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【2019/05 苦界】
《第二週 土曜日 朝》
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午前11時。優明の婚約者である圭太くんが家に来た。
すっかり忘れていたが、圭太くんは優明の高校時代、帰りによく一緒に歩いてた真面目そうな少年で、休んだ日にうちに届け物に来てくれたこともあって、少し話したこともある子だった。
「あ~、なんだ、きみかぁ…」
緊張が解けて思わずポロッと言うと、二人とも顔を見合わせて笑っていた。
普段はやらないけど、圭太くんがおもたせスイーツを持参していたので、お茶を淹れて出すなどして3人でダイニングテーブルを囲んだ。
大学はバラバラで、就職後も中々会えなかったが、異動で職場が近くなったことで再会してちょいちょい会うようになって付き合い始めたんだとか。
丁度うちの親が亡くなった辺りだったため、当初は慰めつつ様子を見ていたらしい。あの時期に支えになってくれた相手を好きになるのは自然なことだと思う。
そういう人だったら、優明の背景も受け容れてくれる気がして、やはり今日話しておこうと思った。
「圭太くん、優明から聞いているかわからないけど、話しておきたいことがあってですね」
優明が事情があって特別養子縁組でうちに来た子であること、母親は自死してしまったが父親は存命であること、うちが出す結婚や新生活にかかる費用はその人が仕送ってくれていたお金であること。
そして、その父親がおれの現在の上司にあたること、これは優明にも今まで言っていなかったことだということを説明した。
「その方には、優明ちゃんが結婚することお伝えしてるんですか」
圭太くんに、一応伝えるだけは伝えてあることは言った。
その横で、優明は呆然としていた。
「あの人が、わたしのお父さんなんだ…」
ああ、そうだ。水曜日の朝、動けなくなっていたおれに代わって先生に連絡を入れたのは優明だった。
すっかり忘れていたが、圭太くんは優明の高校時代、帰りによく一緒に歩いてた真面目そうな少年で、休んだ日にうちに届け物に来てくれたこともあって、少し話したこともある子だった。
「あ~、なんだ、きみかぁ…」
緊張が解けて思わずポロッと言うと、二人とも顔を見合わせて笑っていた。
普段はやらないけど、圭太くんがおもたせスイーツを持参していたので、お茶を淹れて出すなどして3人でダイニングテーブルを囲んだ。
大学はバラバラで、就職後も中々会えなかったが、異動で職場が近くなったことで再会してちょいちょい会うようになって付き合い始めたんだとか。
丁度うちの親が亡くなった辺りだったため、当初は慰めつつ様子を見ていたらしい。あの時期に支えになってくれた相手を好きになるのは自然なことだと思う。
そういう人だったら、優明の背景も受け容れてくれる気がして、やはり今日話しておこうと思った。
「圭太くん、優明から聞いているかわからないけど、話しておきたいことがあってですね」
優明が事情があって特別養子縁組でうちに来た子であること、母親は自死してしまったが父親は存命であること、うちが出す結婚や新生活にかかる費用はその人が仕送ってくれていたお金であること。
そして、その父親がおれの現在の上司にあたること、これは優明にも今まで言っていなかったことだということを説明した。
「その方には、優明ちゃんが結婚することお伝えしてるんですか」
圭太くんに、一応伝えるだけは伝えてあることは言った。
その横で、優明は呆然としていた。
「あの人が、わたしのお父さんなんだ…」
ああ、そうだ。水曜日の朝、動けなくなっていたおれに代わって先生に連絡を入れたのは優明だった。
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