上 下
6 / 12
お金持ちになりましたがあなたに援助なんてしませんから! ~婚約パーティー中の失敗で婚約破棄された私は商人として大成功する~

第六話 新たなる婚約

しおりを挟む
 カミラが泣いている間、ザックは黙って背中をさすってくれていた。

「ありがとうございます。わたくしあの出来事と初めてちゃんと向き合った気がします。今まで商品を作ることで逃げていました」

「それならば良かったです。カミラさんが秘密を打ち明けてくれたので、私は三つ秘密を教えてさしあげましょう」

「三つもですか? わたくしの秘密が一つだったので、なんだかわたくしの方が得をしてしまいますね」

 さっきまで泣いていたカミラの顔に笑顔が戻ってきた。

「一つ目は、私の失敗談です。私は小さい頃から悪魔が怖くて怖くて仕方がなかったんです。大人になってもう大丈夫かなと思っていたのですが、この間訪ねたお屋敷で玄関にある悪魔の石像を見て叫んでしまいました。しかもその石像をよく見ると、悪魔ではなくそこの家で昔飼われていたという犬だったのです。あれは恥ずかしかった……屋敷に何十人も集まっていましたからね」

「それはお恥ずかしいですね。ふふっ、なんだか可愛らしいです」

「二つ目は、私の失禁に関する話です。実は私はちょくちょく失禁をしているんです。残尿というんですかね? 実は男には多いのです。馬車に揺られて道が荒れている時や、重い荷物を持ち上げる瞬間なんかにたまに出てしまっています。なので男性用の失禁布を開発したあかつきには、私が使用者の第一号になるつもりなんですよ」

 ザックは優しい笑顔でそう話した。

(本当に優しい人。わたしの気持ちのためには自分の恥ずかしいことも話せる。偉そうで、ただかっこつけるだけの貴族とはまったく違う)

「それは初耳でした。是非男性用を開発しないといけませんわね」

 ザックにつられてカミラも優しい笑顔になっていた。

「三つ目は、私の恋についての話です。実は私には好きになった女性がいます。その人はとても美しく、素直で、優しくて、一生懸命な女性です」

(ザックさん好きな人がいたんだ……)

「それは素敵ですね。ザックさんに慕われるなんてその方が羨ましいですわ」

「そうなんですか? なら良かった。その女性の気持ちが良くわかっていなかったもので。言い忘れましたが、その女性は貴族のご令嬢でありながら商人として大成功をおさめ、今も私と旅をしてくれているんです。とても素敵な女性なんですよ」

「え、それって……」

「カミラさん、私はあなたが好きです。こんな時に言うのは少し卑怯かもしれませんが、それでも言わせてください。好きです。私と婚約していただきたい」

「ザックさん……。わたくしなんかでよろしいのですか?」

「なんか、ではないですよ。カミラさんが良いんです」

「……嬉しい。是非、お願いいたします」

(お互いの失禁の話をした後でのプロポーズ、たぶん他人が聞いたら最低だと思うんでしょうね。笑われるかもしれない。でも、わたしからしたら『幸せになれる』という確信がもてるこれ以上ない最高のプロポーズ……。どうしよう、わたしもうすでに幸せだ)

 カミラはまた泣き出してしまった。

 こうしてカミラとザックは婚約することとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一部完|すべてを妹に奪われたら、第2皇子から手順を踏んで溺愛されてました。

三矢さくら
恋愛
「侯爵家を継承できるという前提が変わった以上、結婚を考え直させてほしい」 マダレナは王立学院を無事に卒業したばかりの、カルドーゾ侯爵家長女。 幼馴染で伯爵家3男のジョアンを婿に迎える結婚式を、1か月後に控えて慌ただしい日々を送っていた。 そんなある日、凛々しい美人のマダレナとは真逆の、可愛らしい顔立ちが男性貴族から人気の妹パトリシアが、王国の第2王子リカルド殿下と結婚することが決まる。 しかも、リカルド殿下は兄王太子が国王に即位した後、名目ばかりの〈大公〉となるのではなく、カルドーゾ侯爵家の継承を望まれていた。 侯爵家の継承権を喪失したマダレナは、話しが違うとばかりに幼馴染のジョアンから婚約破棄を突きつけられる。 失意の日々をおくるマダレナであったが、王国の最高権力者とも言える王太后から呼び出される。 王国の宗主国である〈太陽帝国〉から輿入れした王太后は、孫である第2王子リカルドのワガママでマダレナの運命を変えてしまったことを詫びる。 そして、お詫びの印としてマダレナに爵位を贈りたいと申し出る。それも宗主国である帝国に由来する爵位で、王国の爵位より地位も待遇も上の扱いになる爵位だ。 急激な身分の変化に戸惑うマダレナであったが、その陰に王太后の又甥である帝国の第2皇子アルフォンソから注がれる、ふかい愛情があることに、やがて気が付いていき……。 *女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.7.14-17)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます! *第一部、完結いたしました。 *第二部の連載再開までしばらく休載させていただきます。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

本当に愛しているのは姉じゃなく私でしたっ!

mock
恋愛
レスター国に住むレナとレオナ。 双子の姉妹とはいえ性格は真逆、外交的なレオナに対し、内向的なレナ。 そんなある日、王子であるアルバートに会う機会を得たレオナはコレはチャンス!とばかりに言葉巧みに心に取り込み、これに成功する。 王子の妻になり、全てを手に入れご満悦だったが、王子が本当に得たかった相手は…。

この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。

天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」 目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。 「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」 そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――? そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た! っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!! っていうか、ここどこ?! ※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました ※他サイトにも掲載中

今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!

ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。 苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。 それでもなんとななれ始めたのだが、 目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。 そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。 義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。 仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。 「子供一人ぐらい楽勝だろ」 夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。 「家族なんだから助けてあげないと」 「家族なんだから助けあうべきだ」 夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。 「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」 「あの子は大変なんだ」 「母親ならできて当然よ」 シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。 その末に。 「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」 この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。

王子の婚約者を辞めると人生楽になりました!

朝山みどり
恋愛
わたくし、ミランダ・スチュワートは、王子の婚約者として幼いときから、教育を受けていた。わたくしは殿下の事が大好きで将来この方を支えていくのだと努力、努力の日々だった。 やがてわたくしは学院に入学する年になった。二つ年上の殿下は学院の楽しさを語ってくれていたので、わたくしは胸をはずませて学院に入った。登校初日、馬車を降りると殿下がいた。 迎えに来て下さったと喜んだのだが・・・

捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ
恋愛
「俺と離婚して欲しい、君の妹が俺の子を身籠った」 パルリス侯爵家に嫁いだソフィア・ルモア伯爵令嬢は結婚生活一年目でソフィアの夫、アレック・パルリス侯爵に離婚を告げられた。結婚をして一度も寝床を共にした事がないソフィアは白いまま離婚を言われた。 夫の良き妻として尽くして来たと思っていたソフィアは悲しみのあまり自害をする事になる…… 誤字、脱字があります。不定期ですがよろしくお願いします。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

処理中です...