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汚くて臭いからと言われ領主の息子に大切な孤児院が潰されそうになったので婚約破棄を決意する令嬢
第五話 婚約破棄とその後
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「10日前、あなたが孤児院を廃止すると一方的に迫ったあの場にわたくしもいたのです! どうせこの地に来るならばと予定を前倒しにして半月の間、お忍びでシスターとしてこちらでお世話になっておりました。わたくしの侍女のジゼルからいつも聞いていた通り、環境は決して良いとは言えなくとも、とても素晴らしい人たちに囲まれて最高の時間を過ごすことが出来ました。そんな時にオリバー、あなたがやって来たのです」
ソフィアはオリバーを睨みつけた。
「あなたはわたくしにこう言いました、『無知で地味で貧乏くさい女』と。『呆れるくらいに馬鹿だ、大馬鹿者だ』と。もうお忘れですか?」
ソフィアは何も言うことが出来ずに呆然と突っ立っているオリバーの前までゆっくりと移動し、静かに話を続けた。
「わたくしは知らない土地や他国に嫁ぐくらいなら、ジゼルから聞いていた温かい人たちのいるこの地に嫁ぐのも良いなと本気で思っておりました。実際に教会で過ごしている時もそう思っておりました。あの日、醜悪なあなたに会うまでは……。この婚約は破棄させてもらいます! まだ正式な婚約ではなかったですし、文句は言わせません!」
「そ、そんな……」
婚約破棄を告げられてオリバーは膝から崩れ落ちた。
「聞いての通りソフィア様が証人です。脱税を行っただけではなく、公爵令嬢のソフィア様に暴言を吐くとは……。あなたたちをこれから王都へ連行します。そして裁判にかけられます。最低でも爵位と領地の没収は免れないと思ってください。お前たち、二人を連行しろ!!」
ウィリアムズ侯爵がそう叫ぶと、教会の外から何人もの騎士が現れてペイント伯爵とオリバーの手首に縄をかけた。
「待ってくれ! わしは無実だ! すべて誤解なんだ!」
「私も父上も無実だ! この地を狙っているハイエナ共の陰謀だ!」
二人の断末魔のような醜い叫び声は馬車が見えなくなるまで響き渡った。
「シスター、わたくしは証言のために一度王都に戻らなければなりません。宿まで子供たちを迎えに行ってあげてください。そして何か温かい物を食べさせてあげてください。材料はたくさん持ってきてあります」
ソフィアは年配のシスターにそう言うと、ウィリアムズ侯爵と共に馬車に乗り込んだ。ソフィアは窓から見える風景をしばし見つめた。風がそよそよと吹き、木々が踊るように揺れている。
「ソフィア様、この地は今後どうするおつもりで?」
ウィリアムズ侯爵が尋ねた。
「そうね……。いっそ王である叔父様に直談判してわたくしの領地にしてもらいましょうかしら。そうしたら領地に越してきて教会にもすぐに顔を出せるようになるし。はぁ、でもまた結婚から遠のいてお父様に色々と言われるわ……」
「ソフィア様なら大丈夫ですよ。ソフィア様と結婚したがっている男は五万といますから。私だって選んでいただけるなら是非とも……」
ウィリアムズ侯爵は言葉を続ける前に、ソフィアを見つめて微笑んだ。
「とにかく今回の監査とソフィア様の顔合わせの時期が被って本当に幸運でしたよ、こうやってゆっくりと話す機会に恵まれたのですから」
「ウィリアムズ様は本当に口がお上手ですね。まぁ、悪い気はしませんけど……」
二人は心地よい笑い声をあげながら、お互いを見つめ合った。
後日、正式にペイント伯爵の爵位と領地の没収が決定した。彼とその息子オリバーは国を欺いた罪人として犯罪奴隷となり、炭鉱での5年間の労働が命じられた。皮肉にも汚くて臭いと馬鹿にした孤児たちよりも劣悪な生活を送ることになるのであった。
一方、領地はソフィアに譲られ、その恩恵は領地の隅々に行き渡った。教会と孤児院も寄付が増え、生活の質は劇的に改善された。領民はソフィアに感謝し、彼女の優しさと慈愛に心から敬意を払うのだった。
領主になったソフィアの元には、定期的に長身の文官が訪れるようになった。ウィリアムズ侯爵である。彼はソフィアの良き理解者であり、彼女の希望や悩みを聞き共有する存在になっていた。そして、彼らの関係は時間をかけて次第に深まっていくのだった。
=== 完 ===
ソフィアはオリバーを睨みつけた。
「あなたはわたくしにこう言いました、『無知で地味で貧乏くさい女』と。『呆れるくらいに馬鹿だ、大馬鹿者だ』と。もうお忘れですか?」
ソフィアは何も言うことが出来ずに呆然と突っ立っているオリバーの前までゆっくりと移動し、静かに話を続けた。
「わたくしは知らない土地や他国に嫁ぐくらいなら、ジゼルから聞いていた温かい人たちのいるこの地に嫁ぐのも良いなと本気で思っておりました。実際に教会で過ごしている時もそう思っておりました。あの日、醜悪なあなたに会うまでは……。この婚約は破棄させてもらいます! まだ正式な婚約ではなかったですし、文句は言わせません!」
「そ、そんな……」
婚約破棄を告げられてオリバーは膝から崩れ落ちた。
「聞いての通りソフィア様が証人です。脱税を行っただけではなく、公爵令嬢のソフィア様に暴言を吐くとは……。あなたたちをこれから王都へ連行します。そして裁判にかけられます。最低でも爵位と領地の没収は免れないと思ってください。お前たち、二人を連行しろ!!」
ウィリアムズ侯爵がそう叫ぶと、教会の外から何人もの騎士が現れてペイント伯爵とオリバーの手首に縄をかけた。
「待ってくれ! わしは無実だ! すべて誤解なんだ!」
「私も父上も無実だ! この地を狙っているハイエナ共の陰謀だ!」
二人の断末魔のような醜い叫び声は馬車が見えなくなるまで響き渡った。
「シスター、わたくしは証言のために一度王都に戻らなければなりません。宿まで子供たちを迎えに行ってあげてください。そして何か温かい物を食べさせてあげてください。材料はたくさん持ってきてあります」
ソフィアは年配のシスターにそう言うと、ウィリアムズ侯爵と共に馬車に乗り込んだ。ソフィアは窓から見える風景をしばし見つめた。風がそよそよと吹き、木々が踊るように揺れている。
「ソフィア様、この地は今後どうするおつもりで?」
ウィリアムズ侯爵が尋ねた。
「そうね……。いっそ王である叔父様に直談判してわたくしの領地にしてもらいましょうかしら。そうしたら領地に越してきて教会にもすぐに顔を出せるようになるし。はぁ、でもまた結婚から遠のいてお父様に色々と言われるわ……」
「ソフィア様なら大丈夫ですよ。ソフィア様と結婚したがっている男は五万といますから。私だって選んでいただけるなら是非とも……」
ウィリアムズ侯爵は言葉を続ける前に、ソフィアを見つめて微笑んだ。
「とにかく今回の監査とソフィア様の顔合わせの時期が被って本当に幸運でしたよ、こうやってゆっくりと話す機会に恵まれたのですから」
「ウィリアムズ様は本当に口がお上手ですね。まぁ、悪い気はしませんけど……」
二人は心地よい笑い声をあげながら、お互いを見つめ合った。
後日、正式にペイント伯爵の爵位と領地の没収が決定した。彼とその息子オリバーは国を欺いた罪人として犯罪奴隷となり、炭鉱での5年間の労働が命じられた。皮肉にも汚くて臭いと馬鹿にした孤児たちよりも劣悪な生活を送ることになるのであった。
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領主になったソフィアの元には、定期的に長身の文官が訪れるようになった。ウィリアムズ侯爵である。彼はソフィアの良き理解者であり、彼女の希望や悩みを聞き共有する存在になっていた。そして、彼らの関係は時間をかけて次第に深まっていくのだった。
=== 完 ===
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