8 / 15
#8
しおりを挟む
一度男性の手を振り払おうとした女性。「何すんだよ」と捻ったりして、女性はもがいたが、男性は決して放さなかった。見たことのない様子の母親と男性に、女の子はぽかんとして見つめている。ひかりも瞬いて見ていた。けれどその一時の後、母親の様子が変わった。最初は何が起きたのか分からないようで。目の前の女の子。目の前の男性。それらが初めて見たような驚いた表情になって。女性の顔は変わっていった。固まっていたものが崩れていく。バットで殴られたようにはっとした顔で、女の子を見つめたのだ。それから息をするのを忘れていたように一度大きく息を吸うと、「あぁ」と声を漏らした。痛みをこらえるような顔をして、女性は一言呟く。
「‥ごめん、香音‥」
女性はビクついた面持ちで、ぎこちなく目の前の女の子に手を伸ばした。
「ごめん‥ごめん香音‥」
女性は言う。
何度も何度も。
そうしてやっと女の子の両手を掴むと、「‥いい?」と呟くように女の子に尋ねた。女の子は暗い顔をして首を傾げた。
女性はそのまま女の子の手を引くと、そっと抱きしめる。「‥香音。もう大丈夫」
香音、と女性は抱きしめたまま呟いた。女の子は困惑した顔をしていたが、何度も女性が名前を呟くのを聞いているうちに、穏やかな表情へと変わっていった。
「ママ‥」
香音と呼ばれた女の子は、やがて嬉しそうに母親の腕の中で呟いた。
ずっと遠くから見ていたひかりは、ふわりと微笑んだ。
そして男性を見ると、不思議そうに眺めた。
男性が一体何をしたのか。ひかりは不思議だった。当の男性は少しの間、親子を見守っていたが、また離れるとドア口に戻ってきた。ひかりはまた勢いのままメモ帳を開くと走り書きをした。
『あの親子に一体何をしたんですか?』
そうして男性に差し出した。
男性はメモ帳を読むと一度ひかりの顔を見たけれど、また目を泳がせると、何も答えずにまた窓の外に目をやった。
ピンポン、ピンポン。次は…
「‥ごめん、香音‥」
女性はビクついた面持ちで、ぎこちなく目の前の女の子に手を伸ばした。
「ごめん‥ごめん香音‥」
女性は言う。
何度も何度も。
そうしてやっと女の子の両手を掴むと、「‥いい?」と呟くように女の子に尋ねた。女の子は暗い顔をして首を傾げた。
女性はそのまま女の子の手を引くと、そっと抱きしめる。「‥香音。もう大丈夫」
香音、と女性は抱きしめたまま呟いた。女の子は困惑した顔をしていたが、何度も女性が名前を呟くのを聞いているうちに、穏やかな表情へと変わっていった。
「ママ‥」
香音と呼ばれた女の子は、やがて嬉しそうに母親の腕の中で呟いた。
ずっと遠くから見ていたひかりは、ふわりと微笑んだ。
そして男性を見ると、不思議そうに眺めた。
男性が一体何をしたのか。ひかりは不思議だった。当の男性は少しの間、親子を見守っていたが、また離れるとドア口に戻ってきた。ひかりはまた勢いのままメモ帳を開くと走り書きをした。
『あの親子に一体何をしたんですか?』
そうして男性に差し出した。
男性はメモ帳を読むと一度ひかりの顔を見たけれど、また目を泳がせると、何も答えずにまた窓の外に目をやった。
ピンポン、ピンポン。次は…
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる