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第17章 強制レベルアップ祭り in 魔の森
第129話 side 三人娘
しおりを挟む「で?婆さん、何か言いたい事はあるか?」
「反省はしている。後悔はしていない」
「それ結局反省してねえだろうがっ!? 」
現在、枝の直径が五メートルはありそうな、異様にデカい大木の枝の上で婆さんを正座させて説教中である。
「……なあ、カクさん? 俺ァセイレン様が正座させられて、説教をされる場面なんて見る日が来るとは思わなかったよ…… 」
「……心配するなスケさん、拙者もだよ。さすがヒロト様だ……っ!? 」
俺の抗議に眉根を顰め、明らかに納得していない様子で口を尖らせた婆さんが言い返して来た。
「そうは言うけど、ヒロトだってメチャクチャな騎士団強化してるじゃないかっ!」
「一緒にすんなっ!アイツ等は元々”戦闘職”、軍人だ!ラーナちゃん達は護衛任務もあるとはいえ、侍女とかメイドさんなんだぞ?明らかに過剰戦力だろうがっ!? 」
【宮殿近衛騎士団】の戦いを見届けた後、婆さん監督の三人娘の方の戦いの様子を見ていたんだが……、何だかもの凄く酷いことになっていた……。
タイプ別で言うと、シイラは【広域殲滅・長距離攻撃特化型】、もともと”風の精霊の加護”を持ち、《風属性》の魔力に親和性の高いエルフ族だけに、規格外の爺さんは別枠としてもシイラの《風属性魔法》による刃の竜巻は非常に強力だった。さらに途中で投げ入れた戦輪、アレが威力を増大させた。
以前、魔法を練習している時に、戯れに竜巻の被害について巻き揚げられた飛来物の事が引き起こす威力の事をシイラに話したことがあったんだが、その時の話を憶えていて、自分なりに再現したようだ。
おまけに五百メートルほど離れていても、小型の旋風に乗せて某ファ〇ネルのように自由自在に操ってのオールレンジ攻撃まで出来るらしい。何でもアリだな魔法パワー。
あの戦輪は魔道具らしいのだが、特別な事は何も無く、円環状のブレスレットから戦輪へと変化する機能しか無い。婆さんが魔力が切れた時の投擲武器にと所有していたらしいのだが、そもそも婆さんは魔法使いのクセに格闘での白兵戦を得意としている変態だ。
『魔力が無ければ直接殴ればいいじゃない?』と、何かを投げつけるよりも自身が突撃をかける。”パンが無ければ菓子を食え”、と無茶を言ったどこぞの王妃ではないが、常識が通じない人なので、手に入れたはいいが武器庫の肥やしになっていただけらしい。
それを試しにシイラに与えたところ、ぴったりと上手くハマったようだ。以前の馬鹿の起こした事件のせいで、未だシイラの心の傷は癒えておらず、対人、特に男に対して恐怖が拭い去れない。そのせいで無意識に相手を近付けさせない戦い方になったとしたのなら本当に可哀想だとは思うが、こればっかりは時間と本人の心の強さによってゆっくりと治していくしかないだろう。
だがまあ、すぐには無理だろうが、いずれは大丈夫なんじゃないかとも思っている。婆さんの他にもひとり、一生懸命シイラの為になろうとしてる奴が出来たみたいだからな、そっちも陰ながら応援してやろう。
次にキムチェだが、【中~近距離高火力制圧型】とでも言うべきか?
キムチェに関しては、実はまあ俺も”やっちまった”感が否めない。さっきキムチェが〈スパイク ウルフ〉を蹴散らしたあの魔法、当然ながらこのイオニディアには銃火器の類いなど存在せず、そもそも”ガトリング”などという言葉自体が無い。……いや、無かった。本来なら《連射高速火矢》とでも名付けるものだが、では何故そんな固有名詞をしっているのか?
…………答え、俺が犯人です!
先日、キムチェの故郷であるアソノ村を訪れた際に使用した『可変機構付きバイク型ゴーレム』、悪ノリした俺がレプリカのガトリング砲(ハリボテ)をアレに搭載し、道中で路へと出て来た〈ロックタートル〉という魔獣に向かって実演して見せたのだ。
ちなみにこの〈ロックタートル〉、ロックとついている通り、とにかく分厚く、頑丈な甲羅を持っていて、遠目から見たら本当に岩にしか見えない。その為非常に重く、動きも鈍い。で、あるのに何故か”肉食”という〈ランクE〉の亀の魔獣だ。
動きが鈍いのに、どうやって獲物を獲るのかといえば、動きの鈍さを補って余りある”特技”を持っているのだ。
それは《土属性魔法》、大小様々な《岩弾》を生成して撃ち出して来るのだ。
その様子はまるで生きた戦車、何匹もテイムして飼い慣らせば『岩亀機甲師団』とか作れるんじゃないか?と思ってみたのだが、如何せん移動速度が遅過ぎる。あまりの遅さに連れて歩く事も難しいし、上手く手懐けてもせいぜい攻城戦や局地防衛戦における移動砲台ぐらいにしか出来ないだろう。
分厚い甲羅に守られて物理攻撃に対しては非常に高い防御力を誇るが、反面魔法に対しては非常に弱く、《岩弾》に注意して近付き、至近距離から魔法で攻撃すれば割と簡単に仕留められるんだそうな。
で、その〈ロックタートル〉君がバイクの方に向かって《岩弾》を発射して来た為、《魔弾》ガトリング砲で応戦したという訳だ。
結果、飛んで来た《岩弾》を空中で迎撃して撃ち落としたばかりか、”岩より硬い”といわれる〈ロックタートル〉の甲羅までも粉々に粉砕したガトリング砲の攻撃力に、スゴいスゴいとキムチェは大興奮だったのだ。
その時は全く無属性の《魔弾》だったのだが、『狐火』なんて言葉があるように、この世界でも狐人族は《火属性》の魔力との親和性が高いらしく、もともと得意な《火属性魔法》で自分なりに研究して再現してしまったようだ。
よっぽどガトリング砲のインパクトが強かったのだろう、弾丸である《火矢》が、回す必要もないのにショートソードの周りをクルクルと回っていたしな……。
撃ち終わったあと、やたらと色っぽい表情でウットリとしていたなぁ……? ヤバい、”トリガーハッピー”にしてしまったかもしれん……!?
ん、コホン。気を取り直して、最後にラーナちゃんだが、間違いなく【近接白兵戦特化型】だろう。
しかも、種族である銀狼族は《氷属性》が得意だそうで、攻守に取り入れているらしい。さっきの戦闘では使わなかったが、防御用に《氷盾》とかも出せるらしい。おまけに空気中はおろか敵の体内の水分までを凍り付かせることまで出来るようなので、ラーナちゃんの〈魔法攻撃力〉より〈魔法耐性〉が高いか、《魔法解除》しない限り身体の内側から徐々に氷の魔力波動に浸食され、やがて全身全てが凍り付いて砕け散る事になる。たとえ直撃でなくともラーナちゃんの攻撃が掠ってしまえば終わり、というメチャクチャ凶悪な仕様の攻撃である。
『分身の術』は、凝固させた空気中の水分を人型にして、ラーナちゃんの姿を投影しているだけなので防御力自体は皆無に等しいらしいのだか、手に持つ氷の苦無の効果は同じ、というブッ壊れ性能、さらには氷の粒を体の周りに纏うことで光を屈折させて、〈光学迷彩〉のようなことまで出来るようになったらしい!?
”飛び苦無”やら”分身の術”に”隠れ身の術”完全に「忍者」だ。……いや、アレはもう海外の人が勘違いして憶えちゃった『NINJA』だな。
遠・中・近と、どこぞのVの付く試作型MSの遊撃部隊(囮)のような組み合わせだが、俺が”酷い”と言ったのはその戦い方だ。
次々と入れ代わって、一見連携のようにも見えるが、その実順番に前に出て、圧倒的火力で蹂躙、力押しで押し潰しただけだ。戦略だの作戦などあったもんじゃない。
「はぁ……、カークス、実際どうなんだ?あの三人の実力は?」
カークスに話を振ると、腕を組んで暫し思案したカークスが、三人の実力について見解を述べる。
「そうですね……、おそらくこの三人だけで、その辺りの砦などの軍事拠点ならば楽に陥落せるか…と?」
「そこまでか!? ……いや、だろうなぁ…… 」
ここで俺の恥ずかしい間違いをバラさねばならないだろう。いや、勘違いと言うべきかな?
何かといえば、レベルとかに関して、大きな勘違いをしていたようなのだ。
つまり、一般のレベルに対する常識と、俺が持っていた認識との間に、大きな”ズレ”があったのだ。
レベルとはそうそう簡単に上がるモノでは無く、普通はLv30~50、〈ランクE~C下位〉までが一般的で、その内冒険者百人に対して一割に当たる十人ほどが〈ランクC上位〉となるLv60を超えて一流と呼ばれるらしい。
さらに超一流と呼ばれる〈ランクB〉などというLv70を超えれる者はさらにその十分の一、百人いてもひとり到れるかどうか?というレベルであり、Lv100を超える〈ランクA〉などは千人にひとりという割合の話になってくるという。
つまり、実質冒険者の普通に到れる最高ランクは”B”であり、AだのSなどというランクは、普通ではまず絶対に到達出来ないランクなのだ。
だが、アフィーに聞いた話で、上位の世界から来た俺は最初から基本ステータスも高く、成長率も高いらしい。ゲームなんかで言うと〈獲得経験値〇倍〉とか〈成長率×〇倍〉という奴かな?そのお陰で一番最初にプテラゴンという下位竜を大量に倒した所為で、一気にレベルが上がってしまった。
また、一番最初に出逢った”異世界人”がセイリアや爺さんを始めとする高レベルのダークエルフ達ということもあって、一般レベルの基準値を、かなり高く見積もってしまっていたようなのだ。
言い訳をさせてもらうなら、セイリアを拐おうとした”墓場のなんちゃら”は、俺から言わせればそれ程大したこともないのに〈ランクC〉にあたるLv63だった事もあって、その辺りが平均値より少し上くらいだと勝手に勘違いしてしまったのだ。
だから〈大襲来〉の時にセイリアをレベリングした時にLv78まで上げたんだが、それがやり過ぎだと気付いたのが、恥ずかしながらついこの間、セイリアが”学院無双”をやらかした時だったという……… 。
今現在のラーナちゃん達のステータスを〈鑑定〉してみれば…、
ラーナ・シルバー Lv68
銀狼族 女 (16歳)
護衛侍女 【クノイチ】
キムチェ Lv65
狐人族 女 (22歳)
ヒロト付きメイド
シイラ・ラバルナ Lv63
エルフ族(ダークエルフ種) 女 (38歳)
〈ランクE〉冒険者 冒険者ギルド最高ギルド長秘書補
ほ~ら、世間一般の一流と呼ばれるレベルを突破して、既に超一流に手が届く勢いだよ……。
しかもシーラちゃんのステータスにしっかり【クノイチ】の一行まで追加されてるし……!?
……とうとう本当に『〇銀さん』になっちゃったな…………!?
そうこうしていると、婆さんを説教しているところに、ラーナちゃん達が戻って来た。
「あっ!? ヒロト様!……って、何故セイレン様が正座を……?」
俺の姿を見つけ、一瞬笑顔になるも、婆さんの状況を見てギョッとした表情になるラーナちゃん達三人娘。
「いや、まあ、なんと言うか…なぁ?」
なんと説明しようか言い淀んでいたら、婆さんがラーナちゃん達に言い付けるように話し出した。
「ラーナ!聞いておくれよ!ヒロトったら、”アンタ達を強くし過ぎだ”って文句を言うんだよっ!」
「あっ!? こらバカ、そんな言い方したら誤解するだろっ!? 」
「ヒロト様…、どういうことなんですか……っ!?」
ああぁっ!? ラーナちゃん達が泣きそうな顔になっちゃったよ!?
「ああ、違うんだ!何て言ったらいいのかな…?強くなる事自体はいいんだ、けどなぁ、強くなるにも段階ってモンが要ると俺は思うんだよ…… 」
この世界はゲームのようにレベルアップがある所為で、強くなろうと思えば、それなりに早く肉体的には強くなれる。だが、急激なレベルアップでは、精神や技がついてこないのだ。
今まで会った下衆男君達は、そのパターンだった。レベルアップによる強化に酔い、驕り高ぶって技を疎かにしてしまい、結果真の強者には敵わないという中途半端な強さになってしまっていたのだ。
勿論、ラーナちゃん達がそうなるとは思っていないが、人の精神は意外と弱い。ビシッと一本、心に信念がなければ知らぬ間に堕落し、見せかけの強さに溺れてしまいかねない。
「ありがとうございます。でもヒロト様、大丈夫です! ”何の為に強くなるのか?”ヒロト様に教えて頂いた事は忘れていませんから!」
俺の言いたいことを察してくれたのか、笑顔になったラーナちゃん、キムチェ、シイラがスッと姿勢を正す。
「私は姫様をお守りする為に 」
「私はヒロト様の喫茶店を守る為に」
「私は生まれ変わる為に!」
三人は、静かに、しかししっかりと己の信念を語り、自信に溢れた笑顔を見せた。
そうだな……、この三人は今まで見て来た馬鹿どもとは違う。自分の為だけでなく『誰かの為に』強さを求めた娘達だ。
きっと大丈夫だろう、まあ、何があっても俺がいくらでもフォローしてやるさ。
「分かった。そうだな、うん、頑張ったな皆んな!」
「「「はいっ!! 」」」
俺の激励の言葉に、はにかむように、だが、嬉しそうに返事を返してくる三人娘。いい顔だな……!
「うんうん、じゃあもうアタシもいいね?」
「ダメだ。婆さんはもう暫くそうしてろ」
「何でだいっ!」
「普段の行いをよぉ~~~~く思い出せ。反省する事が色々色々色々色々あるだろう?」
「………………全く、ひとつも、これっぽっちも、何ひとつ恥じる事は無いねっ!! 」
「自覚無しか!? 周りをどんだけ振り回してるかちったぁ反省しやがれぇっ!! 」
ぎゃいぎゃい言い争う俺と婆さんを見て、思わず吹き出す他の五人。
多少の計算違いはあったが、こうしてラーナちゃん達三人娘の強化訓練 in【魔の森】は概ね成功で終了したのだったーーーー 。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありがとうございました!
大賞期間最後の投稿となります。
満足に投稿出来なかった部分はありますが、応援して下さった皆様、お読み下さった皆様に、心から御礼申し上げます。
本当にありがとうございました!
m(_ _)mm(_ _)mm(TロT)mm(_ _)mm(_ _)m
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