Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【1989/05 komm tanz mit mir】

《第二週 金曜日 夜》② (*)

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「ねえ、アキくん、おれにもじゃあしてくれる?」
「ん?」
上掛けから腕を出して仰向けに寝たまま、顔をこちらを振り向けたアキくんは、なんでもない、いつもの無邪気なアキくんの顔だった。
もしかしたら次の瞬間、おれは嫌われてしまうかもしれないし、泣かせてしまうかもしれない。怖い。でも、そう思っても止められなかった。
「おれにもしてよ、さっきみたいなキス」
アキくんは一瞬不思議そうな顔をして、こちらをじっと見ていた。なんで?とかわかんないというときの顔だ。そうだよな、やっぱお父さんだけは特別なんだろう。自分はやはり、誰にも選んではもらえないんだな。そう思うとしんどくなった。
「冗談だよ、ごめんね、今の忘れて」
寝返りを打って壁側に頭をくっつけて目を閉じた。
やや暫くして、眠りに落ちかけていたところに、肩をおそるおそる2度ほど、手のひらでそっと触れる感触がした。
「ハルくん、こっち向いて」
呼びかける声に振り返って寝返りを打ち、体勢を仰向けに戻し目を開けると、直ぐ傍、おれの顔の上にアキくんの顔があった。おれと目が合うと、微笑んでからアキくんは目を閉じた。
そしてそのまま頬と頬が触れるほど顔が近づいて、柔らかな唇がおれの唇に触れ、舌先が隙間に口を開けるのを促すかのように探ってきた。おれはその間、只、アキくんの、年頃の男の割に密度の濃い睫毛を見つめていることしか出来なかった。
粘膜に体内の直の体温で触れられて、これまでに受けたことのない心理的な衝撃と、体に電流のような快感が駆け巡る。初めて自分の性器が求めていたものに気づき、大きく繰り返し脈打つのを感じた。首筋から頬が火照り、自分の呼気がひどく熱い。恥ずかしくなって思わず目を閉じた。
視覚がなくなると、他の感覚が鋭敏になった。
アキくんの舌がおれの舌先を求めて口内に生き物のように侵襲してくる。おれも勝手もよくわからないのに必死に舌先を伸ばし、アキくんの舌を舐めた。おれの頬に添えられた華奢ながら柔らかい手の感触と、滑らかで温かく濡れた舌の感触と、歯磨き剤の甘い匂いに、表しようのない興奮が掻き立てられ、頭の中が真っ白になる。
静まり返った部屋に、おれとアキくんの荒い呼吸音と、唾液に濡れた舌が絡む音だけが響き、それが頭の奥の深いところに突き刺さる。性器の先端は痺れそうなほどに張り詰めて、ジリジリと疼いていた。
やがて、アキくんの舌がするりと引き抜かれ、唇が離れた。おそるおそる目を開けると、アキくんが上からおれの顔を覗き込んでいる。
「ハルくん、気持ちいい?」
邪気のない可愛い顔で、潤んだ目で見つめてそんな事言われて、続きが欲しくならないわけがなかった。
頷いてから、「今の、もう一度、してくれる?」と問いかけると、アキくんは囁くように「いいよ」と言って、再び唇を重ね、舌を絡める。
おれは上掛けの中で、二度目のキスを味わいながらパジャマのボトムに手を差し入れ、おさまらず痛みに近い疼きを抱えていた性器を擦った。やがて陰嚢や下腹部の奥が何度も収縮を繰り返し、釣られて内腿や膝まで震わせながら、掌に熱っぽい粘度を帯びた液体を幾度も噴出させた。おまけに全身にひどく汗をかいた。
おれが達したのを察したアキくんは唇を離し、ベッドボードの上の棚からティッシュを何枚かまとめて引き抜いて、おれに差し出した。
そして、そっと耳元で言った。
「アキくんもね、ときどきそういうことするよ。お父さんとお母さんに内緒で、お風呂場でするの。ないしょだよ」
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