ネオン街の恋

伊佐ヅカ

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第三章:現代編

第一話:鉛白の朝

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珈琲の酸味がかった甘い匂いと、人の気配で目を覚ます。
カーテンの隙間から、薄っすらと朝日が入って来る。
のそりと分厚い羽毛布団と毛布を捲ると、既にワイシャツとカーディガンに着替えた直哉が、俺を見て微笑んだ。

「おはよう。まだ、寝ていてもいいのに。」

暖房を付けたばかりなのか、室内はひんやりと滲みるような寒さだった。
毎朝、直哉は珈琲を丁寧にドリップする。
キッチンに立ったままスマホ操作しながら一杯だけ飲むと、会社へ向かう。
俺に何かを求める気配はない。
それでいて、毎夜不安そうに部屋に帰ってきては、俺がいることを確認して嬉しそうに安堵の笑みを浮かべる。
飼い猫にでもなった気分だ。
だが、俺は可愛くないし、猫よりも出費もかさむだろう。

直哉はいつまで俺を養うつもりなのだろうか。
先日までホームレスをしていたのに、今日「出て行け」と言われたら、もう生きていけない気がする。

早く自分で生活する術を得なくては、という焦りが募る。

「あのさ、仕事を探そうと思うんだ。」

思ってもみない言葉だったのだろうか、きょとんとした顔をした後に、「そう。」とだけ呟いた。
もっと喜ばれるかと思ったのに、その反応は淡白だった。

「それでさ、連絡先がないと、どうにもならないっていうか……。あー、スマホが欲しいのだが。」

厚かましいお願いだとわかっている。
安いものでも本体は数万円するし、回線の契約も必要になる。
毎月、俺の分の携帯代も支払って欲しいと言っているのだ。
それでも食って寝るだけの同居人より、少しでも金を入れられれば。


「そうだね。求職活動には連絡先が必要だね。……でも、少し考えさせてもらってもいいかな。」

その回答に、正直少しだけショックを受けた。
言葉も表情も、彼は優しいままだ。
でも、始めて俺の意見を突っぱねた。
柔らかい声色なのに、大人が子供を諭すような温度で、我儘を言った自分が急に恥ずかしくて仕方がない。

「ああ。」

声が震えないかビクビクしながら、喉からやっとの思いで捻り出した。

「すぐに答えを出せなくて、ごめん。でも、ちゃんと考えるから。」

ふと、時計に目をやった直哉が、寝起きの俺を振り返って柔らかく目を細めた。

「じゃ、行ってくるね。」

颯爽と出ていく背中は、二度と追いつけない遠い場所へ向かう大人の背中だった。
やっぱり、俺は直哉に関わるべき人間じゃないと、改めて自覚した。
飽きられる前に、捨てられる前に、喉を掻きむしりたくなるような恐怖だけが、胸を締め付けていた。





「ねぇ、本当に僕が切るの?」

困惑した顔で直哉がこちらを見ている。
休日の彼に髪を切って欲しいと頼んだ。
肩まで伸びた髪の毛先は、ホームレス生活の中で汚れや塵を巻き込みながら、フェルト状に複雑に絡み合っている。
この髪を事情をしらない理髪店に委ねる気にならなかった。

「大丈夫、ガタガタでも怒らないから。」

観念したように、直哉は薬局で髪切りばさみとケープを買ってきた。
新聞紙を敷いて、椅子に座れば温かい指先が恐る恐る髪に触れる。

「じゃあ、痛んでるところだけ切るね。」

シャリと刃が滑るたびに、床に細かい毛が散る。
彼の手は、今も温かくて優しい。
きちんと爪が切られ、垢切れ一つない美しい手。
そんなところにも、直哉の育ちの良さや生真面目な性格が表れていた。
胸の奥がじんわりと熱を帯びていく。

「ちょっと、前髪切るね。」

くいっと顎を支えられ、真剣なまなざしが覗き込む。
息をするたびに、彼の匂いが近い。
心臓が跳ね、顔が火照る。

「眉下ぐらいで、いいよね。」

額をそっと撫でられ、思わず目を閉じそうになる。
──好きだ。今もずっと。

その言葉を口にすれば、この空気は壊れてしまうだろう。
だから飲み込む。
ただ、この温かさだけを覚えていたかった。

「……っ!」

耳の弱い部分をくすぐるように撫でられて、変な吐息が零れてしまう。
直哉が慌てて顔を真っ赤にして、「ごめん!」と手を引いた。

「……バカだな。」

可笑しくて、たまらなく愛おしい。
視線が絡み合って、互いに逸らせない。

照れ隠しのように直哉が顔を覆う。
その仕草が愛しくて、胸の奥が温かさで満ちていく。

──いい。今は、それでいい。
未来のことも、過去のことも全部置いて。
この瞬間だけは、幸せだと思えた。


床に落ちた髪を、新聞紙ごと丸めてゴミ箱へ捨てる。
片付け作業の合間に、直哉は言いずらそうに口を開いた。

「この前のスマホの件だけど、制限付きスマホなら用意する。」

「制限付き?」

胸の中がざらつく。

「鶴華を信用してない訳じゃない。ただ、心配なんだ。」

心配だと言い訳しているが、それは信用してないってことだろ。
制限付きって何だよ。
ガキじゃないんだから、何で直哉に監視されなければならないのか。
薬なんてやらないって決めている。
それなのに……。
昔は、あんなに過干渉な母親を毛嫌いしていたのに、同じことやってんじゃねーかと胸の中で吐き捨てる。
でも、仕事を、金を得るためには、連絡先は不可欠だ。
制限付きなんて絶対に嫌だと思っても、今の俺はその条件を飲むしかなかった。
頼れるのは、彼だけなんだ。

「……そうだな。それでも構わない。……ありがとう。」

引きつる頬を無理やり持ち上げて、笑顔を作る。
口角は震えていた。
苦さを飲み込みながら、心の中ではただ叫んでいた。
早く金が欲しい。
生きるために、そして直哉に見放されないために。
ちゃんと働いて、普通に生活できることを証明すれば──きっと彼も、もう一度信じてくれる。
そう信じなければ、やっていけなかった。


職探しは難航した。
事前に前科があることを伝えているため、電話相談の段階で凡そ弾かれる。
親身になってくれた窓口のおじさんが、各方面へ相談し、ようやく一件過去に前科があっても採用実績がある企業を紹介してくれた。
高層マンションの建築現場の資材運搬、荷下ろしなどの軽作業の仕事だ。
肉体労働か、とため息が出そうだ。
だが、それを言葉にした瞬間、全ての道が閉ざされるとわかっていた。
直哉からは夜の仕事は辞めてくれと懇願されていた。


「じゃ、行ってくるわ。」

面接の為に、普段使いもしないスーツを買うのも気が引けて、直哉のものを一式借りた。
俺の方が背が高い為、ズボンの裾が若干短い。
指摘すると、彼は声を立てて笑ってみせた。
だが、その瞳はほんの一瞬、不安を滲ませていた。
それでも笑顔で背中を押してくれるのが、直哉らしかった。
これで採用されれば、少しは恩返しができるかもしれないと淡い期待を持って家を出た。

──直哉は、玄関先でその背中を見送っていた。

慣れないスーツに包まれた鶴華の姿は、どこかぎこちなく、それでも真っすぐだった。
求職活動に苦戦する彼を見て、仕事柄、紹介できそうな職場はいくつか浮かんだ。
けれど、スマホの一件で、僕が干渉することを良しとしない彼の一面を垣間見てしまった。
前科者には、まだまだ世間の目は厳しい。
それを知りながら、彼の背中を応援することしかできない自分に、酷くやるせなさが込み上げていた。


その面接は最悪だった。
つなぎの作業服を着た恰幅の良い現場作業員の男と、神経質そうな眼鏡のスーツ姿の男、二人が面接官だ。
鉄板の壁に囲まれたビル建設現場の大きなプレハブ小屋で行われた。
事務と休憩室が一緒になっているため、物が多く手狭に感じる。
一番奥に革張りのソファセットが陣取っており、灰皿には煙草の吸殻が山になっていた。
二つある汚れたスチールデスクには、雑然とファイルと書類が積まれている。

パイプ椅子に座った途端、犯した犯罪について根ほり葉ほり聞かれた。
ある程度は覚悟していたが、事実確認の域を逸脱し、興味本位であることを隠しもしない。
屈辱に耐え、愛想笑いをしながら何とか返答を返す。

「うちはね、確かに前例はある。でも、暴行や窃盗だ。薬はなぁ。」

つなぎを着た五十代ぐらいの男が、ボールペンを鼻の下に挟み天井を仰ぎながら口を開いた。

「万一、仕事仲間の内で売買されても困るしな。お前みたいなのが一人いるだけで、現場ごと潰れる。」

もう一人のスーツの男が、書類を捲りながら鼻で笑う。

「そもそも薬に手を出す時点で、まともな根性じゃないんだよ。弱ぇ奴は現場にいらねぇ。……ほら、その目。生意気そうだ。薬やる前からクズって顔してるわ。」

胸の奥で煮えくり返る怒りを必死に抑えた。
爪が手の平に食い込み、血が滲みそうなほど握りしめる。
──ここで耐えたら、直哉に胸を張って「受かった」と言えるかもしれない。
それだけを心の支えにして、何とか堪え続けた。

「ほら、言い返してみろよ。な? どうせ“更生しました”って言い訳しかできねぇんだろ。結局、お前みたいなのは何やってもまた転ぶ。だから犯罪者なんだよ。」

視界が揺れて、耳鳴りが轟いた。
頭の奥で、ぷつん、と糸が千切れる。

俺は乱暴に立ち上がった。
その拍子にパイプ椅子が派手な音を立てて倒れる。
もう、付き合っていられなかった。
こんな奴に頼み込んでまで、仕事を恵んでもらわなければならないのか。

無言で睨みを効かせ、プレハブ小屋を後にする。
背後で二人の下卑た笑い声が追いかけてきた。

悔しさで、にぎりしめた拳が小刻みに震えている。
それでも、奥歯を軋ませながら、堪えるしかなかった。

昼間だというのに、空は鼠色で覆われ、怒る心を逆撫でるように乾いた風が吹き抜ける。
通り過ぎる人々はスーツを着込み、懸命に働いていており、誰一人として俺を見ない。
その感覚が胸の奥で石になって沈んでいく。
足取りは重く、地面に吸い込まれるようだった。

求人は山のようにあるのに、前科があると伝えただけで断られる。
シゲの背中について行く時、ここまでの現実を想像することが出来なかった。
俺が薬を売ったことによって、今も地獄にいる人間は確かにいるのだ。
考えることを放棄して、苦しみから逃げた結果がコレだ。
俺は既に社会に必要とされていない。
直哉は四年前の俺に縋っているだけで、いつかゴミみたいな俺に気が付く。
それでも、あの部屋に戻るしかない──あの笑顔だけが、かろうじて俺を繋ぎ止めている。

街灯に照らされた滑り台は冷たく光っていた。  
小さな公園のベンチにずっと座る俺を、通り過ぎる人は誰も気に留めない。
世界から切り離されたみたいで、惨めで、逃げ出したいのに逃げ場がなかった。

野垂れ死ぬはずだったのに、身の程を弁えずに”ちゃんとした職に就きたい”と願ったのがいけなかったのだろうか。
ホームレスをしていた時は、空腹と暑さ寒さで心が麻痺していたから、何も感じなかった。
こんなに苦しくなかった。
夜が深くなるにつれて、空気が凍てつくような寒さへ変わってくる。
直哉に会わせる顔もなく、帰りたくないと訴える足を引きずって帰路に着いた。

玄関を開けた瞬間、直哉がちょうど外へ出ようとするところだった。
厚手のコートを羽織り、片手には家の鍵を、もう片手にはスマホを握りしめている。
指先は血の気を失ったように白くなり、どれほど強く掴んでいたのかが一目でわかった。
その姿は、今にも飛び出して俺を探しに行こうとしていたようで──不意に出くわした互いの視線がぶつかる。

「……もう、帰って来ないかと思った。」

抑えきれない安堵と緊張が入り混じった声が、冷たい玄関に滲んだ。
無意識の行動のように、直哉は俺を抱きしめた。
温かい室内、直哉の温かい腕に酷く安心するのに、彼はこうなることを知っていたような口ぶりだ。
結局、躓けばまた薬に逃げる弱い人間だと、そう思っているんだろ。

思わず背中に回された腕を強く振り払う。

「本当は、帰って来ない方がよかったんじゃないか?」

「鶴華……。」

直哉は、痛ましげに眉を寄せただけで何も言わなかった。
その沈黙が、俺を拒絶しているんじゃなく、丸ごと抱え込もうとしているみたいで、むしろ息苦しかった。

直哉のその空気感を好ましく思っていたのに、今は駄々を捏ねる子供に見られている気がしてイライラが募る。

「仕事も出来ずに、ただの金食い虫じゃねーか。なぁ、何で俺を拾ったんだ。同情か、哀れみか、この偽善者が。」

本当はそんなこと思ってもいないのに、醜い言葉が口から零れる。
それでも、直哉は許してくれると知っていた。

「本当は笑ってんだろ。誰にも必要とされない無様な俺を見て。」

「……。」

昼間の押し殺した怒りが、ぶり返すように燃え上がる。

「なぁ、楽しいか!」

返事がない沈黙が、鼓膜を焼くように重かった。
正面から睨みつけた彼は、凪のように静かな目をしている。
その温度差に、頬が熱くなり、耳まで羞恥に焼け付くように熱がこもった。
怒鳴った声が、子供の癇癪のように虚しく反響していた。

「楽しくもないし、笑わないよ。」

静かに告げられたその言葉は、どこまでもまっすぐで誠実だった。
言い返してくれたら、まだ怒りにしがみ付いていられたのに。
面談で受けた屈辱に対する怒りも、無力さ、愚かさ、そこから湧き出る羞恥心、自己嫌悪、全部理解したうえで発しているようだ。
そのうえで、俺の怒りを静かに受け止めようとしている。
途端に、顔が焼けつくように熱くなった。
耳まで真っ赤に染まり、全身が羞恥で痺れる。
怒鳴った自分の声が、安っぽい子供の駄々にしか聞こえなくて。
惨めで、恥ずかしくて、逃げ場がなくて。
俺は直哉から目を逸らすようにベッドへ駆け込み、布団に頭まで潜った。
それでも、外に残る彼の気配は消えなかった。
重くて、うっとうしくて、どこにも逃げられないのに──それがあるから、完全に壊れずにいられた。

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