Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 教育】

《第2週 火曜日 朝》

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スマートフォンのアラームで目を覚ますと、まだうっすら夜が明ける頃だった。
自慰をしたあとそのまま尻や局部を出したまま寝落ちていた。間抜けすぎる。とりあえず着衣を直した。
キッチンの電気ケトルで湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れ、テーブルに戻り、よく見ると
先程アラームを止めるときは気付かなかったが、スマートフォンのLEDが明滅し、通知があることを伝えている。
藤川先生からのショートメッセージだった。
「実習作業後のシャワーや消毒があるので下着類の替えの持参お願いします。作業着やタオル類は貸します。初日説明し忘れましたが手洗いの方法についても指導します。今後は入退室の都度、うがい手洗い消毒の実施をお願いします。」
そういえば昨日、終わったあとシャワー浴びて消毒してから来たと言っていた。
「わかりました、ボディソープやシャンプー等はありますか?」
目を少し話した間に返信が来ていた。
直ぐに返事が来るとは思わなかった。
「備え付けがあるけど、拘る人は持ち込んでます。」
洗面所に行き、洗面台のシンク下入れてある旅行用のシャンプーのセットを用意し、ついでに洗濯機の上のラックにストックしているタオルと下着の替えを下ろした。
「作業着だけ借りれれば大丈夫です。」
「了解です、用意しときます。」
しかし、先生が思ったより早起きなのも驚いた。
「先生案外早起きなんですね。」
何気なく送った一言に返事が来ない。もしかして触れたらダメなポイントだったんだろうか。
諦めて資料の書き込みをノートに清書していると、ややしばらくして返事が届いた。
「寝れない。」
更に少し間を開けて、もう一通届く。
「気にしなくていいよ。よくあることだから。では学校で。」
よくあること、というのが却って心配になる。
食べない上に、寝れないって。
今慌てて学校に向かったところでまだ門も開いてないだろうし、先生だって来ていないだろう。
何もできないのがもどかしい。
昨日先生の連絡先を教えてもらったとき、小曽川さんの連絡先も訊いておけばよかった。
大石先生にも訊けばよかった。
とりあえず、今はできることをしておかないと。
少し温くなったコーヒーを啜って、ノートの作成に戻る。
所々、横から先生が書き加えたり付箋で付けたメモがあって、その文字が妙に優雅で美しい。
その時にかいだ、シャワー後の先生からしていた甘い匂いとか、画像や重要な項目を指差した時の手の動きとかが断片的に蘇る。
ダメだ。そういうことを考えてたらいつまでも進まない。
Bluetoothイヤホンを取り出して耳に嵌め、スマートフォンとペアリングして大音量で適当に音楽を流す。言葉が耳に入ると意識が持って行かれそうなので喧しいEDMを選んだ。
そのまま移動中も余計なことを考えないように聴きながら電子で先生が授業に使っていた書籍を購入して読んだ。
先生本人に、自分の中の欲望を悟られたくない。
欲望と思慕がごちゃごちゃのままこんな歳まできて、まるで変われていないのに、安定欲しさに誤魔化すための愛想笑いとか気遣いばかり身について、自分自身に中身がないことを知られたくない。
少しでも、終わる頃には教えてよかったと思ってほしい。
僅か3日目で、まだ大したことは何もしていないのに、おれはなんでこんなに苦しいんだろう。
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