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汚い顔だから婚約破棄したいと言われた令嬢が幸せを掴むまで
第三話 汚い顔の女
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アレクサンダーはオーロラの涙に動揺した。
「ご、ごめん、何か悪いこと言っちゃったかな?」
冷静に考えれば『なぜオーロラが泣いているのか』がわかったかもしれないが、アレクサンダーは突然の出来事にわけがわからなくなっていた。何に謝るべきかわからなかったが自分の言葉で目の前の女性が泣いている。そう思ったアレクサンダーはとりあえず謝るべきだと考えた。しかし、その謝罪と質問にオーロラが答えることはなかった。
泣きながら立ち尽くしていたオーロラが突然歩き出した。向かっているのは中庭で人目をはばからず身体を寄せ合うジェイコブと浮気相手の方へだった。
オーロラは気の強い女性ではない。普段なら自分が我慢すれば良いと思ってしまっていたかもしれない。しかし、強すぎるショックに思わず歩き出していた。
ジェイコブは近付いてくるオーロラに気付いたが、女性との距離を少し空けるだけで悪びれる様子はなかった。
「何やってるの? その人は誰?」
オーロラは風の音にかき消されてしまうほどの小さな声で質問した。
「別にお前には関係ないだろ」
ジェイコブは吐き捨てるようにそう言った。浮気相手はオーロラもその他大勢のライバル
の一人だと思ったのか鋭い目つきで威嚇した。
「関係なくなんてないよ。私婚約者なんだよ?」
「……はぁ。だからなんだよ。婚約者だからって友達を全員紹介しないといけないわけじゃないだろ?」
「友達じゃないよね? 抱き合ってたよね? しかも他にも女がいるんでしょ? 私知ってるんだよ」
小さかったオーロラの声は段々と大きくなっていた。
「だから……はぁ……わっかんないかなぁ……。お前には関係ないって言ってんだよ! 今まで言わないでやったけどな、誰がお前みたいに膿だらけの汚い顔の女と婚約したいと思うんだよ! 親が勝手に決めたことだろ?」
汚い顔の女……オーロラが一番言われたくない言葉だった。オーロラは自分の顔中にあるいくつものニキビがコンプレックスだった。ニキビは膿が出て黄色くなっているものもあった。思春期のニキビは、成長期における皮脂の過剰分泌が原因で特に珍しいことでもない。しかし、オーロラにとっては何よりも嫌で嫌でしょうがないものだった。
「本当だったらな、もっとレベルの高い女をいくらでも選べるんだよ。この際だから言うけどな、お願いだから婚約を解消してくれよ。そうだ、お前から父親に言って婚約破棄を認めさせてくれよ」
ジェイコブは幼いころから容姿に恵まれ、コンプレックスを持つ人間の気持ちを想像もできなかった。中性的な綺麗な顔に似合わない乱暴な言葉、なんの躊躇もなく言葉の暴力で人を傷付けられるジェイコブにオーロラは不快感よりも恐怖に近いものを感じていた。
ジェイコブの罵倒は止まらない。オーロラはこんなにもストレートに人に悪意を向けられた経験がない。思考がまとまらず、もしや自分が何か悪いことをしたのかとすら考えるようになっていた。
その時、オーロラの後ろから男が早歩きで迫ってきた。そして、ジェイコブの胸ぐらを左手で掴むと、右手のこぶしをジェイコブの頬に思いきり振り抜いた。
「ご、ごめん、何か悪いこと言っちゃったかな?」
冷静に考えれば『なぜオーロラが泣いているのか』がわかったかもしれないが、アレクサンダーは突然の出来事にわけがわからなくなっていた。何に謝るべきかわからなかったが自分の言葉で目の前の女性が泣いている。そう思ったアレクサンダーはとりあえず謝るべきだと考えた。しかし、その謝罪と質問にオーロラが答えることはなかった。
泣きながら立ち尽くしていたオーロラが突然歩き出した。向かっているのは中庭で人目をはばからず身体を寄せ合うジェイコブと浮気相手の方へだった。
オーロラは気の強い女性ではない。普段なら自分が我慢すれば良いと思ってしまっていたかもしれない。しかし、強すぎるショックに思わず歩き出していた。
ジェイコブは近付いてくるオーロラに気付いたが、女性との距離を少し空けるだけで悪びれる様子はなかった。
「何やってるの? その人は誰?」
オーロラは風の音にかき消されてしまうほどの小さな声で質問した。
「別にお前には関係ないだろ」
ジェイコブは吐き捨てるようにそう言った。浮気相手はオーロラもその他大勢のライバル
の一人だと思ったのか鋭い目つきで威嚇した。
「関係なくなんてないよ。私婚約者なんだよ?」
「……はぁ。だからなんだよ。婚約者だからって友達を全員紹介しないといけないわけじゃないだろ?」
「友達じゃないよね? 抱き合ってたよね? しかも他にも女がいるんでしょ? 私知ってるんだよ」
小さかったオーロラの声は段々と大きくなっていた。
「だから……はぁ……わっかんないかなぁ……。お前には関係ないって言ってんだよ! 今まで言わないでやったけどな、誰がお前みたいに膿だらけの汚い顔の女と婚約したいと思うんだよ! 親が勝手に決めたことだろ?」
汚い顔の女……オーロラが一番言われたくない言葉だった。オーロラは自分の顔中にあるいくつものニキビがコンプレックスだった。ニキビは膿が出て黄色くなっているものもあった。思春期のニキビは、成長期における皮脂の過剰分泌が原因で特に珍しいことでもない。しかし、オーロラにとっては何よりも嫌で嫌でしょうがないものだった。
「本当だったらな、もっとレベルの高い女をいくらでも選べるんだよ。この際だから言うけどな、お願いだから婚約を解消してくれよ。そうだ、お前から父親に言って婚約破棄を認めさせてくれよ」
ジェイコブは幼いころから容姿に恵まれ、コンプレックスを持つ人間の気持ちを想像もできなかった。中性的な綺麗な顔に似合わない乱暴な言葉、なんの躊躇もなく言葉の暴力で人を傷付けられるジェイコブにオーロラは不快感よりも恐怖に近いものを感じていた。
ジェイコブの罵倒は止まらない。オーロラはこんなにもストレートに人に悪意を向けられた経験がない。思考がまとまらず、もしや自分が何か悪いことをしたのかとすら考えるようになっていた。
その時、オーロラの後ろから男が早歩きで迫ってきた。そして、ジェイコブの胸ぐらを左手で掴むと、右手のこぶしをジェイコブの頬に思いきり振り抜いた。
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