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婚約破棄されたので、全力で応援することにしました。ふふっ、幸せになってくださいね。~真実の愛を貫く代償~
第三話 真実の愛を貫く代償
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煌びやかなパーティは何事もなく進んでいた。
「殿下、いよいよですね。わたくし自分のことのように緊張してまいりました」
「ああ、私も緊張している。だが同時に楽しみでもあるよ。今日から私とケリーの人生が始まるんだ。よし、そろそろいくか」
アントミーは会場の隅にいた世話係のケリーに目で合図をし、国王の前に向かった。
「父上、そしてここにお集まりの皆様! 私からお話があります!」
「突然なんだアントミー」
国王は怪訝な顔で息子を見つめている。
「私はエルヴリン嬢との婚約を破棄したいと思っております。いえ、破棄いたします」
アントミーは会場の隅まで聞こえるような大きな声で高らかにそう宣言した。
「なんだと! お前は急に何を言っている?」
国王は怒りをあらわにした。
「実は……私には心に決めた女性がいます。私の決心は岩より固いのです」
「心に決めた女性だと? 誰だ!? 言ってみろ!」
「ケリーです。私の世話係をしているケリーです。私たちは愛し合っているのです」
アントミーは会場の隅にいたケリーのもとに走り、手を引いて国王の前につれていった。
「世話係だと? ふざけるな! 平民ではないか! しかもお前の母と年齢もそう変わらないではないか」
「父上! そんなことは関係ないのです。これは愛なのです。私たちはもう離れられない運命なのです」
熱く反論するアントミーの横で、ケリーは泣きながら頷いている。会場の全員がそのやり取りに注目していた。
国王が怒りの表情を浮かべたまま黙り込んだ。アントミーも黙って国王を見つめている。場は急に静かになった。その静寂をやぶるかのように、ひとりの男がアントミーに語りかけた。
「殿下、王宮の法を管理させていただいております私からひとつよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「そちらの女性は平民でいらっしゃいますよね? 殿下は王族です。我が国では王族と平民の婚姻が許されておりません。ですので殿下が王室から去るしか方法がございません。もちろんそんなことは許されないのです」
「話に割り込んできてそんなことか。貴族の養子にすれば良いだけだろう!」
「いいえ、養子では駄目なのです。王族と婚約する相手は祖父母の代まで貴族であることが法で定められております」
「なんだと? どうにかならないのか?」
「残念ながらどうにもなりません。法は絶対なのです」
「ではどうすれば……」
アントミーは困惑していた。隣にいるケリーも明らかに動揺している。そんなふたりに向かって王は沈黙を破った。
「アントミーよ。この国から出ていけ。皆がいる場での婚約破棄、さらには平民の女と真実の愛などと言うお前をこの国に置いておけない。お前は死んだものと思うことにする」
「父上……何をおっしゃっているのですか? 私は第一王子ですよ?」
「うるさい! この国から出ていけ!!」
「……わかりました。私の意志は変わりません。この愛を貫いてみせます!」
*****
そうしてエルヴリンとアントミーの婚約は破棄された。
婚約を破棄されたエルヴリンはまったく落ち込んではいなかった。
(アントミーは王族ではなくなり、隣国で仕事もせずに与えられた少しの金貨を惜しむこともなく使っているそうね。やっぱり馬鹿な男。金貨は湧いて出てくるわけではないのに。何よりケリー、あの世話係が傑作ね。アントミーと共に国外追放になるのを拒んで金目当てだったことがバレただけではなく、国家を混乱させた罪で牢獄にいるなんて)
現在エルヴリンは第二王子と婚約している。第二王子は聡明で国民からの信頼も厚かった。魔法の能力も高く、第一王子が国にいた頃から次期国王にふさわしいと言われていた。
(アントミーに恨みがあったわけではないけれど、今回の結果はこの国のためだから仕方がないわね。わたくしではなくあの金目当てのオバサンを選んだことは不愉快だけれど。それにしても真実の愛とはなんだったのかしら。ふふっ、誰か教えてくれないかしら)
そう考えながらエルヴリンは午後の紅茶を優雅に楽しんでいた。
=== 完 ===
「殿下、いよいよですね。わたくし自分のことのように緊張してまいりました」
「ああ、私も緊張している。だが同時に楽しみでもあるよ。今日から私とケリーの人生が始まるんだ。よし、そろそろいくか」
アントミーは会場の隅にいた世話係のケリーに目で合図をし、国王の前に向かった。
「父上、そしてここにお集まりの皆様! 私からお話があります!」
「突然なんだアントミー」
国王は怪訝な顔で息子を見つめている。
「私はエルヴリン嬢との婚約を破棄したいと思っております。いえ、破棄いたします」
アントミーは会場の隅まで聞こえるような大きな声で高らかにそう宣言した。
「なんだと! お前は急に何を言っている?」
国王は怒りをあらわにした。
「実は……私には心に決めた女性がいます。私の決心は岩より固いのです」
「心に決めた女性だと? 誰だ!? 言ってみろ!」
「ケリーです。私の世話係をしているケリーです。私たちは愛し合っているのです」
アントミーは会場の隅にいたケリーのもとに走り、手を引いて国王の前につれていった。
「世話係だと? ふざけるな! 平民ではないか! しかもお前の母と年齢もそう変わらないではないか」
「父上! そんなことは関係ないのです。これは愛なのです。私たちはもう離れられない運命なのです」
熱く反論するアントミーの横で、ケリーは泣きながら頷いている。会場の全員がそのやり取りに注目していた。
国王が怒りの表情を浮かべたまま黙り込んだ。アントミーも黙って国王を見つめている。場は急に静かになった。その静寂をやぶるかのように、ひとりの男がアントミーに語りかけた。
「殿下、王宮の法を管理させていただいております私からひとつよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「そちらの女性は平民でいらっしゃいますよね? 殿下は王族です。我が国では王族と平民の婚姻が許されておりません。ですので殿下が王室から去るしか方法がございません。もちろんそんなことは許されないのです」
「話に割り込んできてそんなことか。貴族の養子にすれば良いだけだろう!」
「いいえ、養子では駄目なのです。王族と婚約する相手は祖父母の代まで貴族であることが法で定められております」
「なんだと? どうにかならないのか?」
「残念ながらどうにもなりません。法は絶対なのです」
「ではどうすれば……」
アントミーは困惑していた。隣にいるケリーも明らかに動揺している。そんなふたりに向かって王は沈黙を破った。
「アントミーよ。この国から出ていけ。皆がいる場での婚約破棄、さらには平民の女と真実の愛などと言うお前をこの国に置いておけない。お前は死んだものと思うことにする」
「父上……何をおっしゃっているのですか? 私は第一王子ですよ?」
「うるさい! この国から出ていけ!!」
「……わかりました。私の意志は変わりません。この愛を貫いてみせます!」
*****
そうしてエルヴリンとアントミーの婚約は破棄された。
婚約を破棄されたエルヴリンはまったく落ち込んではいなかった。
(アントミーは王族ではなくなり、隣国で仕事もせずに与えられた少しの金貨を惜しむこともなく使っているそうね。やっぱり馬鹿な男。金貨は湧いて出てくるわけではないのに。何よりケリー、あの世話係が傑作ね。アントミーと共に国外追放になるのを拒んで金目当てだったことがバレただけではなく、国家を混乱させた罪で牢獄にいるなんて)
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(アントミーに恨みがあったわけではないけれど、今回の結果はこの国のためだから仕方がないわね。わたくしではなくあの金目当てのオバサンを選んだことは不愉快だけれど。それにしても真実の愛とはなんだったのかしら。ふふっ、誰か教えてくれないかしら)
そう考えながらエルヴリンは午後の紅茶を優雅に楽しんでいた。
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