたっぷりかかったオニオングラタンスープをフーフー冷まししながら啜っていた。
運動部だった人は当時の感覚のままよく考えずハイカロリーな大盛りメニューを頼みガツガツ食べるイメージだったので、スープにサンドイッチにサラダやカットフルーツなんてOLのようなメニューなのが意外だった。
「おれの研修もですけど、よくそれで藤川先生受け入れてくれましたね」
「うん、まあ、感謝はしてるんですけどね」
妹が作ってくれた弁当の卵焼きを蓋に取って、食堂備え付けの醤油をかける。妹の優明(ゆめ)が作る卵焼きはいつも甘い。
「そういえば小曽川さん、先生のことだらしないって言ってたけどそれってやっぱプライベート的な面の話ですか」
あ、この人、結構会話の細かいとこまで覚えてられるんだな、と思った。さすが警察官、怖い。
「あんまり大きな声じゃ言えないけどそう思ってくれていいよ。てゆうか、長谷くんにおれ、警告しとかなきゃいけないかも」
「え?」
多分、長谷くん狙われる。性的な意味で。
いや、言えないよそんなこと。
でも、帰宅してから「やっぱり言えばよかったなあ」と後悔している。
素直で優しそうな感じとか、顔立ちもはっきりしてて、アスリート体型で体力ありそうなとこ、絶対に今まであの人が関わったことないタイプだろうし、欲しがるだろうな。性的な意味で。
「あの先生とは本当、仕事上の遣り取りとか付き合いに徹したほうがいいよ。仕事以外のことでなんか誘われてたらうまいこと回避するか、誰か巻き込んだほうがいいと思う。…仕事でも二人きりになるのは避けたほうがいいと思う。」
長谷くんはいまいちピンとこないようだったが、さわやかな顔で「はい、わかりました」と応えた。
他愛のない話題に切り替えて食事は続いたけど、その間もこのあとのどうしようかと考えていた。
普段は学内の職員でさえ来るのを忌避し、授業後とゼミ以外は学生も来させないのにはそれなりのまずい理由がある。
おれは本当は賑喧しい人ごみは得意じゃないので、普段は自分のデスクで弁当を食べている。藤川先生の部屋に誰かが来た気配があったとて、大して気にしない。同じフロアの空いている他の部屋で食べるだけだ。
しかし、外部から見学に来た人間に、そのまずい理由を知られたくない。なので、集計作業を途中で投げて長谷くんを学食に誘い出した。
おそらく藤川先生は苛立っていた。
今頃、あの部屋に誰か誘い込んでセックスしてる。
但、午後の2枠は行為での消耗は見せず完璧にこなすだろう。
あぁ、授業態度については長谷くんに言わなきゃな。
授業後の仕事も、他の法医の先生や助手呼んだりしてどうにかしてこなす筈。
でも多分、自室での仕事はフロアを人払いして完全に独りでやりたがるだろう。
しょうがない、費用集計は持ち帰って家でやろう。溜まると面倒だ。
弁当箱を片付け始めると長谷くんが席を立った。
「小曽川さん、このあとどうしますか」
「ん~、おれは準備あるからこのまま教務寄って機材申し込んでこようかな」
少し身を屈めて覗きこむようにして、目線を合わせて優しく微笑んでこちらに語りかける。
「おれでよかったら、何かお手伝いできることあればご一緒しますよ」
「や、いやいや、お気遣いありがとうございます、大丈夫、大丈夫」
焦った。
あの人には絶対にそんなことしたらダメだよ。
長谷くん。おれの話、理解できてるかなあ。
昼休み、学食で長谷くんは大きなフランスパンが浸かり、チーズとパセリがたっぷりかかったオニオングラタンスープをフーフー冷まししながら啜っていた。
運動部だった人は当時の感覚のままよく考えずハイカロリーな大盛りメニューを頼みガツガツ食べるイメージだったので、スープにサンドイッチにサラダやカットフルーツなんてOLのようなメニューなのが意外だった。
「おれの研修もですけど、よくそれで藤川先生受け入れてくれましたね」
「うん、まあ、感謝はしてるんですけどね」
妹が作ってくれた弁当の卵焼きを蓋に取って、食堂備え付けの醤油をかける。妹の優明(ゆめ)が作る卵焼きはいつも甘い。
「そういえば小曽川さん、先生のことだらしないって言ってたけどそれってやっぱプライベート的な面の話ですか」
あ、この人、結構会話の細かいとこまで覚えてられるんだな、と思った。さすが警察官、怖い。
「あんまり大きな声じゃ言えないけどそう思ってくれていいよ。てゆうか、長谷くんにおれ、警告しとかなきゃいけないかも」
「え?」
多分、長谷くん狙われる。性的な意味で。
いや、言えないよそんなこと。
でも、帰宅してから「やっぱり言えばよかったなあ」と後悔している。
素直で優しそうな感じとか、顔立ちもはっきりしてて、アスリート体型で体力ありそうなとこ、絶対に今まであの人が関わったことないタイプだろうし、欲しがるだろうな。性的な意味で。
「あの先生とは本当、仕事上の遣り取りとか付き合いに徹したほうがいいよ。仕事以外のことでなんか誘われてたらうまいこと回避するか、誰か巻き込んだほうがいいと思う。…仕事でも二人きりになるのは避けたほうがいいと思う。」
長谷くんはいまいちピンとこないようだったが、さわやかな顔で「はい、わかりました」と応えた。
他愛のない話題に切り替えて食事は続いたけど、その間もこのあとのどうしようかと考えていた。
普段は学内の職員でさえ来るのを忌避し、授業後とゼミ以外は学生も来させないのにはそれなりのまずい理由がある。
おれは本当は賑喧しい人ごみは得意じゃないので、普段は自分のデスクで弁当を食べている。藤川先生の部屋に誰かが来た気配があったとて、大して気にしない。同じフロアの空いている他の部屋で食べるだけだ。
しかし、外部から見学に来た人間に、そのまずい理由を知られたくない。なので、集計作業を途中で投げて長谷くんを学食に誘い出した。
おそらく藤川先生は苛立っていた。
今頃、あの部屋に誰か誘い込んでセックスしてる。
但、午後の2枠は行為での消耗は見せず完璧にこなすだろう。
あぁ、授業態度については長谷くんに言わなきゃな。
授業後の仕事も、他の法医の先生や助手呼んだりしてどうにかしてこなす筈。
でも多分、自室での仕事はフロアを人払いして完全に独りでやりたがるだろう。
しょうがない、費用集計は持ち帰って家でやろう。溜まると面倒だ。
弁当箱を片付け始めると長谷くんが席を立った。
「小曽川さん、このあとどうしますか」
「ん~、おれは準備あるからこのまま教務寄って機材申し込んでこようかな」
少し身を屈めて覗きこむようにして、目線を合わせて優しく微笑んでこちらに語りかける。
「おれでよかったら、何かお手伝いできることあればご一緒しますよ」
「や、いやいや、お気遣いありがとうございます、大丈夫、大丈夫」
焦った。
あの人には絶対にそんなことしたらダメだよ。
長谷くん。おれの話、理解できてるかなあ。
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