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婚約破棄されようと努力する令嬢の真の愛
第一話 感じの悪い令嬢
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「この紅茶美味しいね」
フィルは向かい合わせに座っているマリーにそう言いながら午後の優雅なティータイムを過ごしていた。
「そうかしら? わたくしの好みではありません」
マリーは紅茶を飲むのをやめ、ティーカップを雑に机に置いた。
「もう帰ってもよろしいかしら? この後予定がございますの」
マリーは立ち上がろうとしたがフィルはそれを制止した。
「もう少し駄目かい? 紅茶はゆっくり飲もう。風も冷たくて気持ち良いじゃないか」
フィルはそう言いながらマリーに優しく微笑みかけた。
「すみませんが失礼いたします」
マリーはフィルから逃げるようにその場を去ってしまった。
フィルは残念そうに、去りゆくマリーの背中を眺めていた。
子爵家令嬢マリーと第五王子フィルは幼馴染である。幼少の頃から婚約が決まっていたこともあり、二人は定期的に会っていた。そしてとても良い関係を築いていた。
少なくとも魔法学園に入学するまでは……。
ある日、マリーは友人のアメリアをフィルに紹介した。学園の誰もが知っているアイドル的存在であり、当然その噂はフィルにも届いていた。
「アメリアだね。こうして話すのは初めてだけどきみのことは知っているよ。えっと、マリー、急に友達を連れて来たりして今日はどうしたんだい?」
フィルはアメリアに挨拶をすると、すぐに困ったようにマリーを見た。
「殿下とアメリアは気が合うと思いましたの。是非一緒にお茶でもなさってください。わたくしは紹介も済んだので失礼しますね」
そう言い残してマリーはそそくさとどこかへ行ってしまった。残されたフィルとアメリアは少し立ち話をしたが、フィルはアメリアをお茶に誘うことはなかった。
アメリアは確かに学園一の美人だったがフィルはその高い声と獲物を狙うような目にうんざりしてしまった。
別の日、フィルはまたマリーをお茶に誘おうと学園を探し回った。しかし、フィルがマリーを見つけるとマリーは避けるように走って逃げてしまう。
そんなことが何日も続き、ようやく一緒にティータイムを過ごせたのは一ヶ月ぶりになっていた。
「やっとマリーとお茶が飲めるよ。最近相手してくれないから寂しかったんだよ」
「それは申し訳ございません。ですがわたくしにも予定がありますから」
「予定があるならしょうがないか。ところでマリー、前にあげた髪飾りはつけてくれないのかい? マリーにとてもよく似合うと思ってプレゼントしたんだけど」
一度あげた物に関してどうしたのかと聞くのはマナー違反だとフィルは理解していた。しかし、髪飾りを付けたマリーを見てみたいと思っていたため気になっていた。そのため思わずどうしたのか聞いてしまったのだ。
「あれは気に入らなかったので人にあげてしまいました。一度わたしくの物になったのですから、わたくしがそれをどのようにしたとしても問題ないですよね?」
マリーはフィルの目を見ずに遠くを見ながらそう言った。
すると、突然フィルがバンっと机を叩いた。
「もういい加減にしてくれ!!」
静かだった学園の中庭にフィルの怒号が響き渡った。
フィルは向かい合わせに座っているマリーにそう言いながら午後の優雅なティータイムを過ごしていた。
「そうかしら? わたくしの好みではありません」
マリーは紅茶を飲むのをやめ、ティーカップを雑に机に置いた。
「もう帰ってもよろしいかしら? この後予定がございますの」
マリーは立ち上がろうとしたがフィルはそれを制止した。
「もう少し駄目かい? 紅茶はゆっくり飲もう。風も冷たくて気持ち良いじゃないか」
フィルはそう言いながらマリーに優しく微笑みかけた。
「すみませんが失礼いたします」
マリーはフィルから逃げるようにその場を去ってしまった。
フィルは残念そうに、去りゆくマリーの背中を眺めていた。
子爵家令嬢マリーと第五王子フィルは幼馴染である。幼少の頃から婚約が決まっていたこともあり、二人は定期的に会っていた。そしてとても良い関係を築いていた。
少なくとも魔法学園に入学するまでは……。
ある日、マリーは友人のアメリアをフィルに紹介した。学園の誰もが知っているアイドル的存在であり、当然その噂はフィルにも届いていた。
「アメリアだね。こうして話すのは初めてだけどきみのことは知っているよ。えっと、マリー、急に友達を連れて来たりして今日はどうしたんだい?」
フィルはアメリアに挨拶をすると、すぐに困ったようにマリーを見た。
「殿下とアメリアは気が合うと思いましたの。是非一緒にお茶でもなさってください。わたくしは紹介も済んだので失礼しますね」
そう言い残してマリーはそそくさとどこかへ行ってしまった。残されたフィルとアメリアは少し立ち話をしたが、フィルはアメリアをお茶に誘うことはなかった。
アメリアは確かに学園一の美人だったがフィルはその高い声と獲物を狙うような目にうんざりしてしまった。
別の日、フィルはまたマリーをお茶に誘おうと学園を探し回った。しかし、フィルがマリーを見つけるとマリーは避けるように走って逃げてしまう。
そんなことが何日も続き、ようやく一緒にティータイムを過ごせたのは一ヶ月ぶりになっていた。
「やっとマリーとお茶が飲めるよ。最近相手してくれないから寂しかったんだよ」
「それは申し訳ございません。ですがわたくしにも予定がありますから」
「予定があるならしょうがないか。ところでマリー、前にあげた髪飾りはつけてくれないのかい? マリーにとてもよく似合うと思ってプレゼントしたんだけど」
一度あげた物に関してどうしたのかと聞くのはマナー違反だとフィルは理解していた。しかし、髪飾りを付けたマリーを見てみたいと思っていたため気になっていた。そのため思わずどうしたのか聞いてしまったのだ。
「あれは気に入らなかったので人にあげてしまいました。一度わたしくの物になったのですから、わたくしがそれをどのようにしたとしても問題ないですよね?」
マリーはフィルの目を見ずに遠くを見ながらそう言った。
すると、突然フィルがバンっと机を叩いた。
「もういい加減にしてくれ!!」
静かだった学園の中庭にフィルの怒号が響き渡った。
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