Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 埋火】

《第3週 木曜日 午後》②

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その後、今日は捜査や安全確保のため授業はすべて中止決定となり、教員や学生はできるだけ早く退去するように指示が出た。
おれは飯野さんからの呼び出しを受け、明日は学校ではなく署で話をすることになった。
そして、藤川先生は明日、緊急招集となった学校の役員会に呼び出されることになった。
早々に校内から追い出されたおれは不安もあり、時間を持て余しているせいもあって、帰宅途中からずっと小曽川さんとメッセージを遣り取りしている。
「小曽川さん、先生は階段室のとこで誰と何を話していたんですかね」
「いやぁわかんなかったです、口頭では遣り取りしてなかったですし。あの人のプライベートの携帯覗けないようにフィルム貼ってますし」
ああ、まあそれもそうか。確かに、そもそも今だと態々音声通話する必要って殆どない。
「でも、おれ、正直なところ心当たりはあるんですよ。丁度こないだ出たでしょ、ウリやってる話」
「あれが、何か今回の事件に関係あるんですか?」
そう返信すると、暫く既読がつかなくなった。乗り換えかなと思ってのんびり待っていると、通知が来た。画像が添付されている。タップして開くと壮年ながら凛々しく引き締まった顔の男性の写真が表示された。全体的に後ろに撫で付けているが、サイドに流した髪が一部崩れて頬にかかり妙に色っぽい。
「知ってます?征谷直人。現在の■■会系の上位組織のトップ。勿論通名ですけど」
実話系の雑誌の表紙やニュースで名前はチラッと見たことがある。こういう人なのか。夜の商売の世界に居た人っぽくは見えるが、あまりイカニモな感じはしない。それどころか、どっちかと言うとうちの飯野さんのほうが見た目としてはそういう人っぽいくらいだ。
「この方がどうかしたんですか?」
「どうって、長谷くん…そういうとこ関連付けするのちょっと鈍いほうなんですね…この人が先生のパトロンなんですよ…」
もう、なんだか感情が追いつかない状況が続きすぎて、どう反応していいかわからない。返信もできぬままぼんやりとその文字列を眺めていると、追って小曽川さんから追加情報が入ってくる。
「ちなみに彼の妻はリブラって芸能プロダクション持ってる安斎由美子って人で、征谷さんが若い時にトップだった人の娘です」
既婚者で、自分の親ともいえる人の娘を娶っているのに、年の離れた先生にお金を払って長年相手させているとか、いったい何者なんだ。奥方はそれを容認しているということなのか。
「まあ、今まではやってる噂あっても、証拠掴ませないで本業の稼働に支障出さないでやってきてたからなんとかなってただけですよ、年貢の納め時ですね」
先生と小曽川さんが大学をクビになったら、おれも今後どうなるんだろう。今週で終わるはずだった見学は結局ここで打ち切るのか、それとも他の教員の方に引き継いで継続なのか、見えなくなってきた。
「おれも知ってたかどうか訊かれるだろうし、今後のこと考えとかないとまずいなあ…先生は多分明日の役員会じゃしらばっくれるでしょうけど、それでも先生がやってることと今回の発砲事件が直接関連があるという明確な証拠は結局そのうち出るでしょうし、そしたら先生多分普通にクビだと思いますもん」
それだけじゃない、もしそれが事実だとしたら、暴力団関係者と関係している人間と、警察官で刑事組織犯罪対策課に所属している人間が交際するとか一緒に暮らすとか、それ自体まずいことになる。先生との関わりは否応なく終わらせるしかなくなってしまう。
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