Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/5 in nest】

《第5週 火曜日 夜》⑨

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この宗教では、生殖を非常に神聖なものとしてとらえていて、夫婦間以外のあらゆる性行為は重大な罪とされていた。なので婚前交渉は勿論禁忌で、純潔であることを求められる。
それだけではなく、18歳になって生涯神に従う誓いの儀式をするまでは男女1対1で出掛けたり遊んだり、二人きりになったりすること自体が禁止されている。宗教に反感を持つ人と関わってはいけないともされていた。
そんなことは一般的な学校生活をしていたら到底無理なことだ。なので信者の中には我が子が俗世生活で過ちを犯さぬよう、就学前から預けられたり通っていた教団の施設に引き続き通わせてそこで個別指導を受けさせたり、ホームスクーリングにさせられている子も居た。
勿論その中でも教えを学ぶことを求められ、選択肢のないまま一年中朝から晩まで宗教漬けにされているような子供も沢山居た。当初母親もそのようにしたかったようだが、流石に父親はそれを許さなかった。
なのでおれは公立の小学校に入ることができ、宗教から離れる時間を持つことが出来た。でもせっかくそうしてくれても学校生活は友達は居てもなんとなく居心地が悪く、教えで禁じられていることが多数あるので不自由だった。
しかも学校生活より教会の活動を優先することとされ休まざるを得なかったりもした。週末は買い物も遊びも禁止で一日中教会。家の中でも気分次第で母親が部屋に来て何時間も教えについて講義するし、父親が居ない日に地域の管理者が抜き打ちで家庭訪問に来ることもあった。
そうやって家の中にまで関係者が入り込んでくることには父親が激怒することもあった。
「…あのさ、長谷、お前のお父さんって、こう言っちゃ悪いけど、なんでそんな変な女掴んじゃったの?おれの件があったあと、必死に勉強して昇格して刑事なるくらい堅実な人間だったのに」
「…やっぱり、そう思いますよね?」
そう、そもそも何故こんなカルトに入っている女性と結婚してしまったのか。
その切っ掛けが、教団が勧誘目的で運営している英会話教室だった。先生の件のあと、父親は更に都心部に異動になった。大使館や外資系企業が入るオフィスビルがあって外国人と接する機会が増えて、今後は英語ができないと苦労すると実感したため習えるところを探したという。
署と同じ建物にある寮が当時の住まいだったのでその近くで探したが、まだ当時は駅前に何店も展開しているような大きな企業もない時代だ。それでも当時としては珍しく安価で月謝制で通えるところが近くの雑居ビルにあった。そこで講師をしていた母親と出会った。
習っているうちに親しくなって付き合うようになったのだが、これが罠だった。
最初のうちは全くこんなカルトに所属しているような様子はなく、勿論英会話教室自体にもそのような気配はなかったらしく、通し勤務の明けに習いに行って、その晩食事や映画に出掛けるなど穏当に交際していた。求婚して、婚約するところまでは特に問題なく進んだ。
父親には家庭の事情でそれを報告する家族がおらず、母親も自分の家族はわざわざ呼べないので形式張ったことはせずに住まいを契約して一緒に暮らすようになった。そこから数ヶ月掛けて結婚のための手続きを進め、結婚が成立してからが問題だった。
先ず、日曜は礼拝に出かけているというのは聞いていたが、その教会に来てほしいと言われるようになった。当初決まった信仰を持っていないので快く応じていたが、やがて「信者同士の結婚を義務としている」「神前で結婚を誓う必要がある」ことを知らされ、入信を迫られるようになった。
さまざまな決まり事を知り結局「職務的にも生活習慣的にもそれらを守ることは難しい」ということでその時は断った。しかし「本来は嗜好品の摂取や婚前交渉や避妊は認められていない、交際や同棲にあたってそれを破って合わせていたのに」と繰り返し責められ、応じざるを得なくなった。
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