【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ

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貴族男性と平民の町娘の恋の結末

第二話 恋に夢中で馬鹿な私

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 私が19歳の時に彼と出会った。正確には、それまでに何度も町で見かけはしていた。しかし、話すのはその時が初めてだった。
 服を仕立てるために私のお店に来た彼は、平民の私に対してとても紳士的な対応だった。貴族のお客様は今までもいたけれど、あんなに物腰が柔らかい貴族は初めてだった。
 後から知ったのだが、彼は既婚者でありながら貴族社会でも令嬢たちのお気に入りらしい。清潔感があり、物腰の柔らかさと綺麗で中性的なその風貌に人々が魅了されるのもうなずける。

 ある日、お使いを頼まれて隣町で一泊した翌朝、急に生理が来た。もう一泊出来るお金を持っていなかった私は、ゆっくりと町の外を歩いていた。乗合馬車はもう出発してしまっていたので、何時間かかったとしても歩いて戻るしかない。
 限界が来てうずくまっていると、遠くから馬車の音が聞こえてきた。馬車が私の前で止まると、中から彼が出てきた。
 彼はうずくまっている私を見てすぐに仕立屋の娘だと気づいてくれた。心配して馬車に乗るように言ってくれたが、私は正直に生理だからと言って断った。生理の血で貴族様の馬車を汚すわけにはいかないからだ。

 しかし、彼はそんなことを気にするなと怒って馬車に乗せてくれた。生理の大変さがきっとわかったのだろう。気遣い方が凄く大人に思えた。馬車の中は外よりも暖かかったが、ずっと外にいた私は寒さで震えてしまった。その時に彼が肩にかけてくれた上質な布が私の心と体を温かくしてくれた。

 顔見知りになった私たちは、町ですれ違った時にあいさつを交わすようになっていた。王都の町は広いようで狭く、貴族と平民の使う道も区別されていなかったので、彼とは会う機会も多かった。領地から王都に来たばかりの彼は、お店をあまり知らないということだったので、私は自ら案内係を買って出た。

 何度も会って、たまに食事に行く関係になった。

 誰よりも紳士的で貴族らしい彼は、誰よりも優しく、誰よりも気さくで、私に『貴族』を感じさせなかった。

 そのうち彼とは自然と男女の関係になった。『自然と~』というと語弊があるかもしれない。お互いに好意があるのは明らかだったし、私からさりげないアプローチも何度もしていた。彼はとうとう根負けしたのだ。
 
 恋に夢中で馬鹿な私は幸せだった、彼の左手の薬指さえ見ないようにしていれば……。
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