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第20章 本日開店!喫茶店【御菓子猫】
第170話
しおりを挟む「シムゥラ⁉︎ 後ろ、後ろっ‼︎ 」
カトゥチャンペさんの警告の叫びに振り返ったシムゥラさんの背後の岩陰から現れたのは、黒い…ゴブリンウォーリアー⁉︎
「ぅワアァァァァァオゥッ!アんで六匹目が居るダよぉっ⁉︎ 」
ーー「ゲギャギャギァァァァァッ!」ーー
既に黒ゴブリンウォーリアーはその手に握った戦斧を振りかぶり、シムゥラさんへと振り下ろそうとしていた。
俺は自分が対峙している黒ゴブリンを大きく弾き飛ばし、慌てて自分の得物、【迅雷】と名付けた棍を投擲するが…!
……チィっ!ここからじゃ間に合わねぇっ⁉︎
血と錆びに赤黒く汚れた刃が、今まさにシムゥラさんの頭上に落ち掛からんとしたその時だった!
ーー キキュンッ! パキィィィィィィンッ‼︎ ーー
横合いから風を巻いて突如として飛来した矢が、黒ゴブリンウォーリアーの斧にぶち当たり、その起動を強引に逸らした。
…アーニャの弓かっ⁉︎
凄いな、縦方向にかけられた力は、横方向からの力には弱いものだが、あの力任せに振るわれた大質量の戦斧の起動を変えてしまうなんて凄い威力だ。ひとり感心する俺だったが、アーニャの放った矢の攻撃はそれだけで終わりではなかった。矢は斧に当たった瞬間、澄んだ音と共に砕け散り、鋭い氷の破片となって黒ゴブリンウォーリアーの顔面を襲ったのだ。
ーー 「ゲギャッ⁉︎ グギャアァッ‼︎ 」ーー
反射的に逆の手で氷の破片から顔面を庇ったところで、まるで間隙を縫うように数拍遅れて俺の投げた棍がその胸を直撃し、堪らず大きく姿勢を崩してたたらを踏む黒ゴブリンウォーリアー。
しかし、コイツらは本当に硬い。今の攻撃だって、普通のゴブリンなら胸に大穴が空くくらいの威力はあったはずなのに、よろめかせる程度にしかならなかった。とんでもない防御力だ。
「ぅわわわわわわわわわっ⁉︎ 」
だが、ひとまずそれでいい。シムゥラさんは後退った黒ゴブリンウォーリアーの隙を逃さず、慌ててその場を飛び退いて窮地を脱することが出来たようだ。
「アッハハっ!お手柄だよ、アーニャ、ダイ!んじゃまあ、そろそろケリを着けようかね?喰らいな!〈爆拳無限連打〉!ぃいあああああああああぁぁつ‼︎ 」
ソニアの口元が獰猛な笑みの形に吊り上がり、握りしめた黒曜石のような輝きを持った籠手の拳が黒ゴブリンに着弾する。
ーー ドゴンッ!バガンッ!ズドムッ!ドガガガガガガガガ………ッ‼︎‼︎ ーー
そう、着弾だ。そうとしか表現出来ない。何故なら黒ゴブリンに拳が当たった瞬間、轟音と共にソニアの拳が爆炎を放ったのだから。
だが、驚くべきはそこからだった。
爆発の反動に身を翻したソニアの、今度は逆の腕の肘の位置で爆炎が上がる。それはまるでロケットモーターの点火。加速された拳が着弾してさらに爆発が起きる。更に身を捻って今度は足裏で爆炎が閃き、強烈な膝蹴りが突き刺さる。
拳が、膝が、肘が!爆発が起き、爆炎が閃く毎にソニアの攻撃は加速していく。
なぜそんな真似が出来るのか?その秘密は、ソニアは着弾の反動までも自動拳銃のブローバックの様な次弾発射への予備動作へと変え、更には身体の各部表面で爆発を起こして加速と同時に強制的な姿勢制御を行うことで連続攻撃を可能にしているのだ!
しかし…、これは無茶苦茶だ。こんなものはソニアの類稀なる格闘センスと、獣人族の本能的なボディバランスが奇跡的に結合して上手く行っているだけ、普通の人間が同じ事をすれば間違い無く一瞬のうちに身体中の筋肉や腱がズタズタになって、一発で再起不能だ。
「ああああああああああああっ‼︎ 」
ーー ドッゴオォォォォォオォンッ‼︎ ーー
ソニアの気合いの叫びと共に、高々と振り上げられた踵が黒ゴブリンの脳天へと振り下ろされた瞬間、一際大きな爆発が巻き起こり、憐れ腰から上を吹き飛ばされた黒ゴブリンの下半身だけが ドチャリ…、と倒れ伏した。
とんでもない戦闘力だ…。だが、すごいのはソニアだけじゃなかった。
「オラオラっ!振り回すばっかりじゃ俺には当たらねえぞっ!」
馬車の中で『自分は盾役兼アタッカーだ』と言っていたものの、ゴウナムは盾役たるに必須の盾を持っていなかった。だが、今ならその意味がよく分かる。
超重量武器に類される大剣の使い方は、小手先の技よりも威力優先、どうしても大雑把になる。そのため防御に回った時には分厚い刀身を盾代わりに使うくらいしかないのだが、ゴウナムは違っていた。
ソニアの籠手の様に黒く艶光る大剣。だが、よくある通常の両刃の剣ではなく、匕首をそのまま巨大化したかのような片刃の大剣を絶妙な角度に変えながら、黒ゴブリンの戦鎚の攻撃をことごとく弾き、逸らし、的確に防いでいく。そして……!
「飽きた…。テメェじゃ訓練にもならねーや。…疾っ‼︎ 」
横薙ぎに振るわれた一撃を下から易々と跳ね上げ、ガラ空きとなった胴体をゴウナムの剣が一閃する。
あの大剣、なんて斬れ味だ⁉︎ ゴウナムの技量は勿論だが、硬く、相当な防御力を誇るはずの黒い肌を、ほんの僅かすら抵抗することも許さずに"サクリ"と斬り裂いてしまった。
ズルリ、と両断された上半身が滑り落ち、後には骸だけが転がった。
「ほ~らほら、鬼さんこっちら!」
マーニャが素早い動きで黒ゴブリンを翻弄する。いや…?素早いだけじゃない、緩急織り交ぜてのフェイントだ。
マーニャが両の手に構えた幅広の短剣も、黒曜石のように濡れた輝きを湛え、黒ゴブリンと交錯する度に浅くないダメージを刻み続けている。しかし、黒ゴブリンもタフネスにモノを言わせてマーニャの動きに追い縋り、ほんの一瞬、動きを止めたマーニャへと得物を叩きつけようとするが…、
ーー キュンッ!キキュキュンッ‼︎ ーー
マーニャの方に集中している黒ゴブリンの意識外から先程戦斧を弾き飛ばした時と同じ"風を巻く矢"が何本も飛来して、その黒い体へ次々と突き刺さっていく。
ーー 「ゲギャアァァァァァッ⁉︎」 ーー
堪らず苦悶の悲鳴を上げた黒ゴブリンがマーニャから目を離し、矢の飛来した方向を睨みつけるが、既にそこにアーニャの姿は無い。
「へへん!隙だらけだよん♪ 」
空かさず視線の切れた黒ゴブリンの両踵の腱をマーニャが断ち切ったことで、とうとう両膝を地面に着いて蹲る黒ゴブリンだったが、数瞬の間を置くこと無く、そこに最期の一撃が加えられ、そのまま ドウッと前に倒れ伏す黒ゴブリン。
傍目から見れば、まるで黒ゴブリンの頭から、急に"何か"が生えてきたように見えたのではないだろうか?見ればその頭、もっと詳しく言えば両耳の穴の位置を貫通して一本の矢が突き刺さり、直接黒ゴブリンの脳を破壊したようだ。
何という見事な連携。アーニャとマーニャの双子はお互いに敵の注意を引き合い、それぞれが死角からの攻撃であっという間に黒ゴブリンの一匹を屠ってしまった。
しかし……、攻撃毎に射座を変えるという"戦場狙撃"の基本といい、二人の戦い方は非常にあちらの世界を連想させる。しかも、マーニャの敵を幻惑するあの動き。俺が"よく知っている動き"に非常によく似ていたんだが……。まさか…な?
「ぅおいっ!お前らそろそろこっちを手伝いなさいよ!サボってんじゃ無いよ!」
戦いの中、ふとそんなことを考えていた耳に、イガーリャさんの声が聞こえてきた。
「はいよ~~!」
「ハイハイ、今行きますよ~~!」
一匹の黒ゴブリンを抑えていたイガーリャさんの元へとナガモッドさんとカーギブゥさんが駆け付ける。
「「「三位一体、〈神鳴斬魔〉‼︎ 」」」
三人の連続攻撃に怯み、最後にカーギブゥさんが放った《雷属性魔法》で〈麻痺状態〉に陥り、動きを止めた黒ゴブリンに、今度はカトゥチャンペさん、シムゥラさんが不思議なステップを踏みながら左右から迫る…!
「アんだコノヤロ~~!」
「テメェコノヤロー!喰らいやがれぇ~~!」
「「二心合一!〈緋牙断寸〉‼︎ 」」
ーー 「ゲギャアァァァァァアァァァァァッ‼︎ 」ーー
ユニゾンのように動きを合わせた二人の剣から噴き出した炎が幾筋もの軌跡を描き、断末魔の絶叫と共に四匹目の黒ゴブリンが倒された。
ソニア達【蒼い疾風】もすごいが、【ドリフティ】もすごい。個人の技量ではソニア達には及ばないかもしれないが、パーティ全員の流れるような連携、集団戦術で、何人もの〈ランクC〉冒険者の命を奪ったという"黒い魔獣"を倒し切ってしまった。さすがは冒険者という浮き沈みの激しい稼業で、長年ひとつの街でトップパーティを張っているのは伊達じゃない。素晴らしい戦いだった。
「ちょっとダイ!アンタ戦いの最中に何を他所見してんのよ!集中しなさいよ‼︎ 」
〈気配察知〉で攻撃を避けながら、他の戦いを観ていた俺に、ティーリからの叱責が飛んで来る。
「あー、悪い悪い。ついついさー、気になるじゃんかー 」
「じゃんかー、じゃないわよ!どーすんのよ武器投げちゃって!」
きぃっと益々ティーリの怒りに油を注いでしまったようだが、んー、この程度なら、多少梃子摺っても素手でも充分行ける、と思うんだが?でも、それを言うとまた怒るんだろうなぁ………。おっと⁉︎
そんなことを考えながら黒ゴブリンの攻撃を避けた瞬間、轟音と共に黒ゴブリンが弾け飛んだ。
「コイツはアタイに任せてアッチを頼むよ!さっさと武器を拾いに行きなよ!」
そう言って、黒ゴブリンを殴り飛ばしながらパチリとウィンクをしてみせるソニア。どうやらソニアは俺にも見せ場をくれたようだ。
「任されたー!ぃよっし!行っくぜー、覚悟しなぁーー‼︎ 」
ーー 「ゲギャアアアアアアアアアァァァァァッ‼︎」 ーー
仲間を全て殺されて怒りの咆哮を上げる黒ゴブリンウォーリアー目掛け、走りながら【迅雷】を拾い上げつつ、体内の魔力を練り上げる。
黒ゴブリンウォーリアーの戦斧の一撃を紙一重で避け、奴の顔目掛けて横薙ぎに【迅雷】を振るうが、素早く引き戻された戦斧に防がれてしまう。
さすがはゴブリンの上位種、しかも強化されているらしい"黒い魔獣"、通常種では有り得ない反応速度だ。
奴の口元がニヤリと厭らしく歪む。たぶん俺のことを小馬鹿にしているんだろう。醜悪とはいえ、人間によく似た顔の造りだけに、そうした表情はよく分かる。
けれど、やはり頭の中身までは強化されていないらしい。笑うのは俺の方だ。
「あぁっ!ダイの武器が折れちゃったっ⁉︎ 」
マーニャの悲鳴が聞こえる。まあ、そう思うよな?だが………!
ーー ジャラッ! ゴガンッ‼︎ ーー
ーー 「ゲギョアッ⁉︎」ーー
折れ曲がった【迅雷】が、まるで戦斧を軸とするようにクルリと弧を描いて奴の横っ面に直撃する。
何が起きたかなど分かっていないだろうな。全く予想外で油断していたのだろう、綺麗なクリーンヒットだった。
ーー ヒュン!ピシュン!ブォン‼︎ ーー
俺は三つに折れ曲がった【迅雷】を、引き攣った顔の奴に見せつけるように振り回す。そう、さっきマーニャ達には折れてしまったように見えたかもしれないが、どこも壊れてなどいはしない。
「な、何だあの武器は…っ⁉︎ 」
後ろから、イガーリャさん達の驚いた声が聞こえる。【迅雷】はただの棍じゃない。俺の魔力波動によるスイッチひとつで、モードの切り替えが可能な"自在棍"なのだ。
そして今のモードは"三節棍"、この世界には未だ存在していなかった武器。
俺の攻撃を何とか防ごうと、奴は戦斧を構えるが、その度に折れ曲がった棍の先端が嘲笑うかのように奴の身体を打ち据える。
ーー「グッ、ゲギョアアァァァァァッ‼︎ 」ーー
堪りかねたのか、後ろへと大きく飛び退って、距離を取った黒ゴブリンウォーリアーが大きく口を開くと、その口内に真っ赤な炎が灯る。
何だっ?コイツはゴブリンのくせに《火属性》のブレスまで吐けるのか⁉︎
奴との距離はおよそ十メートル、急いで踏み込んでも間に合わない。
【迅雷】を振り上げて魔力波動を流し、カチリと次のモードへ切り替える。
ーー「ギョボォッ⁉︎」ーー
奴の目が、驚愕に見開かれる。何故ならば、彼我の距離を無視するかのように、炎ごと黄色く汚れた牙を折り砕き、【迅雷】の先端が奴の口内へと突き刺さったからだ。
これぞ【迅雷】の第三形態"九節鞭"、魔力波動を通した鎖に繋がれた先端は、俺の思うがまま、離れた敵すら自由自在に攻撃することが出来るのだ。
奴のブレス攻撃を潰した俺は【迅雷】を引き戻し、第一形態の棍の形状へと変化させながら、一気に距離を詰める。
「さぁてー、これで終わりだぜー‼︎ 」
引き戻した【迅雷】を右手で後ろへと引き絞り、前に出した左手を添えると【迅雷】全体がパリンッ!と紫電に包まれる。そしてその先端が奴に触れた瞬間、手首を捻りながら込められた力を全て解放する。
「螺旋雷光衝破‼︎ 」
瞬間、仄暗いダンジョンの最奥を、眩い雷光が真白に染め上げた ーーーー 。
~~~~~~~~~~~~~~
更新遅くなって申し訳ありません。
二度あることは三度ある……。
また、また!書いている途中で消えてしまいました⁉︎ (TロT)
ただ、前回、今回と操作ミスではなく、ホームボタンWクリックから携帯投稿に直接跳んだことで、データが消えてしまったようです。
使用しているiPhoneの故障かバグかは分かりませんが、皆様もお気を付け下さい。
花粉症でキツい中、頑張って書いたのに………、辛い⁉︎ (泣)
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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