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【2020/05 野火】
《第3週 金曜日 朝》③
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30分ほどしてようやく気力が戻ってきた。
面倒にならないうちに母に架電すると、本体を手にしたまま待っていたのかすぐに応答し、こちらに言葉をかけてきた。
「アキくん?」
「うん、大丈夫」
本当に状態が悪い限界のときはどんなにかけても応答しないし、折返しもしない。LINEもメールも見ないという状態になるので、それを考えたら大丈夫なことはわかるでしょうに。とはいえ、心配ではあっただろう。
「もしかして、ニュース見た?」
「うん、待ってる間に珍しくテレビつけて見てたけど、正直建物だけの被害で済んで良かったね」
本当は、もっと言いたいことがあるんだろうけど、お母さんからは絶対に言わない。
「お母さん、あのさ、前から思ってたけど、わかってたでしょ」
「ん?」
「おれが何やってるのか、いつかこういうことに巻き込まれるんじゃないかってことも、全部」
そう言うと、お母さんは暫く間をおいて「うん」と短く返事した。
「なんで知ってて止めなかったの?ハルくんからだって聞いてたでしょ?…ハルくんはやめろって何回も言ったよ、一緒に暮らしてる間ずっと」
「そうだね、でもハルくんはそれでもずっと耐えてた。アキくんのほうが結局先に耐えられなくなったから離れたでしょ?でも、それでも、それ以降だってやめなかったじゃない」
責められているわけじゃないとわかっていても苛立ちが募る。落ち着かず、ソファから起き上がって部屋の中を歩き回りながら話を聞く。戸棚に近づいて引き戸を開けて、薬を収めた箱から錠剤のシートを取り出してソファに一旦戻る。
頓服で貰っているロラゼパムを0.5mg1錠のみ押し出す。作用強めで作用時間は12時間程度。規定量より少ないからそんなに長くは効かないかもだけど、今日一日、乗り切れればいい。
半分に割剤ばさみで割っておいたカフェインの錠剤を鞄の中のピルケースから1つ出す。一緒に、手を付けず鞄に入れていたココア味のミルクプロテインのパックを取り出し、にストローを突き刺して啜り、一緒に流し込んだ。
「…まあね、なんでやってたのかも、やめなかったのかも、お父さんとお母さんはわかってんでしょ。ハルくんは理解できないって言ったよ」
一気に飲み終えてストローを抜いて捨て、パックをテーブルに置いて片手で少しずつ開き、潰して畳む。
「アキくんがやめなかったのは、責任を負わないといけないと思っているからで、わたしたちが言って止められるようなものじゃない。そもそもアキくんの意志の力は強すぎる。思い込んだら絶対に揺るがない。自分の中で勝手に決めて、そのためなら手段なんか選ばない。そして、治療者として、わたしたちはそれがアキくんが持って生まれた特性だと知っているから変えることができないのもわかってる、だから言わなかった。もしやめられるとしたら、それはアキくんが決めたゴールに辿り着いたときだけ、或いは、何かに自身で気づいて方針を転換した場合だけだから」
なんだ、単に成人した子供に態々言うことじゃない、親が出て責任取ることじゃないと思ってるわけじゃなくて、全部わかって上で、敢えての放任だったんだ。
「脅しで発砲される程度で今は済んでるけどさ、もし、おれが何かお縄になるようなこととか、命や心身が危険に晒される状況になったらどうするつもりだったの」
「どうもしませんよ、アキくんはわたしたちのレシピエントでもあり、大事なわたしたちの子供だもの。いざ直接助けを求められれば何だってする。但しその場合は大人だからって容赦しないでめちゃくちゃ叱りますし詰めますけどね。思い出して頂戴、ハルくんとの関係に溺れて学業が疎かになった時あったでしょ一度」
笑い事じゃないのに、つい思い出して吹き出した。あったなあ、そんなこと。あんなに怒られたこと後にも先にもなかった気がする。アレがあったから家を離れて受験対策しようと思ったんだった。
面倒にならないうちに母に架電すると、本体を手にしたまま待っていたのかすぐに応答し、こちらに言葉をかけてきた。
「アキくん?」
「うん、大丈夫」
本当に状態が悪い限界のときはどんなにかけても応答しないし、折返しもしない。LINEもメールも見ないという状態になるので、それを考えたら大丈夫なことはわかるでしょうに。とはいえ、心配ではあっただろう。
「もしかして、ニュース見た?」
「うん、待ってる間に珍しくテレビつけて見てたけど、正直建物だけの被害で済んで良かったね」
本当は、もっと言いたいことがあるんだろうけど、お母さんからは絶対に言わない。
「お母さん、あのさ、前から思ってたけど、わかってたでしょ」
「ん?」
「おれが何やってるのか、いつかこういうことに巻き込まれるんじゃないかってことも、全部」
そう言うと、お母さんは暫く間をおいて「うん」と短く返事した。
「なんで知ってて止めなかったの?ハルくんからだって聞いてたでしょ?…ハルくんはやめろって何回も言ったよ、一緒に暮らしてる間ずっと」
「そうだね、でもハルくんはそれでもずっと耐えてた。アキくんのほうが結局先に耐えられなくなったから離れたでしょ?でも、それでも、それ以降だってやめなかったじゃない」
責められているわけじゃないとわかっていても苛立ちが募る。落ち着かず、ソファから起き上がって部屋の中を歩き回りながら話を聞く。戸棚に近づいて引き戸を開けて、薬を収めた箱から錠剤のシートを取り出してソファに一旦戻る。
頓服で貰っているロラゼパムを0.5mg1錠のみ押し出す。作用強めで作用時間は12時間程度。規定量より少ないからそんなに長くは効かないかもだけど、今日一日、乗り切れればいい。
半分に割剤ばさみで割っておいたカフェインの錠剤を鞄の中のピルケースから1つ出す。一緒に、手を付けず鞄に入れていたココア味のミルクプロテインのパックを取り出し、にストローを突き刺して啜り、一緒に流し込んだ。
「…まあね、なんでやってたのかも、やめなかったのかも、お父さんとお母さんはわかってんでしょ。ハルくんは理解できないって言ったよ」
一気に飲み終えてストローを抜いて捨て、パックをテーブルに置いて片手で少しずつ開き、潰して畳む。
「アキくんがやめなかったのは、責任を負わないといけないと思っているからで、わたしたちが言って止められるようなものじゃない。そもそもアキくんの意志の力は強すぎる。思い込んだら絶対に揺るがない。自分の中で勝手に決めて、そのためなら手段なんか選ばない。そして、治療者として、わたしたちはそれがアキくんが持って生まれた特性だと知っているから変えることができないのもわかってる、だから言わなかった。もしやめられるとしたら、それはアキくんが決めたゴールに辿り着いたときだけ、或いは、何かに自身で気づいて方針を転換した場合だけだから」
なんだ、単に成人した子供に態々言うことじゃない、親が出て責任取ることじゃないと思ってるわけじゃなくて、全部わかって上で、敢えての放任だったんだ。
「脅しで発砲される程度で今は済んでるけどさ、もし、おれが何かお縄になるようなこととか、命や心身が危険に晒される状況になったらどうするつもりだったの」
「どうもしませんよ、アキくんはわたしたちのレシピエントでもあり、大事なわたしたちの子供だもの。いざ直接助けを求められれば何だってする。但しその場合は大人だからって容赦しないでめちゃくちゃ叱りますし詰めますけどね。思い出して頂戴、ハルくんとの関係に溺れて学業が疎かになった時あったでしょ一度」
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