〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第29章 動乱 ロードベルク王国 組曲(スウィート)

第290話

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 ヨゴルスカ別働艦隊から、【サーフタートル】部隊に向けて無数の攻撃魔法が放たれた。

 ー『フッ、随分派手なお出迎えだな?』ー

 傍受される心配も無い為、常にオープンになっている通信機からコーウェンの声が聞こえてくる。だが、海上を埋め尽くす程の魔法弾が目前に迫っているというのに、その声にはまったくの恐れも焦りも含まれておらず、むしろな雰囲気すら感じられた。

 ー『各騎散開して回避行動を取れ。その後の戦闘は各隊毎に分隊長に一任する。制限は一切無い。殲滅だ。一隻残らず狩り尽くせっ‼︎ 』ー

 ー『『『『『アイアイサーーーっ‼︎ 』』』』』ー

 コーウェンからの指示に、一斉に了解の返事を返す騎士達であったが、続いてコーウェンの発した言葉に凍りついた。

 ー『ああ、それから…、こんなノロマな攻撃を食らうようなマヌケは、だからな?心してかかれよ、貴様等?』ー

 ー 『『『『『…‼︎⁉︎⁉︎ 』』』』』ー


 ーー 「(撃墜)スコアが一番低かった隊は、 」ーー

 
 それは、会敵前に全騎士団に向かってコーウェンが言った"罰ゲーム"。

 そのコーウェンの一言に、殆んどの騎士の脳裏に某教官のが過ぎり、『朝、目が覚めただけで幸せ』と評された過酷な訓練を思い出した騎士達顔からサーッと血の気が引いていき、真っ青に青褪めた物に変わって行く。

 ー『…ちょっ!待…っ⁉︎ 冗談ですよね、団長っ⁉︎ 』ー

 ー『馬っ鹿!コーウェン団長がに冗談など言うものかよ…!』ー

 ー『…ってことは………!』ー

 ー『〈黄甲隊〉回避ぃぃぃぃっ‼︎ 回避だ!絶対に当たるんじゃ無いぞっ!』ー

 ー『くおぉぉっ⁉︎ 〈白甲隊〉退がれぇ!俺達の武装は重量がある分、回避が鈍い。一旦退がって立て直すぞ‼︎ 』

 コーウェンが一方的に決めたスコアの決め方は、ガ級ガレリオン=三点。ギ級ギャリック=二点。キ級キャランベール及びその他の小型船艇=一点とし、目標の撃沈、もしくは航行不能なほどのダメージを与えた大破でスコアの獲得となり、それ等の各隊毎の撃破数で順位を決める。と、いうものである。

 だが、たった今新たに追加された『魔法攻撃に当たったらマイナス十点』という"マイナス項目"。
 たとえガ級を三隻食おうと、一発の魔法弾が当たってしまえば〇点どころかスコアはマイナスになってしまう。もしスコアが一番低ければ、待っているのは教官の元での再訓練。それだけは絶対にゴメンだと、【サーフタートル】各隊騎は大慌てで回避行動を取り始めた。

 ー『フン、『戦闘は分隊長に一任する』んだな?で、あれば!〈蒼甲隊〉、俺に続けええぇぇっ‼︎ 』ー

 各隊が必死になって回避行動に専念する中で、先んじて飛び出したのは右肩装甲を青く塗装された〈蒼甲隊〉の一団であった。

 分隊長の名は「イーヴシオン・トライク」。識別の為右肩のみを青色に塗装された他の四騎と違い、イーヴシオンが駆る愛騎は全身を青く染め抜かれた【スラッシュタートル】という名のカスタムチューンされた騎体である。

 【踏波亀兵】隊には、正式採用された一般的な【サーフタートル】の他に試作騎やチューンナップされた騎体が数騎配備されていたが、【スラッシュタートル】もそうした騎体のひとつである。
 しかし、これ等は【国家錬金術師変態】共が興味の赴くまま開発したり、チューンナップを施したりと、手を加えたものばかりの為、普通の者なら一歩歩こうとしただけでつんのめってしまうほどピーキーでクセのある騎体ばかりだ。

 その為、こうした騎体は"エース"と呼ばれる者や分隊長レベルの腕の立つ者達の搭乗騎となったのである。

「ふん!この程度の攻撃が、この俺に通じるとでも思っているのか!」

 他の騎体が魔法弾を躱す為に大きな挙動を取るものがあるのに対し、イーヴシオンは紙一重とも言えるほどのほんの僅かな機動で全ての魔法弾を回避して行く。それは正に達人の"見切り"。
 人間は本来、高度な空間認識、また把握能力によって、自分の体より数倍大きな自動車などの運転、操縦を熟すことが出来るが、たった今イーヴシオンが行った紙一重での回避などはそれだけでは説明出来ない。

 これは、【踏波亀兵】が形状は違えど〈新型ゴーレムの一種であり、操縦というより、擬似的な神経として〈魔力操作〉の魔力で搭乗者と騎体を繋いで人騎一体となり、四メートルの巨体を生身の身体と同じ感覚で動かせる事に加え、"視覚モニター"だけでなく〈気配察知〉〈魔力察知〉を併用することで、地球における高感度センサーを以ってしても敵わない程の外部情報の獲得に至ったからである。
 それは、ヒロトがもたらした地球の技術と、イオニディアの魔法文明が融合した、正に"魔導技術"の結晶と言えるだろう。

 ただし、反面欠点も当然存在する。これだけならば地球の【強化外殻アームドスーツ】を遥かに凌駕した兵器に聞こえるが、その為になモノがあるからだ。それは、搭乗者となる者の"技量"に他ならない。

 ーー 搭乗する者が習得した技術、技能をそのまま使うことが出来る ーー

 兵器に限らず"良い道具"の条件とは、使用者を限定せずに常に一定のパフォーマンスを発揮出来る事、であるだろう。
 "人騎一体"であるが故に、良くも悪くも搭乗者の技量が全てダイレクトに騎体性能に影響を及ぼしてしまう。それこそが、【魔導強化外殻マギウスアームドスーツ】の最も優れた点であり、また逆に最大の欠点でもあるのだ。

 そういった意味では、やはりこれだけの動きを実現せしめているのは、イーヴシオン自身の卓越した戦闘技術に依るものに他ならないだろう。

 【スラッシュタートル】の拡大したモニターの視覚の中に、驚愕の表情を浮かべる魔法使いの姿が映る。

「フ、驚いているな?だが…、貴様等が本当に驚くのはこれからだ!」

 イーヴシオンはモニターに映る敵艦にピタリと照準を合わせ、【スラッシュタートル】に魔導ライフルを構えさせる。が、次の瞬間、モニター内の敵艦が轟音と共に爆炎が弾け、敵艦後部が大きく砕け散った。

「チッ!〈白甲隊〉の"バズーカ"か⁉︎ 仕方ない、は取られてしまったが…、〈蒼甲隊〉行くぞ、突撃だ‼︎ 」

 一番槍の手柄を横取りされたような気分になり、一瞬顔を顰めたイーヴシオンだったが、すぐに気を取り直して部下を率い、敵艦隊への突撃を開始したのだった。



 ー『〈白甲隊〉魔導砲"バズーカ"構えっ!撃ててえええぇぇぇっ‼︎ 』ー


 ーー バシュッ!バシュゥゥゥゥゥッッ‼︎ ーー

 
 本来は戦車型の新型ゴーレムに搭載するべく開発された魔導砲であるが、これを【魔導強化外殻マギウスアームドスーツ】用に手持ち武器として改めて設計し直されたものが"バズーカ"である。

 ヨゴルスカ艦隊からの法撃を避ける為に、一旦後退した〈白甲隊〉が構えたバズーカが一斉に火を噴き、予め装填されていた《爆裂》の魔術紋を刻まれた屑魔晶石を先端部に装着した圧縮岩弾が、艦隊最後尾に位置する艦艇目掛け赤く焔の尾を引いて飛んで行くと、轟音を発して大爆発を起こし、敵艦艇後部を粉々に吹き飛ばした。

 ー『おっしゃああああっ‼︎ 』ー
 ー『一番槍は〈白甲隊〉が貰ったぜっ!』ー

 ー『ぃよおぉーーし!貴様等、良くやった!どんどん行くぞぉっ!』ー

 ー『『『『アイサぁーーーーっ‼︎』』』』ー
 
 自分達が成したな戦果に、歓声を上げる〈白甲隊〉の騎士達。その結果に更に士気を上げた彼等は、分隊長の号令の下、新たな獲物に狙いを定めてバズーカの照準を合わせるのだった。


 オープン回線の通信機から、戦果を上げた〈白甲隊〉の歓声が響く。

 ー『"一番槍"は、予想通り遠距離装備の〈白甲隊〉が獲ったか。だが、こちらも負けてはおらんぞ?』ー

 通信機から響く歓声を聞きながら、〈碧甲隊〉分隊長の「ベインゼル・フォール」はニヤリと口角を上げた。

 ー『お前達は"陽動"を兼ねて、二騎一組に分かれて攻撃に当たれ 』ー

 ー『"二騎一組"?…って、フォール隊長はどうするんですか?』ー

 ー『私は変態共にも頼まれているのでな、少々 』ー

 ー『ああ…⁉︎ なるほど!分かりました、派手に行っちゃって下さい!』ー

 ー『フフッ、頼んだぞ。くれぐれも調子に乗りすぎて敵弾に当たるんじゃ無いぞ?マイナスされてしまうからな 』ー

 ー『アイサーー!分かってますよ。じゃ、点数稼ぎに行ってきます!』ー

 フォールを先頭に鏃の陣形を取っていた〈碧甲隊〉の【サーフタートル】は、そのまま左右の二騎ずつに分かれて攻撃を始める。

「フフッ、では俺達も行こうか、【アンダータートル】!」

 部下達の返答にニヤリと口元にニヒルな笑みを浮かべ、フォールは目標と定めたギ級に向かい、一気に騎体を加速させた。


「敵ゴーレム一体が単独で本艦に突っ込んで来ますっ‼︎ 」

「なにっ⁉︎ く…っ、舐めおって!その傲慢さが命取りになると教えてくれる!全魔法をあの生意気なゴーレムに集中させろ!回避すら出来ないほどの密度で押し潰すのだ‼︎ 」

 単騎で攻め込んで来たフォール騎に対して、密集させ、炎の壁のようになった敵弾が襲い掛かって来る。

「俺ひとりに随分な歓迎だな?だが…っ!」

 フォールの乗騎【アンダータートル】は、通常の【サーフタートル】よりもひと回りほど大きく、丸みを帯びた形状をしたである。の実験騎であるが為に、【サーフタートル】に比べて若干海上走破性能が犠牲になってしまったが、それを補って余りある性能を有していた。その"機能"とは………。

 ーーー ズッバアァァン!ジュオォォォォオッ!ーーー

 【アンダータートル】目掛けて放たれた炎の弾幕が海面へと着弾して爆発し、勢いよく水蒸気が噴き上がる。

「おおっ!やったか…っ⁉︎ 」
「あれだけ炎の魔法弾を集中させたのだ、逃がれる事など出来まい!」

 たった一騎だけながら、艦隊に大損害を与えるゴーレムを屠ってやったと沸き返るヨゴルスカの魔法使い達。しかし、それはほんのであったと次の瞬間思い知る事になる。

 ーーー ズゴンッ!ドゴンッ!ズバァァァンッ‼︎ ーーー

 突如として甲板が次々と爆発を起こしたように弾け飛び、喜びに沸いていた魔法使い達を吹き飛ばしたのだ。

「何だっ?いったい何が起こっている⁉︎ 」
「分からんっ!突然甲板を突き抜けて"何か"が…っ⁉︎」

 何が起きているのかまったく理解出来ず、狼狽える生き残りの魔法使いの目の前で、更に船上のいくつもの箇所が乗組員を巻き込みながら弾け飛んで行く。

「………ま、まさか、船底側から攻撃を受けているのか…⁉︎」
「そんなバカな…っ‼︎ 」
「た、助けてくれ…っ‼︎ 」

 そんな事はあり得ない!と、混乱しながらも必死で否定するヨゴルスカの魔法使い達であったが、彼等の否定も虚しく、今起こっている事は正にその"まさか"であった。

 海中から船底を目掛け、魔導ライフルを連射する【アンダータートル】。そう、【アンダータートル】のアンダーとは、"アンダーウォーター"、つまり『水中』を意味している。
 
 海上走破性能や機動性を少々犠牲にしても余りある程の機能。それは、来たるの建造に向け、水中での機動試験データの収集も兼ね、海上走破だけでなく、水中活動も可能な次世代型海洋ゴーレムを目指して開発された実験騎である【アンダータートル】の、水中戦機動能力であった。

「どうだ、抵抗する事すら出来ず、一方的に弄ばれるように攻撃を受ける気分は?悔しいだろう。理不尽だろう。怖いだろう。…だがな、それが貴様等が今まで罪無き人々にしてきた事だ。精々恐怖を感じて、泣き喚きながら死んで行くがいい…‼︎」

 そう吐き捨てるように言ったフォールの顔に、先程までのニヒルな笑みは無い。冷たい怒りをその瞳に湛え、次々と海賊達を暗い水底へと沈めて行くのだった。



(「何とまあ……、「一任する」とは確かに言ったが、連携も何も無く本当に好きに動いてばかりいるな… 」)

 通信機から響いてくる各部隊の声と、モニターに映る光景を見ながらコーウェンはやれやれと溜め息を吐く。

(「今はまだ圧倒的なゴーレムの性能差で好き放題出来ているが、いずれそれだけでは通用しない時が必ず来る。このままでは……。いかんな、やはりをお願いした方がいいかもしれんな?………とはいえ 」)

「ああ言った以上、俺が最下位になる訳にはいかんよなぁ………?」

 少々情け無い表情を浮かべていたコーウェンは、その厳しい顔にニヤッと獰猛な笑みを浮かべると、自らが直接率いる〈紅甲隊〉に向かい命令を下した。

 ー『さて、言い出した俺が負ける訳にも行かん。〈紅甲隊〉、そろそろ俺達も出るぞっ‼︎ 』ー



 新生王国艦隊【踏波亀兵】隊、右肩を紅く染めた最強部隊がいよいよ動き出した……!





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 いつもお読み下さりありがとうございます!
 なかなか投稿出来ず申し訳ありませんでした。よろしくお願いします。
 
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